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【進め!異世界!!戦車人間(タンクマン)!!】~元ドイツ陸軍戦車兵の転生先はひよっ子ビーストテイマーの使役獣?~  作者: 稲村某(@inamurabow)
第三章・ハンスと仲間達

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②特異な迷宮



 ハンス達が迷宮【人喰い(マンイーター)】に足を踏み入れる前日。


 夕食後にテーブルを挟みながら、珍しくハンスとチェモリが話し合っていた。事の発端はハンスが中央都市内にどんな実力者が居るのか、と尋ねたからである。


 「……【剣聖】だって?」

 「そう! この中央都市に【剣聖】を知らない自由民なんて居ないわよー!!」

 「……【剣聖】……か」


 チェモリが鼻息を荒くしながらそう(まく)し立てると、ハンスは初めて聞く【剣聖】という呼び名を繰り返した。



 中央都市には当然だが、城と国内の治安そして国防を担う近衛兵団が存在する。しかし、過去には一風変わった特殊な方法で、諸国家間で発生する問題を解決していた時期が有る。その方法とは、国と国の間で発生する様々な交渉事を解決する為、代表者を各一名づつ募って決闘させ、その勝敗の結果で決着を付ける【代理戦争】を行っていたのだ。


 そんな方法で上手くいくものか、と誰しも思うだろう。だが、つい最近まで実際に行われていたのである……しかも、中央都市の圧勝続きで。



 「……なるほどなぁ。その【剣聖】ってのが、さる国を追放されてここに辿り着いた自由民で、彼の奥さんも凄腕の剣の使い手って事なんですね」

 「そーそー! しかも美男美女の組み合わせだっていうじゃない? もー、ホント罪作りな事よねー!!」


 チェモリはまるで恋する乙女(見た目だけはその通りなのだが)のような仕草で手を合わせながら、うっとりと天井を仰ぎ見る。


 「……で、そんなに強い【剣聖】様は、今ここで何をしているんだ?」


 そう尋ねるハンスに、チェモリは秘密でも何でも無いんだけれどさー、と前置きしてからサラリと答えた。



 「……国のど真ん中に有る地下迷宮の【人喰い(マンイーター)】で、()()()として働いてるそーよ」


 「……何だいそりゃ、迷宮ってのは……あ」


 そこまで口に出したハンスは、ケーズの町で出会ったマディーネの言葉を思い出したのである。


 (……【人喰い(マンイーター)】の迷宮には近付かない方が、身の為よ……)


 「どーしたの、ハンスさん?」

 「……いや、何でもない。気にしないでくれ」


 唐突に話を切り上げたハンスに怪訝な顔のチェモリだったが、彼の思考はマディーネの言葉を繰り返していた。


 (……俺を呼び込んだ奴は、その迷宮に何の価値を見出だしたんだ?)


 結論が出せないまま、ハンスは頭を振ってから立ち上がると、【人喰い(マンイーター)】に潜る準備をする為に自分の部屋へ戻っていった。




 敢えて言うならば、幾多もの【迷宮】の中でも、そこは異質そのものだった。


 人々が暮らす城下町の真ん中に不釣り合いな円形の空間が広がり、そこに在る事が当然のように洞窟の入り口が開いているのである。


 過去に一度だけ。この中から【迷宮の主(ダンジョンマスター)】が地上へと姿を現し、破壊と殺戮の限りを尽くしたかと思うと、再び何事も無かったかのように還って行った。その際、城の魔導士が総動員されて有らん限りの攻撃を繰り広げたのだが、その全てを軽く受け流し、傷一つ負う事はなかった。その時の集団詠唱魔導で発生した超高温度の火球は、迷宮の周辺を巨大な半円球状に抉り取ったように大地を融かして爪痕を残している。


 こうして突如現れた【人喰い(マンイーター)】に依り、荒れ野が広がる大陸中央盆地を迂回する人々が、長旅の途中に立ち寄るだけの(ひな)びた町を一気に変貌させた。周辺国家が(こぞ)って軍隊を寄越し、迷宮から魔物が漏れ出ぬように防備を固めさせた。それは一見すると献身的な行為だが、実際は自分達の国に影響が及ばぬよう蓋をしただけだ。


 しかし、皮肉にもそれが町を城塞都市にまで発展させ、更に迷宮で討伐された魔物から貴重な【オリハルコン】や【ヒヒイロカネ】を精錬する(何時誰がもたらしたのかは不明)技術が莫大な富を生み出すようになった時、中央都市は隣接する国家と対等以上の交渉力を持つ、大陸屈指の独立国になったのである。




 「……それが、この広場だって訳か。確かに窪地の真ん中に入り口があるな」


 ハンスはそう言いながら足元を確かめると、一見黒曜石を削り出したような艶と滑らかさを持つ舗装面に見えたが、それは土や石が高熱に(さら)されてガラス状に固まった跡であった。そしてその場所をぐるりと囲むように、四角く削られた石板が巡らされている。


 「これは……人名?」

 「そうらしいですね……たぶん、ダンジョンマスターと戦って命を落とした人々の、鎮魂碑だと思います」


 横に並んだエレナの説明を聞きながら、指先で刻まれた銘をなぞりつつハンスは思う。犠牲になった人々は何を守る為に命を(なげう)ったのだろう、と。国の為か、家族の為か、または金や名誉の為か。いずれにしても、彼等の命は失われて迷宮だけが残ったのだ。果たして、それだけの価値が迷宮にあったのだろうか?


 「おいクラウツ、また難しい事考えてるんだろ?」


 イワノフに話し掛けられて、ハンスは大金槌を担ぎ直しながら今は忘れる事にした。



 「はい、七人です。いえ、私とハンスさん、それにイワノフ君は初めてです」


 エレナが迷宮の入り口に併設された管理所の窓口に立ち、係の兵士に向かって許可証を申請する。他の四人は過去に降りた事が有るそうで、三人を残して迷宮の入り口で待っている。


 「ここで遭遇する魔物の中には、体内に稀少な金属を蓄えた連中が多く居る。そいつらは外皮も硬く、そう容易く倒せるような相手じゃないから油断しないようにな」

 「はい、判りました!」


 迷宮探索の許可証を三人分受け取りながら、エレナがハンス達の元に戻ると、先行していた四人と合流し迷宮へ一歩、踏み入れた。






  

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