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5話

間が空いてしまい申し訳ございません。

 先ず大前提に、この2人は実は初対面ではない。しっかりと顔を合わせていないが一度白鳳の父が経営するラーメン屋で少し顔を合わせているのだ。


 しかし、双葉は白鳳が中等部生徒であるためあまり面識は無し。白鳳に至っては双葉がコスプレをしている、高等部の先生の顔など把握していないから……奇跡的に互いが誰か分かっていない事になっている。


 しかしだ!!事態は双葉にとって今まで想像にしなかった程ピンチになっているのは事実。

 額から冷や汗が流れ、咄嗟に白鳳(はお)から離れ焦りで身体が震えてしまう。


(ま、不味いわ。ど、どうしよう)


 万が一でもバレてしまえば、下手すれば教師人生どころか人として何か終わってしまう気がする。だって、学校の中でコスプレをしている事がバレてしまうからだ。

 バレないように気を使っていた、でもまさか生徒に出会すなんて、双葉は思いも寄らなかった。焦りで思考がままらない中、取り敢えず髪を弄り誤魔化しつつ場を取り繕うも……それで状況が変わるはずがない。


 双葉は本当に焦った、だが……彼女は大人であり教師。知恵は通常の1.5倍ほどあると自負している。故に無理矢理に思考する!!


(落ち着くのよ双葉、良く見て見なさい。この生徒は……恐らく見たことが無い生徒だから中等部である可能性が高い。だから、なんとでもなる筈よ)


 その結果、双葉が導き出した答えは……ッッ。


「可愛いガール、貴女は誰だ?」

「ふぇ、ぇ……ぁ、えと。ワタクシは輝竜院(きりゅういん) 白鳳(はお)ですわ」

「私はクロゥズ・キャット。いわば夜に潜む1匹の虎だ」

「…………え?」


 コスプレしているキャラになりきる事!! 双葉は考えついたのだ。いっその事キャラになり切ってしまえば、この場を乗り切れるのでは? と。

 正直に言おう、双葉は至極焦っている上にテンパっている。 でなければこんな妙ちきりんな策など考えつかない!!

 当然、急にキザったらしい口調かつ変な名前で言う変な人を見た白鳳は……当然硬直、その後少し考える。


(これ、大声出して助けを読んだ方が宜しいのではなくて? この方、明らかに不審者じゃありませんこと?)


 それは至極当たり前の考えであった。この間この思考に至った時間は僅か3秒。その僅かな沈黙が双葉を更に焦らせる!!


「今は訳あって、この学園に潜入しているんだ。だからよ可愛いガール、アンタには私の事は見なかった事として扱って欲しい訳だ」

「へ、ぁ、はぁ……」

「つまり、夢でも見てた事にしろって事だな。分かるか?」


 喋る喋る、遠回しの"お願いだから忘れてください"と言う言葉。

 口調、声音こそ真剣さが滲み出てはいるが……双葉の顔つきは焦りが現れ白鳳からすると。


(この方、クール振っているように見えて物凄く焦っていますわね)


 当然の様に焦ってる事がバレてしまう。それを知らぬ双葉は、顔から沢山の汗をながし……。ついに心の声が吐露してしまう。


「う、くぅ。もうやだぁ。恥ずかしすぎるぅ」


 自ら演じると決めたキャラに早くも羞恥心を感じてしまった。そりゃそうだ、いい歳した大人がこんな醜態をさらしているのだから。

 と言うか、このボヤきは……しっかり白鳳の耳にも聞こえていた。


(何者ですのこと方、怪しすぎますわ。って、あら? なんでしょう、この怪しいお方、どこかで面識があるような……)


 この瞬間、白鳳は記憶の中から目の前にいる怪しい人を知っている記憶の中から照らし合わせ始めた。

 テンパりが止まらない双葉、何とかしないと何とかしないと、と思った時……。


「……ッッ!? あぁぁぁぁ、貴女はァァ!!」

「え、ふぇぇっ。なっ、なんですかイキナリ。急に大声出さないで下さい」


 接客業を手伝っている白鳳は、必然的にお客の顔を覚える力が養っていた。故にコスプレをしている双葉だが、僅かに残る人の特徴を見て悟ったのだ。


「貴女、昨日ワタクシの父上が経営するラーメン屋に来てませんこと?」


 そう、正しく白鳳が言ったように。昨日、ラーメン屋に来ていた事を。この瞬間で思い出したのだ。


「あ゛ッッ。ぇ、ぁ」

「間違いないですわっ、ワタクシの記憶がそう語ってますもの!!」


 双葉にとって悟って欲しくない事を悟られ何も言えなくなってしまった。そんな双葉に対し、白鳳はズイっと近寄り。


「そんな貴女がどうしてこの学園にいますの? 不審者なら。ワタクシ輝竜院 白鳳、直々に先生に報告させて頂きますわ」

「う、ぁ゛ッッ。そ、それだけは勘弁してぇ。お願いよ!!」


 ビシッと親指を突き立て、凛々しい立ち振る舞いをみせて言い放った。その後、双葉は流れる様に美しくキレイな土下座をしてみせた。

 もう隠しきれないし、誤魔化しきれない。だから素直に認めた。


「私、ここの教師なの!! こんな格好してるけれど、ほんとに教師なのよっ」

「…………ヘ? きょ、教師?」


 若干泣きながら、語った。大人が見せる土下座をみて白鳳は……動揺した。もちろん、信じられない、信じられないが……。

 見ていてコッチが申し訳なくなる程の真剣な土下座、これを見て嘘をついている様には思えなかった。


「……あ、えと。その、く……詳しく説明して下さるかしら?」


 取り敢えず話を聞くことにした。

 こうして結局コスプレをしてた事がバレてしまった双葉。

 隠していた趣味がバレ、精神的に大きな動揺が生まれてしまう。しかし、双葉は知らない……この出来事こそ、自分の悩みに対する理解者が現れたという事に。


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