第44話、それぞれの場所へ
蓬莱の国の朝、起床した私達はそれぞれの場所に行くため準備を整えて出発しようとしていました。
「鈴にゃ〜、気を付けて行ってくるにゃ、何かあったらすぐに木乃葉にゃ〜達に相談するんだにゃ」
「うん!ニーナちゃん達も気を付けてね!」
「わかってるにゃ、リィルにゃ〜、木乃葉にゃ〜の言うことをしっかり聞くんだにゃ、ワガママ言っちゃだめにゃ」
「はーい♪」
「リィルは私がしっかり見ておきます」
「よし、それじゃあ行こっか?」
「ちょっと待った!」
出発しようとした時、隣の部屋からおつねちゃんが障子を開けて、こちらの部屋に入って来ました。
腰に瓢箪をぶら下げて如何にも出かけようとしている格好です。
「おつねちゃんどうしたの?」
「私も連れてけ!!」
「着いてきてくれるのは嬉しいけど、家はいいの?」
妖狸さんも入ってきていいました。
「すまんな鈴、一緒に行きたい行きたいと聞かんくての、連れて行ってやってくれ、仲間が一人増えても構わんのじゃろ?道案内ぐらいはできるはずじゃ」
「はい!よろしくねおつねちゃん」
「任せろ!鈴は私が絶対に守ってやる!」
「ありがとう、それじゃあ、行ってきます!」
私達はそれぞれの場所へと出発しました。
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私達の目的地は竹街、そこには華の剣士と言われる人が住んでいるそうです。私達はおつねちゃんを先頭に廃墟街の中を歩いていました。
「ねぇおつねちゃん、どうして着いてきてくれたの?」
「私、人間のこと知りたいんだ、仲良くするならまず相手を知ることからだろ?鈴達が竹街に行くって聞いていい機会だと思ってさ」
「そうなんだ、いい所が知れるといいね」
「そういう鈴はなんで竹街に行くんだ?」
「私は天生石の力を持ってて、これは相手の能力を記憶して少し弱い状態で使えるようになるの、竹街で華の剣士がいるって聞いたからその力を貰いに行こうって思って」
「やっぱり華の剣士に会いに行くんだな、そうだと思ったよ」
「おつねちゃん知ってるの?」
「うん、昔の戦で屈強な妖怪達が恐れた人間だからな、気をつけろよ鈴、あの人間は妖怪が束になっても返り討ちにされたんだ、半端な覚悟で挑んだら痛い目にあうぞ」
「うん、分かった」
私達は廃墟街の門を抜け、竹街に踏み入りました。
竹街の名の通り竹林が広がっています。所々に建つ家は竹林に囲まれています。
私達のいた梅街とは違いとても静かです。
「何だか静かなところだね」
「竹街は戦の被害に会わなかった街なんだ、だから戦が終わった後は竹街に住んだ妖怪もいる、城の人間は竹街を放ったらかしにしてるからね」
「廃墟街の妖怪は竹街に住もうって思わなかったの?」
「竹街の土地のほとんどは竹林で埋まってるからあまり多くの妖怪は住めないのさ」
そんな静かで迷路のような竹林の中を進んでいました。しかしいくら進んでも家らしきものは見えません。それどころか人すらも見当たらないのです。
そして今まで黙って着いてきていたリィルちゃんが遂に弱音を吐き始めました。
「ねぇ、本当にこんな所に華の剣士なんているわけ?そろそろ疲れたんですけど」
「リィル、おつね殿が案内してくれてるんだ、文句言わない」
「だって〜!どこを見ても竹だらけじゃない、こんなの飽きちゃうし足も痛いもん、そこらへんで座って休みたい!」
「駄目、ほらさっさと歩く!」
「やだやだ!休みたい休みたい休みたい〜!」
リィルちゃんはその場に座り、駄々をこね始めました。そして木乃葉ちゃんが珍しく大きな声を出しました。
「おいリィル!わがまま言わない約束だろ!」
「そんなこと言ったって疲れるものは疲れるもん!じゃあ木乃葉が私をおんぶしてよ!」
「いい加減にしろ!約束を守れないなら、ここに置いてくぞ!」
「なんでそんなこと言うの……?うぅ……グスッ……うわああん!木乃葉のいじわる〜!」
泣き始めるリィルちゃんに木乃葉ちゃんは困り果ててしまいました。
するとそれを見兼ねたおつねちゃんはリィルちゃんの目の前で背を向けてしゃがみました。
「ほら、捕まれ、おぶってやる」
「いいの?やったー!」
おつねちゃんがリィルをおんぶして、私達は再び歩みを始めました。リィルちゃんはおんぶをしてもらって嬉しそうです。
「わ〜い♪おつねちゃん、あなたレディの扱い方が上手なのね、男の子だったらモテモテよ」
「へ、変な事言うなよ!なんだよれでぃって……」
「リィル調子に乗らない、おつね殿、すまない……」
「いいんだ、野乃をよくおぶってたからこういうのは慣れてるからね」
「面倒見がいいんだな、私も見習わなければ……」
「そうよ!木乃葉もおつねちゃんみたいに優しくして欲しいわ」
「リィルっ!!」
「はっはっはっ♪仲が良くていいな、私も人間とこういう風に仲良くなりたいな」
しばらく歩いていると。竹林ばかりの景色の中に何やら屋敷のような物が遠くに見えてきました。
「あっ!あの建物って」
「うん、あれが華の剣士が住んでいる屋敷だ、リィル、そろそろ降りてくれ、十分休憩できただろ?」
「仕方ないわね〜、よいしょっと」
リィルちゃんがおつねちゃんから降り、私達は屋敷に目掛けて進んでいきました。
段々と屋敷に近づいて、あともう少しと言ったその時です。
「鈴!危ない!」
おつねちゃんが突然私に飛びついて来て、共に倒れました。
すると、道の脇の竹が何本か真っ二つに切れてしまいました。そして、竹の残骸が降って来ますが、木乃葉ちゃんとリィルちゃんが素早く私達を別のところに運び、間一髪で怪我をせずに済みました。
「な、何!?」
「誰かいる!警戒しろ!」
「う、うん!」
私の周りを囲うようにして、3人が武器を構えて私を守ります。私も立ち上がり、天生同化を開始しました。
すると、反対側の脇の竹林の中から刀を持った銀色の髪の毛で高校生ぐらいの和服の女性が出てきました。
「避けましたか、危険予測は出来ているようですね」
「鈴、気をつけろ、この人間が華の剣士だ!」
「この辺りでは見かけない顔、竹街の外の妖怪ですね、良くも堂々と侵入できたものです、覚悟はできていますね?」
「ちょ、ちょっと待ってください華の剣士さん!私達は怪しいものじゃないんです!用があるから来ただけで……!」
「廃墟街の妖怪と話すつもりはありません、私は竹街以外の者とは関係を断っているのでお引き取り願います、さもなければここで斬ります」
「お願いします!話を聞いてください!」
「どうしてもと言うのなら私を倒しなさい、弱き者の声に聞く耳など持ちません」
華の剣士は私達に向かって高速で近づくと同時に抜刀し、斬りかかってきました。木乃葉ちゃんがクナイでその剣を止めます。
「仕方がない、戦うぞ」
「はああああっ!」
おつねちゃんは横から華の剣士に拳を振ります。しかし、華の剣士は一度後ろに下がりおつねちゃんのパンチを避けました。
私も見てばかりという訳には行きません、私は頭の中で薙刀を想像します。すると自分の手に光の薙刀が現れました。
そして、華の剣士に向かって走って薙刀を振ります。しかし、簡単に避けられてしまいました。それでも諦めず何度も攻撃を行いますが、全て避けられてしまいます。
(全然当たらない、色んな攻撃をしてるのに……)
「やあっ!」
「はっ!」
「ファイヤーショット!」
木乃葉ちゃんとリィルちゃん、おつねちゃんも一緒に攻撃を仕掛けます。おつねちゃんは相手に拳を振り続け、木乃葉ちゃんはクナイで攻撃したり手裏剣を投げ、リィルちゃんは炎の魔法を唱えて攻撃しますがゆらゆらと花びらのように避けられて、攻撃が当たらないどころか、かすりもしませんでした。
しかも驚くことに華の剣士は目を瞑っているのです。
「なんだよこいつ!全然当たらないじゃないか!」
「こちらの攻撃が詠まれてるのか?」
「目を瞑りながら避けてるなんて、何が見えてるのよあいつ!」
「はぁっ…はぁっ……どうなってるの?」
このままでは体力を消耗する一方です。
私達は一度下がって体勢を整えます。
「その程度ですか……あなた達のような花は美しくない、散りなさい!」
華の剣士がそう言った瞬間、おつねちゃんに一瞬で近づいて刀を振ります。おつねちゃんがそれに気付いた頃には遅く、避けれずに斬られてしまいました。
「うわああああっ!!!!」
「おつねちゃんっ!」
おつねちゃんは倒れてしまいます。
木乃葉ちゃんは次の攻撃を警戒し、私の前で武器を構えて私を守ります。
そして、華の剣士がこちらを見ました。
「来るぞ!」
木乃葉ちゃんはさっきのように刀を受ける体勢に入りましたが。華の剣士は既に木乃葉ちゃんの懐に入っていました。そのまま斬られてしまいます。
「ぐうっ!?は、速い……」
木乃葉ちゃんも倒れ、戦えるのは私とリィルちゃんだけ……しかし、私は腰が抜けてその場に崩れ落ちます。
目の前には華の剣士が……!
しかし、リィルちゃんが炎の魔法を撃って足止めをしようとします。
「えいっ!えいっ!当たりなさいよ!」
しかし炎は全く当たりません。華の剣士はリィルちゃんに一瞬に近づいて斬りました。
「きゃあああああっ!!!!」
遂にリィルちゃんも倒れ、戦えるのは私だけ……。
足がすくんで立てません。強い、4人で仕掛けても傷1つ付けられないなんて……。
華の剣士がこちらに歩いてきます。今度は私を斬るつもりなのです。殺される……。私は目を瞑りました。
しかし目の前まで来た華の剣士は私を斬らず、口を開きました。
「先程の力……天生石ですね?」
「え?は、はい……」
「……失礼」
華の剣士は刀の柄の部分で私の頭を小突き、私は意識を刈り取られました。
「…………天力の持ち主、廃墟街の妖怪……何か訳がある様子ですね、『酒呑』『水虎』そこで見ているのでしょう?この方々を屋敷へ」
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「う〜ん……ここは?」
私は部屋の布団の中で目を覚ましました。頭がズキズキします。おそらく殴られた衝撃でしょう。そして、私の視界に髪型がおかっぱで髪色は緑色、背中には甲羅を背負ってる女の子が入ってきました。
「あっ!起きたべ!姉ちゃん痛てぇとこはねぇか?」
「うんちょっと頭が痛いけど大丈夫、あなたは?」
「おらは『兵主部 水虎』!見ての通り河童だべ!あんたをここに運べ〜って『時雨』ちゃんに頼まれたっぺな」
「『時雨』ちゃんって?」
「あ〜、まだ名前知らなかったか、あんたらの言う華の剣士ってやつの名前だべな」
「そうだったんだ……そ、そうだ!みんなは!?」
「安心するだ、他の子なら隣の部屋で休ませているべ、時雨ちゃんはそんなに残虐な子じゃないべ」
私はほっと胸を撫で下ろしました。
「よかった……華の剣士さん、あまりにも強すぎるよ……」
「そりゃあそうだべ、戦の時に竹街に襲ってきた人間や妖怪を一人でコテンパンにした人だからな、あの人が守ってくれたおかげで竹街は戦の被害に合わなかったんだべ」
「水虎ちゃんは華の剣士さんと仲が良かったの?」
「戦が始まる前からの親友だべ、戦が始まってみんなが妖怪のこと嫌いになっても、時雨ちゃんだけはおら達のことを嫌いならなかったんだべ、だから他の奴に見つからないように竹街で密かに一緒に住んでるんだべ」
そんな話をしていると、部屋の障子が開き、華の剣士がお盆を持って入ってきました。
そして、私が寝ている布団の近くに座り、お盆の上のお茶を起きました。
「あ〜『時雨』ちゃん、この子起きただよ、身体も大丈夫そうだべな」
「ありがとうございます、突然の事で申し訳ありません」
「これくらい屁の河童だべ!へへへっ♪」
「頼もしいです、もう戻っても大丈夫ですよ」
「了解だべ、それじゃ猫ちゃん、また後でな」
「うん!ありがとう、水虎ちゃん」
水虎ちゃんは部屋から出ていきました。そして華の剣士は口を開きました。
「どうやらお身体は無事のようですね、突然襲ってしまい、更にはあなたのお仲間を怪我をさせてしまいましたね、大変失礼致しました」
「突然だったのでびっくりしましたよ……しかもあんなに強いなんて、想像以上です……」
「竹街を守るため、日々鍛えていますから、自己紹介がまだでしたね、私は『時雨』あなた方が華の剣士と呼ぶ人間です」
「私は猫谷 鈴!プレスターの街から来たワーハクタクです!」
「外の国の方でしたか、ところで、あなたが持っていたあの力は天生石の力で間違いありませんね?」
「はい!」
私はカーディガンの中に隠しているネックレスの天生石を取り出しました。
「これが私の天生石です」
「確かにこの石から天力を感じます、しかし、普通の天生石では無い様子、もしかして、あなたも特別な力を?」
「はい、私の天生石は技術記憶、相手の技術を劣化版として使う力を持っています」
「技術記憶ですか、やはり私の目に間違いは無かったようです、私も特別な力を持っています、名は『華舞散命』相手の命を華のように散らす剣技です」
「だから華の剣士って言われてるんですね」
「そうかもしれませんね、私は自分で名乗っていないのでなんとも言えませんが……ところで、何故私の所へ?」
「お願いがあるんです、聞いてくれますか?」
「いいでしょう」
私は蓬莱の国に来てから今までの事を話しました。
「なるほど、つまり城を乗っ取っているその地上霊とやらを倒すために、私の力を貸して欲しいと?」
「はい!蓬莱の国は人妖同盟を組んだんです、だからもう人間と妖怪は争わずに済む、あともう少しなんです、お願いします!力を貸してください!」
「確かにその地上霊は並大抵の力ではない様子、今は城だけですがいずれは竹街にも被害が出るかもしれない、分かりました、協力しましょう」
「ありがとうございます!」
「ですが直ぐにという訳には行きません、あなたを鍛えます、先程の戦いであなたの動きを見ましたが、天生石の力を全く使いこなせていません、あなたは弱すぎる」
あまりにストレートな言葉で心に来ましたが事実なので何も言い返せません。
「心の準備が出来たら中庭に来なさい、私が鍛えてあげます」
時雨さんは部屋を出ていきました。
心の準備は正直できていませんがそうも言ってられません、私も布団から出て中庭に向かいました。
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松街、そこは蓬莱の国を守る神々、そしてその神々を信仰する者達の街、街並みはそこらじゅうに神社が建っており、民家などひとつもなかった、と言うよりかは民家が全て神社になっていると言った方が正しいだろう。
「想像よりも神社が多いにゃ、というより神社ばっかりだにゃ……」
「これじゃあ話に聞いた神社の場所が分からないね……」
「梅街の人に聞いたら神社の中でも特にでかいのがそうらしいっすよ」
セフトの言ったことを参考にし、松街の中を進んでいく。すれ違う人達はみんな巫女服や神主の格好をしている。そのせいかやたらと視線を感じる。この街に妖怪がいるのが珍しいのだろう、しかし敵対している様子は無い、普通に歩いても問題は無さそうだ。
しばらく歩いていると、向こう側から巫女服を着た3人組の女の子が談笑しながら歩いてきた。
真ん中は長い金髪の高身長のスリムで明るそうな女の子、右側は短い紫色の髪の背の低い眼鏡をかけた大人しそうな女の子、左側は短い黒髪の小太りで穏やかそうな女の子である。
3人組はこちらに気付いた。
「えっ?もしかしてあれ妖怪じゃね?」
「確かに、人間では無いみたいです」
「頭に耳が生えてるわ〜」
何やらコソコソと話している。ニーナは3人組に近づき話しかけてみることにした。
「君達、ここの街の人間かにゃ〜?」
「聞いた聞いた?にゃ〜って言ったよね?」
「確かに言った、どうやら猫又みたいですね」
「かわいいわ〜♪」
「聞いてるのかにゃ!?」
3人だけで話しているので全く聞いてる様子はない、話しかける相手を間違えたのだろうか?
しかし、金髪の子は質問に答えた。
「あはは♪ごめんね〜、妖怪なんて滅多に見ないからさ〜、で、何?」
「この街の三大神社を探しに来たんだにゃ、何か知ってるかにゃ?」
「それうちらの神社じゃ〜ん」
「ほんとかにゃ!?案内して欲しいにゃ!」
「別にいいけど」
そう言った瞬間、ニーナの肩に手を回した。
「その前にスイーツ行かね?糖分たりなくて死にそうなんだよね〜」
「す、スイーツかにゃ……?」
「ん?もしかして甘いもの嫌い?うわ、きまずっ」
「いや、嫌いって訳じゃないにゃ……でもにゃ〜達は……」
「やっぱ好きなんじゃ〜ん、よし決まり!行こいこ!」
「うわわ、押さないでにゃ〜!」
金髪の子はニーナの言葉を遮り背中を押して進み始めた。
「付き添いの方もどうぞ」
「私達今休憩中なの〜」
紫髪の子と黒髪の子もそう言いつつ後に続く、恐らく休憩が終わらないと連れて行ってはくれなさそうなので実達もついて行くことにした。
近くにある甘味処に入り席に座った。
「私餡蜜〜♪」
「私も同じで」
「私も餡蜜がいいわ〜♪」
3人組は全員一緒の物を頼んだ。ニーナ達も同じものを注文した。そして、3人組はまた談笑を始めた。
こちら話しかけるタイミングが掴めないまましばらく待っていると店の人が全員分の餡蜜を運んできた。
そして、全員分の餡蜜が配られ、食べ始めたところで金髪の子がようやくこちらに話しかけてきた。
「で、あんた達私達に用があんだよね?どうしたの?」
「にゃ〜達は地上霊についての情報を集めてるんだにゃ、何か知ってるかにゃ?」
「ちじょうれー?聞いた事ないな〜、2人とも知ってる〜?」
両隣の2人は首を横に振って否定した。どうやら知らないらしい、ハズレか……。
「なんでそんなちじょうれーってやつのこと知りたいわけ?」
「実は……」
ニーナ達はこれまでに至った経緯を説明した。
「つまりぃ、蓬莱城がその幽霊みたいなやつに乗っ取られてそいつをやっつけるために方法を探してるってことね」
「そうだにゃ、それでもしかしたら三大神社の人間ならなにか知ってるかと思ったんだにゃ」
「ふーん、もしかしたら『天ちゃん』なら知ってるかも、とりま食べ終わったら神社いこ!2人もそれでいい?」
「ええ、問題ないです」
「分かったわ〜♪」
ニーナ達は餡蜜を堪能した後店を出て、金髪の子に案内されて街の奥にある大きな神社へと辿り着いた。
そして神社の中へと入る。内装は木でできていてとても広い、奥には大きな祭壇があり、餅や金貨などが供えられている。
「天ちゃ〜ん、お客さ〜ん」
金髪の子がそう叫ぶとどこからともなく声が聞こえてくる。
『た、たわけ!天ちゃんと言うなと言っているだろ!』
「硬いこと言わないでよ〜、そんなことよりさ、この猫ちゃん達が聞きたいことがあるんだって〜」
『全く……』
突然目の前に真っ白な着物の長い黒髪の女性が現れた。しかし幽霊のように全身が透けている。
「外の者よ、良くぞ我の元に来たな」
「君がそこの子が言ってた、天ちゃんって人かにゃ?」
「ぐぅっ……奴はそう呼んでいるらしいな、やめろと言っているのに……」
「天ちゃん照れてんの?チョーウケる〜♪」
「だから天ちゃん言うな!お前と言うやつは……コホンっ、すまぬな、我は『天照』太陽の神である」
「「「えぇぇぇぇぇぇっ!?」」」
ニーナ達は3人揃って驚愕した。そう、金髪の子が天ちゃんと呼んだその人物、それは太陽の神だったのだ。
太陽の神はこの世界の最高神のニライ様とカナイ様の部下の一人である。
この世界の神には階級があり、目の前にいる太陽の神はニライ様とカナイ様、つまり最高神に一番近い階級に属する神である。
そんな神をこの金髪の人間が軽く呼び出したのだ。
「な、なんで太陽の神様が、この人間と普通に暮らしてるんだにゃ!?」
「我ら神は信仰心が無いと力が発揮出来ぬ、戦で神への信仰心が失われそうになった時、この人間が私に協力をしてくれたのじゃ、そのお礼として力と知恵を貸しておる」
「そうそう、天ちゃんと私はズッ友なんだよね〜♪」
「だから天ちゃん言うな!それよりも『結衣』よ自己紹介は済ませたのか?」
「おっと、忘れてた!私は『大日女 結衣』っての、よろしく〜、2人も紹介しちゃって、まず『柚子』から!」
結衣がそう言うと紫髪の子は頷き紹介を始めた。
「私は『月神 柚子』、結衣の友人です、以後お見知りおきを、『一華』、紹介を」
今度は柚子が黒髪の子に指示をした。黒髪の子も同じように紹介を始める。
「は〜い、私は『神須佐 一華』よ〜、よろしくね〜♪」
3人の自己紹介が終わった後、今度はニーナ達が自己紹介をした。
そして、天照様がニーナ達に質問した。
「それでニーナとその友よ、我に何を聞きたいのじゃ?」
「地上霊について知りたいんだにゃ、何か知ってることは無いにゃ?」
「地上霊か、知っておるぞ、自身が死を迎え黄泉の国に行き記憶を捨て転生することを認めずに、黄泉の国から脱出し、地上に留まる種族じゃ、それがどうしたのじゃ?」
「そいつが今蓬莱城に結界を張って立てこもってるんだにゃ」
「神社から見えていたかなり強力な結界の事か、あれは地上霊の仕業だったと?城の姫は無事なのか?」
「廃墟街で匿われてるにゃ」
「ふむ、無事ならば良い、廃墟街にいるということは人と妖のあいだで何かあったのだろうが今は置いておこう、お主達はどうするつもりなのだ?」
「城を取り返すにゃ!あの結界を壊して、地上霊をやっつけるんだにゃ!だから、神様に力を貸して欲しいにゃ」
「そうか、そういうことであれば力を貸そう、結衣、お主もそれで良いな?」
結衣は大きく頷いて天照の肩に手を回した。
「天ちゃん気前いいじゃ〜ん♪困ってる人居たら放っておけないもんね〜、もちろん私も協力するよ、ニーナ達よろ〜」
「これ!軽々しく肩に手を回すでない!あと天ちゃん言うな!」
「とりま柚子と一華も神様呼んで来なよ〜、3人の神様揃ったら最強っしょ!」
「そうですね、呼んできます」
「分かったわ〜♪」
柚子と一華は神社を後にする。情報を掴むために来たがまさか協力までしてくれるとは、ニーナ達にとって願ってもない事だった。
「ニーナちゃんやったね、優しい人達で良かった〜♪」
「でも、結衣って人軽過ぎないっすか……?緊張感なくて神様を呼びだした人間には見えないっすよ」
「正直びっくりだにゃ、そういえばあとの二人は何の神様を呼べるんだにゃ?」
「柚子は『つくちゃん』一華は『須佐爺』を呼べるよ〜?」
「つ、つくちゃんとすさじぃ、かにゃ?」
「『月詠』と『須佐之男』だろ、他人に紹介する時ぐらいちゃんと呼ばんか!」
ニーナ達は耳を疑った。月詠、須佐之男は共に天照と同じ地位にいる神様である。月詠は月の神、須佐之男は海の神である。
そう、今からニライ様とカナイ様に次ぐ偉い神様がここに3人集まるのだ。
「と、とんでも無いことになってきたにゃ……」
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「ふふ〜ん♪城の生活ってこんなに快適なんだね〜、偉くなるのって最高!」
蓬莱城の最上階、地上霊は姫がいつも座っている座敷に寝っ転がっている。
その前に姫のお世話係が正座をしている、いや、正しくは殺すと脅して無理矢理正座させられているのだ。
「なんか飲みたいな〜、幽霊だから喉渇かないけど、ねぇ誰かお茶入れてくんな〜い?」
「……………。」
お世話係は黙ったままだ。地上霊はムッとする。
「さっきからなんでずっと黙ってんの?ほらほら、新しい姫様の命令だよ?さっさと従いなよ」
「………………。」
いつまでも黙っているお世話係に地上霊は近づき、低い声で言った。
「おい、さっさと行けよ……死にたいの?」
「ひぃっ!?直ぐにお入れ致します!」
お世話係は慌ててその場から離れ台所へと向かい、お茶を入れて地上霊に差し出した。
「そうそう、君達は僕が支配してるんだ、逆らえるわけないんだからしっかり言うこと聞いてよね〜」
地上霊はお茶を飲んでくつろいでいる。一体この地上霊が何を考えているのかは誰にもわからない、今はただ、地上霊の機嫌を損ねないように従うしかないのだ。
「やれやれ、妖力がまだ戻らないな〜、使いすぎちゃったね、少し休んで戻さないと計画が進まないよ……」
「で?お茶入れて終わりなわけ?茶菓子は?言わなくてもわかるよね?ふざけてんの?殺すよ?」
「「「ひぃっ!!!!」」」
と地上霊は口にしながら、お世話係に好き放題命令するのであった。
お久しぶりです、大変遅れて申し訳ありませんでした!
リアルの方がとても忙しくてなかなか手をつけられませんでしたが、やっと投稿できました!今回は少し長めでしたね、じっくり楽しんでいただけると幸いです。
では、また次回〜♪




