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質問箱で出会った女性と僕の話

作者: さこんじ

自分が実際に体験した話です。

ホラーではありません。笑


僕は芸事をやらせている身分なのですが、

それがきっかけで出会ったある人とのお話です。

夢を追ってる方、夢を追ってる人を支えている方。

全ての方に読んで頂きたいです。

報われる日は必ずきます。

"自分が創ったもので誰かの人生に影響を与える"

芸事に手を出して3年弱。これが僕の夢。

漫才、コント、ラジオ、動画、生配信、ゲーム実況…

芸歴2年とは思えないくらい色んな事に手を出してきた。正直手応えはどれも無し。

中途半端なハングリー精神を持ったゆとり世代ど真ん中の僕はのんびりパソコンをカタカタして過ごしてる。


これから書く出来事は、“僕のハングリー精神を取り戻してくれた人”と“僕”の話。




-2018年 初夏-


月1回行われる事務所ライブのネタ見せ。今ではぱったり出演してないが、1年目の頃はそこそこ出演していた。そしてよく落ちるようになったのが確かこの頃。

お客さんの前に出る事も減り、何か発信する場所を作らないと!と思い始めたのが「SHOW ROOM」と「質問箱」。


SHOW ROOMはいわゆるライブ配信アプリ。

今でも不定期で配信をしている。


質問箱とは、名前の通りツイッター上で質問を募集出来るアプリ。質問者側は匿名で誰でも質問可能なのだ。

その為「好きな食べ物は?」等から本格的な恋愛相談等いろいろなタイプの質問が来る。もちろんSNSなので罵詈雑言が来る事も無くもない。

基本的に僕は全ての質問に回答していた。軽い質問にはザッと。重い質問には比較的しっかり。


質問箱は意外にも定期的に質問が寄せられて、回答するのが日常になりつつあったそんな時

一つの質問が届いた。


「私みたいな人間生きてても仕方ない。生きるのが疲れました。」


たしかこんな感じの文章だった。

最初は“この重い質問に僕がどう答えるか”と誰かがいたずらで送って来たのかと思ったが、

言葉というのは不思議なものでスマホ上のただの文章でも質問者の熱が伝わってきた。


「この人は本当に悩んでる。何か答えてあげないと」とすぐに答えが出た。


その時の僕の答えは「疲れてるなら逃げちゃえばいい!自分が変わらなくていい、周りの環境を変えてから変えてこー!」


みたいな文章だったはず。無責任な22歳の若造が今までの自分を振り返って、無責任なりに出した回答だった。




ー次の日ー


この日は特に何かしていた記憶は無い。

たぶん昼間にバイトして帰ってきたらSHOW ROOMをやる。みたいな日だったはず。この時期はほぼ毎日そうだった。

いつもの様にパソコンを立ち上げ、SHOW ROOMの配信の設定をしているとスマホが鳴った。


Twitterの通知だった。しかもダイレクトメッセージ(DM)。開いてみると一切面識の無いアカウント。

知らない人からのDM。怖さと少しの好奇心が入り乱れながら目を通す。


「突然すみません。昨日、質問箱で質問した者です。貴方が色んな質問に答えていたので私も送ってしまいました。

ありがとう。貴方のお陰で少し気持ちが軽くなりました。」


驚いた。僕の回答への感謝と彼女の想いが丁寧に長文で書かれていた。

僕はてっきりフォロワーの人が送っているもんだと思っていた。

「継続は力なり」とは言い過ぎかも知れないが、毎日質問に答えていたお陰で自分と全く面識の無い彼女をほんの少し勇気付ける事が出来たのだ。

ネタ見せに落ち続けていた僕の中の少しもやもやしていた“自分の存在意義”がほんの少しだけ見えた様な気もした。




ー2019年 1月ー


特別な変化も無く、オーディションも2ヶ月に一回あるかないか。ライブにもぱったり。

質問箱は数は減ったが偶に質問が寄せられていた。

変化があったとすればYouTubeを始めた事だ。

また新たな物に手を出した。

今思えば“自分の存在意義”を見つける為にがむしゃらになってた気がする。


YouTubeは自分で企画・編集をし、好きな事を好きなように表現できる。ネタがパッとしない今の僕にはこれしかないとすら思った。

僕は同期を誘って週3本ほどのペースで動画を投稿していた。




いつものようにYouTubeの編集をしていたある時、ツイッターのDMが届いた。






あの“彼女”からだった。


あの質問以来、彼女から質問もDMも一切無く。僕の中では自分を鼓舞する一つの思い出になっていた。

そんな彼女がまた連絡をくれた。僕を頼りにしてくれようとしている。力になりたい。

僕は“あの時”と同じようにDMを開いた。




「初めまして。このアカウントを使っていた母ですが先日、息を引き取りました。」




正直何が何だか分からなかった。

というか分かりたくなかったのかも知れない。

気持ちが追いつかないまま続きを読んだ。


「生前、母は福田さんの話を良くしていました。病院では他の患者さんにもYouTubeを見せて笑っていました。」


冷静にはなれなかった。

彼女が息を引き取った。入院していた。闘病生活をしていた。その中で“僕の創ったもの”を励みしてくれていた。

僕は何とか感情を落ち着かせようと一つ一つゆっくりしっかり、受け止めた。


「初めて福田さんを見たのはまだ松竹の養成所に通っていた頃だそうです。

フラッと角座のチケットを買い一人で見に行ってから応援していたそうです。」




彼女は一切面識のない“ただの質問者”だったはずだ。

追いつけない。元から僕を知ってくれていた。養成所生の頃から応援してくれていた。

僕はそこまでの文章を何回も読み返した。

“彼女の娘”からのDMはこう続いていた。


「福田さんのお陰で、生き甲斐もあり笑顔が絶えない日々を過ごせた母の代わりにお礼を言わせてください。

そしてこれからも頑張ってお笑いを続けてください。」


呼吸が乱れていた。

テーブルにあったジュースを一気に喉に流し込む。

そして何度も何度も読み返し、整理する。


彼女は養成所に通っていた僕をたまたま見つけてくれた。応援してくれていた。

そして何年か経ったある日、

“僕の創ったもの”を励みの一つに闘っていた彼女は僕の質問箱に想いをぶつけてくれた。

その数ヶ月後、彼女は旅立った。




とても現実に起こりうる出来事とは思えなかった。

ただ事実として僕の知らない間に一人の女性を少しではあるが救っていた。


僕の中のもやもやがどんどん晴れていく。

彼女が自分の“存在意義”の答えを教えてくれた。

彼女への感謝の気持ちでいっぱいになる。


ありがとう。

見つけてくれてありがとう。

応援してくれてありがとう。

あの日、質問をしてくれてありがとう。

頼りにしてくれありがとう。


僕の存在意義を教えてくれてありがとう。


僕は“彼女の娘”に全てを送った。


連絡をくれた事への感謝。

僕を知ってくれていたという驚き。

直接言葉を交わす事が出来なかった後悔。

動画を出していてよかった喜び。

そして彼女への感謝。


どんな形になるかわからない。

芸事で成功できるかわからない。

YouTubeが成功できるかわからない。

ただ、僕は絶対にやめない。


“創ったもの”を発信し続ける事を。


“自分”と“自分の存在意義を教えてくれた彼女”の為に。

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