第9話、また街の騒ぎ!一体今度は何が…
私はみぃちゃんに連れられ、街の中央へと来ました。
昨日と同じくらい人だかりが出来ていました。
その中にニーナちゃんと緩菜ちゃんがいます。
「どうしたの?すごい騒ぎみたいだけど」
「あら鈴、来たのね、なんかとんでもないことになってるみたいよ、詳しくはこの猫に聞いてちょうだい」
「どうやら違う街の兵隊が来たらしいんだにゃ、それでそいつらが勝手に今からここを自分達の領土にするとか言い出したんだにゃ」
「なんでそんなことするの?資源ならいくらでもあるんじゃ……」
「理由まではわからないにゃ、ただ王の命令だとしか言わないんだにゃ」
「そんなのこの街の兵隊さんが追い返しちゃえばいいんじゃないの?」
「この街、兵隊さんがいないんだにゃ、妖怪も盗賊も襲ってこないから守る人達がいらないだにゃ」
「いや今大変なことになってるじゃない!過去にこんなこと無かったの!?」
「こんなこと初めてにゃ、普通はどこの街でも他の街を占領しようなんて考えないにゃ」
違う街の兵隊さん達は5人います。重そうな鎧を着て、大きな槍を持っています。
こんな素敵な街を自分だけのものにしようなんて、なんて欲張りな王様なんでしょう。
すると緩菜ちゃんがニーナちゃんにこんな質問をしました。
「ねぇ、あの兵隊達はどこの人達かわかる?」
「多分だけど『キリンヤガの城』の人間っぽいにゃ」
「キリンヤガの城、この街から東にある所ね、この街から近いの?」
「この街から1番近い街にゃ、だからここに来たのかもしれないにゃ」
「おいそこ!何をベラベラと喋っている!なにか文句があるのか?」
兵隊さんの1人がこちらに気づいたらしく、槍をこちらに向けてきました。
「うわわ!なんでもありまs……」
緩菜ちゃんは私の口を手で塞いで私の言葉を静止させました。
「あったりまえよ、急に街を占領するなんて言われて納得するやついるかしら?」
「何?お前達、私達に歯向かうのか?この誇り高きキリンヤガの騎士に」
「悪いけど騎士なんかに怯えるような人間じゃないの、この街の人間がなんでもホイホイ言うことを聞くと思ったら大間違いよ」
緩菜ちゃんは魔法書を取り出しました。
(緩菜ちゃん…!?嘘でしょ、戦うつもり!?)
「鈴、戦闘の準備」
「ちょ、ちょっと待って!謝って許してもらおうよ!あの人達すごく強そうだよ?1人じゃ無理だよ!」
「ふふふ♪誰が1人なんて言ったのかしら?ねぇ、猫ちゃん?」
「もちろんにゃ、あんな人間達なんかに街を渡すわけには行かないにゃ!」
「ニーナちゃんまで……」
「鈴にゃ〜、にゃ〜は言ったはずにゃ、時には戦うことも必要だって、今がその時にゃ〜」
「でも、私戦えないし…どうしよう…」
「安心するにゃ、にゃ〜達が守ってあげるにゃ、もちろんみぃにゃ〜も戦ってくれるにゃ?」
「うん!役に立てるかどうか分からないけど頑張る!」
みぃちゃんも準備が出来てるみたいです。
兵隊さん達も槍を構え始めました。
「ふっ、どうやら死にたいようだな、いいだろう私達の恐ろしさ、見せてやろう」
「街の人達〜、そこにいていいの?もしかしたら巻き込まれちゃうかもよ〜?」
緩菜ちゃんの言葉で街の人達はその場から逃げたしました。
そして、兵隊さんの1人が私達に向かって突進してきました。
「ふふ♪その鎧でどこまで守れるかしらね?『ファイヤーショット』!」
緩菜ちゃんはそう言うと炎の玉を人差し指の先から飛ばしました。すると突進してきた兵隊さんに命中しました。
「ぐああああ!」
そして、1人の兵隊さんは倒れてしまいました。
どうやら死んではいないようです。
「あらら?もう終わり?こんな下級魔法にやられるなんて、誇り高き騎士な〜んて言ってる割には大したことないのね♪」
「くそ!怯むな!一斉に突撃しろ!」
残りの4人の兵隊さん達は一斉に突進して来ました。
しかし、ニーナちゃんが尻尾を伸ばし、3人の兵隊さんをぐるぐる巻きにして動けなくしました。
「うわ!なんだこれ!?」
「動けない!」
「何だこの猫は!?」
「ただ突進してくるだけの攻撃なんて捕まえてくださいって言ってるようなものにゃ」
しかし、1人だけ残っていた兵隊さんがニーナちゃんに近づいていました。そして槍をニーナちゃんに突き刺そうとしています。
「死ねぇ!」
「にゃっ!?」
「ニーナちゃん危ない!『硬化の弦』!」
私と同じ後ろの位置にいるみぃちゃんは三味線を弾きました。
兵隊さんはニーナちゃんに槍を思いっきり突き刺しました。しかし、槍の先端はニーナちゃんに全く刺ささらず兵隊さんは弾き返されました。
「ぐわっ!?なんだこいつは、槍が効かない!?」
「良かった〜、私の三味線には不思議な力があるの」
「ナイス和服の猫ちゃん、それじゃ、一気に終わらせるわよ!」
緩菜ちゃんは指を軽く動かし、ニーナちゃんと緩菜ちゃんの位置を入れ替えました。
緩菜ちゃんの家で見た場所交換魔法です。
そして素早く新しい魔法書を取り出し、腕を振りおろしながら思いっきり叫びました。
「『ホーリースコール』!」
すると光の玉が宙に浮きそこから光の雨のようなものが降り兵隊さん達を直撃しました。
そして、兵隊さん達は悲鳴と共に全員倒れました。
すごい、みんな自分の能力で敵を倒しちゃった。
でも私は……。
「ふぅ、なんとか片付いたわね、よし、ちょっとこいつらの後始末してくるわね」
緩菜ちゃんはそう言うと倒れた兵隊さんの方に向かっていきました。
「よかったにゃ〜みぃにゃ〜の力がなかったら今頃串刺しになってる所だったにゃ〜」
「大丈夫?怪我はない?」
「なんとか大丈夫みたいにゃ〜、みぃにゃ〜すごいにゃ!今のなんにゃ?」
「『硬化の弦』を聴くと体が石みたいに硬くなるの」
「それで槍が刺さんなかったんだにゃ〜、助かったにゃ」
「鈴ちゃんも怪我はない?」
「うん、すごいねみぃちゃん、そんなことできるなんて」
「この三味線は人に向けて弾くとその人に色々な効果を与えることができる特別な三味線なの、役に立ててよかった」
「いいなぁ…私、能力もなくて、みんなに守られてばっかり、情けないよね」
「そんなことないよ、鈴ちゃんもきっといい能力が見つかるよ、一緒にがんばろ?」
「うん!」
みぃちゃんの言葉に私は少し勇気を貰うことができました。
そして緩菜ちゃんが用が終わったらしくこっちに来ました。
「よし、あいつらは全員テレポートで街の外に飛ばしておいたわ、これでしばらくこの街を襲おうだなんて思わないでしょ」
「それにしてもあいつらはなんで急にこの街を占領するなんて言い出したんだにゃ〜?」
「さ〜ね、私はこの世界に最近来たばっかりだからその辺の事情は知らないわ」
「うーん、また襲ってくるかもしれないにゃ…」
「ま、その時はまた追い返せばいいのよ、それよりこの後どうするの?私は家に帰るけど」
「にゃ〜達も自分の家に帰るにゃ、鈴にゃ〜とみぃにゃ〜もそれでいいにゃ?」
私達は頷きました。
「あらそう、それじゃ鈴、この猫ちゃんに頼りっぱなしじゃ駄目よ、ちゃんと自分で強く生きるのよ」
「うん、わかった!」
「あと、猫ちゃん達……って言い方はもうやめようかしら、ニーナと実、鈴はまだ弱いけど強くなるまではあなた達が守ってあげてね」
「うん!」「もちろんにゃ〜♪」
「それじゃあね♪」
緩菜ちゃんはテレポートで帰っていきました。
私達も後ろに振り向き家に帰るために歩きだしましたその時です。
私の視界が急に暗くなり、何もみえなくなってしまいました。
さっきの街並みも、街の道も、ニーナちゃんもみぃちゃんも全て見えません。ただ暗闇だけが私の視界を埋めつくしています。
(えっ……何これ!?なんにも見えない!暗い……みぃちゃん!ニーナちゃん!どこにいるの!?)
声を出そうと思いましたが声が出ません。
(どうして……怖いよ……ここはどこ……?)
暗闇の恐怖を感じながら、私の意識はだんだん薄れていくのでした…………。
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私、早乙女 緩菜は先程の戦いで疲れ、ソファーでぐったりしている。
(はぁ……疲れた……調子に乗って『ホーリースコール』なんて撃つんじゃなかったわ、魔力ごっそり持ってかれたわよ……)
私の魔法は魔法書によるものである。
中でも光の雨で攻撃する『ホーリースコール』は
強力な魔法なのだがその分消費する魔力は大きく非常に疲れるのだ。
魔法使いの言う魔力は普通の人間で言う体力のようなものであり、魔法を使うとそれだけ体力が持ってかれるのだ。
(お茶でも入れよっと)
私はよいしょと立ち上がり台所に行った。
そして紅茶の茶葉を探していた時のことである。
玄関のドアが物凄い勢いでドンドンと鳴るのだ。
(うるさいわねぇ…一体誰かしら?)
玄関に行きドアを開けるとそこには3尾の猫又、ニーナと和服の猫又、実が慌てた様子で立っていた。
「あら、さっき帰ったんじゃなかったの?」
「大変なんだにゃ!一大事にゃ!とんでもないことが起きたんだにゃ!」
「わかったから落ち着きなさい、何があったのか説明して?」
私は2人を部屋に招き、話を聞くことにした。
「え?鈴が消えた?」
「そうだにゃ!緩菜にゃ〜が帰ったあとにゃ〜達が帰ろうとしたら、鈴にゃ〜が目の前で消えちゃったんだにゃ!」
「私は何もしてないわよ?魔力も尽きちゃったし」
「緩菜にゃ〜を疑うつもりはないにゃ、でも急に姿が消えるなんてありえないにゃ、緩菜にゃ〜なら何か知ってるかもしれないと思って…」
「確かに、基本はテレポート魔法とかなら一瞬でどこかへ飛ばすことはできるわ、鈴が消えた時に何か見えなかった?」
ニーナは少し考えた後、黒いモヤモヤしたものが一瞬見えたと言う。
「少し調べてみましょ、鈴が消えた場所に連れてって」
ニーナと実に連れられ街の中央へと向かった。戦闘が行われた場所である。
私は地面を調べてみると魔法陣の形の模様が残っているを発見した。
「これは魔法陣ね、よく召喚とか罠なんかに使われたりするわ、これは魔法陣の中に入ると魔法が発動するっていうタイプの魔法よ」
「じゃあ鈴ちゃんはこの罠にかかって魔法で消されちゃったってこと!?」
「消されたと言うよりどこかに連れていかれたってのが正解ね、罠に使う魔法陣は相手を捕まえるかテレポートで飛ばすことを目的として作られてるから」
「どこに連れてかれちゃったんだろう…きっと誰かに捕まっちゃったんだ」
「私、分かるかもしれないわ、さっき戦ったキリンヤガの兵隊がいたわよね?あいつらは囮でこの魔方陣を設置するための時間稼ぎってわけ」
「ってことは、鈴にゃ〜は『キリンヤガの城』に捕えられてるってことだにゃ?」
私は頷いた。
しかし、気になることがある、何故街を占領するのに人を自分の城に連れて帰ったりするのだろうか?
「なら『キリンヤガの城』に行くにゃ、鈴にゃ〜を助けるにゃ!」
「待ちなさい、まさかこの3人で城に突っ込む訳じゃないわよね?あそこの兵の警備は厳重って話を聞くわよ?」
「安心するにゃ、にゃ〜には心強い部下がいるにゃ」
「部下?ニーナちゃん、偉い猫なの?」
「まぁそんな感じだにゃ〜♪」
ニーナは手を腰に当てて尻尾を揺らしている。
この猫、部下を従えるほど偉いのね。
「お〜い、出てくるにゃ〜」
「ハッ!ニーナ様」「はい♪ニーナ様♪」
しっかりとした低めの声と元気な高い声が聴こえる。
すると、目の前に小さな煙が巻き起こった。
そして忍者の格好をした子と先端に肉球が付いたステッキを持っている魔法少女のような子が現れた。どちらも猫耳と尻尾が生えている。
「にゃ〜の部下達、まずは自己紹介するにゃ」
「ハッ!私は『木乃葉』 ニーナ様の忍をしている」
「はいは〜い♪私は『リィル』ニーナ様の部下で、魔法が使えるの、よろしくね♪」
リィルという猫は自己紹介を終えると私を見て目をキラキラさせている。そして、私に話しかけてきた。
「その格好、あなたも魔法を使えるの?すご〜い♪見たいな〜見たいな〜あなたの魔法見たいな〜♪」
「こらリィル!初めて会うのに失礼だぞ」
「ふぇっ!?うわわ!ごめんなさい!」
リィルは慌てて謝罪する。どうやらこの子はおてんばな子のようだ。
「いいのよ、でも生憎私は魔力がすっからかんなのよ、しばらく回復させないと」
「それならおまかせを!私、魔力を回復させる薬を持ってるの…じゃなくて、持ってるです!」
「リィル…敬語がおかしくなってる…」
木乃葉という忍は呆れている。相当手を焼いてるようね、これは…。
リィルは小さいバッグから小瓶を取り出し私に渡した。
その小瓶の中には水色の液体が入っている。
「それを飲めば魔力が回復すr…するのですわ!」
「リィル…お嬢様みたいになってる…」
「リィルって言ったかしら?普通に話してくれて構わないわ、なんだか話しにくいわよ…」
なんだかこの2人…面白い。にしてもここまで敬語を使えないのも珍しいわね…。
私はそう思いつつ小瓶の液体を飲んだ。
その瞬間口の中にとんでもない苦味が広がった。そして私は思わず吹き出してしまった。
「うっ…!ケホケホっ!なんなのよこれ!一体何が入ってるの?苦すぎるわよ!」
「えっ?苦い?そんな訳ない……ってうわわ!間違えた!それ、毒キノコの薬だった!」
「殺す気か!吐き出したからまだ良かったけど飲んでたら死んでたわよ!」
「大丈夫大丈夫♪体が痺れて頭がクラクラするだけだから死なないよ♪」
「そういう問題じゃないわよ!ばっかじゃないの!?」
「えっと…あったあった!ほらこっち!こっちは本物だよ?色が一緒だから間違えちゃうの、てへっ♪」
「てへっじゃないわよ!全く…」
「うちのバカリィルが本当に申し訳ない……」
木乃葉は深々と頭を下げる。
私はリィルから小瓶を奪うようにして薬を飲んだ。こっちは全く苦くなく、魔力が回復するのを感じた。そして大きくため息をついた。
「あぁ、先が思いやられる…」
「緩菜さん、大丈夫?」
「えぇ、何とかね、木乃葉、あなたも苦労してるのね」
「えぇ、どうしようもないドジで困ってます…」
「ちょっと木乃葉!ドジって言わないでよ!私は強くて賢い魔法使いなんだから!」
「賢かったらそんなドジしない…」
「うるっさいわねぇ!間違っちゃったんだからしょうがないでしょ!」
「リィルは間違いが多すぎる」
本当にこんなメンバーで大丈夫かしら?
そんな思いを抱きつつ、私達はキリンヤガの城に向かうのであった……。
どうも、rurusuです。
今回は新キャラが2人出ましたね。今後どういった活躍をしてくれるのか!ご期待ください。
理想郷の登場キャラも今のところほとんど猫ですね(主人公も猫と人間のハーフになってるし)私ケモ耳大好きなんですよ、特に猫が!かわいいですよね!
夏休み、全力で楽しみましょう♪
では、また次回!