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絶望の果ての理想郷  作者: 秌雨
29/48

第29話、盗賊団の秘密


「アジトが壊滅!?俺っちがいない間に一体何をやってるっすか!」

「すいません!何とか俺だけは生き残ったんすけど」

「で?伝説の青い石はちゃんと盗ってきたんすよね?」

「いや、それが.........しくじっちまって」

「あんたまじっすか!?それでも偉大なる『セフト盗賊団』の一員っすか!?ていうかこの前も猫1匹にも勝てなかったじゃないっすか!ちゃんとアドバイスをしたはずっす!なのにどうして失敗するっすか!?」


俺っちは『セフト』理想郷の有名で偉大な盗賊団の1つ、『セフト盗賊団』のリーダーっす!

なんか部下がアジトを壊滅させられたとか言ってるっすけど、一体何をしていたんすかねぇ.........?


「姉貴、もうあいつらは狙わねぇ方がいいっすよ!命がいくらあっても足りねぇっす!」

「ビビってんじゃねーっすよ!ほらさっさと行くっすよ!調査団によるとあいつらはプレスターを出て北に向かったって情報が入ってるっす!」

「おお!ついに姉貴が出るんっすね!」

「任せるっす!こっちはアジト潰されてるんすよ!黙って逃がす訳には行かないっす!」


そして俺っちと1人の男盗賊はプレスターを通り抜けて北を目指す、そして少し遠くに歩く猫5匹を見つけた。男盗賊は小声で言う。


「あいつらっすよ、あの真ん中の餓鬼が青い石を持ってます」

「あんなガキンチョにやられたんすか!?もうちょっとしっかりするっすよ.........よし、先回りして通りかかった所を狙うっすよ、お前は何があってもここで見てるっす、お手本を見せてやるっす」

「了解です姉貴」


俺っち達は5匹にバレないよう、草むらに隠れながら先回りして待つ。そして5匹が通ろうとした時、俺っちは草むらを飛び出して声をかけた。


「お前ら!止まるっす!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


突然の出来事に私達は少しフリーズしました。そして、ニーナちゃんが目の前の青髪の女の子に話しかけます。


「いきなりなんなんだにゃ?お前何者にゃ?」

「何が『何者にゃ?』すか!人のアジトが潰しといて、知らないとは言わせないっすよ!」

「アジト?お前さては盗賊だにゃ?」

「その通りっす!俺っちは偉大なるセフト盗賊団のリーダー『セフト』っす!アジトを潰された仕返しをしに来たっす!覚悟するっすよ!」

「なんか変な喋り方にゃ、しかも全然怖くないにゃ」

「あんたに言われたくないっす!さぁて、死にたくなかったら大人しく青い石を渡すっす、それで許してやるっす」

「この前の盗賊と同じこと言ってたにゃ〜.........悪いけど渡さないにゃ!」

「あんたに聞いてないっすよ?そこの青い石を持った奴に聞いてるっす」


「え!?私!?」


急に私に矛先が向きました。セフトと名乗る女の子はこちらに短剣を向けてきます。でも、なんだろう、全然怖くないような.........。


「そうっすよ!あんたが青い石を渡せば、他の子は傷つかなくて済むっす」

「だ、駄目!これは私の大切な物なの!」

「やっぱりそう言うと思ったっす!じゃあ誰から殺されて欲しいっすかねぇ〜」


「じゃあ、にゃ〜が相手になるにゃ!」


ニーナちゃんが私の前に出て、戦闘態勢を取ります。そして、木乃葉ちゃんとリィルちゃんに指示を出しました。


「木乃葉にゃ〜、リィルにゃ〜周りを警戒するにゃ、まだ盗賊が隠れてるかもしれないにゃ!」


「もちろんです、この前みたいにこいつらの好きにはさせません」

「木乃葉を傷つけたこと、後悔させてやるんだから!」


2人はそれぞれ後ろ側を警戒し、武器を構えました。みぃちゃんも私を庇うようにして三味線を構えています。



「これで、襲撃が来ても大丈夫にゃ、卑怯なことはさせないにゃ!1体1ならお前になんて負けないにゃ!」

「それはどうっすかねぇ?俺っちは人殺しのプロとも言われてるっす、バラバラにされても知らないっすよ〜?」


2人は睨み合っています。そして.........。


「覚悟するっす!」


先にしかけてきたのはセフト、ナイフを振ります。しかしニーナちゃんは2本の尻尾でセフトちゃんの両腕を捕らえます。


「うわっ!?なんすかこれ!」

「簡単に捕まえられたにゃ〜、さて?ここからどうするにゃ〜?」

「へへっ、そんなんで勝ったつもりっすか?甘いっすよ!」

「っ!」

「尻尾をナイフで刺せば俺っちの勝t.........」


パシンっ!


ニーナちゃんは残ってる1本の尻尾でセフトの手に持っているナイフをいとも簡単にはたき落としました。


「.................えっ?」

「えっと〜、こっからどうするんだにゃ?まさか終わりじゃないにゃ?」

「.................」

「どうしたんだにゃ?」

「降参っす」


辺りは沈黙に包まれました。え?終わったの?そんな空気でした。


「えっ!?弱っ!」

「そんなどストレートに言わないで欲しいっすよ!」

「いやさすがに弱すぎるにゃ!盗賊団のリーダーだっていうし殺しのプロだって言うからめっちゃ強いと思ってたにゃ」


「え、嘘っすよね?姉貴」


草むらからもう1人、男の人が出てきました。私達を襲った盗賊でした。


「あ!あなたよくも木乃葉を!許さないんだから!」

「いやちょっと待ってくれ!今回は何も騙すつもりもねぇ、この通り武器もねぇよ」

「そうやって何回嘘ついた訳!?もう騙されないわよ!」


「いやリィル、どうやら本当っぽい」


木乃葉ちゃんは武器を構えるリィルちゃんをなだめます。


「そんなことより姉貴、これはどういうことっすか!全然ダメダメじゃないっすか!」

「.................」

「俺の信用してた盗賊はそんなんだったんすか.........はぁ.........」

「ちょ、ちょっと、どこに行くっすか!」

「俺はもう盗賊から足を洗う、正直あんたには失望っすよ、大泥棒の娘だって言うから信じて着いてきたのに、これじゃあ死んでいった奴が可哀想過ぎて、盗みを働く気にもなれねぇ、じゃあな、セフトさん、今まで世話になった、あと猫達ほんとに済まなかったな、もう襲うつもりはねぇ、あばよ」

「ちょっと待つっす!行かないでっす!お願いっすよぉぉぉぉ!」


哀れなセフトの声を聞き入れず、盗賊はどこかへ行ってしまいました。辺りにはセフトの鳴き声だけが響いていました。


「うぅ.........そんな.........そんなぁ.........」

「い、色々急展開が過ぎて意味わかんないにゃ、それにしても、まぁよくこんな弱っちくて偉そうな口叩けたにゃ〜」

「俺っち、これからどうすればいいんすかぁ.........」

「そんなこと言われても.........ま、にゃ〜達は先を急がなきゃ行けないからここで解放してやるにゃ、いい人生が見つかるといいにゃ〜」

「うっ.........うぅ.........」


ニーナちゃんはセフトを解放し、私達に「行くにゃ」と言いながら歩き始めました。木乃葉ちゃんとリィルちゃんもそれに続きます。

私も歩き始めようと思いましたが、中々前に進めません。だってちょっとあの子が可哀想なんです。

みぃちゃんが何かを察したのか私に聞いてきました。


「やっぱり、鈴ちゃんも?」

「うん、だって可哀想だよ」


「どうしたにゃ?鈴にゃ〜達」


確かにこの人は、盗みを働いて(正しくは部下に働かせて)私達にも酷いことをしました。でも、部下にも見捨てられて、何もかも失った彼女にとってここで放っておくには、あまりにも無慈悲な気がします。

私は、ついに我慢できず、セフトの前まで行きました。


「ちょっと、鈴にゃ〜!?」


「ねぇ、セフトちゃん、だっけ?」

「.........?」

「一緒に来ない?」

「え?」

「どこにも行くとこないんでしょ?じゃあ一緒に行こうよ!私達ある人を求めて旅をしてるの」

「いいんすか!?」


「鈴にゃ〜!何を言ってるんだにゃ?そいつは盗賊にゃ!」

「でもニーナちゃん、私耐えられないよ!こんな可哀想な人を放っておくなんて私にはできない!」

「盗賊なら自分でなんとかするんじゃないかにゃ〜?」


セフトちゃんはべそをかきながら言いました。


「俺っち、本当は偉大なる盗賊なんかじゃないっす、この肩書きは大泥棒の親っさんが俺っちにくれた肩書きなんっすよ、俺っちはその肩書きを盾にカッコつけてただけなんっす、だから盗み方なんてわかんないし、部下達にもデタラメ言ってたんす!だからこれからどうやって生きて行けばいいのかわかんないっすよぉ.........」


「どうしようもないやつにゃ.........」


「だったら尚更放っておけないよ!可哀想だよ!どこにも行くところがないなんて、ね?助けてあげようよ!」


「む〜、仕方ないにゃ〜.........」


ニーナちゃんは渋々認めてくれました。


「あ、ありがとうっす!本当にありがとうっす!あんたは命の恩人っす!名前を教えて欲しいっす!」

「私、猫谷 鈴、よろしくね、セフトちゃん」

「はい!姉貴って呼ばせて頂くっす!もう盗賊から足を洗うっす、姉貴に一生着いて行くっす!」

「姉貴!?」


そして、ニーナちゃんはセフトちゃんに指をさして言いました。


「じゃあ、鈴にゃ〜の言うことは何でも聞くんだにゃ?」

「もちろんっす!鈴姉貴達の手下になるっす!」

「にゃ〜はまだお前を信用してる訳じゃないにゃ、少しでも裏切るようなことをしたら、すぐににゃ〜達から離れてもらうにゃ、いいにゃ?」

「絶対に裏切らないっす!神に誓って断言するっす!」

「それならいいにゃ、これからもよろしくにゃ〜」


そして、全員セフトちゃんに自己紹介を済ませ、私達はまた出発し始めました。まさか、急に仲間が加わるとは思いもしませんでした。そうこうしている内に夕陽が見え始めました。


「もう夕方なの?現実世界よりも一日は長いはずなのに」

「ほんとだね〜、色々あると早く感じるね」


「そろそろ今夜泊まる所を探さないと行けないにゃ〜」


とは言ったものの、まだ村や町が見えるような雰囲気ではありません、整備したであろう綺麗な土の道、辺りは草原、たまにある木々、変わりない景色が続いています。


「でも、何も見えてこないね.........」

「今夜は野宿かもしれないにゃ〜」


「俺っちに任せるっす!そういうのは得意なんっすよ!」


セフトちゃんがドヤ顔でそう言い放ちます。相当自信があるようです。


「本当かにゃ〜.........?」

「本当っすよ!こう見えてもサバイバル()プロなんっす!」

「威勢だけはいっちょ前にゃ.........」

「じゃあ証拠見せるっす、最高の寝床を提供するっすよ!」


セフトちゃんは先頭を歩き、今夜寝るところを探し始めました。少しばかり歩くとセフトちゃんは立ち止まりました。


「うん、ここがちょうどいい所っす!近くに木もあるから焚き火もしやすいし、小石も少ないから寝やすいっすよ、森もないから変な妖怪に襲われる心配もないっす、いや〜いい所が見つかってよかったっすよ〜、どうやら使っている人もいないみたいっす」

「セフトちゃん凄い!本当だったんだね!」

「姉貴に褒めてもらえるなんて!感激っす!」


「むむむ.........にゃ〜も野宿は得意な方だけど、にゃ〜より凄いかもにゃ、人間の癖に中々やるにゃ」


「よし、そろそろ夜になるっすね、夜は長いっす、焚き火の準備を始めるっすよ、姉貴達はここで待ってくださいっす、燃えそうなものを探してくるっす」


そして、セフトちゃんは木がある方に向かいました。するとみぃちゃんが着いていきます。


「セフトちゃん、私も手伝う!」

「え!?いいんすよ!沢山歩いてお疲れっしょ、姉貴達は休んでてくださいっす」

「手伝わせて、私、みんなの役に立ちたいの!」


そんなみぃちゃんを見て私もセフトちゃんの元へと行きました。


「セフトちゃん、私も!」

「鈴の姉貴まで.........でも姉貴達の頼みなら断る訳には行かないっす、いいっすよ、じゃあまずは湿ってない乾いた木の枝を取ってくるっす!」


「しょうがないからにゃ〜も手伝ってやるにゃ、木乃葉にゃ〜とリィルにゃ〜は周りの安全を確かめるにゃ」


「御意」

「はーい♪」


「あぁ、こんな優しい人達に拾われて俺っちは幸せっす!」


私達は焚き火をするための木を拾いました。

木が集め終わるとセフトちゃんは木を選別し始めました。


「何してるの?後は火をつけるだけじゃないの?」

「焚き火は何でもかんでも適当に木に火を付ければいいってもんじゃないんっすよ、最初は針葉樹の枝に火をつけると火がつきやすいんっす!」

「凄い!本当にプロだね!」

「えへへ、そこまで褒められると照れるっすよ、よし、じゃあ火をつけるっす、えっと、火をつけられる物はっと.........」


「ふんふーん♪そういうことなら私におまかせ☆」


見回りをしていたリィルちゃんがそういいながらこっちに近づいて来ました。


「私の魔法で簡単に火をつけられるわ♪」

「おお!助かるっす!本当は持参の火打石で付けようと思ったんすけど、魔法があるならそっちの方が速いっす!」

「さっすが私、天才美少女魔法使い白猫リィルちゃんね♪」

「まじ尊敬っす!リィル先輩!」


「もしかしてリィルちゃんとセフトちゃん、相性いい?」

「タイプがリィルと似てるのかもしれない」


そして、リィルちゃんは魔法で炎の玉を木に向かって放ちました。すると、木が勢いよく燃え上がりました。


「燃えた!」

「しかもいい勢いで燃えてるっすね!これならしばらくは持つっすよ!でも当然ずっと燃えてるわけじゃないっす、火を絶やさないように今度はこっちの広葉樹の枝を追加すると火は消えないっす、その役は俺っちがやるっす」

「ありがと!それにしてもお腹すいたね〜、辺りもすっかり暗くなっちゃった」


「それならさっき、見回りしてる時に私が木の実を取ってきた、セフト、これ食べれる?」


木乃葉ちゃんは袋の中身をセフトちゃんに見せました。中には赤い木の実が大量に入っています。



「これは、『アガルタベリー』じゃないっすか!しかも大量に、ラッキーっすよ!高級なベリーっす!普通ベリーは酸っぱいっすけどこれは甘いんっすよ」

「驚いた、木の実の種類までわかるのか」

「朝飯前っすよ!とか言ってるうちに腹減りましたねぇ.........早く夕飯にするっす!」


私達は、木の実を食べました。本当だ、甘い。久しぶりにこんなに美味しいフルーツを食べました。みんなも満足そうに食べています。


「それにしても、セフトちゃんを仲間に入れて良かったね♪」

「うん!でも鈴ちゃんも凄いよ、困ってる人を助けたんだもん」

「私、悲しんでる人を見ると心が痛くなって、耐えられなくなっちゃうの、だから、助けられる人は助けたいしできることはしたいって思っただけだよ」


「でも鈴にゃ〜はちょっと優しすぎにゃ、今回はセフトにゃ〜が良い奴だったから良かったけど、これから鈴にゃ〜の優しさに漬け込んで来るやつもいるかもしれないにゃ、気をつけるにゃ」


「うん、気をつける!」


そして、食事を済ませみんなで沢山お話をしたあとに、焚き火をセフトちゃんに任せて私達はそろそろ寝ることにしました。疲れていたせいか、私達はすぐに眠りに着くことが出来ました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


俺っちはセフト、今この焚き火の火を絶やさない為に燃料を投下する作業を任されてる途中だ。姉貴達は眠ってしまっている。ふと俺っちは思った。


(俺っちって馬鹿っすね、親っさんの肩書きだけで努力もしないで、その結果部下にまで見捨てられて.........でも、こんな俺っちを何で鈴の姉貴は受け入れてくれたんすかねぇ.........?)


俺っちは親っさんとの会話を思い出した。


『セフト、俺ァお前に盗賊になれとは言わねぇ、だがな、それでも名を挙げられるような立派な人間になれ』

『いいや、俺っちはいつか親っさんみたいな立派な盗賊になるっすよ!』

『へへ、そりゃあ嬉しいねぇ、じゃあ俺が死んだらお前にこの肩書きをやるよ、俺の部下を丸ごとお前にプレゼントだ』


そう、今になって考えれば親っさん、本当は俺っちに盗賊になんてなって欲しくなかったのかもしれない、なって欲しかったら盗みも教えてくれるはず。でも親っさんは死ぬまで教えてくれなかった。つまり、俺っちにはちゃんとした人生を歩んで欲しいと言う意思表示だったのかもしれない。


(親っさん、ごめんなさいっす.........たくさんの部下を殺してしまったっす、俺っちのせいで.........)


でも、こんな所でくよくよなんてしてられない。俺っちには親っさんから貰った使命がある。きっと姉貴達となら、チャンスはある。絶対に名を挙げられるような人になる!絶対に!


さて、この時間になっても何も襲ってこない、明るくなり始めると俺っちの寝る時間が短くなってしまう。俺っちもそろそろ寝ようと火を消そうと思ったそんな矢先だった。


グルルルル.........。


狼の唸り声が突然聞こえてきた。しかもかなり近い。


(くっ!やっぱり来るんっすか.........慣れてはいるけどやっぱり生きた心地がしないっす、でも1匹だけなら余った木材を松明代わりにして、追っ払えるっす)


しかし、現実は甘くなかった。狼の唸り声が、二重にも三重にも聞こえてくるのだ。この感じ、1匹だけじゃない。

2、3、いやもっといる。


(まさか!.........嘘っすよね.........?7匹はいるっすよ!)


こんなの対処出来るわけない、速く姉貴達を起こして逃げなければ.........!しかし、危険を察知していたのか起きていた木乃葉先輩が小声で話しかけてきた。


「セフト、聞こえる?この声」

「木乃葉先輩?起きてたっすか?」


俺っちも小声で返す。


「ん、この声の重なり具合、7匹はいる」

「そうっす、早くみんなを起こして逃げないと!」

「いや、それもできない、私達囲まれてる」

「くっ!戦うしかないっすか?」

「まずい、近づいて来てる」


狼の群れは1歩、また1歩と進んできていた。歩いている音が明確に聞こえてくる。どうしよう、こんなの初めてだ。


「セフト、みんなを起こして、でも大声は出さないで、こいつらを刺激する」

「わかったっす!」


木乃葉先輩は武器を構えている。俺っちは姉貴達の身体を揺さぶった。すると、1番に反応があったのはニーナの姉貴だった。


「う〜ん、なんなんだにゃ〜.........?」

「姉貴、大変っす、狼が襲って来たっすよ」

「そんなわけ.........うわa.........むぐっ!?」

「わわわっ!大きな声出しちゃダメっす!刺激しちゃうっすよ!」


ニーナの姉貴の口を押さえることによって、何とか刺激せずに起こすことは出来た。しかし、最悪の事態が起きたのである。次に起きたのはリィル先輩だった。


「う〜ん.........なんかうるさいわねぇ.........えっ!?きゃあああああああ!!!!」

「えっ!?何何!?」

「どうしたの!?」


「あ!リィル先輩達、ダメっす!」


リィル先輩が思いっきり叫んでしまったのである。その叫び声で鈴の姉貴と実の姉貴は起きたが同時にパニックになってしまっている。


そして、同時に狼の群れが一斉に襲ってきた。


「うわわ!?どうするっすか!一気に来るっすよ!」

「まずい!こんなに捌ききれない!」


「食べられちゃうにゃ!」


もう狼はすぐそこまで来ていた。もうだめだ.........。そう思った時.........。

突然矢が空から降ってきて目の前の4匹の狼に刺さり、狼は青色の光の粒となって消えた。要するに死んだのである。

一方後ろを見ると、薙刀を持ち、豹のような耳と尻尾が生えた少女が1人、3匹ぐらいの狼の攻撃を防いでいた。


「ぬるいのぉ!せやあああ!!!」


少女は狼を押し返し、薙刀でいとも簡単に全部倒してしまった。


「ふぅ、何とか倒せたのぉ、『クロ』もいい支援やったで」

「『ヒョウ姉ちゃん』の役に経つことができて良かったわぁ〜♪」


そしてもう1人弓を持った黒い豹の耳と尻尾が生えた少女も暗闇から出てきた。2人共和風の着物を着ている。

薙刀を持った少女は口を開いた。


「あんたら怪我ないか?手当てならしたるで?」


「いや、大丈夫っす.......鈴の姉貴達は?」


みんな口を揃えて大丈夫と言った。そして助けてくれたお礼をした。


「それにしても、ここで焚き火なんてしたらあかんがな〜、ここら辺は獣の巣がぎょうさんあるんやで?」


それを聞いたニーナの姉貴がジト目でこちらを見ながら言った。


「セフトにゃ〜、ここは安全って言ってたけど、どういうことにゃ?」

「い、いやそんな目で見ないでくださいっす!こんなことになるなんて思わないじゃないっすか!」

「ところで、君達誰かにゃ〜?この辺の子達かにゃ〜?」


薙刀の少女と弓の少女は答える。


「わいは『豹牙(ひょうが)』こっからちょいと行った先にある村に住んどるもんや、人間と豹と狩猟豹のワーハクタクや」

「ウチは『黒乃(くろの)』ヒョウ姉ちゃんの妹や、人間と黒豹のワーハクタクやで」

「以後お見知りおきを」「以後お見知りおきを」


息ぴったりなタイミングでお辞儀をする。そして、俺っち達も自己紹介を済ませた。

すると、黒乃と名乗る少女がニーナの姉貴の方をじっと見て目をキラキラさせている。


「なぁ、ニーナはん、あんた猫又やんな?」

「そうだにゃ、それが何かにゃ?」

「うぅ.........もう我慢できへん!」

「にゃあああ!?」


黒乃は突然ニーナの姉貴に抱きつき、耳やら尻尾やらを触り始めた。


「ひにゃんっ!?何するんだにゃ!くすぐったいにゃ〜」

「あぁ、かわええ♪ めっちゃかわええ、モフモフしとる♪」

「いきなりなんなんだにゃ〜!」

「ウチ、猫大好きやねん♪さらに『にゃ〜』なんて言われたら、かわええに決まってるやん、こんなん我慢できへんて♪」


「その辺にしときや、クロ、初対面やで」


豹牙は黒乃の首根っこを掴んでニーナの姉貴から引き剥がした。黒乃は「あぅぅ.........」と言いながら引っ張られていく。

そして豹牙は俺っち達に質問をしてきた。


「ところであんたらどこに行こうとしとるんや?見たとこ旅の途中って感じやけど?」

「アガルータに行くんだにゃ」

「なるほどな、でもアガルータはまだまだ遠いで、わいらの村に寄っていかへん?通り道やし」

「だって、鈴にゃ〜、どうかにゃ?」


「せっかくだから寄っていこうよ、何か掴めるかもしれないし!」


「よし、決まりやな、ワイに着いて来ぃや」


こうして俺っち達は豹牙達の村に行くことになった。辺りはもう明るくなり始めていた。


どうも、秋雨です。今回は凄く早く投稿できました!

今の時期、外に出れなくて大変ですね、でもここが踏ん張りどころです!耐えましょう!

さて今回ですが、新キャラ登場ですね!またキャラの濃い人達になっております( ̄▽ ̄;)お楽しみいただけると幸いです

では、また次回!

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