第7話、怪しげな魔法使い、でもその人は…
私がこの世界に来て1週間が経ちました。
この世界の生活にも慣れてきて、プレスターの街でお店の人とも仲良くなりました。
今私はプレスターの街にいます。もちろんニーナちゃんとみぃちゃんも一緒です。
私達は果物の店(私がリンゴを買った店)に来ているのでした。
「よう、嬢ちゃん達、今日は新しいのが入ってるよ」
「新しいの?」
「そうだ、アプリコットって言うんだ」
店のおじさんは黄色くて小さい、丸い形をしている果物に指をさしました。
「あ、それ知ってるにゃ、ほんのり甘酸っぱくて、ジャムとかにも使えるにゃ〜♪」
「お、3尾の嬢ちゃんは物知りだな〜」
「ふふん♪にゃ〜はなんでも知ってるんだにゃ〜♪」
「でもニーナちゃん、昨日夜遅くに本で果物のこと調べてたよね…」
「にゃっ!?みぃにゃ〜なんでその事を!?」
「夜遅くに目が覚めちゃってニーナちゃんが一生懸命本とにらめっこしてるのたまたま見ちゃったの」
「むぅ〜……」
ニーナちゃんはほっぺを膨らませました。
「ハッハッハッ、どうりで知ってる訳だ、どうだい?買ってくかい?」
「うん!」
私達はアプリコットを買いました。
お会計を済ませた時のことです。何故か街の中央が騒がしくなっていました。
「なんの騒ぎだろう?」
「行ってみるにゃ!」
私達は街の中央へと向かいました。そこには人集りが出来ています。
その人集りの中を私達は進んでやっと中央にたどり着きました。
そこには黒いローブを着た少し長めの銀色の髪の女の子が立っていました。その子の周りには本が沢山積んであります。
どうやら魔法使いのようですが……
「この本さえあれば誰でも簡単に魔法が使えるよ〜、って言っても信じてもらえないだろうから、誰かに試してもらうよ、そうだねぇ〜、誰にしようか?」
黒いローブの女の子は人集りを見て考えています。
やっぱり、この世界は魔法もあるんですね、さすが理想郷です。
「じゃあ、そこの3匹の猫ちゃんたちにお願いしちゃおうかな?」
黒いローブの女の子は私達に向かって指をさしました。
「え?私達?」
「そうよ、こっちにいらっしゃい、大丈夫、絶対に失敗しないから♪」
私達は半信半疑で前に出ました。
そして黒いローブの女の子に本を渡されました。
「その本を開いてみて」
言われた通り私達は渡された本を開きました。
すると綺麗な蝶が本からヒラヒラと出てきました。
周りの人達は「おー!」「すごーい!」と驚いています。
「ほら、使えたでしょ?さて、これをみんなにタダであげるよ〜!さあ、どんどん持っていきなさ〜い!」
黒いローブの女の子がそう言うと周りの人達が押しかけてきました。そして私達は人の流れに飲み込まれ、遂には3人別々になってしまいました。
「痛い痛い!そんなに押さないでぇぇ!」
私の声も他の人達の声にかき消されて、誰にも聞こえていません。みんな本を取るのに必死なのです。
私はその場を離れようと必死に抜け出そうとしましたが身動きが取れません。
その時です、突然景色が変わりました。ついさっきまで人混みの中にいたはずが、誰もいない街の道の真ん中に立っていたのです。
前を見てみると遠くの方に沢山の人が見えます。
「あれ!?私、さっきまであそこにいたのに…なんで!?」
「ふふふ、救出成功♪」
うしろから声がしました。うしろを振り返るとさっき本の宣伝をしていた黒いローブの女の子が立っていました。
「あなたは…さっきの……私、どうなったの?」
「転送魔法よ、テレポートって言った方が分かるかしら?あなたを人混みの中から救出したのよ」
「ありがとう……って、なんであんなことしたの!酷い目にあったじゃない!」
「あはは、ごめんごめん、そうだ、私の家に来ない?お詫びとして色んな魔法を見せてあげるから」
「うん、あ、でもニーナちゃんとみぃちゃんが……」
「あの二人のことは後でもいいから、ほら早く!」
「うわわ!ちょっと、引っ張らないでよ!」
私は黒いローブの女の子に手を引っ張られ、街中の狭い路地裏にある家にたどり着きました。
中は案外普通でした。ソファーと低いテーブルがあって奥にはキッチンがあります。
魔法使いの家って怪しい薬とか変な物が置いてあるイメージだけど、あれって物語の中だけなのかな?
「さぁ座って、見せたい魔法書がいっぱいあるの」
「さっきあんなに本をあげちゃったのにまだあるの?」
「あんなの魔法書のうちに入らないわよ、マジシャンがこぞって使うような小道具に過ぎないわ」
「えっ!?、それって……詐欺じゃない……?」
「普通の人にとっては不思議だと思うことは全部魔法になるんだからいいの、それにタダなんだから誰も文句言わないでしょ、ほら、はやく座りなさい」
(なんかそういう問題ではないような…まぁいいか…。)
私は言われた通りソファーに座りました。
「さっきは協力してくれてありがとう、ところであなた名前は?」
「猫谷 鈴、現実世界から来たの」
「あら、私も元現実世界の人間よ、ということはあなたも不遇な生活をしていたのね、私も最近この世界に来たばっかりなの」
「うん、両親と親友が事故で死んじゃったの、私も死のうと思ったんだけど、あの手紙を見てこっちに来たの」
「ちょっとまって、現実世界で両親のいない女子高生が事故にあって、数ヶ月後に行方不明になったっていうニュースを見たことあるんだけど……」
「あ、多分それ私のこと」
「やっぱりあなただったのね、その親友って早乙女 利奈って人?」
「利奈ちゃんを知ってるの!?」
「うん、私、利奈のお姉ちゃんなの、『早乙女 緩菜』って言うの」
「えぇーっ!?」
衝撃です、確かに利奈ちゃんにはお姉ちゃんがいるとは聞いていましたが、まさかこんな所にいるなんて……。
「なんでお姉さんがこんな所に!?」
「利奈が死んで悲しんでる時に手紙を見つけてね、もしかしたらここに利奈がいるかもしれないって思って」
「ごめんなさい……私のせいで利奈ちゃんが」
「あなたのせいじゃないわ、利奈が不運だっただけよ、あなたも辛かったでしょ、親友が死んでしまったのだから」
「利奈ちゃん……ここにいるのかな?」
「理想郷は広い世界らしいわ、だからきっと見つかるわよ、見つけたらまた一緒にここで過ごすことができるわ、それまで頑張りましょ?」
「うん!」
するとドアの外からノックの音がしました。
「あれ?誰かしら?」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁ…はぁ…酷い目にあったにゃ〜」
にゃ〜の名前はニーナ、さっきあの怪しい魔法使いに渡された本に人間が群がってきて街の中心から押し出されてしまった。しかも3人別々になってしまった。
「鈴にゃ〜もみぃにゃ〜もどこいっちゃったんだにゃ?そう遠くは離れてないはずだにゃ〜」
すると、あっちからにゃ〜と同じ身長の子が走ってきた。猫耳で和服を着た女の子、多分あの子は…。
「ニーナちゃ〜ん!」
「あ、みぃにゃ〜!」
「やっと見つけたよ〜、凄い人の量だったね…」
「おかげで服が汚れたにゃ、ところで鈴にゃ〜を見たかにゃ?」
「ううん、さっきから探してるけど見つけたのはニーナちゃんだけだったよ」
「うーん、この街はそんなに広くないからすぐ見つかるかと思ったけど、どこに行ったんだにゃ?」
にゃ〜達はしばらく黙って考えていた。街の中央の方を見てみるとまだ人が群がっていた。
しかし、にゃ〜はあることに気がついた。
「そういえば、あの魔法使いはあの人混みの中どうやって抜け出したんだにゃ?」
「魔法使いだから、魔法でワープしたとか?」
「それだにゃ!」
「え?」
「あの魔法使いは人を本に集中させて、その間に鈴にゃ〜を捕まえてワープして連れ去ったんだにゃ!」
「でも、なんで鈴ちゃんを連れ去ったの?」
「鈴にゃ〜の青い宝石にゃ、あいつの目的はそれにゃ」
「あの宝石って能力がない人にしかいらないんだよね?魔法っていう能力があるなら必要ないはずだよ?」
「鈴にゃ〜の宝石は鈍いけど反応してたんだにゃ、あれは少しずつ宝石が力を発揮している証拠、その力を使って何か良くないことを考えてるのかもしれないにゃ!」
「良くないことって?」
「わからないけど、こうしちゃいられないにゃ、はやくあの魔法使いを見つけないと!」
とは言ってみたものの、何も手がかりがない状態じゃあ、探すに探せない.....。
「で、どうやったら見つかるかにゃ〜?」
「街の人にその魔法使いを見たか聞いてみたらどうかな?」
にゃ〜達はたまたま通りかかった女の人に魔法使いのことを聞いてみた。
「魔法使い?見てないけど、数時間前ぐらいに路地裏からそれっぽい人が出てきたのは見たことあるわ」
「多分その人にゃ、そこに行ってみるにゃ」
「うん、そうだね、ありがとうお姉さん」
にゃ〜達は街中の路地裏にたどり着いた。
薄暗いところで人なんて入らなそうな場所、でもその中に一つだけ古いドアがあった。
「ここの事かにゃ〜?」
「多分そうだよ、お姉さんが言ってたのは」
にゃ〜はドアをコンコンとドアを2回ノックした。
すると中から黒いローブの魔法使いが出てきた。間違いない、鈴にゃ〜をさらった魔法使いだ。
「あら、あなた達はさっき協力してくれた猫ちゃん達ね?よくここがわかったわね」
「街の人に聞いたんだにゃ、ここに魔法使いがいるって」
「なるほど、さあ入ってあなた達にも魔法を見せたいの」
魔法使いに招かれて、にゃ〜達は家の中に入った。するとソファーに鈴にゃ〜が座っていた。
「あ!ニーナちゃん!よかった、無事だったのね」
「鈴にゃ〜、やっぱりここにいたにゃ、待ってるにゃ、今助けるにゃ!」
「え?助けるってどういうこと?」
にゃ〜は魔法使いに尻尾を両手に2本巻き付けた。
「うわぁ!な、何するのよ!くっ……動けない……!」
「さぁ観念するにゃ!鈴にゃ〜をさらったこと後悔させてやるにゃ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私、猫谷 鈴、今緩菜ちゃんの家にいて、ニーナちゃんとみぃちゃんがここに来たのですが、何故かニーナちゃんは緩菜ちゃんに尻尾を巻き付けて動けなくしています。
「ちょっと、ニーナちゃん!この人は悪い人じゃないよ、人混みの中を助けてくれたんだよ?」
「鈴にゃ〜、騙されちゃダメにゃ!こいつは鈴にゃ〜の力を奪おうとする悪い魔法使いにゃ!」
なんかニーナちゃん、勘違いしてませんか!?
確かに最初は怪しい人かと思いましたがとても優しい方ですよ?
「ふふ、そういう事ね、まぁそうだとしても、こんな尻尾じゃ私は倒せないけどね♪」
緩菜ちゃんは指を軽く動かしました。すると、動けなくなっているはずの緩菜ちゃんの場所とニーナちゃんの後ろに立っているみぃちゃんの場所が入れ替わり、みぃちゃんが動けない状況になりました。
緩菜ちゃんはニーナちゃんの後ろに立っています。
「え!?うわぁ!動けないよ〜!」
「な、なんでにゃ?入れ替わったにゃ!?」
「場所交換魔法よ、近くに人がいればその人の場所と私の場所を入れ替えることができる」
ニーナちゃんはすぐに尻尾を元の位置に戻し、緩菜ちゃんと向かい合いました。
動けるようになったみぃちゃんはこっちに来ました。
「鈴ちゃん、どうしよう…… 二人とも戦うつもりだよ」
「私にもわからない……」
ニーナちゃんと緩菜はお互い距離を取って睨み合っています。
なんでこんなことになってしまったのでしょう……。
どうもrurusuです。
お久しぶりですね、やっと投稿することが出来ました。
今回はニーナちゃん視点もありましたね、鈴ちゃんだけの視点じゃなくて他のキャラの視点もあったらいいんじゃないかな〜?って思って入れてみました。なので少し長めですね。
天候が悪いのが続いていますがどうかお気をつけて、では、また次回♪