第30話、小さくも力強い村
私達は旅の途中に狼の群れから助けてくれた関西弁を話す人達、豹牙ちゃんと黒乃ちゃんに連れられ、とある村に着きました。
気付けば朝日が昇っていました。
「さぁ着いたで、わい達の村や」
「おいでやす、歓迎するで♪」
村はそこそこ広く、木と藁でできた家がいくつかあり、畑や家畜小屋などがあるごく普通の村です。
豹牙ちゃんに村の子供達が駆け寄りました。
「ヒョウ姉ちゃんだ!」
「ヒョウ姉ちゃん達が帰ってきた!」
「おお!チビッ子達!元気やな〜、子供は元気に限るわ、ほれ、街で買ってきた飴や」
「わーい!」
「ありがとうヒョウ姉ちゃん!」
「おう!よし、飴も配ったし、今お客さん来とるんや、後で遊んだるから行った行った」
豹牙ちゃんは子供達に飴を配り、飴を貰った子達は嬉しそうに戻っていきました。
「人気者なんだね、豹牙ちゃん」
「元気やろ〜?わい譲りやで?あんた子供好きかい?」
「うん!元気な子達は特に!」
「ええことや、とりあえず家に来ぃや、お互いの話しようやないか」
「えっと、6人だけど.........大丈夫かな?」
「気にせんでもええよ、家は広い」
私達は豹牙ちゃんの家に案内されました。そこは、村の中で一番大きい家で、中は畳が敷いてあり、真ん中にちゃぶ台があります。
私達は家にあがらせてもらいました。
「クロ、お茶出したってや」
「わかった、みんなちょいと待っててな」
黒乃ちゃんは台所に行きました。そして、豹牙ちゃんはあぐらをかいて座り、また口を開きました。
「さて、落ち着いたところで、さっき言い忘れとったけどわいはこの村で村長やっとる」
「え!?豹牙ちゃん村長だったの!?」
「あぁ、この村もわいとクロとこの村のもんで作り上げたんや、それで村のもんがわいが村長に相応しいっちゅうんで、わいに決まったんや」
「どうして村を作ったの?ここからだと街が遠いし大変じゃない?」
「街だと稽古するところがなくてのぉ、こういうだだっ広い原っぱの方が稽古はしやすいんや」
そして、豹牙ちゃんは近くに置いていた薙刀を立てて言います。
「わいはこの村で薙刀道を子供に教えとる、まぁ、いわゆる師範やな」
「師範、かっこいい!」
「ちなみに、クロは弓の師範や、あんなに大人しい割に、集中力は抜群に高いんやで」
「もうヒョウ姉ちゃんやめてや〜、ウチそんな大層なもんやないて」
黒乃ちゃんがお茶が乗ったお盆をちゃぶ台に乗せてお茶を私達に配りながら照れています。
「まぁ、わいらの紹介はこんなもんや、あんたらどうしてあんな所で野宿なんかしてたんや?」
「私達、ある人を探してて、その手がかりを探すためにアガルータに向かってたの、その途中で.........」
「日が暮れたから野宿するって話になって、セフトにゃ〜が安全な場所を提供してくれるって言った結果あ〜なってたわけにゃ」
「そんなにイヤミっぽく言わないで欲しいっす!」
「なるほどの〜、ここからだとアガルータは1日かかるで、ほいで途中に村も街もな〜んもあらへん」
「じゃあさっきみたいな狼の群れも.........」
「もちろんおる、なんならここから先の狼はさっきのより凶暴で数も多いで、襲われでもしたら怪我どころじゃすまん」
「でも!どうしても行かないと!」
「そう慌てなさんな、せめて戦えるぐらいにはせんと話にならん、村に泊まりや、わい達が稽古つけたる」
「お願い!強くなりたいの!」
豹牙ちゃんは立ち上がり言います。
「ええで、そうと決まれば早速稽古や!」
「えっ!?いきなり!?」
「早く強うなりたいんやろ?行くで、クロ、いつものとこまで案内してな」
「はいよ〜♪」
豹牙ちゃんはわくわくしながら薙刀を持って外に出ていきました。
黒乃ちゃんに連れられ、私達も外に出ます。案内された場所に着くと、そこはある建物でした。
他の家とは違って全てしっかりとした木材で造られていました。中に入ると床も壁も木で出来ていて、壁に竹で作られた薙刀が何本か飾ってあります。
真ん中辺りで袴に着替えた豹牙ちゃんが正座をしています。
「お、来たな」
そして豹牙ちゃんは立ち上がりました。
「それじゃあ、早速稽古を始めるで、力比べや、6人やから、3人ずつわいと戦ってもらう」
「えっ!?豹牙ちゃんは1人!?」
「もちろん、じゃ、3人組を作りや」
私達は相談して、チームの組み合わせを考えました。
そして、ニーナちゃん、木乃葉ちゃん、リィルちゃんのチームとみぃちゃん、セフトちゃん、私のチームに別れました。
最初に戦うのはニーナちゃんのチームです。
「よし、じゃああんたらは何を使ってもえぇ、能力なり武器なりなんでも使いや、わいはこの竹で出来た薙刀を使う、戦えなくなったら負け」
「大した自信にゃ〜、リィルにゃ〜、木乃葉にゃ〜、全力で行くにゃ!」
「分かりましたニーナ様」「はーい♪3人ならあんなやつよゆーよ♪」
「久しぶりの実戦形式や、腕が鳴るでぇ!」
ニーナちゃんとその部下達はそれぞれ戦闘態勢に入りました。
豹牙ちゃんも竹で出来た薙刀を構えました。
「ほな、やるか!」
「行くにゃ!」
まず先に攻撃を仕掛けたのはニーナちゃん、豹牙ちゃんに爪を振り下ろします。
豹牙ちゃんは爪を薙刀で防ぎ、ニヤリと笑顔を向けました。
「なかなかええ一撃やな、でもまだ足りんなぁ!」
「にゃっ!?」
豹牙ちゃんは薙刀を振り上げて、ニーナちゃんの爪をどかしました。ニーナちゃんは少しよろけました。
「っとと、凄い力にゃ.....にゃっ!?」
「ニーナ様!」
体勢を立て直そうとした瞬間に豹牙ちゃんが薙刀をニーナちゃんに振り下ろします。すると木乃葉ちゃんがニーナちゃんの前に飛び出し、クナイで豹牙ちゃんの攻撃を防ぎました。
「リィル、支援」
「はーい♪ 『ルミエール』!」
リィルちゃんはそう言いながらステッキを天に掲げました。
すると、ステッキから眩い光が放たれました。
「うおっ!?」
豹牙ちゃんは眩しさのあまり目を瞑りました。
光が収まって目を開けると。木乃葉ちゃんはそこからいなくなっていました。
豹牙ちゃんがキョロキョロしている内に体勢を立て直したニーナちゃんが尻尾で豹牙ちゃんを捕まえようとしますが、豹牙ちゃんは尻尾を避けたり薙刀で弾いたりして、凌ぎました。両者1歩も譲らずです。
「おっと、不意打ちは効かへんで」
「それでもにゃ〜の尻尾から逃げられるかにゃ〜?」
ニーナちゃんは続けて3本の尻尾で豹牙ちゃんを狙い続けます。1本1本の複雑な動きに全て対応している豹牙ちゃん、表情には一切の焦りもありません。しかし、ニーナちゃんの尻尾に気を取られているうちに、木乃葉ちゃんが後ろから忍び寄りクナイを構えています。
そして、木乃葉ちゃんは豹牙ちゃんに音もなく飛びかかりました。
流石の豹牙ちゃんもこの不意打ちは避けれない、と思った時です。
「ガハッ.........!?」
「言うたやろ?不意打ちは効かへん」
なんと豹牙ちゃんの肘が木乃葉ちゃんのお腹を直撃しています。
木乃葉ちゃんはその場に崩れ落ち、お腹を押えてのたうち回りました。
「あぁ.....!うぅ.....!」
「木乃葉!」
「リィル.....今は、ニーナ様の.....支援.....」
「わかった!」
しかしそれだけでは終わらず、薙刀を一旦捨てて、ニーナちゃんの3本の尻尾を両手で全て掴み、一つに束ねて揉み始めました。
「ふにゃんっ///や、やめぇっ///力が入らにゃいぃぃ.....」
ニーナちゃんはその場で脱力し、ピンっとなっていた尻尾もグデグデになってしまいました。豹牙ちゃんが尻尾を離すとシュルシュルと元の長さに戻っていきました。
「ふにゃ〜.....」
「ニーナ様!しっかりして!」
「力が入らないにゃ〜.....」
リィルちゃんがすぐさまニーナちゃんの元へ駆け寄り、ゆさゆさと揺すって起こそうとしますがニーナちゃんは3本の尻尾全てを強く揉まれたせいで力が入らず脱力しきっています。
その隙に豹牙ちゃんがニーナちゃん達に近づいていきました。リィルちゃんは豹牙ちゃんの前にステッキを構えて立ち塞がります。しかし、リィルちゃんの足はブルブルと震えていました。
「に、ニーナ様に手出しさせないわよ!」
「.........」
豹牙ちゃんは薙刀を拾い、黙ってリィルちゃんとの距離を詰めます。
「と、止まりなさい!あんたなんて私の魔法でイチコロなんだから!」
「.........」
「と、止まりなさいって言ってるでしょ!聞こえなかったの!?」
「やめとき、わいには勝てへん」
「やって見なきゃわかんないでしょ!喰らいなさい!」
リィルちゃんは魔法を唱えようとします。しかし、豹牙ちゃんが薙刀でステッキを払い飛ばしてしまいました。
「ほら、言うたやろ?そんな足ブルブルさせながら言われても強がりにしか見えへんで、それにそんな生ぬるい脅しなんて効かん」
「だ、だから何よ!魔法が使えなくたってまだ負けた訳じゃないんだから!」
それでもまだ強がりを見せるリィルちゃん、しかし豹牙ちゃんは薙刀の先をニーナちゃんの顎にチョンっと当てました。それも見えない速さで、風圧でリィルちゃんの桃色の髪が揺れます。
リィルちゃんは腰が抜けて「ふぇぇ.....」と言いながらその場に膝を着いてしまいました。
「勝負あり、ヒョウ姉ちゃんの勝ち」
黒乃ちゃんの終わりの合図とともに、豹牙ちゃんは薙刀を下ろしました。
「ま、中々手応えはあったな、クロ、その子達を家まで運んで休ましたりや」
「わかったわ、リィルはん手伝ってくれるか?」
「わかったわ.....ニーナ様、ごめんなさい、負けちゃった.....よいしょっ!うぅ重い.....!」
「ちゃっかり失礼だにゃ〜.....」
リィルちゃんはニーナちゃんを持ち上げ、黒乃ちゃんは木乃葉ちゃんを持ち上げて、道場を出て行きました。
「よし、次はあんたらや、準備せい」
わかってはいましたが絶望的です。
それもそうです、あんな凄いものを見せられてその人と戦えだなんて絶望以外の何者でもありません。
「えっと.....やらなきゃだめかな?」
「何を言うとんねん、稽古やろ?はよ立ち」
豹牙ちゃんは戦いたくてうずうずしています。
自信の無い私にセフトちゃんとみぃちゃんがこう言いました。
「鈴の姉貴、やってやりましょうよ!」
「そうだよ!私も怖いけど、強くなる為だもん、頑張ろ?」
「セフトちゃん、みぃちゃん.....うん!頑張る!行くよ、2人とも!」
私達は立ち上がりました。
皆様、お久しぶりです!中々投稿出来なくてすみません、次はもっと早く投稿したいと思います。
さて、少しお知らせですが第2話のセリフを1部修正しました。物語の展開には大きく関係しないのでご安心ください。
自分で自分の小説を読み返しているのですが、気になってるけど直して大丈夫かなぁ?と中々踏み出せなかったのですが、どうしても気になったので修正させていただきました!お楽しみいただけると幸いです。
では、また次回!




