公爵令嬢から女商人へ
商人と共に旅立ったエミリアはまずその姿を変えた。
長くウェーブがかかった金色の髪はバッサリと短く切った。
キツめにしていたメイクも止めると本来の10代の可愛らしい少女の顔になった。
商人は『同一人物とは思えない』、『断然こっちの方が良い』と褒めてくれた。
貴族社会は『舐められたら負け』という暗黙のルールがあり年より上に見える様なメイクをしていたのだが、漸く間違っていた事をエミリアはこの時、初めて知った。
そして派手なドレスではなく目立たないように庶民の服を着るようになり、名前もエミリアからミリーと名乗るようにした。
こうして公爵令嬢から脱皮したミリーは商人と共に国内外様々な所に行った。
そこで買い付けや商品の目利き等、商人として必要な事を学んだ。
元々王妃教育を受けていた事もありメキメキと商人の才能が出てきた。
更に言えば公爵令嬢として一流品に囲まれた生活をしていたので物を見る目は養っておりミリーが目をつけた物は客からの評判が良かった。
そんな日々をミリーは1年過ごしだんだんと自分の店を持ちたいと思うようになった。
その事を商人に相談すると喜んで協力する、と言った。
元々そのつもりだったし、ミリーは商人として成功するだろう、と確信を持っていた。
ミリーは店を持つなら母国でやりたい、と思っていた。
そして貴族よりも庶民を相手にした店をやりたい、とも思っていた。
貴族社会に戻るつもりはこれっぽっちも無いし貴族よりも庶民の方が数が多い。
庶民を相手にした方が商売になると感じたからだ。
そしてコツコツと貯めたお金で王都にある小さな店舗を買った。
扱う商品は主に女性をターゲットにした小物や化粧品等である。
なるべく庶民でも手が出せる値段に設定して家計に負担をかけない様にした。
こうしてミリーの店は王都にひっそりと開店する事になった。