表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喫茶リセット 〜今日も、誰かの心をそっと整理します〜  作者: 蔭翁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/31

第22話 **「晴れやかな忘れ物」**



 朝から雲ひとつない青空。

 喫茶リセットの窓辺には、やわらかな陽射しが差し込み、カウンターのガラス器がきらりと光っていた。


 カラン――。

 扉のベルが鳴り、小柄な女性が息を切らしながら入ってきた。

「す、すみません! 昨日こちらに忘れ物を……」


 差し出されたのは、名刺入れ。マスターがカウンター下からそっと取り出すと、女性の顔がぱっと明るくなった。


「よかった……。大事な名刺入れで。中に父からもらった手紙も入ってて……」

 女性は胸にぎゅっと抱きしめた。


「見つかってよかったですね」

 マスターはコーヒーをすすめる。

「お礼に一杯いただきます。……あ、今日は本当に晴れてますね」


 彼女はカップを手にしながら、窓の外を見た。

「実は今日、新しい職場に初出勤なんです。昨日は緊張しすぎて、名刺入れをここに忘れて帰っちゃって……」


 マスターは微笑む。

「緊張は、新しい扉を開く合図みたいなものですよ。晴れの日に忘れ物を取りに戻る――それもまた、いいスタートかもしれません」


 女性は少し考え、ふっと笑った。

「そうですね。……父の手紙も、きっと“背中を押すために”ここに残ってくれたのかもしれません」


 彼女はコーヒーを飲み干し、軽やかな足取りで店を出ていった。


 カラン、と扉が閉じる。

 マスターはカウンターを拭きながら、空を見上げて小さくつぶやいた。


「忘れ物も、時には未来への道しるべになる」


 外には、夏のようなまぶしい青空が広がっていた。


―――




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ