第20話、大切な人を守るために
「お願い!ニーナちゃんを解放して、あなたの狙いは私でしょ?」
私は盗賊を説得しようと必死に声をかけ続けていました。
「じゃあ、お前だけ残って他のやつはこの部屋から出ろ」
「うん、みんなお願い!」
私以外のみんなは私を残して部屋を出ていきました。
「石をこの猫の近くに置け、変なことをしたらすぐにこの猫を殺す」
私は言う通りにニーナちゃんに近づき、天生石が付いたネックレスを首から外し、地面に置こうとしゃがんだその時です。
「やっぱりテメェらは馬鹿だな、死ね!」
「鈴にゃ〜!やめろにゃぁぁぁぁ!!!!」
私は見上げると盗賊が私にナイフを振り上げていました。しかしニーナちゃんが前方に全力で体重をかけて椅子ごと前に倒れ、体を盗賊に当てました。すると盗賊はよろけます。
「うおっ!?てめぇ!」
しかし、ほんの数秒の時間稼ぎでしかなく、今度は倒れたニーナちゃんに矛先が向いて、ナイフを振り下ろしました。助けなきゃ!今度は私がニーナちゃんを守らなきゃ!
私は急いで立ち、走り出しました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「やめろにゃぁぁぁぁ!!!!」
にゃ〜は縛られたまま出せる力を全てだし、盗賊に体当たりした。そのまま地面に椅子ごと倒れたが攻撃を防ぐことは出来た。しかし、盗賊はにゃ〜に向かってナイフを振り下ろす。
殺される。でも、鈴にゃ〜を守れたなら本望にゃ……。
にゃ〜は目を瞑り、死を覚悟した。しかし一向に切られた感覚がしない。目を開けると鈴にゃ〜がにゃ〜のすぐ目の前に手を広げて立ち、盗賊にナイフで切られていた。鈴にゃ〜はにゃ〜を庇ったのだ。
「鈴にゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
鈴にゃ〜はその場に倒れた。それと同時に天生石は地面に転がった。盗賊はそれを拾って笑みを浮かべる。
「へへっ、こいつさえ手に入ればあとは用済みだ」
「そんな……鈴にゃ〜!鈴にゃ〜!」
「残念だったなガキ、たがお前が俺たちに喧嘩を売らなきゃこんなことにはならなかっただろうよ」
「くっ!この卑怯者め!絶対に許さないにゃ!」
「なんとでも言うがいいさ、どうせお前も死ぬんだからな!」
盗賊はナイフを振り上げる。すると入口のドアが開き、狼の妖怪と狐の妖怪が飛び出してきて盗賊を取り押さえた。その時に盗賊はナイフと天生石を落とす。
「捕まえた!」
「もう逃げれねぇぞ、観念しやがれ!」
「うわっ!?なんだてめぇら!くっ!!!畜生!もう少しの所で!だがもう遅い、石を持っていた猫はもうすぐ死ぬ」
「てめぇは黙ってろ!出雲、こいつは俺が抑えてる、鈴の治療出来るか?」
「やってみる!実ちゃん、手伝って!」
「うん!」
出雲と呼ばれる妖怪はみぃにゃ〜を呼び、鈴にゃ〜の手当を始める。
次にみぃにゃ〜、木乃葉にゃ〜とリィルにゃ〜が入ってきてにゃ〜を縛っている縄を全て素早く解く。
自由になったにゃ〜も急いで鈴にゃ〜の元へ向かう。
「鈴にゃ〜!鈴にゃ〜!嫌にゃ、死んじゃ嫌にゃ!起きてにゃ!」
「………………」
しかし鈴にゃ〜は既に虫の息だった。手当が間に合わない、鈴にゃ〜の身体が青く光り始めている。死に近づいているのだ。
ポロポロと涙が出てくる。すると、
「慌てるでないぞ、妾に任せるのじゃ三尾よ」
そう言いながら部屋に入ってきたのは、白い狐の妖怪だった。盗賊を取り押さえている狐とは違い、大人のようだ。
白狐は鈴にゃ〜の天生石を拾ってそれを鈴にゃ〜の傷に当てた。そして何かをブツブツと言い始めた。
「天より生を与えし青の神石よ、我が妖術を引き換えにこの者を癒したまえ」
すると天生石が青い光を放った。それと同時に鈴にゃ〜の傷がみるみる治っていく。呼吸も安定した。
傷が完全に治ると今度は天生石をにゃ〜の胸に当て、同じことをした。するとにゃ〜の傷も治り、さっきの傷が嘘のようになった。
「これで良いじゃろ、しかし気絶しておるの、しばらく安静にしていれば目を覚ますはずじゃ」
「天生石を反応させた……君達何者かにゃ?敵じゃないみたいだにゃ〜」
「話は後じゃ、まずはこやつを処理せねばな」
白狐は取り押さえられている盗賊の前に立つと優しい顔から強ばった顔になった。
「さてどう料理してくれよう、人間は身が少ないからの〜、出雲と仙理は何が良いかの〜?」
「お味噌汁の具材にしましょう♪」
「いいや、そのまま焼いて食った方が美味いぜ」
盗賊は「ひぃっ!?」と叫びながら怯え始め、助けを懇願した。
「や、嫌だ!助けてくれぇぇぇ!!!!」
「お主の助けに聞く耳を持つものなどもはやおらぬ、お主は三尾を苦しむだけ苦しませて、三尾の部下とフレキの物を奪い、遂には鈴を傷つけた、殺されても文句は言えぬじゃろ?出雲、仙理、連れていくのじゃ」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!離せぇぇぇぇ!!!!」
盗賊は狼の妖怪に担がれ運ばれて行った。すると白狐はまた優しい顔に戻った。それを見てにゃ〜は思い出した。
「君、もしかして狐尾かにゃ?」
「ふふふ♪思い出したようじゃのぅ、久しぶりじゃの、三尾」
「なんで鈴にゃ〜と一緒にいるんだにゃ?」
「色々あっての、お主を助けたいと妾達に頼み込んできたのじゃ」
「鈴にゃ〜、にゃ〜のために……ありがとうにゃ……」
「さて、妾は帰ろうかの、出雲と仙理が外で待っておる、三尾よ、鈴を連れて妾達の神社に来るが良い、道は実が知っておる」
狐尾は部屋から出ていった。すると交代をするように白い狼の妖怪が部屋に入ってきた。
「無事解決したようですね〜……えっと、実さん、猫谷さんに何が?」
「盗賊に切りつけられちゃったの、でもおきつね様が治してくれて、今は気絶してるだけみたい」
「そうですか、それなら安心です、おや?」
白い狼の妖怪はこちらを見ると直ぐに近づいてきた。
「あなたが捕えられていたニーナさんですか?」
「君誰かにゃ?なんでにゃ〜の名前を知ってるのかにゃ?」
「猫谷さんに聞きましてね、私はフレキと申します、機械好きの狼でしてね〜」
「機械好きの狼がにゃ〜になんの用にゃ?」
「実は私が開発した装置であなたを探したところ、あなたから金属反応があったのですがなにか身に覚えはありませんか?」
「もしかしてこれかにゃ?」
にゃ〜は両腕に付いたブレスレットの様な者をフレキという狼に見せる。
「ブレスレットですか」
「多分そうだにゃ、これ、にゃ〜の身体に電流が流れるんだにゃ、だから外したいけど……これっ!取れないんだにゃっ……!」
にゃ〜はブレスレットを外そうと引っ張っるが外れない。ガッチリと固定されているようだ。
「このブレスレット……この装置も私が作ったものです、まさか拷問にまで使われているとは……」
「なんてもの作ったんだにゃ!おかげで酷い目にあったにゃ!」
「それは申し訳ありません、今外します、どこかにリモコンはありませんか?」
「これのこと〜?落ちてたよ〜♪」
リィルにゃ〜は盗賊の持っていたリモコンのようなものを拾ってこっちに見せる。
「そうです、それの解除ボタンを押せば」
「わかった〜♪えっと、これかな?えい!」
「ちょっと待ってください!まだ説明が……」
リィルにゃ〜はリモコンのボタンを押す、これでやっと解放される……。しかしブレスレットは外れず、にゃ〜の身体に電流が走る。
「にゃあああああああああ!?!?!!?」
「リィルさん!違います!それは電流ボタンです、解除ボタンは……」
「じゃあこっち……えい!」
「あっ!それは電流強化ボタン!」
リィルにゃ〜がボタン押した瞬間、さらに電流が強く流れた。
「にゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
「もう一個下のボタンです!はやくはやく!」
「え?うん、わかった!」
リィルにゃ〜は1番下のボタンを押す。するとやっと電流が止みブレスレットが外れた。力がふっと抜けてにゃ〜はその場に倒れ込み気絶した。
「ふにぁ〜……」
「ニーナ様!どうしたの!?」
「リィルがボタンを押したせいでニーナ様に強い電流が流れて気絶した」
「あわわ!どうしよう!」
「早く神社に運ぶぞ、フレキ殿、すまないが私達の武器を探して持ってきてくれないか?」
「仕方ないですね〜……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うーん……」
私が目を覚まして最初に見えたのは茶色の天井でした。この布の感触、私は布団に寝ていたようです。私は確か盗賊に切りつけられて……。
意識がはっきりすると、視界にみぃちゃんの顔が入ってきました。
「鈴ちゃん!大丈夫?」
「……ここは?私、どうなったの?」
「稲荷神社だよ、おきつね様が天生石でまた助けてくれたの」
「ほんとだ、傷がない……そうだ!ニーナちゃん!ニーナちゃんは!?」
「大丈夫、隣で寝てるよ」
私は体を起こし、隣を見てニーナちゃんが寝ているのを確認すると私は胸をなで下ろしました。話していると、おきつね様達が部屋に入ってきました。
「鈴よ、調子はどうかの?」
「あ、おきつね様、私は大丈夫です、助けてくれてありがとうございます」
「うむ、おおそうじゃった、これは返しておこう」
おきつね様は天生石を私に返してくれました。
その時、ニーナちゃんが目を覚ましました。私は急いでニーナちゃんの傍に座りました。
「う〜ん……」
「ニーナちゃん!」
「鈴にゃ〜?鈴にゃ〜っ!!!!」
「わっ!」
ニーナちゃんは寝起きにも関わらず私の胸に飛びつき、泣きながら顔をすりすりしてきました。
「ふえぇん……鈴にゃ〜、鈴にゃ〜……」
「ニーナちゃん?」
「鈴にゃ〜、ごめんなさいにゃ…にゃ〜のせいで……グスッ……もう絶対離さないにゃ、ずっとそばに居るにゃ!」
「よしよし、ニーナちゃんのせいじゃないよ、それよりニーナちゃんが無事でよかった」
「助けてくれてありがとにゃ、でももうあんな無茶しちゃだめにゃ、にゃ〜は鈴にゃ〜達を失うのが1番悲しいんだにゃ」
「ごめんね、でもニーナちゃんを守りたかったから」
「私も2人に謝りたいことがあるの」
みぃちゃんは真剣に私達にそういいました。
「どうして?みぃちゃんは何も悪いことなんか……」
「ううん、私、こんな時に限って三味線をお家に忘れちゃって、私何も出来なかった、ごめんなさい」
「そんなことないよ、謝らなければいけないのは私の方だよ、無理して倒れて、みんなに迷惑かけて、私が弱いばっかりに……」
すると、おきつね様の後ろにいた仙理君が前に出てきて口を開きました。
「おいおい、湿っぽいのはなしにしようぜ、みんな無事だったからいいじゃねぇか、なっ、出雲」
「うん、今は再会出来たことを喜ばなきゃ」
そうですね、自分を責めてちゃだめ、喜ぶ時は喜ばないと、私達は顔を合わせ、先に私とみぃちゃんがこう言いました。
「ニーナちゃん、おかえり!」「ニーナちゃん、おかえり!」
「ただいま、鈴にゃ〜、みぃにゃ〜!」
そう言って3人で抱きしめ合いました。暖かい、まるで家族みたいな暖かさでした。すると、ニーナちゃんのお腹がグーと鳴りました。
「えへへ、捕まってから何も食べてないからお腹空いちゃったにゃ」
「そうじゃの、そろそろ夕飯にしようかの、出雲」
「はい!おきつね様!」
「私も手伝うよ、出雲ちゃん」
「あ!私も!」
「にゃ〜も!」
私達は夕飯の準備をして、みんなで1つの食卓を囲んで美味しく食事を楽しみました。その途中、私はおきつね様にこんな相談をしました。
「おきつね様、私、みんなに守られてばっかりで何もできなくて……だから、私も強くなりたいんです!天生石を使えるようにして、みんなを守る力が欲しいんです!」
「ふむ、天生石を操りたいとな?良い心がけじゃが、直ぐに使えるほど甘い力ではない、力を手に入れるには長く厳しい修行が必要じゃ、それでもよいか?」
「はい!みんなを守るためなら、私、頑張ります!」
「うむ、覚悟は出来てるようじゃの、実も3尾も良ければ妾の臣下が相手になるが、どうじゃ?」
「はい!私も鈴ちゃんとニーナちゃんの役に立ちたいです、お願いします!」
「にゃ〜も、鈴にゃ〜を守るために強くなるにゃ!」
「よかろう、ならばしばらくここに留まるが良い、明日から修行を始めるとしよう、今日はゆっくりと休むが良い」
こうして、私達の修行の日々がスタートするのでした。
お久しぶりです!風邪で体調を崩しまして、予定よりかなり遅い投稿になりましたすみません<(_ _)>
さて、20話目突破ですね!これからも頑張って楽しく投稿していきたいと思います!
では、また次回♪




