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絶望の果ての理想郷  作者: 秌雨
33/48

第33話、魔法で溢れる街


「猫谷 鈴が動いたみたいですね、こちらに向かっていますわ、今夜には到着するでしょう」


「如何致しましょう?」


「迎えに行ってあげなさい『イリス』、彼女達はここに来るのに必ず苦戦しますわ、『ルノン』にも伝えなさい」


「かしこまりました、『リラ』様」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


村を出た私達はアガルータに向かって歩いています。

まだまだ先は遠く、何も見えてきません、ただ広い平原を歩いているだけです。ただ歩いているのも暇なので何気ない話をしながら歩いていました。


「そういえば鈴にゃ〜、なんでいつも尻尾を地面に垂らして歩いてるんだにゃ?汚れちゃうにゃ」

「私、尻尾の動かし方わかんなくて.....」

「簡単だにゃ、腰辺りに力を入れるイメージだにゃ、やってみるにゃ」

「えっと.....こうかな?あっ!動かせた、うわっ、なんか変な感覚」


「そういえば鈴ちゃんって人間と猫のワーハクタクだったね、大丈夫、すぐに慣れるよ」


そうです、私は人間の猫のハーフで私のような種族はワーハクタクと言われます。

ワーハクタクと妖怪の違いは少しややこしく、この世界の中では大体両方とも人間と妖怪又は動物の特徴を持った生物の事を指すのですが、人間の特徴又は妖怪では無い普通の動物の特徴が強く出ているものはワーハクタク、妖怪の特徴が強く出ているものは妖怪と言われるそうです。


例えば今歩いているメンバーで私とリィルちゃんは妖怪というより普通の野良猫とくっついた姿なのでワーハクタク、ニーナちゃんとみぃちゃん、木乃葉ちゃんは猫又とくっついた姿なので妖怪という分類になるそうです。村にいる黒乃ちゃんに教えて貰いました。


「人間の俺っちからしたら妖怪もワーハクタクも一緒に見えるんっすけどね〜」

「同じなようで違うんだにゃ、セフトにゃ〜ももしかしたらワーハクタクになれるかもしれないにゃ〜」

「別になりたくないっすよ.....」


こんな感じでおしゃべりしながら歩いていると。もう夕方です。


「日が落ちてきたにゃ、そろそろ急ぐにゃ」


「今日の夜には着くって豹牙ちゃん言ってたからきっともうすぐだね!」


グルルル.....。


草むらから前見た獣が3匹、私達の行く道を塞いでいます。

前は暗くてよく分かりませんでしたが、今回ははっきりと見えます。大きい狼です。


「そう簡単には行かせて貰えないみたいだにゃ」



ニーナちゃん、木乃葉ちゃんとリィルちゃんは私達の前に立ち、私達を庇う体制になりました。私も戦わなくちゃ!

私は天生同化を開始しました。


「天生石、お願い!」

「鈴にゃ〜、襲ってきたら直ぐに結界を貼るにゃ、そして合図したら結界を破裂させるにゃ」

「うん、わかった」


「セフトにゃ〜は荷物を持ってるから後ろの警戒だけするにゃ!」

「わかったっす!」


「来ます!ニーナ様!」


そして、狼は一気に襲ってきました。私は言われた通り決壊を貼りました。私達に噛み付こうとした狼は結界に弾かれ後ろに仰け反りました。しかし、直ぐに体当たりして来ます。


「今にゃ!」

「うん!はああああっ!」


ニーナちゃんの合図と共に、私は結界を破裂させました。


ギャウッ!?


狼は結界の破裂の勢いでバランスを崩しました。

そして、ニーナちゃんは尻尾を3本伸ばし、3匹の狼の胴体に巻き付け、動けなくしました。するとみぃちゃんがニーナちゃんに向かって「硬化の弦!」と言いながら三味線を弾きました。身体を硬くする効果のある弦です。


「ありがとにゃ、リィルにゃ〜、木乃葉にゃ〜!」


ニーナちゃんが指示を出すと。リィルちゃんはステッキを構えました。そして魔法を唱えました。


「くらっちゃえ、ファイヤーショット!」


ステッキから炎が放たれ、狼に命中しました。

一方木乃葉ちゃんはクナイを構えたかと思うと目にも止まらぬ早さで別の狼を切りつけました。

これで二匹の狼は力尽き、光の粒となり消えました。

ニーナちゃんはそれを確認すると、2本の尻尾を最後の狼に集中して巻き付け、思いっきり持ち上げました。


「これで、終わりにゃ!」


そして、尻尾を振り下ろし、狼を地面に思いっきり叩きつけました。その後狼は動かなくなり、やがて光の粒となって消えてしまいました。


「ふぅ、なんとか倒せたにゃ」

「良かった、やっぱり強いね、ニーナちゃん」

「鈴にゃ〜も結界のタイミングも完璧だったにゃ」


「大丈夫?怪我してない?」


皆傷一つなく無事みたいです。


「よし、じゃあまたアガルータに向けて出発にゃ!」


と思っていた矢先.....。


グルルル.....。ガルルル.....。


さっきよりも多い呻き声、ガサガサとゆれる草むら、嫌な予感がします。

そしてさっきとは比べ物にならないぐらいの量の狼が草むらから出てきました。


「まずいっす、これ、10匹位はいるっす」

「ど、どうしよう.....」


「この量の狼に戦うのは自殺行為にゃ、街に向かって走って逃げるにゃ!」


私達は全力で走りました。もちろんそれを見逃す訳なく、狼達も追いかけてきます。


「はぁ.....はぁ.....」


気付けば日も完全に落ち、夜になっていました。

結構遠くまで逃げてきましたがまだしつこく追いかけてきます。


「しつこい奴らだにゃ〜.....」

「あ、見て!街の灯りが!」


しばらく走っていると。街の灯りが見えてきました。あそこまで逃げ切れば.....。しかし、


「きゃっ!」


みぃちゃんが躓いて転んでしまいました。私はすぐさま駆けつけました。


「みぃちゃん!」


直ぐに立ってまた逃げようとしましたが、もう遅かったんです。狼の群れはもう私達のすぐ側まで来ていました。


「鈴にゃ〜!みぃにゃ〜!」


もうダメだ.....。そう思った時です。



「『ムール・デ・フラム』!」


突如目の前に炎の壁が出来、狼はそれを恐れて逃げていきました。


「大丈夫でしたか?」


炎の壁が消え、後ろを振り向くと。赤いロングヘアーのメイド服姿をした女性が立っていました。私達は助けてくれたこの人にお礼をいいました。


「「ありがとうございます!」」

「間に合って良かった、私は『イリス・フルール』この先に見えるアガルータの者です、ここは危険です、街へ案内します、こちらへ」


私達はイリスと名乗る女性に案内され、なんとかアガルータの街に辿り着くことが出来ました。街の入口にはもう1人水色のショートヘアーのメイド服姿をした女性が立っていました。


「『ルノン』荷物を持ってあげなさい」

「分かりました、イリスお姉様」


ルノンと呼ばれた水色のショートヘアーの女性はセフトちゃんの銃が入ったケースを持ちました。


「荷物をお預かりします」

「ちょ、ちょっと!」

「安心してください、お部屋に着いたら返しますので」


2人に着いていき、街の中を歩きました。

街並みはプレスターとあまり変わりませんが、建物はプレスターよりも大きいものが沢山並んでいます。そして、私達はある大きい屋敷に案内されました。


「こちらが貴女方の今夜泊まるお屋敷です」

「えっ!?こんなに大きなところ、いいの!?」

「えぇ、『リラ』様から許可は頂いていますので」

「リラ様?」

「この屋敷の主です、後に紹介します、ではこちらへ」


私達は屋敷の中に入りました。ロビーは広くまるで高級ホテルのようです。赤い絨毯が敷いてある大きい廊下を通り、とある一室に案内されました。


「こちらが貴女方のお部屋です、3人部屋ですので残りの3人は別室になります」


部屋の振り分けは私とニーナちゃんとみぃちゃん、そしてセフトちゃんとリィルちゃんと木乃葉ちゃんということになりました。


「では、残りの方々はこちらへどうぞ」


ルノンというメイドさんは、セフトちゃん組を別の部屋に連れていきました。

そして私達は部屋に入りました。中はとても広く、きちんと大きいベッドが3つ並んでいて、ベッドの間には小さい机と机の上にはランプがあります。現実世界ではテレビでしか見たことがない、完璧なお部屋でした。


「こんな広いところ、ほんとにいいの?」

「問題ありませんよ、リラ様には貴女方を歓迎するように言われていますので、部屋はご自由にお使いください、バスルームは入口の近くにございます、何かあったらお申し付けください、私共は隣の部屋にいますので」


そしてイリスというメイドさんは「失礼します」といいながら部屋を出ていきました。


「ほんとに危なかったね、イリスさんが来てくれなかったらあのまま狼に食べられてたよ」

「うん、ほんとに街の近くでよかった〜」


「でも、ちょっとおかしくないかにゃ〜?」


「え?なんで?」


「この屋敷の主に「歓迎するように言われている」って言ってたけど、なんでにゃ〜達が来ることを知ってるんだにゃ?」


確かに、リラ様と言われる人には一度も会っていません。


「でもいい人には変わらないよ、こんな素敵なところに泊めてくれるんだから」

「そうだよ、それに怪しい人じゃないみたいだよ?」


「うーん.....まぁ、それもそうだにゃ〜、とりあえずもう疲れたから寝るにゃ」


私達はとてつもない距離を歩いたのと、狼に追い回されて疲れたので、もう寝ることにしました。

それぞれのベッドに入りましたが、やっぱり.....。


「ね、ねぇやっぱり3人で1つのベッドにしない?」

「うん、なんか変な感じ」

「そうしようにゃ」


みぃちゃんとニーナちゃんは私のベッドに入りました。

そして、私達は電気を消して眠りに付きました。



次の朝


私は珍しく丁度いい時間に起きることが出来ました。私達が起きて歯を磨いていると。昨日助けてくれたメイドのイリス

さんが部屋に入ってきました。


「おはようございます、昨日はよく眠れましたか?」

「うん!泊めてくれてありがとう!」

「満足いただけているようですね、ところで、リラ様が貴女方をお呼びです、大図書館までご同行願います」


私達はイリスさんに案内され、御屋敷の大図書館に来ました。中は下から天井まである大きくてびっしりと本が入っている本棚が沢山並んでいました。

奥まで進むと、長方形のテーブルと椅子があり、椅子に誰か座っています。本で顔が見えません。


「リラ様、お連れしました」

「ご苦労様イリス、下がっていいですわ」

「はい、失礼します」


そう言ってイリスさんは図書館を出ていきました。

そして、しばらく沈黙が続いたあと、目の前の本を読んでいる人は本を置きました。見た目は私達と同じぐらいの歳の女の子で、明るめの紫の魔女帽子を被って、明るめの紫のローブを着て小さい丸眼鏡をかけています。

女の子は口を開きました。


「さて、まずは自己紹介からですわね、私は『リラ・フルール』この屋敷の主ですわ」

「えっと、私は.....」

「言わなくてよろしいですわ、もう知っていますので、猫谷

鈴、ニーナ、実、そうでしょう?」

「えっ!?なんで私達の名前を!?」

「そりゃそうですわ、キリンヤガであれだけの騒動を起こしておいて、この辺に名が知れないと思いまして?」


私達、どうやらこの辺ではかなり有名になってるみたいです。そしてリラと名乗る人は話を続けます。


「それに、貴女方がここに来ることは予期していましたわ」

「やっぱり.....でもどうやって?」

「これですわ」


リラさんは丸い水晶を机の上に置きました。


「この水晶は天生石と反応するように作られています、貴女方がキリンヤガで騒動を起こした後からこの水晶を通して貴方の行動を見ていましたわ」

「えっ!?私達、ずっと見られてたってこと!?」

「ええ、ですので貴女方がこの街、アガルータに来た目的は大体把握しておりますわ」


私達の行動をずっと見ていた。そんな凄いことができるなんて、一体この人は何者なのでしょうか?


「じゃあ、おかしくなった利奈ちゃんのことも?」

「勿論ですわ、そしてその利奈という人間を探すための手がかりを私に聞きたい、そうでしょう?」

「うん!知ってることがあれば教えて欲しいの!」

「.........貴方、さっきから馴れ馴れしく話してらっしゃいますが、私を誰だとお思いですの?」

「え?リラさん.....?」

「そういうことを聞いているんじゃありません、私は大魔道士及び理想郷大妖怪が1人、『リラ・フルール』、高々国でひと騒動引き起こした程度で偉くなったおつもりで?」


理想郷大妖怪.....。凄い人なのはわかりますが、イマイチピンと来ません。そんなリラさんに対してニーナちゃんが突っ込みました。


「理想郷大妖怪なんて偉そうに大口叩いてるけどそんな証拠がどこにあるんだにゃ?」

「このアガルータが証拠ですわ」

「な、何を言ってるんだにゃ.....?」

「まだ分からないのですか?あなたも脳みそが小さいのですね、このアガルータという街を創立したのも、アガルータを魔法先進国にしたのもこの私、つまりこの街の法は全て私が握っている、正に、大妖怪に相応しい証拠では?」


なんと、リラさんはこのアガルータの街を創った大妖怪でした。私も驚きが隠せません。


「ふ〜ん、というか今さりげなく脳みそが小さいっていたにゃー!?」

「あら、悪口に気付くほどの脳はあるみたいですわね〜♪ほほほ♪」

「むぎぃぃぃ!こいつムカつくにゃー!」


「まぁまぁ、ニーナちゃん、この人は私達を助けてくれたんだから、許してあげようよ」


「むぅ〜.....」


ニーナちゃんは怒ると止められなくなるので、私はニーナちゃんを宥めました。何とか抑えてくれたようです。

そして私はリラさんに頭を下げて謝りました。


「いきなり失礼なこと言っちゃってごめんなさい、私達のことを理解してくれてたからつい興奮しちゃって」

「ふん、妖怪もどきのワーハクタクにしてはしつけがなっておりますわね、ようござんす、無礼は許しましょう」

「ありがとうございます!」

「さて、利奈という人間について、その子はニライとカナイの元にいます、しかしニライとカナイが住む場所はかつて理想郷の住民が誰一人として辿り着いたことの無い未開の地、私達の力を持ってしてもそこに行くことは叶いません」

「えっ!?じゃあ私は利奈ちゃんに会えないってことですか!?」

「えぇ、今現在では行く方法が見つかっておりませんので」


そんな、せっかくここまで苦労したのに.....。

私は酷く落胆しました。


「そう肩を落としなさんな、私は今現在の話をしていますのよ?」

「どういうことですか?」

「私は今ニライとカナイの住む場所へ行く方法を模索中です、私も興味がありましてね」

「私達も手伝います!出来ることなら何でもします!大切な友達を助けたいんです!」

「その熱意気に入りましたわ、部屋は自由に使いなさい、しばらくここに留まることを認めますわ」


少し上から目線なのが気になりますが、優しい人のようです。私は「ありがとうございます!」と言いながら頭を下げました。


「いつまでもお話をしているのもなんですし、私は研究に戻りますわ、貴女方はせっかく来た訳ですし、街を散策してみては?」


リラさんはテーブルの上にあるベルをガランガランと鳴らしました。すると赤髪のメイド、イリスさんが入ってきました。


「お呼びですか?リラ様」

「この子達に街を紹介してあげなさい」

「かしこまりました、鈴様、ニーナ様、実様、こちらへ」


私達は図書館を出ました。

廊下を歩いている時、向かい側から、セフトちゃんと木乃葉ちゃんが来ました。


「あっ、姉貴達〜!」

「セフトちゃん、街へお出かけしてたの?」

「そうっす!これ、見てくださいっす!」


セフトちゃんは持っているケースを開けて、銃を見せて来ました。

ルミちゃんの愛用の銃です。


「あ!新品になってる!」

「ルノンっちが銃を直してくれる店を教えてくれたんっすよ」

「これで、持って帰ればセフトちゃんの目的は達成だね!」

「ういっす!鈴の姉貴達も出かけるっすか?」

「うん!街を見てみようと思って、あれ?リィルちゃん達は?」


「ルノンっちと買い物中っすよ、あんまりにも長いもんで2人で戻ってきたっすよ」

「女の子は買い物が長い.....」


「セフトちゃん達も女の子だけどね.....それじゃあ私達も行ってくるね!」


「気をつけて行ってくるっす!」


「ニーナ様、ついて行きましょうか?」

「イリスにゃ〜が付いてるから大丈夫にゃ、木乃葉にゃ〜もたまには休むにゃ、いざと言う時に疲れてたら守れるものも守れないにゃ」

「御意」


そう言ってセフトちゃんと木乃葉ちゃんは部屋へ戻って行きました。

そして、屋敷の外を出て庭を通り、門の前まで来ました。前を歩いていたイリスさんはこっちを向いて口を開きました。


「では、今からこの街を案内致します、改めましてこの街はアガルータ、この世界で一番魔法が進んでいる国、即ち魔法先進国です」


「国?街じゃないの?」

「言い忘れてたけどこの世界では街や城はひとつの国として判断されるんだにゃ、だからこの街も国って言っても間違いじゃないんだにゃ」


「説明があったとは思いますが、この街は屋敷の主、リラ様が創立された街です、そしてこの街が魔法先進国と言われているのもリラ様のおかげです」


「じゃあこの街の人達はみんな魔法が使えるの?」


「えぇ、この街に生まれた者は必ず魔法を習得するように教育されますので、寧ろ魔法が使えない者はアガルータの恥と言われます、無論、外から来た者は別ですのでご安心を」


魔法が使えないと恥をかく街、さすが魔法先進国です。

私には住めない街ですね.....。


「では行きましょう」


イリスさんは街を紹介してくれました。街には普通の食べ物を売っているお店や、服や家具を売っているお店もあるのですが、やっぱり魔法の道具を売っているお店が多いです。

そして全ての店が紹介し終わりました。あっという間に夕方です。現実世界より1日が長くても体感は短く感じるものですね。


「楽しかった〜♪面白いお店がいっぱいあったね」

「プレスターとは違ったお店がいっぱいあったから新鮮だったね♪」

「美味しそうなものもいっぱいあったにゃ〜♪」


「満足して貰えて何よりでございます、そろそろ日暮れです、お屋敷に帰りましょう」


私達はお屋敷に戻り部屋でくつろいでいると、別室のセフトちゃんと木乃葉ちゃんが扉を強く開けて入ってきました。


「あ、姉貴達!」

「うわっ!びっくりした〜.....急に入ってこないでよ.....」


「リィル先輩とルノンっちが帰ってこないんっすよ!」

「もう夜になる、さすがに買い物にしては長すぎる」


「確かに心配だね、探しに行こ!」


私達はリィルちゃん達を探しに行こうと部屋を出ると、リラさんが向こう側からやって来ました。


「騒がしいですわね、もう少し人の家に泊まっているという自覚を持つべきですわ」

「そんなこと言ってる場合じゃないんです!リィルちゃんとルノンさんがまだ帰ってないんです!」

「買い物にでも出ているのでしょう、騒ぐほどの事じゃありませんわ」

「心配なんです、私達、探しに行ってきます!」

「お待ちっ!」


リラさんは探しに行こうとする私達を止めました。


「探すのはいいですが、どこにいるかわかっていらっしゃるのかしら?」

「え、えっと〜.....」

「はぁ、これだから脳みその小さい子は.....例えルノン達がトラブルに遭っていたとして、貴女方が解決できるのですか?」

「みんなで行けば、きっと何とかなると思います!」

「そこらの猛獣の群れ相手にすらしっぽを巻いて逃げた貴女方が?」

「うっ、それは.....」

「そんな貴女方が助けに行ったところで足でまといなだけ、あの小娘にはルノンがついています、あの子は優秀な子です、すぐに帰ってきますわ、さて、夕食にしましょ」


そう言って、リラさんは食堂へと向かっていこうとすると、ニーナちゃんが尻尾でリラさんを拘束しました。


「ぎゃっ!?な、何をするのですか!この汚らしい尻尾を離しなさい!」

「さっきから聞いてれば脳みそが小さいだの足でまといだの、馬鹿にしすぎにゃ!」

「事実を述べただけですわ!」

「いくらこの街を作った妖怪でも、そんな言い方は許せないにゃ!」


私はこれは行けないと思い、ニーナちゃんを止めに入りました。


「うわわ、まぁまぁニーナちゃん、抑えて抑えて」

「鈴にゃ〜もこんなに馬鹿にされて悔しくないのかにゃ?」

「確かにちょっとキツい言い方だけど、何もそこまでしなくても.....離してあげよ?ね?」

「ふんっ!」


ニーナちゃんは尻尾で捕えているリラさんを、ポイッと床に投げ捨てました。そしてリラさんはそのまま


「チッ 気分が悪い、助けたいのなら勝手に行けばいいですわ!何があっても知りません、全く、これだから子供は嫌いなのです!」


と言い残して食堂に行ってしまいました。

そして、助けに行こうと扉を開けると、そこにはリィルちゃんとルノンさんが立っていました。


「あっ!リィルちゃん!」

「ルノンさんも!」

「リィルにゃ〜!」


「リィル先輩!」

「リィル、心配したぞ」


「あはは、ごめんね〜みんな〜、私街でスイーツたくさん食べたらお腹壊しちゃって動けなくなっちゃってたの〜♪」


ルノンさんもリィルちゃんを看護するので精一杯だったそうです。

リィルちゃんらしいですね、心配でしたが安心して私は胸をなで下ろしました。そして、イリスさんもリィルちゃん達を出迎えました。


「リィル様、無事でよかった、ルノンも」

「申し訳ありませんイリスお姉様、もう少し早く対処すべきでした」

「いいのよ、ところであなた、まさか一緒にスイーツを食べたりはしていませんよね?」

「実は少し堪能しました♪」

「はぁ.....まぁ無事で何よりです、夕食が出来ています食堂へどうぞ」


私達は食堂へと行き夕食を食べました。とても豪華で満足しました。

リラさんとニーナちゃんは終始ピリピリした状態でしたが.....。


そして、お風呂へ入り、歯を磨いて寝る直前の時間となりました。一先ず先にベッドの上に座っているニーナちゃんは私にこんな質問をしてきました。


「鈴にゃ〜、やっぱりあいつ信用出来ないにゃ、偉大な魔道士とは風の噂で聞いてたけど、あんな奴だとは思わなかったにゃ」

「ニーナちゃん、気持ちはわかるけどそんなこと言っちゃだめだよ、リラさんカンカンに怒ってたよ?」

「だって、あんな馬鹿にされた言い方されて、許せるわけないにゃ、鈴にゃ〜が馬鹿にされると、にゃ〜は悔しいんだにゃ!」

「私を守ろうとしてくれたんだね、ありがとう、でも私は大丈夫だから、明日リラさんに謝ろう?」

「許してくれるかにゃ〜?」

「大丈夫、私達がついてるから、ね?みぃちゃん」


「うん!一緒に謝ればきっと許してくれるよ♪」


「じゃあ、明日謝るにゃ」


「そうしよう、じゃあ明日に備えて寝よっか?」


私達は電気を消して眠りにつきました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あの猫、絶対に許しません!私に屈辱を味わせたこと、後悔させてあげますわ」


私は夕方に屈辱的なことをしてくれたあの猫に復讐するため、猫が眠る部屋へと向かった。




どうも、お久しぶりでございます。最近時間の流れが早すぎて驚いています。かなり遅れてしまいましたが投稿することが出来ました。是非また楽しんで貰えればなと思っております。

さて、新しい街へと到着した主人公達、この街では一体何が起こるのか、今後の展開にご期待ください!

では、また次回♪

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