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第6話 転機

 確かにそうだ。


 私はこれから何をするべきなんだろう・・・


 この国にはパパもママもいない。

 ずっと倒そうと思っていた魔王も、正直言って強すぎる。今の私では勝てない。


 なによりキモい。近寄りたくない。


 でも・・・。




【どうするアイちゃん。

とりあえずタイチ国王とその側近達は僕がなんとかしておくよ?

もちろん殺さずにね。

アイちゃんがこの国に残りたいのなら、僕たちも止めはしないけど】


【そうね・・・ここは私が育った町だし・・・】




 でも、ここに残って何が出来るの?


 また魔王を倒すために訓練を積むの?

 いや、魔王軍が悪い事をしてるならまだしも、全部国王の仕業だったし・・・。


 じゃあ、えっと・・・。



 だめだ、これから何をすればいいのか、全く何も浮かばない。



 いや、違う。

 一つだけ引っかかる事はあった。


 


【ねぇ魔王】


【・・・!?

アア・・・アイちゃんが僕を呼んでくれた!?

声帯を僕のために使ってくれた!?】


【黙れ死ね。

あのさ、私みたいな子供って、他の国にもいるのかな?】


【ん?急だね・・・?

うーん、一つ確かなのは、最近子供の勇者が極端に増えたって事かな】


【そうなの?なんで?】


【それは僕にもハッキリとは分からないかな。

でも・・・】




 魔王は珍しく真剣な表情を浮かべた後に、何か言いにくい事を絞り出すかのようにゆっくりと口を開いた。




【イヤな噂は聞くようになった。

生まれてくる子供に呪いをかけた者がいると。

そしてその呪いが子供達に強大な魔力を与えてしまっているのではないかってね。

正直それが人間なのか、魔物なのかすらも分からない。

なんなら実在するのかどうかも分からない】


【でも、もし本当にいるとしたら・・・】


【ソイツのせいで、ツラい思いをする子供が増えているって事になるね。

もう隠してもしょうがないから言っちゃうけど、僕はソイツを探し出す旅に出ようと思ってたんだよ】


【見つけてどうするの・・・?】


【どうするだろうねぇ・・・。

アイちゃんや他の子供達をこんな目に合わせたヤツだったら、殺しちゃうかもしれないなぁ。

僕、いくら小さい子が好きって言っても、傷つけるような事は絶対しないし。

あ、違・・・、”小さいモノが好き”ね?ここ大事だから】


【もうどっちでもいいわよ・・・。

でも・・・そうよね・・・】




 なんなの、この心の中のモヤモヤは。


 何か分からないけど、”一歩を踏み出せ!”って心が叫んでる気がする。



 踏み出すって、どこに?



 私は溢れそうな涙をこらえながら、魔王の顔を見た。




【私は・・・強くなりたいのよ・・・!

それで強くなって、私みたいな子供を助けたい・・・!!】


【うん】


【だから・・・だから・・・】




 こんなヤツに言いたくない。


 こんな女の敵みたいなヤツに、言いたくないんだけど・・・。






 でも子供を傷つけないって言った時の目に、私は温かさを感じてしまったんだ。






【私も・・・私も連れて行って!!!】




 言った。言ってしまった。


 いや、正直もう後悔し始めている。

 1秒経たずに後悔し始めている。


 でも、強くなって世界の子供を救うには、きっとコイツについて行くのが今は正しい気がしてしまったんだ。

 



【あ・・・あ・・・あぁ・・・。

アイちゃんが・・・アイちゃんが・・・】


【いやなんでアンタの方が先に泣いてるんだよ!!

キモい!!死んで詫びなさい!!】


【いや、だってぇ!!!

ショヒーに今のアイちゃんの告白、録画してて貰えばよかったぁぁああ!!!

4Kで!絶対に4Kで!!

ちょっと時空回帰魔法使って時間戻していい?】


【告白!?!?ふざけんじゃないわよロリコンクソ魔王!!

てか使う魔法がいちいち禁止級ばっかりなの、普通に怖いからやめろ!!】




 はぁ・・・。


 なんか、ツラいのかムカつくのか、楽しいのか、分からなくなってきたわ。



 でもパパとママ、聞こえますか?


 私、もう少しだけ頑張ってもいいかな。



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