表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスト・ゲーム(仮)  作者: 美坂結蘭
3/3

ビル



最初に取り掛かったのはやはりビル内だ。2階を隅々まで見て周り、特に何もなく、ギィ、と音をたてて1階から2階と全く同じ造りの階段をのぼった。

先頭から陽菜妃、舞那、ありす、歌鈴という順だ。なんだかんだ言いつつ陽菜妃と舞那は仲良くやっているらしく、言い合いながらも喧嘩はしない。それも今のところ、かも知れないが。


「3階」


先頭の陽菜妃がぼそ、と呟き、歌鈴は顔をあげた。

4人が横並びになり3階を見渡す。

壁や床は薄汚れ、椅子や机などが散乱している。ほんの8畳くらいの空間があった。もし先ほどの2階とこの3階が入れ替わっていても気づかない自信がある。それほど同じ状況だった。


「何もありませんね」

「そうだね……あ、でもまだ上があるよ」

「かと言って何もない気がするけど」

「行ってみないと分からない。たぶん、4階が最上階」


ありす、歌鈴、舞那、陽菜妃と言葉を掛け合った。

4人で会話が回ったのは初めてだと気づき、歌鈴は嬉しくなった。

陽菜妃、舞那、ありす、歌鈴とさっきと変わらぬ順番で4階への階段を上がっていく。ギィ、と音が立つのは変わらず、ジャンプでもしたら穴が空いてしまいそうだ。


「変わんない」


先頭を歩く陽菜妃が呟いた。歌鈴は3人の背の向こうを見たが、薄汚れた壁が見えるだけだった。

陽菜妃が4階フロアに足を踏み入れ、左側の壁、右側に広がる空間を見渡した。

──と。


「……」

「うっわ、何あれ!?」

「ふぁあ……」

「え?」


不可解な表情で右側を見つめる陽菜妃、驚きを見せる舞那、声にならない声を出すありす、素っ頓狂な声をあげる歌鈴。各々が反応を示した。

それは、あまりにも不自然だった。何処も彼処もボロボロで薄汚れていたビルに、こんなものがあるのだろうか。だが、実際に目の前にあるのだ。

そうだ。ゲームで見たことがある、と歌鈴は思い出した。歌鈴がプレイしているテレビゲームでこんなものが出てきた。

形の整った葉、太くしっかりとした幹、そのひとつひとつが鮮やかな輝きを放っていた。

しばらく見つめ、少しずつ木に向かっていった。


『葉を取ってください』


木に括り付けられた小さな紙を見つけた。

振り返って仲間に伝える。


「ねえ、これ……葉を取ってって」


歌鈴の言葉を聞いて3人が木に近寄り、その紙を確認した。


「なんか怖いです……」

「せーのでやってみようか」

「それがいいと思う」


3人がそれぞれ葉を手にしたことを確認して、歌鈴が合図を出した。


「じゃあ行くよ、せーのっ!」


歌鈴が取った葉を見ると、小さいが何やら文字が書かれている。書かれている、というより映されている、というべきか。葉が放つ淡い光よりもしっかりとした光が文字を作り出していた。


「『5秒見つめてください』……?」


歌鈴がそれを読むより先に舞那が口にした。

4人みんな、同じ文字が映されているようだ。

目を合わせ、4人を代表して陽菜妃がカウントする。


「1、2、3、4、5」


5秒から少しして、葉に映し出された文字が変わり、葉の色がじわじわと変わった。

歌鈴は黄色、ありすは碧色、舞那は黒色、陽菜妃は白色。裏返してみると小さく『a』と書かれていた。

そして。


「ねぇ、さっきまでこんなの無かったよね?」


舞那が指さした先の変化。

朽ちたテーブルの上に、綺麗な便箋が落ちていた。置かれていた、ではなく落ちていた。歌鈴がそう感じたのは、無いものがあるだなんておかしいと思っていたからだろうか。

舞那が拾い上げた便箋は薄い桃色で、規則的な小さな模様が描かれていた。至って普通の便箋だ。


「開けてみて」

「うん」


陽菜妃に言われ、舞那が便箋を開く。糊などはなかったらしく、スムーズに中の紙が取り出された。


「舞那、読んで」

「……全部?多くない?」

「全部」

「はぁい」


陽菜妃の圧に負けたのか、渋々と言ったように舞那が手紙を読み上げた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ