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絶望の果ての理想郷  作者: 秌雨
31/48

第31話、村での一日


「うーん.....?」


とある一室でにゃ〜は目を覚まし体を起こす。にゃ〜は豹牙にゃ〜と戦ってる途中に尻尾を強く揉みしだかれ、脱力してしまった。

リィルにゃ〜と黒乃にゃ〜が家の布団まで運んでくれて休んでいたらいの間にか眠っていたらしい。

ぼうっとしていると目の前の横にスライドするドアが開き、黒乃にゃ〜が入ってきた。


「ん?ニーナはん起きとったん?」

「いまさっき起きたにゃ〜」

「お疲れ様や、木乃葉はんもリィルはんも大丈夫みたいやね、ほんまごめんな、ヒョウ姉ちゃん久しぶりに稽古相手を見つけたから張り切ってるんや」

「強すぎるにゃ.....あのスピードとパワー、桁違いにゃ」

「ヒョウ姉ちゃん、あれでも本気を出してないんや、本気を出すと疲れるとか言って滅多に出さないんや」

「にゃっ!?じゃああれで手加減してたのかにゃ!?」

「せや、ヒョウ姉ちゃんの顔、ずっと笑みを浮かべて戦ってたで、相手に合わせて手を抜いてるんや」


あれが本気じゃないとか狂ってる。にゃ〜達は遊ばれていただけだったのだ。


「さすがにいきなり豹姉ちゃんの稽古は荷が重すぎるやろ、ウチの道場に来いひん?」

「黒乃にゃ〜の道場があるのかにゃ?」

「うん、2人は寝かせといてニーナはんだけ来ぃや」


にゃ〜は黒乃にゃ〜に案内され、さっきとは別の道場に連れてこられた。黒乃にゃ〜は横にスライドするドアを開けて「靴脱いでな」といいながら中に招く。

稲荷神社から疑問に思ってたが、こういう家には靴を脱ぐルールみたいなのがあるのだろうか?みんな脱いでるから流れで脱いでいたが、正直靴を脱ぐ意味がわからない。にゃ〜は聞いてみた。


「そういえばなんでわざわざ靴を脱いで入るんだにゃ?そのまま入れば出る時も楽チンにゃ」

「靴で入ったら正座する時に足が汚れてまうやろ?ウチらの家は床に座るっていう文化があるんや」

「へぇ〜、まぁ郷に入っては郷に従うにゃ、よいしょっと」


にゃ〜は靴を脱いで、道場に入った。

中は広く正面はまるっきり吹き抜けになっていた。奥には原っぱが広がっていてその奥には土の壁のようなものに白黒の丸い物がくっ付いている。


「変な建物だにゃ〜、正面に壁がないにゃ、あとあの白黒のやつはなんにゃ?」

「あれは的やで、ウチの専門はこれなんや」


そう言って黒乃にゃ〜は小部屋から弓を取ってきた。


「弓?」

「ご名答や、ウチは趣味で弓道をやってるんや、腕にも自信があるで」

「ふ〜ん、じゃ見せてもらうかにゃ〜」

「もちろんええで♪」


黒乃にゃ〜は矢を取り出し、足を広げ、矢をつがえ始める。

弓を天井の方向に上げゆっくりと弓を引いていく。

外で遊んでいる人間の子供たちの微かな声と、吹き抜ける風だけがこの道場を響かせていた。

にゃ〜は横から見ているが先程のおっとりした黒乃にゃ〜とは別に、とてつもない集中力でただ先にある的を見ていた。


そして、矢が放たれた。


弓の弦が弾かれる音と共にビュンッ!と飛んで行った矢は一瞬にして的の真ん中へと吸い込まれていった。


「当たった!凄いにゃ!」


そして、黒乃にゃ〜は黙って次の矢をつがえ始めた。そして同じ動作をし、もう一度矢を放つ。

この矢も的の真ん中へと飛んでいく。そして、的に当たる音とは違い、カツンっ!と乾いた音がする。なんと、矢の後ろに矢が刺さっているのだ。


「にゃっ!?矢に、矢が刺さったにゃ!?」

「うん、今日もいい調子やね♪」

「凄すぎるにゃ.....」

「ニーナはんもやってみぃひん?」

「やるにゃ!」


黒乃にゃ〜は再び小部屋に行き、弓を持ってきて、にゃ〜に渡した。


「あの的に当てればいいんだにゃ?」

「せやで、初めてで当たれば上出来やね」

「そんなの簡単にゃ♪」


にゃ〜は見よう見まねで矢をつがえ、弓を引く。


「えいっ!」


そして、弓を放った。

矢は的から大きく外れ、右方向に飛んでいき、土にパスっという音と共に突き刺さった。


「あ、あれ!?えいっ!」


2回目の弓を放った。今度は大きく左方向に飛んでいってしまった。


「な、なんでにゃ!?」

「闇雲に撃っても当たらへんよ、ウチが一緒にやったげる、ほら、矢をつがえや」


そう言って、黒乃にゃ〜は矢をつがえたにゃ〜の腕を持って、にゃ〜の弓を引いていく動作をアシストしていく。


「ええか?しっかり狙うんよ、よ〜く的を見て射るんや、合図を出したら放つんやで」


にゃ〜は小さく頷く。にゃ〜は全力で集中して的を見た。

そして.....、


「今や!」


その合図と共に、にゃ〜は矢を放った。矢は風を切って飛んでいき、的に当たった。


「当たった、当たったにゃ〜!」

「おお!凄いでニーナはん、偉いで♪」


黒乃にゃ〜はにゃ〜の頭をなでなでしてくる。なんだろうこの気持ち、黒乃にゃ〜のおっとりした顔とやさしい声、何か達成した時に褒めてくれるこの感じ。故郷のお母さんに似ている。


にゃ〜の故郷は猫の妖怪だけが住んでいるそこそこ大きい村だった。にゃ〜は村長の家庭に産まれたため、村のみんなから手厚く育てられた。そこまではいい、大昔の人と妖怪の戦争が終わった時には、にゃ〜の功績が讃えられ、既に村長相続の話が村には出ていた。

しかし、にゃ〜は村長になんてなりたくなかった。にゃ〜は大人にこそ可愛がられたものの、同じ歳の猫には特別扱いされてムカつくという理由で煙たがられていた。そんなにゃ〜には当然友達がいなかった。

だからにゃ〜は村から出て、友達を探しに行き、友達と笑い合えるような毎日を夢見ていた。村長になってしまえば、村にずっといなければならないし、同じ歳の子達に嫌われ続けることになる。


でも、村長になりたくない、村を出たいと言ってもほとんどの大人の猫達には反対され続けた。でも、1匹だけ理解してくれる存在がいた。それがお母さんである。お母さんはにゃ〜には好きに生きて欲しいと言ってくれた。そんなお母さんが大好きだった。いつも褒めてくれて、優しくて、尊敬するお母さんだった。

にゃ〜が村を出たいと言ったら、全力で協力してくれた。


にゃ〜が出た以降村の状況は分からない、今どうなってるのだろうか?


「ニーナはん?どうしたんや?ぼーっとして」

「ハッ!な、なんでもないにゃ...ちょっと考え事してただけにゃ」

「考え事?ちょっと教えてくれへん?今のニーナはん、ちょっと暗かったで」


にゃ〜達は座って、故郷の話をした。黒乃にゃ〜は真剣に聞いてくれた。


「そうやったんや.....で、ウチがそのお母さんみたいやったってことやね」

「うん、お母さんは黒乃にゃ〜みたいに優しくて、何をするにも丁寧に教えてくれたんだにゃ〜」

「ええお母さんやったんやね、たまには帰ってあげるんやで、お母さんも寂しいやろうからな」

「お母さん、怒ってないかにゃ〜?」

「怒ってるわけないやんか、お母さんはニーナはんが自由に生きて欲しくて協力してくれたんやろ?優しく出迎えてくれるて」


黒乃にゃ〜は再び、にゃ〜の頭をなでなでしてくれた。

その後、しばらく話をして休憩が終わった。


「よし、もうちょっとやってみよか」

「うん!全部的に当ててやるにゃ!」

「やる気満々やな〜♪嬉しいわ〜.....っ!危ない!」


黒乃にゃ〜はにゃ〜に突然飛びついてきて、共倒れしてにゃ〜に覆い被さった。そして立ち上がり、弓を取って矢をつがえて放った。


「ふぅ、ニーナはん、怪我はないか?」

「いきなりどうしたんだにゃ?」

「遠くからウチらのことを狙ってる人がおったんや.....あ、あった」


何かを拾った黒乃にゃ〜はこっちに来て、拾ったものを見せた。


「これは、銃の弾?」

「せや、外から銃で撃たれてたんや、危なかったわ〜」

「ありがとうにゃ、でも弓で反撃しても意味あったのかにゃ?」

「大丈夫や、敵はもう攻撃して来ぃひんよ」

「なんで分かるんだにゃ?」

「なんとなくや、でも危険かもしれんし、今日はもう稽古やめといた方がええな、ほな、家に戻ろか」


にゃ〜達は豹牙にゃ〜の家に戻った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「鈴の姉貴!守ってるだけじゃ勝てないっす!」

「そ、そんなこと言ったって!これ以外できないんだもん!」


私達は豹牙ちゃんとの稽古で戦闘中です。

豹牙ちゃんの攻撃から天生石の結界で私が、みぃちゃんとセフトちゃんを守っていて、豹牙ちゃんはガンガン攻撃してきている状況です。


「なかなか硬いやないか、けどそこからどうするんかねぇ?」


豹牙ちゃんは強めに木の薙刀を振って、攻撃しました。結界はガキんっと言う大きな音が響いていました。手にも振動が伝わってきます。この振動が伝わってきたっと言うことは結界が限界に近づいているということです。


「うううっ!」

「鈴ちゃん!このままじゃ!」

「で、でも!私にはこれしか!」


どうしよう、このままじゃ結界が割れちゃう、と思った時です。


「鈴ちゃん!結界を破裂させて!」

「え?う、うん!」


私は手に力を込めました。すると結界が膨らみ始めました。

豹牙ちゃんは危険を感じたのか防御耐性に入ります。そしてそのまま結界が破裂して、その衝撃で豹牙ちゃんが体勢を崩しました。


「うおっ!?」


「セフトちゃん!今のうち!『疾風の弦』!」


みぃちゃんは三味線を力強く弾きました。『疾風の弦』思った人に向かって弾くとその人の足を速くする効果のある弦です。


「もちろんっす!はああああっ!」


思い切ったセフトちゃんのナイフの攻撃はギリギリ防がれてしまいました。しかし豹牙ちゃんの額には汗が見えます。


「あ、危なかったなぁ、今のはさすがに焦ったで」

「くっ!どこまで超反応なんっすか.....!」

「いいや、今のはわいの運が良かっただけや、だからあんたらの勝ち」


セフトちゃんはナイフをしまい。豹牙ちゃんは薙刀を刃が上になるようにして立てて持ち、反対の手は腰に当てました。


「ふぅ、見事な連携やった、それにしてもその天生石、物凄い力やな!」

「え?豹牙ちゃんこの石の力のこと知ってるの?」

「もちろんや、村の子供達が懐に忍ばせてるからな、みんな能力が無い、その代わり危ないもんから危険を守ってくれる役割をしている石、しかしあんたのは別格や、さては天力の持ち主か?」

「うん、ある人に妖力を貰って天力に変換してもらったの」

「ほう〜?」


豹牙ちゃんは手に持っている薙刀を私の前に投げ落としました。


「それじゃ、天生同化してその薙刀を振ってみ」

「えっ!?でも私、この武器使ったことないし.....」

「ええから」

「う、うん.....天生石、お願い!」


私は薙刀を拾って、天生同化を開始しました。

でも、薙刀なんて使ったことないし現実世界でも剣道とかそういう類の部活にも入ったことがない.....。しかし私は自然と薙刀を構える姿勢になっていました。試しに薙刀を自分の思い通りのフォームで振ってみたり、突いて見たりしました。薙刀が風を切る音が道場に響いています。


「どう.....かな?」

「やっぱりな」

「やっぱりって?」

「鈴、おまえさん基礎的な動きは全て出来てた、薙刀を1回も触ったことないもんがそんな動きできるわけあらへん、つまり、おまえさんの天生石の力がおまえさんに力を与えてるっちゅうことや」

「でも、どうして急に?私、結界を張ってただけだよ?」

「その結界や、その結界は受けた攻撃を記憶して、天生石を持つもんに与える、与えられたもんはその攻撃の技を習得した状態になるんや」

「じゃあ、豹牙ちゃんの技を結界で受けたら、私が豹牙ちゃんの技を使えるようになるってこと?」

「あくまで劣化版っと言う形やけどな、あんたの持つ天生石は特別製や、持っとるやつはそんなに多くないで」



豹牙ちゃんの説明では、能力がない人の天生石の力にもいくつか種類があるらしいく、強力な武器や鎧へと変わる物や、身体能力が大幅に上昇する物、私の持っている結界を貼るものなど様々です。与えられるのはその人が理想郷で生きる上での意志によって決まるらしいです。

私のはみんなを守りたい、という意志があるため結界が選ばれたとの事です。


「でも、能力が判明したら天生石は力が消えて、ただの宝石になっちゃうって聞いたんだけど.....」

「それは、天生石の力が身体と一体化したからや、だから力自体は使える、ただ石を持たなくても良くなっただけや」

「じゃあ豹牙ちゃんは天生石から身体能力の力を貰ったの?」

「いいや、わいとクロのは理想郷(こっち)に来た時に授かった能力や、天生石は来た瞬間に無くなってた」

「でも凄く知識があるね」

「アガルータに詳しいやつがおってな、そいつに教えて貰ったんや、他の技も持ってるか?」

「えっと.....あっ!」


私はおきつね様と対決していた時、おきつね様の炎の玉を結界が受けていたことを思い出しました。と、言うことは.....。

私は右手を上げて手に力を込めてみました。すると、私の周りに3、4個の青い炎が生成されました。さすがに飛ばすと危ないのでそのままやめて、炎を消しました。


「まだ、これぐらいしか.....」

「ふむ、なるほどな、でも戦闘の時にその結界を使えば便利やで」

「うん!」

「さぁて、そろそろ今日の稽古は終わりやな、さすがに疲れたわ」


私達は家に戻りました。すると、黒乃ちゃんとニーナちゃんが出迎えてくれました。ニーナちゃんの体調も戻り、木乃葉ちゃんもリィルちゃんもすっかり元気になっていました。

そして、夕方になり、夕食の準備をしてみんなでちゃぶ台を囲みました。


『いただきます!』

「はい、召し上がれ、たんと食べや♪」


豹牙ちゃんもみんなでの食事を楽しんで上機嫌みたいです。


「それにしても今日の稽古は充実しとったなぁ♪」


「豹牙にゃ〜は強すぎるにゃ〜.....」


「訳わかんないわよ!あんなのインチキじゃない!」

「リィル、それ負け惜しみ、悔しいけど負けは負け.....でも肘打ちは痛かった.....」


「それはすまんな、思ったより焦って力が入ってしもうてのう〜」


「いや、見事だった、忍びの不意打ちを捌ける者はそういない」


「常に周りの警戒は怠ったらあかん、覚えとき、しかしわいも人のこと言えんな、鈴達の力を侮ってたばかりに負けてしもうたからの〜」


それを聞いたニーナちゃん達は揃って驚きの声を上げました。


「鈴にゃ〜達、豹牙にゃ〜に勝ったのかにゃ.....?」


「うん!みぃちゃんが上手くやってくれたお陰でね」

「鈴ちゃんがしっかり守ってくれたからだよ」

「俺っち達は強いんっすよ!」


「むむむ.....ちょっぴり悔しいにゃ」


「あ、せや、ニーナはんに弓教えてたらな、こんなものが窓から入ってきてな」


黒乃ちゃんが着物から何かを取り出し、ちゃぶ台に置きました。


「これは、銃の弾やな」

「そうだにゃ、窓の外から撃たれたんだにゃ、黒乃にゃ〜が守ってくれたから何とかなったけど、にゃ〜達狙われてるにゃ!」

「ただの悪戯やろ、そんな慌てんでも大丈夫や」

「悪戯で銃なんて撃たないにゃ!さすがに危険だにゃ!」

「大丈夫やて、さて、飯も食い終わったしそろそろ寝るで、クロ、寝床を案内してやってや」

「.........」


豹牙ちゃんは自分の部屋へと戻って行きました。

そして私達は黒乃ちゃんに布団が6つ用意されている部屋へと案内されました。


「ここやで、客室は広めに作ってもらったんや、たまにお客さんが村に泊まりたいって人もおったからこの家に泊めとるんや、それじゃゆっくり休んでな、なんかあったらウチの部屋に来てくれればええで♪」

「ありがとう、黒乃ちゃん♪」

「どういたしまして♪」


黒乃ちゃんが部屋を出て行こうとした時、ニーナちゃんがそれを止めました。


「黒乃にゃ〜、やっぱり危険にゃ、にゃ〜達が周りを見張るにゃ」

「ウチもそう思う、せやけどヒョウ姉ちゃんはこういうのに慣れとるんや、任せとけば大丈夫や♪」


そう言って部屋を出ていきました。


「むむむ.....本当に大丈夫なのかにゃ〜?」

「きっと大丈夫だよ、もし何かあったら私達も手伝おうよ、それに私達街を出てからまともに休んでないし、無理したら体壊しちゃうよ」

「確かに.....なら豹牙にゃ〜達のお言葉に甘えて、今日は寝るとするにゃ〜」


私達は布団に潜り一夜を明かしました。



どうも!秌雨です!

だいぶ遅れてしまいましたね、申し訳ありません.....。

次はもっと早く投稿できるよう頑張ります!

さて、豹牙ちゃんと黒乃ちゃんが前回と前々回に出てきましたが、関西弁のキャラってなんかいいですよね!でも、実際これで合ってるかどうか不安なのですが.....。(間違っていたら修正します!)楽しんで頂けたら幸いです。

では、また次回♪

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