第23話、奇跡の再開
(え〜っと........どうしたらいいんだろう........)
私は出雲、おきつね様に仕える妖狐。私は今とても悩んでいる。
ところで質問だけど、妖術を人に教えるのってどうしたらいいと思う?
いや、私ひとりで何言ってるんだろう........。そもそも私は誰に対して聞いてるんだろう........。
今は真夜中、おきつね様も仙理君も鈴ちゃん達もみんな寝ている時間。私がこんな時間まで起きているのも訳がある。それは、明日(正確にはもう今日だけど)私は実ちゃんに妖術を教えることになってる。
夕ご飯の後の時、私はおきつね様に呼び止められた。
『出雲や、少し良いかの?』
『はい、なんですか?おきつね様』
『明日、実にお主の使い魔の術を教えて欲しいのじゃ』
『えっ!?』
『自分の得意な術は自分が1番理解しているはずじゃろ?なら、他の者にも教えることはできるはずじゃ』
『ちょ、ちょっと待ってください!私の妖術は元々の能力で持ってたものなんですよ?習得のさせ方なんてわからないです........』
『それは出雲の頭で考えることじゃ、教え方は十妖十色、自分が思うわかりやすい教え方を実行すれば良いのじゃ』
『そんな無茶な!』
『大丈夫じゃ、出雲ならできる、しっかり頼むぞよ、さて妾は寝るとするかの、ふあぁ〜っ........。』
『そんなぁ〜!』
それで今に至る。私は他人に妖術を教えたことがない。だからどうやって教えたらいいか、あれからずっと考えてるけど未だに全然思い浮かばない........。
(ううっ.........突然教えてくれなんて言われたって無理だよ~........私だってまだ一人前の妖狐じゃないのに~........)
私はちゃぶ台にうつ伏せになった。
前に神社にはおきつね様の親友、『お稲荷様』
がいた。私は使い魔の能力を持っていたけど、それを使いこなせるように妖術を教えてくれたのはお稲荷様だ。修行中はとっても厳しくて、私は何度も何度も泣いたけど。終わったらいっぱい褒めてくれた。
でも、お稲荷様はある日突然いなくなっちゃった。
元々この神社は名前がなくて、稲荷神社って名前が付いたのもお稲荷様がいなくなって、早く帰って来て欲しいっていう願いを込めて付けた名前なんだって
お稲荷様がいれば、こんなに悩まなくても妖術を教えられるのに……。
(お稲荷様、どこにいるのかなぁ……?)
そんなことを考えてるうちに、私は眠りについた。
そして……。
「うわあああ!!どうしよおおお!!!!」
結局何も思い浮かばないまま昼近くまで寝てしまった。
私が頭を抱え込んでいるうちに実ちゃんが部屋に入ってくる
「おはよう出雲ちゃん、今日はいっぱい寝てたね」
「お、おはよう実ちゃん」
「今日は出雲ちゃんが妖術を教えてくれるんでしょ?よろしくね♪」
「う、うん、よろしく……」
そうだ!仙理君に聞いてみれば戦い方の教え方位は教えてくれるかも!
「実ちゃん、仙理君は?」
「もう行ったよ?あとは私達だけ」
「そ、そうなんだ」
「妖術を習得するには、まず何をすればいいの?」
「え〜っと……」
状況は絶望的だ。もし私が使い魔の習得の仕方が分かりませんだなんてことがバレたら実ちゃんはきっとがっかりする。この場は何とか誤魔化そう。
「ね、ねぇ、ちょっとお散歩に行かない?」
「お散歩?」
「うん、まだ実ちゃんのこと知りたいし、修行はお互いのことを知れた方がやりやすいでしょ?」
「あ!それじゃあお家に1回帰りたい、三味線を取りに行きたいの」
「決まりね、それじゃあ早速行こ?」
「うん!」
私達は神社を出て、ある分岐路に辿り着いた。いつも街に行く時に通る道だ。この道は私達がいつも通る道と、後2本の道がある。
「出雲ちゃん、左の道から行こ?真ん中はお家に近いけど悪い人が出る危険な森を通らないと行けなくなるの、左からだと遠回りだけど安全だから、左から行こ?」
(危険な森…か、あ!そうだ!)
「実ちゃん、真ん中から行こうよ!」
「えっ!?やめようよ!襲われたら危険だよ!」
「危険な道を通るのも修行だよ?これから危険なことがいっぱいあるかもしれないんだよ?対処できるようにならなくちゃ!」
「でも怖いよぉ……」
「大丈夫、私が守ってあげるから!ちゃんと私の戦い方を見ててね」
私達は真ん中の道を歩いた。そして、森の前に到達した。なぜか私はワクワクしている。なぜなら、やっと何とかなりそうだから、そう、教えられないなら見て学んでもらえばいいんだ!
私は先陣を切って森の中へと入る。実ちゃんもビクビクしながらも森の中へ入った。
さっきとは違い木が覆い茂っていて暗い。しかしこんなのは慣れっ子だ。元々稲荷神社は森に囲まれた神社であり、よくそこに木の実を取りに行ったりしていたからこんなのは全く怖くない。
でも、実ちゃんは私の服の端っこを掴んで体を震わせている。
「実ちゃん、そんなに震えなくても大丈夫よ」
「だって〜……」
「私がついてるんだから、そんなにビクビクしてたら強くなれないよ?」
すると木の影からカサカサと草の揺れる音がした。実ちゃんはピクっと体を一瞬硬直させて悲鳴を上げて私に抱きついてきた。
「きゃあああっ!!!!」
「うわっ!?もう!実ちゃん!」
「今カサカサって!絶対なんかいる!絶対なんかいるよぉ!もう戻ろうよ〜、怖いよ〜」
「全く……でも確かに今のは誰かいたわね、出てきなさい!そこにいるのは分かってるのよ!」
「バレてしまいましたね、なら仕方ないでしょう」
すると突然小さい煙と共に1人の女の人が現れた。見た目は私と同じ妖狐、白い耳、白い尻尾が生えている。しかし、顔だけを何故か狐のお面で隠していた。
「ずっと付けてきてたのね、あなたは誰?何が目的なの?」
「私はこの森に住む妖狐、少しお腹がすいていまして、そしたら美味しそうな妖怪が森に入ってくるではありませんか♪」
「私達を食べるつもり?妖怪が妖怪を食べるだなんて、気でも狂ったの?」
「いえ、食べるのは、そこの可愛らしい猫ちゃんだけです」
お面を被った妖狐は実ちゃんに指を指す。
「ひぃっ!!!!」
実ちゃんはその場から逃げ出そうと元来た道を走り始めた。しかし。
「逃がしませんよ♪」
お面を被った妖狐は指を指した手をそのまま開いた。すると実ちゃんの足元に結界陣が貼られ、そこから白い光が放たれ。実ちゃんを包んだ。
「実ちゃん!」
「ご安心なさい、猫ちゃんならほらここに」
「離して〜っ!!!!」
お面の妖狐の方に向き直すと。実ちゃんはお面の妖狐の片腕に包まれ、捕らえられていた。
「実ちゃんを離しなさい!」
「なら取り返してみなさい、ほら、早くしないと食べてしまいますよ、こんな風に、はむっ♪」
お面の妖狐は実ちゃんの耳を唇と唇で挟み込んだ。実ちゃんは「ひぃっ!」と声を出し、目をギュッと瞑り、震えている。
実ちゃん、今助けるからね。私は5体の使い魔という名の青い炎を出現させ、命令する。
「使い魔達!容赦しないで!」
使い魔達はお面の妖狐に向かって突進する。
しかし片手で簡単に5体の使い魔を振り払って消してしまう。
「そんなっ!」
「甘いですね、まさかこの程度とは……残念ですね、そんなことではこの子は救えませんよ」
「くっ!でもまだ勝負は着いてないわ!まだ使い魔は残ってるのよ、燃やし尽くしなさい!」
私は再び使い魔を出現させ、攻撃命令を出す。
それと同時にお面の妖狐はこう言った。
「使い魔よ、行きなさい」
「私と同じ使い魔の術を!?」
なんと、お面の妖狐も使い魔を出現させて命令を出した。しかも、私のものよりも大きい。
私の使い魔とお面の妖狐の使い魔がぶつかり合う。しかし、私の使い魔は簡単に消えてしまい、私にお面の妖狐の使い魔が全て飛んできた。避けることも叶わず当たってしまった。
「きゃぁぁぁぁっ!!!!」
強い……私の使い魔は全く歯が立たない。でも私にはこれしかない、でも最後まで戦わなくっちゃ!
しかし、立ち上がろうとしてもさっきの攻撃を受けた痛みですぐに膝を着いてしまう。
「くっ!こんな……ところで……!」
「出雲ちゃん!」
「もう終わりですか?友達1人救えない妖怪など妖怪失格です、あなたの命は奪いません、この子のことは諦めてさっさと家に帰るんですね」
「出雲ちゃんにそんなこと言わないで!」
「いいんだよ実ちゃん、その人の言う通り、私は妖怪失格、でも、私は友達を見捨てて逃げることなんてできない!」
「なら、どうしますか?そんなボロボロの状態で何か出来ると?」
「私はまだ倒れてない、なら、まだ戦える!」
「いいでしょう、ですが、次はもう生かしませんよ」
私は今持てる力を全て使い、拳を握りしめて全力でお面の妖狐に突進した。
「はああああああ!!!!」
そして、握りしめた拳をお面の妖狐に向かって放つ。しかし簡単に避けられてしまう。
その隙を取られ、お面の妖狐はいつの間にか召喚していた使い魔を私に飛ばしてきた。
(くっ!避けられない、もう……ここまでなの……?)
私は死を覚悟して目を瞑ったその時。
「うおおおおっ!!!!」
聞き覚えのある声と共に、何かを弾き替えす音が聞こえた。目を開けると目の前に、斧を持った仙理君が立っていた。
「仙理……君……?」
「大丈夫か出雲、間に合って良かった、後は俺に任せろ!」
仙理君はそう言うとお面の妖狐に向かって斧を振るった。やはり簡単に避けられてしまう。
次に斧を槍に変えて攻撃を続けた。お面の妖狐は実ちゃんを抱えながらも全ての攻撃を避けた。
「お前やるなぁ!実を抱えてんのにそんなに動けるなんてよ」
「私は人食い妖怪ですよ?獲物を持ちながら戦うことは容易です」
「へぇ、そうかい、でも避けてばっかりで攻撃はできてねぇようだな!」
「くっ!使い魔よ、行きなさい!」
お面の妖狐は避けながらなんとか使い魔を出して攻撃させる。その時、実ちゃんを離した。焦っているようだ。
使い魔の術は使い魔を出すまでに少しだけ隙が現れてしまう。お面の妖狐は実ちゃんを盾にして、時間稼ぎをし、使い魔を出現させたのだ。しかし、急いで出した分威力が下がり、速さも無くなってしまう。
「掛かったなぁ!」
仙理君はそれを分かっていたのか実ちゃんを左腕で受止め、右手で持っている槍を鎖鎌に変え、使い魔を全て消した後、鎖の部分でお面の妖狐を捕らえた。
「くぅっ!そんな……!」
「今だ!出雲!」
「うん!使い魔達!お願い!」
私は使い魔を出現させて、命令した。お面の妖狐は当然避けられるはずもなく、攻撃は命中した。
「ぐっ!油断した……」
お面の妖狐はその場に膝を着く。そしてすぐに立ち上がり「参りました」と言った。仙理君はそれを聞くと鎖鎌からお面の妖狐を解放して槍に戻した。そして、お面の妖狐は口を開く。
「なるほど、逞しくなりましたね、出雲、そして仙理」
「っ!?なんで、私達の名前を!?」
「おめぇ、何者だ?正体を現しやがれ!」
目の前の妖狐は、遂にお面を外した。顔を見た瞬間、誰なのかがすぐに分かった。
妖狐の正体は私に妖術を教えてくれたお稲荷様だった。
「お稲荷様!?」「おい、まじかよ……!」
「久しぶりですね、二人共、あなた達の戦いぶり、見事でした」
「お稲荷様ァ!」
私は嬉しさのあまりお稲荷様に泣きながら向かって思いっきり抱きついた。
「うわああん!お稲荷様ァ〜」
「こらこら、泣くんじゃありませんよ、元気みたいで何よりです」
「知り合いなの?」
「おう、昔おきつね様と一緒に住んでた妖狐でおきつね様の親友だ、だけど突然いなくなっちまったんだ、だけどまさかこんなところにいるだなんてな」
「仙理、よくここが分かりましたね」
「なんか嫌な予感がしたんでよ、出雲の匂いを辿ってすっ飛んできたんだ、お稲荷様もなんでこんなとこにいるんだ?」
「長い旅が終わりましてね、街まで帰ってきたのですが随分昔と変わっていて、道に迷ってしまったのです、しかし、稲荷神社という場所があると街の人間に聞いたのでもしかしたらと思ったら、ちょうど出雲と猫ちゃんが通ったので、少し驚かそうかと」
「なら、どうしてお面で姿を隠してたんですか?」
「出雲がどれだけ逞しくなったか、試したのですよ、強くなりましたね、出雲」
「えへへ♪」
そう言ってお稲荷様は私の頭をなでなでしてくれた。変わってない、昔のままだ。昔のお稲荷様だ。
「しかし使い魔は完全に使いこなせていません!仙理が来なければあなたは命を落としていたのですよ?まだ修行が足りませんね」
「はぃ……」
うん、こういう厳しいところも変わってない……。
「でも、会えてよかったです、神社はこの近くなんですね?早く帰りましょう」
「あ、それなんですが少しだけ待ってくれませんか?この子、実ちゃんって言うのですが、この子の忘れ物を取りに行った途中だったんです」
「そうですか、邪魔をしてしまい、なおかつ怖い思いをさせてしまって申し訳ありません」
「いいえ、出雲ちゃんのお知り合いだって聞いて安心しました!」
「なら良かったです、早く取りに行って帰りましょう、おきつねがきっと驚きますよ♪」
「その前に、まだ理由があって、実は……」
私はここでお稲荷様に実ちゃんの修行を頼まれていること、徹夜をしたけど何も思い浮かばなかったこと、そしてこの森で良いところを見せて誤魔化そうとしたことを全て話した。
「なんですって!?あれだけ私の元で修行していたのにも関わらず、どうして教えられないのですか!」
「ごめんなさい……他の子に妖術を教えたことがなかったので……」
「私と修行した時のことを思い出せば教えられるはずでしょう!全く……これはまた修行が必要ですね、帰る前に修行です!実、といいましたね?あなたも妖術が使いたいなら私が教えてあげます、場所は実の家です、早く行きますよ!」
「はい…」「はい…」
「ハッハッハッ♪だっせー、怒られてやんの」
「仙理!あなたもです!」
「なんでだよ!さっきお稲荷様に勝ったじゃねぇか!」
「あれは私が手を抜いたからです!それにその口の利き方、まだ礼儀がなってないみたいですね、また1から教育してあげます!」
「うわああ!!!!またあれかよぉぉぉ!!!!」
私達は実ちゃんの家に向かった。これから厳しい修行が待ち受けている。急に足が重く感じた。しかし、お稲荷様が帰ってきて懐かしく、嬉しさも感じた私だった。
だいぶ遅れてしまい申し訳ありません!
1度話を考えたのですが、全て書き直していたので時間がかかってしまいました……。
さて、また新キャラですね、もはや出しすぎではと自分でも思うのですが、オリジナルキャラクターを作るのが、楽しくてやめられないんですよね(笑)
色々と個性があるキャラクター達なのでお楽しみいただけたら幸いです、では、また次回!




