崖の下
以前に、崖の下というものを眺めた記憶がある。
山を越えていかなきゃいけない施設が有り、バスのタイミングが悪かったがゆえ、歩いて越えようとした。その道中、片側が崖となっている区間を見たのだ。
当然、といえるかはわからないが、ガードレールはある。それでも、全てがギチギチに塞がれてるなんてことは無くて、切り立ったところに近寄ることは、容易なことであった。
時間に余裕があったからだろうか、危なくない範囲で近付いてみる。所謂、雑木林であって、それなりに間伐はされてるだろうけど、木が生い茂っていると呼ぶことも出来た。
人通りも多くない山越えの道路、そのすぐそばにあるのは、少しの恐怖心を煽る崖なのだ。
そうやって眺めてみれば、ぶわっという恐怖心、離れた方が良いという本能が背中を駆ける。一歩間違えれば足を滑らせてしまう、それが本意じゃないというのが、自分で理解できたのだろう。
正直その頃は、自分が精神的に深く、落ち込んでいた頃だとは思う。それでも、まだ生きていたいという感情は、強く抱いていたのだろう。
生と死の境目になりかねない場所を、偶然にも見てしまったような記憶は、ほんの1年前のことであった。帰りは当然ながら、バスを利用していたのだ。




