第4話、街へ出発、でもここって……
私達は街へ行くため家を出て、途中でそこら辺に咲いているお花を摘みながら歩いていました。
しかし、なぜか森の前に辿り着いていました。
「ニーナちゃん、街へいくんだよね?」
「そうだにゃ、それがどうかしたかにゃ?」
「えっと〜……、ここ、森だよね?街へ行く道とは思えないんだけど…」
「森を抜けた先にあるんだにゃ」
「なんか暗そうな森……怖いなぁ……」
「あ、言い忘れてたけどこの森、盗賊とか妖怪が出てきて襲ってくるかもしれないから気をつけてにゃ〜」
「ええっ!?」
私はちょっと後ろに仰け反りました。
「どうしたんだにゃ?」
「だ、だって!危ないじゃん!違う道から行こうよ!」
「こっちが近道なんだにゃ、大丈夫、にゃ〜が守ってあげるにゃ〜♪」
「嬉しいけど、もし襲われて死んじゃったりしたら!」
「鈴にゃ〜、今死んじゃうっていったかにゃ?」
わたしの死ぬという言葉に反応したニーナちゃんはこんなことを聞いてきました。
「鈴にゃ〜はもしこの世界で死んだらどうなると思うにゃ?」
「それは……あの世におさらばしちゃうんじゃないの?」
ニーナちゃんは首を横に振りました。
「この世界では死んだら蘇ることができるんだにゃ」
「えっ!?そんな!ゲームじゃないんだし、ありえないよ!」
「理想郷ではありえる話なんだにゃ〜、でも記憶が理想郷に来た時の状態にリセットされちゃうんだにゃ」
「じゃあ、私が死んじゃったらニーナちゃんのことを忘れちゃうってこと?」
「そういうことにゃ、記憶を取り戻すこともできることにはできるらしいけど、かなりむずかしいと言われてるにゃ、だから蘇るということがわかっててもみんな命を大切にするんだにゃ、大切な人のことを忘れないために……」
「そうなんだ……」
この世界の創立者は、とてもいい人なんですね、死んでもまた理想の生活ができる、でも命の大切さを教えてくれる。
でも………。
「だったら尚更違う道から行こうよ!殺されたら記憶消されちゃうんでしょ!?」
「襲ってきたらやっつければいいんだにゃ、この世界も弱肉強食なことには変わらないんだから仕方がないにゃ〜」
「それって、殺される前に殺せってこと?」
「そこまで言ってないにゃ………少し懲らしめてやればそれでいいんだにゃ」
そう言ってニーナちゃんは振り向き、森の中へ歩き出しました。
「ほら、早くついてこないと置いていくにゃ〜」
「ちょ、ちょっと待ってよぉ〜!」
私もビクビクしながらニーナちゃんの後を着いていきました。
進むにつれてどんどんと暗くなっていきます。
今にも妖怪が出そうなくらいに……。
そんな恐怖に耐えながら歩いているとニーナちゃんが突然立ち止まりました。
「どうしたの?ニーナちゃん」
「静かに!……誰かいるにゃ……」
辺りを見回して見ましたが、私には何も見えません。
ニーナちゃんが後ろの木の方に向かって言いました。
「出てくるにゃ!そこにいるのはわかってるんだにゃ!」
すると、木の陰から少し痩せ気味の男の人が出てきました。
「ちっ、バレたか……」
「さっきからつけてきて、一体何のつもりにゃ?」
「お前には興味はねぇ、その隣の猫に用があるんだよ」
男の人は私に指をさしながら言いました。
「えっ!?わ、私!?」
「そうだよ、お前、いいものを隠しちゃねぇかい?」
「そ、そんなのないです!」
「へぇ、じゃあそのポッケに入ってる青い宝石はなんだい?
「え?」
私はポケットを探りました。すると中から青い宝石が出てきました。
この世界に来るために使った宝石です。
「なるほど、これがお前の狙いかにゃ?でもあげるわけには行かないにゃ〜」
「まったく、言う事聞かねぇ猫だ……」
男の人はナイフを取り出しました。どうやら私達から力ずくでこの宝石を奪うつもりのようです。
この人がさっきニーナちゃんが言っていた盗賊でしょうか?なんにせよすごく危険な人だと私は分かりました。
「うわわっ!ニーナちゃん!こんなのあげようよ、あげれば見逃してくれるかも!」
「ダメにゃ!それは鈴にゃ〜みたいな能力のない者には特に大切な物なんだにゃ、そうやすやすと他人にあげていいものじゃないんだにゃ!」
ニーナちゃんは私をかばう体勢になりました。
「素直に言うことを聞けば、傷つくこともなかったのにな」
「たかが人間の言う事なんて聞けるわけがないにゃ〜」
「生意気なガキ猫め…死ね!」
男の人はナイフで斬りかかって来ました。
しかし、ニーナちゃんが三本の尻尾を両腕と体に巻き付けて動きを封じます。
「なっ!う、動けねぇ!なんだこれは!?」
「諦めるにゃ、お前はもうにゃ〜の尻尾から逃れることは出来ないにゃ!」
「……っ!ち、畜生……化け物め!」
「それだけじゃないにゃ、これでも喰らえにゃ〜!」
そして、相手を動けない状態にしたままニーナちゃんは近づき、顔を爪で引っ掻きました。
「ぐあぁぁぁ!!!!」
「にゃ〜をただの子猫だと思ったら大間違えにゃ、妖怪の力を舐めるんじゃないにゃ!」
「降参だ!俺が悪かった、だからもうやめてくれぇぇ!」
それを聞くとニーナちゃんは男の人に巻き付けていた尻尾を解き、元の位置に戻しました。
「仕方ないにゃ〜、見逃してやるからさっさとどっかに行くにゃ、次にゃ〜達を襲おうとしたら容赦しないからにゃ!」
「ひぃっ!」
男の人は少しつまづきながら走ってにげていきました。
「ふん、大して強くなかったにゃ〜」
「今の人が盗賊?」
「まぁ、そんな感じにゃ〜」
「この世界でお金は簡単に稼げるのに、なんで盗みなんて……」
「現実世界みたいに盗みや殺しを制限するものが存在しないからにゃ〜、現実世界で出来ないようなことが理想郷ではできる、だから悪い事をする人もいるんだにゃ〜、というより、悪いことじゃないとすら思ってるかもしれないにゃ」
「ほんとになんでもありの世界ね…」
「あと、鈴にゃ〜のもってる宝石は不思議な力が宿ってるらしいからその力を奪おうとするって言うのも理由にゃ〜」
「この宝石ってそんなすごい物だったんだね、大事にしよっと」
私達はまた森の中を歩きだしました。
また何か襲ってくるかもとビクビクしていましたが、特に何も出てくることもありませんでした。
そしてしばらく進むと、奥の方が明るくなってるのが見えました。
「森の出口が見えてきたにゃ」
「ほんとだ、早く行こ!」
「そんなに慌てなくても出口は逃げないにゃ〜」「だって早くこの森から出たいんだもん!ほら、早く!」
「ちょ、ちょっと待ってにゃ〜!なんでにゃ〜が置いてかれてるんだにゃ〜!?」
私達は森の出口へと早足で向かいました。
どうも、rurusuです。
まためちゃくちゃな要素が追加されてますが恐らくこれで最後です(笑)
復活することは出来ても命を簡単に捨てては行けないという意味を込めてこういう設定になりました。伝わってくれれば幸いです。
では、また次回!