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絶望の果ての理想郷  作者: 秌雨
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第40話 和の大都市

俺っちの名前はセフト、ニーナの姉貴達が廃墟街で鈴の姉貴達を探している間に、俺っちは街の情報収集をしているところだ。

この街に来てわかったことは昔の戦で人間と妖怪は仲が悪いということ、妖怪は皆廃墟街で暮らしいてるということ、しかし商店街だけは自由に行き来できて、商人は妖怪に嫌がらずに物を売っていることである。

商店街で和紙を買い、筆で今のことはメモしたがこの街の筆記用具は不便だ。この筆、1度書けば消すことが出来ないため書き直す場合は何度も紙を変える必要がある。呉服屋という所で仕立てて貰った子の和服という物も何だか動きずらいし下駄と言われる靴も歩きずらい。


(うへぇ……この街の人はいっつもこんな格好で歩いてるんっすか?洋服の方が断然楽っすよ……さてと、街の情報はこんなもんすかねぇ?)


事前にニーナの姉貴に用事が済んだらテレフォブレスレットで連絡すると言われていたのだがまだこない、暇だ。


(街の散策でもするっすかねぇ?そういえば今使ってるナイフ、そろそろ切れ味悪くなってたから、新しいのを探さないと……)


俺っちは武器が売ってそうな所を探した。商店街をしばらく歩いていると、『鍛冶屋』とでかでか書いてある木の看板の店を見つけた。俺っちは店の中へと足を運ぶ。すると奥から店員らしき男が出てきて声をかけられた。ゴツイ体型のおっちゃんだった。


「いらっしゃい、武器をお望みかい?」

「そうっす、ナイフの新しいのが欲しいっす!」

「あぁん?ないふだぁ?んな変な名前のもん家にはねぇよ」

「えぇっ!?ナイフは武器の基本っすよ!?なんでないんっすか!」

「んな事言われたって聞いた事のねぇ武器は仕入れねぇだろうよ」


俺っちは耳を疑った。ナイフを知らない!?じゃあなんの武器を売っているんだと突っ込みたくなったが、どうやら本当に知らないみたいなので、俺っちは自分のナイフを取り出し、おっちゃんに見せた。


「これっすよこれ!」

「あ〜、小刀のことか、なんだそうならそうと先に言ってくれよ」

「この国ではこれをコガタナって言うんすか?」

「あんた余所者か?道理で変だと思ったぜ、そうだ、あんたの言うないふはこっちで言う小刀だな、それなら似たのがあるぜ」


おっちゃんは店の奥に戻っていき木箱を抱えて戻ってきた。おっちゃんは箱を空ける。すると中にはコガタナと言われるナイフがあった。俺っちはコガタナを手に取って鞘を外して武器を眺めた。


「持ち手の部分が木で出来てるっすね、良く切れそうっす、決めた、これくださいっす!」

「はいよ、金貨3枚だ」


俺っちは布袋を取り出し、中から金貨を取り出しておっちゃんに渡す。


「まいど、そう言えやあんた、職は?」

「元盗賊っすよ、まぁ今は色々あって足洗ったんすけどね、今は旅人っすよ」

「おいおい、てことはこれ盗んだ金かよ……ったく、金には困らねぇ世界でなんで盗みなんてすんだよ」

「金じゃなくて盗むのはだいたい人っすよ、珍しい物とかは別っすけどね、人を盗んでそいつを盗賊にして、それを繰り返してでかい組織を作るのが目的だったっすよ、物はついでっすよついで、もうやらないっすけどね」

「なるほどな、ま、俺からしちゃあちゃんと買ってくれりゃそれでいいけどよ、それだけでいいのか?小刀だけじゃ心細いと思うぜ?」


確かにそうだ、今までナイフ1本でやってきたが鈴の姉貴達の役に立つには多少武器は多い方がいいかもしれない。


「他はどんなのがあるっすか?」

「そうだな〜、おっとそうだ、あれがあったな」


おっちゃんはまた奥に戻って木箱と布袋を取ってきた。中身を開けると小型の黒い両刃の武器が入っていた。こっちの方がナイフっぽい見た目をしている。


「これ、両刃のナイフっすよね?でもそれにしちゃあ小さいっすね、コガタナとは何か違うんっすか?」

「これは飛び苦無、投げて使うもんだ、あとこれなんかもどうだ?」


おっちゃんは布袋を開けて中身を取り出す。これまた小型で、刃の部分が4つ付いていて中央に穴が空いている奇妙な武器だった。


「なんすかこの形状!?見たことないっすよ」

「こりゃあ手裏剣だ、これも投げて使うもんだな」

「他にも、他にも見せてくださいっす!」


気付けば武器の虜になっていた。他にも、マキビシという地面にばらまく武器や木乃葉先輩が使ってるような大きいクナイなど、様々なものを見せてもらった。反応が良かったようでおっちゃんも気分が良さそうだった。


「まぁざっとこんなもんだ、投げ物はひとつ持っといても損はねぇぜ?」

「全部下さいっす!」

「いいのか?金貨7枚分だぞ?」

「ちょっぴり痛手っすけど仲間の役に立てるんなら安いもんっすよ!」

「へへ、思いっきりがいいじゃねぇか、なら5枚にしてやるよ」

「本当っすか!?ありがとうっす!」


金貨5枚を渡し、おっちゃんから商品を受け取った。俺っちはおっちゃんに教わりながら着ている服の至る所に武器を隠し持った。


「こんなに物を売りてぇと思った客は久しぶりだ、また来いよ」

「色々ありがとうっす!」


俺っちは店から出た。だいぶ暇つぶしは出来たが未だに連絡は来ない。すると、俺っちのお腹がグルグルとなり始めた。


(腹減ったっすね〜、そろそろ飯の時間っすよ、遅いな〜姉貴達、ん?)


そんなことを考えていると、歩いている道の奥から明らかにこの街の物ではない格好をした人間がこちらに歩いてくる。つばのついた紺色の帽子に、帽子と同じ色の制服に身を包んだ人間だ。背は160cmぐらいと言ったところだろう。(ちなみに俺っちは156cm)俺っちはその子がすぐそばを通り過ぎようとした時に話しかけた。


「ちょっといいっすか?」

「はい?」

「格好がここの人達とは違うみたいっすけど、もしかしてあんたも蓬莱の国の外から来たんっすか?」

「いいえ、私は蓬莱の国出身です」

「あ、そうだったんっすか!?なんかごめんっす、格好が違ったから……」

「いえいいんです、よく言われますから♪ところで、そんな質問をしてきたということは、貴方は外の人なんですね?」

「そうっす、まだ来たばっかなんで、街の情報収集をしてる所っすよ」

「なるほどなるほど、なら、私が教えますよ!どこに何があるのかぐらいは伝えられるはずです!」

「本当っすか!?是非お願いするっす!」

「分かりました!ではこっちに来てください!」

「うわっ!?な、なんすか急に!?」


俺っちは紺色制服の人に手を掴まれ引っ張られ、街の中を歩いていく。帽子から出ている水色のツインテールが揺れていた。俺っちがどこに行くのかと尋ねても「いいからいいから」と言うだけである。一体どこに連れて行くのだろうか?

住宅街をしばらく歩いていると、普通の民家とは違い、一際大きい家が建っている場所に着いた。


「さ、ここです!」

「でっかい家っすね〜、1人で住むには勿体ないぐらいっす」

「家じゃないですよ?収納庫です」

「こんな馬鹿でかい倉庫作って何をしまうんっすか……」

「それは見てからのお楽しみです!ささ、こちらへ」


紺色制服の人は小さな扉に近づき、鍵を開けて中に入った。俺っちもそれに続く。中に入った途端、とんでもないものが視界に入ってきた。

見たことも無い鉄製の物で、高さは4メートル程もあり、横幅は3メートル程ある、色は黒く上に煙突が付いている。俺っちは思わず大きな声が出てしまった。


「な、な、なんすかこれ!?」

「よくぞ聞いてくれました!こちらは理想郷無線路列車、『願星(ねがいぼし)』です!」


彼女はドヤ顔で話しているが、れっしゃと言う単語を知らない俺っちからしたら、ポカンである。


「むせんろれっしゃ?なんすかそれ?」

「やっぱり列車をご存知ないみたいですね……いいでしょう、これはですね、人を中に乗せて遠くに運べる機械なんです!」

「馬車みたいなもんすか?」

「そうですね、こちらの世界ではそんなイメージですね」

「でも、引っ張る馬がいないじゃないっすか、それに、こんなバカでかいの馬だけじゃ引っ張れないっすよ!」

「馬は不要です、自動で動きますから!」

「ありえないっすよ!こんな鉄の塊が自動で動くわけないっす!」

「魔法がある世界で何を言っているんですか……列車ぐらいあっても不思議じゃないでしょ……まぁ、とにかく乗ってください!そしたら分かりますので!」


彼女はデカブツの横に立った。長さも相当長い、20メートルはある。すると扉のようなものがプシューという音と共に開き中に入れるようになった。


「ささ、乗ってください!」


言われた通り中に入る。長いベンチのような物が相向かいに並んでいる。普通に部屋みたいだ。


「それじゃあ、行きますか!」

「ちょ、ちょっと待つっすよ!こんな所でこんなの動かしたらこの家吹き飛ぶどころか他の家まで被害が出るっすよ!」

「問題ありません、その対策もバッチリです!」


彼女はポケットから笛を取り出し、それを口にくわえて息を吹きかけた。ピーッ!という音共に、家の屋根がガラガラと音を立てながら開いた。そして、デカブツはそのまま上へ垂直移動し始めた、周りの景色が見える。このデカブツは宙に浮いているのだ。


「と、飛んでるっす!このデカブツが!?」

「ね?バッチリでしょ?ちなみにこの列車にはステルス機能が付いていますので、私と乗客以外はこの列車は見えません、いきなりこんな大きいのが空を飛んでいたら、ビックリしちゃいますからね」

「こんな技術を持ってるなんて、あんた何者っすか?」

「あいや?そういえば自己紹介がまだでしたね」


彼女は被っていた帽子を外して、胸辺りで抱えて持って一礼する。ラピスラズリのような色の髪が露になる。帽子を被っている時は大人のような印象を受けたが、帽子を取ると元気そうな女の子の印象である。


「紹介が遅れました、私、この理想郷無線路列車、願星の車掌『瑞風(みずかぜ) (なごみ)』と申します、以後お見知り置きを」

「セフトって言うっす!元盗賊っすけど、今は旅人っす」

「セフトさんですね!本日は願星をご利用頂き、誠にありがとうございます!では、街の説明をしますね」


和と名乗る少女は街の説明を始めた。


「蓬莱の国は4つの街に分かれている国なのですが、今いるここは梅街(うめのまち)です、怖〜い妖怪さんが住んでいる廃墟街を含んだ街ですが、商店街はこの国で1番大きい街なんです」

「妖怪が住んでるのは廃墟街だけなんっすか?」

「はい、昔の戦で追いやられてしまったらしいのです、こんなに広い国なのに可哀想ですね、さて、セフトさん、お座りください、上昇して街を一気に見下ろせるところまで行きましょう♪」

「了解っす!」

「それでは、進路良好、出発進行♪」


俺っちが座ると、列車は動き出す。とても速い、馬車とは桁違いの速さだ。今までに感じたことないスピードで街を駆け抜けていく。少しすると列車が止まった。


「よし、この辺でいいでしょう、セフトさん窓の外をご覧下さい」


言われた通り窓の外を見る。とても大きな街の全貌が明らかになった。


「うわっ!?あっという間にこんな高くまで!しかも、この街、物凄くでかい街じゃないっすか!」

「ええ、ここは理想郷1の大都市ですからね!」

「さっきの梅街が、あんなに小さく……」


和は咳払いをした後、説明を始めた。


「では、街の説明します、先程この国は4つの街に分かれているといいましたが、西南に位置するのが私達がいた梅街、そしてその東、東南に位置する街が『竹街(たけのまち)』名の通り竹林が多くあります、あの街は農業が盛んな街で、あそこで取れるお米、『蓬莱米(ほうらいまい)』は絶品ですよ」


「北西に位置するのが『松街(まつのまち)』あの街では、神社が沢山ある神聖な街です、この国の三大神はあの街にいるとされてます、それぞれの神の声が聞こえる人間がいるんだとか」


「北東には『古良街(こよいまち)』があります、あの街は蓬莱の国とは違う独自のルールで成り立っている街なので、ほとんど独立状態です、私はあそこから梅街に引っ越したんです、だから梅街の人とは格好が違うんですね」


「さて、最後は国の中心に大きなお城が見えます、あれがこの国の象徴『蓬莱城(ほうらいじょう)』です!古良街以外の蓬莱の国の街全ての法をあの城の人達が決めています、さて、これで全ての街の説明は終わりました、どうでしたか?」


俺っちは、言われたことをメモし終わると、和の顔を見て答えた。


「ありがとうっす!いや〜、この国の情報が一気に知れて良かったっすよ」

「いえいえ、では、戻りますか!」


俺っち達は収納庫へと戻り、列車を降りた。そして、和に再び礼を言った。


「本当に助かったっす、これで姉貴達にいい報告ができるっすよ」

「こちらも願星を利用してくれてありがたいですよ、この街の人達は中々列車に興味を持ってくれなくてですね〜、ところで、その姉貴さん達はどちらに?」

「廃墟街っすよ、あの街は人間が入ると危ないらしいっすからね〜」

「え?あなたの姉貴さんって、まさか、妖怪なんですか!?」

「そうっすよ?俺っちの恩人っす!」

「あ、あいや〜……他の国では、妖怪と人間の仲がいいとは聞いた事ありますが、都市伝説じゃなかったんですね」

「この国もいつか両方が仲良くなれる日が来るかもしれないっすよ、案外話し合えば何とかなるかもしれないっすね!」


親指を立てて決まり顔をした瞬間、お腹がなり始めた。そういえばお昼の時間ということをすっかり忘れていた。ここに来てまだ何も食べていない。


「あ、あはは、腹減っちゃったっす」

「なら、一緒に食べますか?ちょうどお昼を持ってきてたんです、商店街に休憩場所があるのでそこに行きましょう♪」


俺っちは商店街の休憩場所に移動した。そして、和は俺っちに銀紙に包まれた三角形の物を渡した。俺っちは銀紙を剥がす。すると、なにやら白い粒が固まった物に、黒いシートが貼られている物体が顕になった。


「なんすか?これ」

「それは、蓬莱米を使用したおにぎりです、美味しいですよ♪」

「これがさっき言ってたほうらいまいってやつっすか、この黒いシートは一体……見たことないっすよ」

「それは海苔です、海藻ですから食べられますよ」


俺っちはおにぎりと言われる物を1口かじってみた。モチモチとした食感が口いっぱいに広がり、噛めば噛むほどにうまみが増し、ほのかに甘い。


「美味いっす!こんなの食ったことないっすよ!」

「気に入ってくれて何よりです♪」

「蓬莱の国の人はいつもこんなの食ってるんすか、幸せっすねぇ〜、ん?」


ブレスレットが小刻みに震える。ニーナの姉貴からの通信だ。俺っちは通信に出る。


『セフトにゃ〜!今どこにゃ?』

「商店街の中っすよ?街の情報はバッチリ掴んでおいたっす!」

『今はそれどころじゃないんだにゃ!大変なことが起きてるんだにゃ!』

「何があったっすか?」

『リィルにゃ〜とみぃにゃ〜がいないんだにゃ!街で探して欲しいにゃ!』

「それは大変っす!わかったっす、こっちでも探してみるっす!ラクロス」


俺っちは通信を切った。


「何やら良くないことが起きてる見たいですね」

「そうなんっすよ、俺っちの仲間がいなくなっちゃったらしいんっすよ」

「あいや〜、それは大変です、では私もお手伝いしましょう♪」

「恩に着るっす!」


俺っちと和はその場を離れてリィル先輩、そして実の姉貴の捜索を開始した。

PVアクセス3000人ありがとうございます!私の小説を読んでいただき、本当にありがたいです!これからもゆるりと書いていくので、お楽しみいただけたらと思います!

さて、今回は街で情報集めをしているセフトちゃんサイドのお話でした。蓬莱の国はこんなところだよ〜みたいな感じのお話だと思っていただければと思います、和風の街なので全て和風の言葉に変えなきゃ行けないので昔の歴史の授業をしてる気分なんですね(笑)、雰囲気が伝わってくれれば幸いです。では、また次回〜♪

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