第37話、次の目的地へ
戦いが終わった私達は、荒れに荒れた図書館を片付けることになりました。まずは本棚を立てるところからです。
「「「せーのっ!」」」
私とニーナちゃんとみぃちゃんは、協力して重い本棚を立てました。何とか立てられたのは言いものの、さっきの戦いで体力を削られているせいで一台立てるだけでもすぐに疲れてしまいました。
「はぁ……はぁ……もう疲れたよ〜……」
「戦いの後だからさすがにね〜……」
「やっぱり1回休んでからやろうにゃ……」
「いいえいけません、そもそも図書館をめちゃくちゃにしたのはあなた方ですわ、さっさとやらないと終わりませんわよ」
「そんなこと言われても……」
倒れ込むように座った私達、リラさんは早く早くと急かしてきます。ですがもうクタクタで身体が動きません。すると、豹牙ちゃんがこんな提案をしてきました。
「なら、村の子供達に手伝わせよか?あのちびっこ達は見た目によらず力持ちや、早く終わる思うで」
「ほんと!?じゃあお願い!」
「お待ち、何故あなたが勝手に許可を取っているのですか?ここの家主はこの私ですわ、で、その子供達は何人ですの?」
「20人ぐらいやけど?」
「ふむ、まぁここが元通りになるのなら何でも良いですわね……イリス、ルノン、猫谷 鈴達を部屋で休ませなさい……いや、従う気があるならでいいですが」
イリスさんとルノンさんは笑顔で答えます。
「いいえリラ様、従いますわ」
「契約をしなくても私達はリラ様のことを信頼しております」
「それでこそ私のメイドですわ、では先程言った通りにしなさい、豹牙といいましたわね?その子達を連れてきなさい、ただし!やたらむやみにこの屋敷の物を触らせないこと!子供は何をするかわかりませんわ」
「安心せい、わいの村の子供達は育ちがええ、なんてったってわいが育ててるんやからな」
「ツッコミどころはありますが良いでしょう、猫谷 鈴達は終わるまでしっかり休息を取ること、いいですわね?」
私達は頷きました。しかし……
「返事!」
「あっ、はい!」
「ようござんす、イリス、ルノン、連れていきなさい」
「「かしこまりました」」
私達は豹牙ちゃん、黒乃ちゃん、ルミちゃん、リラさんを残して泊まっていた部屋に戻ってきました。そして部屋を別れた瞬間、私達はベッドに飛びつくようにして身体を倒しました。
「もうクタクタだよ……」
「鈴様、この度は本当にありがとうございました、リラ様の暴走を止められたのはあなた様のおかげです」
「ううん、みんなが頑張ってくれたおかげ、私は何もしてないよ」
「いいえ、鈴様がリラ様と戦うという大きな決断が私達を動かしたのです、そして、あなたの考えた作戦も素晴らしかった、自信をお持ちください」
「協力してくれてありがとう!」
「どういたしまして、それでは失礼します、終わった頃に戻りますので」
イリスさんは一礼して、部屋を出ていきました。何だかとてもいい気分です。余韻に浸っていると、突然部屋が青い光に包まれました。
「っ!?この光……!」
「ニライ様とカナイ様にゃ!」
予想通り、青い光が止むとニライ様とカナイ様が現れました。
「やぁ、元気にしてる?」
「なんか久しぶりだね」
「ニライ様!カナイ様!利奈ちゃんは、利奈ちゃんはどうなったんですか!?」
「ちょうどその話をしようと思ってね、私達の屋敷で封印してあるよ」
「今はぐっすり寝てる状態さ、だからしばらくはあの邪悪なオーラは出ないと思うよ」
「どうして利奈ちゃんはあんなことに!?」
「わからない、私達も早乙女 利奈が何故ここにいるのかが不思議でね」
「この世界は私達が招待した者以外は外から入れないようになってるんだ」
「みんなに渡した天生石も、言わばこの世界への片道切符さ」
「でも私達は彼女に天生石を渡した覚えはない」
「つまり早乙女 利奈は自らの力でここに来たってこと」
「でもそれはありえない、彼女は普通の人間だ、そして彼女はもう死んで魂だけのはず」
「でも彼女は肉体を持ってこの世界にいる、それに邪悪な力を纏ってね」
ニライ様とカナイ様でも分からない現象、利奈ちゃんの身に一体何があったのでしょう……。稲荷神社で見た黒い何かに包まれた身体、何重にも重なって何を言っているかも分からない声、そして躊躇なく私の首を絞める現実世界では絶対にしない行動、利奈ちゃんはそんな人じゃないはずです。
「でも!利奈ちゃんはいるんですよね!だったら、その邪悪な力を払えば!」
「初めはそう思ったんだ、だけど違った」
「あの邪悪な力が早乙女 利奈を操ってるんじゃない、彼女自身があの力を使っていたのさ」
「恐らくだけど、あれが彼女の能力」
「でもそれだとおかしいんだ、現実世界の人間がこの世界に来たら天生石の力が持ち主の能力になる」
「さっきも言ったけど私達は天生石を渡した覚えはない」
大分複雑な状況みたいです。利奈ちゃんの力があんなにも不気味な力だなんて、簡単に信じられません。
「ニライ様、カナイ様!利奈ちゃんの所に連れてってください!私が利奈ちゃんと話せば何かが変わるかも!」
「残念だけどそれはできない」
「来たかったら自力で来るんだね」
「ま、誰一人として私達に辿り着いた者はいないとだけ言っておくよ」
「諦めて家で待ってた方が身のためだと思うよ?」
「いいえ、私諦めません!絶対利奈ちゃんを助けに行きます!」
「あっそ、じゃあ私達の所に来れたら早乙女 利奈を返してあげよう」
「それまであの子には何もせずに眠らせておくさ、なんせ私達は忙しいからね〜」
「それじゃあまたね〜」
「素敵な生活を〜」
そう言って、ニライ様とカナイ様は帰って行きました。
「期待はしてなかったけど、やっぱりそんな簡単に行けるわけないよね」
「ニライ様とカナイ様は自分の住んでる所にこの世界の住民を絶対に入れないんだにゃ」
「どうして?」
「分からないにゃ、ニライ様カナイ様も言ってたけど誰もたどり着いたこともないから確かめようがないんだにゃ」
「そっか、でも私は絶対に行かなくちゃいけない!頑張ろう?」
「うん!私達は鈴ちゃんに付いていくよ」
「鈴にゃ〜のお友達とも話してみたいからにゃ〜」
「ありがとう2人とも、それじゃあちょっと休もっか?」
私達は同じベッドに入りました。とても疲れてたので直ぐに寝付けました。
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目を開けると、周りは何一つない真っ白な空間に立っていました。
(なんだろう?ここ、私はベッドで寝てたはずなのに……)
私はとりあえず真っ直ぐ歩いてみることにしました。足を動かして地面に足が着いている感覚はあるのですが、真っ白な空間しかないので進んでいるのかどうかも分かりません。
しばらく歩いていると、人影らしきものが見えました。私は速足でそこに向かいます。
その人物は後ろを向いています。どこかで見た事のある容姿です。ツインテールの黒い髪型、現実世界で私の通っていた高校の制服を着た女の子、そう、利奈ちゃんです。私は思わず叫びました。
「利奈ちゃん!」
そう言われた女の子は振り返りました。顔を見て確信しました。間違いありません。
「利奈ちゃん!やっと会えたね!」
「…………」
「どうしたの?私だよ?鈴だよ、姿が変わったから分かりずらかった?」
「……だめ」
「え?」
「来ちゃだめ、私のところに来ないで!」
利奈ちゃんはそう言うと、後ろを振り向き、走り出したました。
「ちょ、ちょっと待って!」
私は利奈ちゃんを追いかけます。しかし、いくら走っても追いつくことはなく、遂には利奈ちゃんは霧の奥へと消えていってしまいました。
「はぁ……はぁ……利奈ちゃん、どうして逃げるの?」
次の瞬間、白い世界にヒビが入り始めて、奥からどんどん壊れ始めました。あれに飲まれちゃいけない、そう思った私は回れ右をして、走りました。でも全く上手く走れません。
割れるスピードの方が早く、私が走っている地面まで割れてしまい、私は白い世界から真っ逆さまに落ちていきます。
「きゃああああああっ!!!!」
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「っ!!!!!!」
私は飛び起きました。見覚えのある部屋、リラさんの屋敷の部屋です。
「はぁ…はぁ……」
どうやらあの世界は夢だったみたいです。辺りを見渡すと私の両隣にみぃちゃんとニーナちゃんが立っていました。心配そうに私の顔を見ています。
「鈴ちゃん、大丈夫?うなされてたよ?」
「それでいきなり飛び起きるもんだからびっくりしたにゃ」
「ごめんね、ちょっと怖い夢見ちゃって……大丈夫だよ」
「そっか、良かった〜」
「リラにゃ〜が呼んでるにゃ、片付けが終わったみたいだにゃ」
私達は図書館に行きました。まるで戦いが嘘かのように綺麗になっています。
真ん中の長机の椅子にはリラさんが座っていて、その両側にはイリスさんとルノンさんが立っています。しかし豹牙ちゃん達がいません。
「あれ?豹牙ちゃん達は?」
「部屋で寝てますわ、今夕方ですが、村までは遠いと言うので今夜は泊めてあげてますわ」
「20人近くいるのに、部屋足りたんですか?」
「えぇ、屋敷の大きさ的には問題なかったのですが、子供が『この子と一緒じゃないと嫌だ』だの『女の子同士は恥ずかし』だの言いたい放題、全くこれだから田舎者は……」
「まぁでも手伝ってくれたんですから……」
「その辺は感謝してますわ、作業中も言うことは聞いてくれましたし、豹牙の教育が行き届いていますのね、まぁ、その話は置いといて」
リラさんは紅茶を一口飲んでまた話を始めました。
「では、始めましょう、ニライカナイの元へ行く鍵の為の材料、私の特別な力の記憶を」
「はい!」
リラさんは、私がネックレスとして首から下げている天生石に手を当てて、唱えました。
「天より生を与える青の神石よ、我の天の力を持ち主に記憶させ、力を与えよ!」
すると、私の天生石は青く強い光を放ちました。
「今です猫谷 鈴!天生同化をしなさい!」
「あ、はい!天生石、お願い!」
私は天生同化を開始しました。天生石は更に強い光を放ちました。あまりに眩しくて私を含めてここにいる人は皆目を瞑りました。しばらくすると光が止み、私達は目を開けました。
「これで完了ですわ、私の天力を光の武器に変換する力を使えるはずです」
「この力で何ができるんですか?」
「今までにあなたは豹牙や黒乃が使っている武器の能力を記憶しています、しかしあくまで技術を記憶しただけです、実際に物がなくては機能しないと説明しました、ですが私の天力を武器に変換させる力を記憶することによって物がなくてもその場で生成することが出来ますわ」
「え、凄い!どうやってやるんですか?」
「手を天に掲げて頭の中で自分の使いたい武器を想像するのです、やってご覧なさい」
私は手のひらを上にして天に掲げ、目を瞑り頭の中で薙刀を想像しました。すると、両手に冷たい感触がしました。私はそれを握り目を開けて上を見ました。手には青い光で作られた薙刀が握られていました。
「やった!できた!」
「鈴ちゃん凄い!」
「やったにゃ、鈴にゃ〜!」
「これで戦う手段が増えたはずですわ、しかし注意しなさい、あくまであなたの記憶したものは劣化版としか使えませんわ、過度に頼りにはしないように」
「はい!ありがとうございます!」
「あと、お詫びの品としてこちらを差し上げますわ、イリス」
リラさんが合図を出すと、イリスさんが「かしこまりました」と言い私の前まで来ました。そして私の右手首に緑の宝石が付いた金属製のブレスレットをはめました。次にみぃちゃんの右手首に付けました。そして、ニーナちゃんの目の前に来た時、ニーナちゃんは手をサッと後ろに隠しました。
「大丈夫ですよニーナ様、害を与えるものではありません」
「ほ、ほんとかにゃ?」
「ええ、ですから右手をお出しください」
ニーナちゃんは警戒しつつも右手を出しました。そして、ニーナちゃんもブレスレットをつけ終わり、イリスさんはリラさんの横に戻っていきました。
「リラさん、これなんですか?」
「『テレフォブレスレット』ですわ」
「テレフォブレスレット?」
「聞くよりも使ってみた方が早いでしょう、そのブレスレットに付いている緑の宝石に向かって『テレフォ』と言いなさい」
私は頷いて、言われた通りにしました。
「テレフォ!」
「同じ物をセフト達にもあげてますわ、名前を言ってみなさい」
「はい、セフトちゃん!」
すると、ブレスレットに付いている緑の宝石が光りました。
そして
『あ!繋がった!』
「この声、セフトちゃん!?」
『鈴の姉貴!聞こえてるっすか?』
「うん!」
「そのブレスレットはブレスレットを持っている者同士で離れたところで会話ができる魔法具ですわ!」
「凄い!まるでスマホみたい!」
私がそういった途端、周りが静かになりました。みんな目を丸くしています。
「鈴にゃ〜、『スマホ』ってなんにゃ?」
「うん、私も初めて聞いたよ?」
『俺っちもっす!なんすか?それ』
「えっと、離れた人と会話できる機械の事だよ」
「ふむ、その機械の事だと思って使うといいですわ、ま、所詮機械は魔法の真似事ですけど」
現実世界では当たり前にありますよという突っ込みはあえて伏せて、頷きました。
「そのテレフォブレスレットがあれば多少離れていても連絡取り合う事ができますわ、ルミという人間の使っている機械を元に即席で作ったものですわ」
「え、ルミちゃんのを参考に?さっき機械は魔法の真似事だって……」
「おだまり!」
「ご、ごめんなさい」
「ちなみに、相手との会話を切りたい時は『ラクロス』相手からの着信があった時は『リスポンド』と言えば会話ができますわ」
「分かりました!セフトちゃん、また後でね、『ラクロス』!」
私はセフトちゃんとの電話(?)を切るとメモ帳を取り出してブレスレットの使い方をメモしました。
「あら、メモを取るようになったのですね、その癖を付けなさい、今後役に立ちますわ」
「はい!」
「では話は終わりです、今夜はゆっくり休みなさい、明日から長い旅が始まりますわ」
「ありがとうございます、何かお礼をしたいです!」
「そうですね……では、今日の夕飯は人数が多いのでイリスとルノンには負担が大きい、なのであなた方が手伝いなさい」
「分かりました!じゃあセフトちゃん達にも頼もう!」
私達はセフトちゃん達の部屋まで行って3人を呼びました。そして、イリスさんとルノンさんと一緒に夕飯の支度をしました。その日の夕飯はかなり賑やかなものになりました。
そして、片付けが終わり、部屋に戻ってきてしばらく経った時です。私達の部屋にリラさんが入ってきました。
「お邪魔しますわ、うっ!やっぱり……」
「どうしたんですか?」
「あなた方、最近いつシャワーを浴びましたか?」
「え?え〜っと……豹牙ちゃんの村でお風呂に入ったから……2日前です」
「やけに獣臭いと思っていましたわ……私の屋敷に泊まる以上、清潔でなくては行けません、早くシャワーを浴びて来なさい、不潔な子は嫌われますわよ」
「分かりました」
「では、恐らくもう少しであなた方の番ですわ、セフト達が伝えに来るでしょう」
そう言ってリラさんは部屋を出ていきました。すると突然、ニーナちゃんの様子がおかしくなりました。何やら身体が震えているのです。
「お、お風呂……?今お風呂って言ったかにゃ?」
「うん!いっぱい汗かいたし、さっぱりしたいよね、早く入りたいよ」
「にゃ、にゃ〜はちょっと遠慮しとくにゃ」
「だめだよニーナちゃん、ちゃんと入らなきゃ、不潔だよ?」
「嫌にゃものは嫌にゃ!にゃ〜はお風呂が嫌いなんだにゃ!」
「嫌いでも入らなきゃだめ!ね?みぃちゃん」
「そうだよニーナちゃん、私もお風呂そんなに好きじゃないけど一緒に入れば大丈夫、一緒に入ろ?ね?」
「い、嫌にゃーーーーー!」
ニーナちゃんは勢いよく部屋から飛び出しました。
「あ!逃げた!そんなに嫌いなの……?」
「だめな猫はほんとにダメみたい、鈴ちゃんは大丈夫なの?」
「むしろ大好きだよ、私もこの世界では猫だけど現実世界では人間だし……」
「そうだよね、それよりニーナちゃんを追いかけよ」
「うん!」
私達も部屋から出てニーナちゃんを追いかけました。
「ニーナちゃん待って!」
「嫌にゃ!お風呂入りたくないにゃ!どうしても入って欲しかったら捕まえてみろにゃ〜」
ニーナちゃんの足は早いので中々追いつけません。しばらく廊下を走っていると行き止まりに辿り着きました。ニーナちゃんはとても焦っています。
「にゃっ!?しまったにゃ!」
「さぁニーナちゃん、もう観念して」
「いくら嫌いでも入らなきゃダメなんだよ?」
「ふん、そんなんで勝ったつもりかにゃ?喰らえにゃ!」
「うわっ!?」「きゃっ!?」
ニーナちゃんは2本尻尾を伸ばし、片方は私、もう片方はみぃちゃんの身体に巻き付けて来ました。腕事巻き付かれてしまったので身動きが取れません。
「行き止まりだからって追い詰められたわけじゃないにゃ!」
「もう!ニーナちゃん!」
「また随分と騒がしいですわね、シャワー、あなた方の番ですわよ、後ろがつかえてるので早くしてくださる?」
後ろを見てみるとリラさんが立っていました。私はリラさんに助けを求めます。
「リラさん!ニーナちゃんがお風呂に入りたがらないんです」
「あ〜、それで逃げるもんだから追いかけたらこうなっていると、私に任せなさい猫谷 鈴、こういう子の対策なんて余裕ですわ」
「お願いします、でも!やり過ぎないでくださいね!」
リラさんは頷きながら私達の前に出て、ニーナちゃんに問いかけました。
「ニーナ、何故シャワーが嫌いなのですか?」
「熱いのが嫌なんだにゃ!あと、お湯が目に入ってくるにゃ!」
「それはシャワーが怖いだけなのでは?」
「ギクッ!?そんなことないにゃ!怖いんじゃなくて嫌なんだにゃ!」
「ふむ、なるほど、なら選ばせてあげますわ、シャワーを浴びるか、それとも、あのビリビリをもう一度喰らうか」
「にゃっ!?」
「10秒以内にお答えなさい、さもないと」
そう言った時、リラさんの右手がバチバチと鳴り始めました。そしてゆっくりと近づいていきます。
「く、来るにゃ!こ、こっちだって!これ以上近づいたら!」
「『残りの尻尾を巻き付ける』そうでしょう? しかしよろしいのですか?貴方が尻尾を伸ばしてきて、もし私の右手が尻尾を掴んだら、どうなりますかね」
「っ!?」
「じゅう、きゅう、はち、なな」
「ひっ!?そ、そんなの卑怯だにゃ!」
「ろーく、ごーお、よーん」
「うわわ!待って!待ってにゃ!」
「さーん、にーぃ」
「わ、分かった!入る!お風呂に入るにゃ!」
「ようござんす」
そう言って、リラさんは右手のバチバチを消しました。そしてニーナちゃんは私達を解放しました。しかし、リラさんが後ろを振り向き歩こうとしたその時です。
「掛かったにゃ!喰らえにゃ!」
「リストレイント!」
ニーナちゃんが三本全ての尻尾をリラさんに伸ばしました。リラさんはくるりと振り向き、指を振って魔法を唱えます。3個のリングがリラさんの指から出て、リラさんの直前まで伸びた尻尾をリングが捉えました。リングに捕らわれたニーナちゃんの尻尾はしゅるしゅると元の長さに戻っていきました。
「にゃ〜っ!?これは!」
「ふふふ、掛かったのはあなたの方です、では行きましょう」
リラさんが指をクルクル回して歩き始めました。するとニーナちゃんの尻尾に付いたリングが光り、リラさんの元へ引っ張られて行きました。それと共にニーナちゃんも後ろ向きで地面を引きずられながらリラさんに引っ張られて行きます。
「にゃああっ!?引っ張られるにゃ〜!嫌にゃ!鈴にゃ〜!助けてにゃ!」
「ちゃんと綺麗にしてもらうんだよ」
「嫌にゃ嫌にゃ嫌にゃ嫌にゃあああああ!鈴にゃ〜の馬鹿ぁ!猫殺しーーーーーっ!」
ニーナちゃんは大きな声で叫び、暴れながら引きずられていきました。
「猫殺しって……大袈裟だよ……」
「私達も行こ?」
「うん!」
私達もバスルームに向かいました。シャワー室は2つあって片方をみぃちゃんが使いました。もう片方を使おうとすると、メイドのイリスさんがシャワー室の前に立っていました。
「申し訳ありません鈴様、こちらはニーナ様がご使用になられます、まだ来ていないようですが……」
「大分苦戦してるみたいですね……分かりました、みぃちゃんが出るのを待ってます」
「そうして頂けると助かります」
私はみぃちゃんが使っている方で待ちました。しばらくするとみぃちゃんがバスタオルを身体に巻きながら「終わったよ〜」と言って出てきました。みぃちゃんと入れ替えでシャワー室に入り、身体をしっかりと洗いました。そして私がシャワー室からでて身体を拭き、服を着ていると。
「フーーーーッ!シャーーーーッ!」
「威嚇するのはお辞め下さい!直ぐに終わりますわ!」
ルノンさんが、縄でグルグル巻にされたニーナちゃんを運んでいます。恐らくリラさんには手が付けられず縄で縛ってルノンさんに託したのでしょう。
ルノンさんは、シャワー室の前に立っていたイリスさんと協力して、ニーナちゃんと共にシャワー室に入っていきました。そして、シャワーの音がしました。
「にゃ゛ーーーーーーっ!」
まるで地獄釜に入れられたかのようなニーナちゃんの悲鳴と、暴れて壁に手やら足やらをぶつける音が聞こえてきます。
「す、凄い声だね……」
「あんなにお風呂嫌いな猫は私も初めて見たよ……」
しばらく経つとタオルで巻かれてまるで巻き寿司のようなニーナちゃんがイリスさん達に抱えられて出てきます。
「ふにゃ〜……」
「はぁ、はぁ、終わりました……」
「姉様、今の一瞬で2日分ぐらいのお仕事をした気分です……」
抱えられたニーナちゃんは暴れて疲れてしまったのかぐったりとしています。
「お疲れ様、イリスさん、ルノンさん、後は私達が部屋まで連れてくよ」
「ええ、お願い致します」
私達はニーナちゃんを受け取って、服を着させ、部屋に連れて行きました。
「うぅ……酷い目に会ったにゃ〜……」
「でもちゃんと洗わなきゃだめなんだよ?」
「次は私達と一緒に入ろ?そしたら怖くないよ」
「べ、別に怖いわけじゃ……まぁでも、鈴にゃ〜とみぃにゃ〜が一緒なら入ってもいいにゃ」
「ふふふ♪ それじゃ、明日に備えて、もう寝よっか?」
「うん!」「にゃ〜」
私達は電気を消して、眠りにつきました。
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そして、次の朝、旅の支度を終えた私達を豹牙ちゃんと黒乃ちゃん、リラさんとそのメイドさん達がロビーまで見送ってくれました。
「嫌や…ニーナはんとお別れなんて、ぐすっ……」
「しゃーないやんか、この子達は行かなあかんところがあんねん」
「大丈夫にゃ、終わったら絶対帰ってくるにゃ!」
「うん!だから泣かないで黒乃さん」
「待っとるで、ニーナはん、実はん」
「帰ってきたら旅の話たっぷり聞かせてな」
「「うん!」」
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「木乃葉様、リィル様、行かれるのですね」
「どうかお身体にはお気をつけて」
「ん、イリス殿とルノン殿も達者で」
「元気でね〜♪」
「「行ってらっしゃいませ」」
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「さて、ここでしばらくお別れよセフト」
「そうっすね、ちょっぴり寂しいけど、絶対いい報告を持ち帰るっすよ!」
「あんたがどれだけ立派な人になれるか楽しみよ、しっかりやりなさいね」
「了解っす!それじゃ!」
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「猫谷 鈴、あなたは今から特別な力を得るための旅に出ます、その覚悟は出来ていますね?」
「はい!」
「良い返事ですわ、私からは最後の助言です、この街を出て東に進むと『蓬莱の国』というところに辿りつきますわ、まずはそこに行きなさい」
「何から何まで、本当にありがとうございます!」
「ようござんす、これからあなたは沢山の壁に当たることでしょう、しかしその時でも冷静さを忘れては行けませんわ、それでは、あなたに祝福がありますように」
「はい!それじゃあ、行ってきます!」
私達はそれぞれ別れを告げて、清々しい朝日を浴びながら街を出ました。
どうも、春ですね!とても暖かくなってきました、過ごしやすい気候になってきましたけど、私はここ毎日花粉にやられてるんですけどね( ̄▽ ̄;)
さて、今回でアガルータ編終了です!お疲れ様でした!次からは新しい章が始まります、次回をお楽しみに!
では、また次回♪




