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絶望の果ての理想郷  作者: 秌雨
17/48

第17話、神社の妖狐

私は(みのり)、鈴ちゃんとニーナちゃんと一緒に住んでる猫又です。

キリンヤガの城の事件が終わってあれから1週間、私達は変わらず暮らしています。

キリンヤガの城の王様が変わって今まで交流のなかった街もプレスターと交流をしてるみたい。アリスちゃんもワーハクタクが見れて幸せってお手紙をくれました。

アリスちゃんはお城の街で服屋を開いたそうです。


今私達はいつもの通りプレスターにお買い物に出かけようしています。


「じゃあ二人共、気をつけて行ってくるにゃ♪」

「うん!」「うん……」


ニーナちゃんはそう言って送ってくれました。

ニーナちゃんは最近出かけないようになりました。ニライ様とカナイ様が家に上がってまた勝手に紅茶を飲まれるのが嫌で家を見張っているそうです。

2人で買い物に出かけた私達ですが。鈴ちゃんが今日はやけに顔色が悪いように見えます。そういえばニーナちゃんが送ってくれた時も返事に元気がなかった気がします。


「鈴ちゃん大丈夫?なんだか顔色悪いよ?」

「そんなことないよ、大丈夫」

「そう、無理しないでね」

「うん」


私達はプレスターに着き、買い物を始めました。

でもやっぱり鈴ちゃんの元気がありません。何だか歩き方もダルそうだし、かわいいティーカップを見つけた時もいつもなら「かわいいね!」って元気に言うのに、今日は「うん……」しか言わないんです。私はもう一度訪ねました。


「ねぇ鈴ちゃん、具合悪いの?本当に今日は元気がないよ?」

「そ、そんなことないって、ほ、ほら、最後は果物屋さんでしょ?早く買いに行こ?」

「う、うん」


鈴ちゃんは一瞬だけ元気になりましたが、直ぐにまた元気が無くなっていました。

そして果物屋さんでニーナちゃんに頼まれたアプリコット(多分ニーナちゃんが気に入った)を買い、家に帰ろうと街を出てしばらく歩いていると雨が降ってきました。


「うわ!?雨!」

「…………」

「鈴ちゃん、急いで帰ろう?って……鈴ちゃん!?」


私が走って帰ろうと言うために、後ろを歩いていた鈴ちゃんの方を振り向くと、鈴ちゃんがフラフラな状態になっています。


「だ、大丈夫、大丈夫……」

「大丈夫じゃないよ!どうしたの!?」

「本当に、大丈夫……だから……」


鈴ちゃんはその場に倒れ込んでしまいました。


「鈴ちゃん!しっかりして!これってもしかして……」


鈴ちゃんはハァ…ハァ…と息を荒くしています。私は手を鈴ちゃんのおでこに当てました。


「すごい熱!大変!まだお家まではあるし……プレスターの街からもここからじゃもう遠いし、そうだ!癒しの弦なら少しはマシになるかも!」


と、三味線を取り出そうと思いました。

でも三味線はありませんでした。


「あ、あれ?三味線がない!あっ!」


私は家を出る前のことを思い出しました。そうです、今日に限って三味線を置いてきてしまったのです。


「うわああ!私のバカぁぁぁ!」


私は頭を掻きむしりました。でもこんなことしてる場合じゃありません。一刻も早く雨宿りできるところを探さないと!

私は鈴ちゃんを背負って歩き始めました。

すると、丁度向こうから人が来ました。私はその人に雨宿りできる場所を聞きました。


「あ、あの!この辺に雨宿りできるところを探してるんですけど」

「君も、急に雨に降られたのかい?それならちょっと行った先に分岐路があって、それを右に行くとすぐに神社があるよ、そこに行きな、誰か背負ってるけど大丈夫かい?手伝おうか?」

「いいえ、大丈夫です、ありがとうございます!」


分岐路は真っ直ぐと、左と右にわかれていて、普段あの道は左に行きます。そうすると家に辿り着くのですが、遠回りです。しかしだからといって真っ直ぐに行くと近くはなるのですが危険な森があります。さすがに今の状態で森に入って悪い人に襲われたらひとたまりもありません。

私はさっき教えられた通り右へ行きました。行ったことがないので神社があることは知りませんでした。

少し歩くと石段が見えてきました。私は石段を登りました。すると、そこには大きくもなく小さくもない神社がありました。


(あ、屋根がある、あそこなら……)


鳥居を潜り、建物の屋根の下に行きました。ここにはお賽銭箱があります。その近くに鈴ちゃんを下ろし、様子を見ました。


「ハァ……ハァ……」

「どうしよう……どんどん弱ってる……」


鈴ちゃんが死んじゃったらどうしよう、私のせいだ。私がもっと早く気付いてれば。こんなことにはならなかったのに……。

そうだ、神様にお願いしよう。

私は銀貨をお賽銭箱の中に入れ、パンパンと手を2回叩き、礼をしました。


(お願いします、神様、鈴ちゃんを助けてください!)


私は目をつむり、強く祈りました。すると、後ろから急に声がしました。


「ほほう?雨宿りのついでとは言え、賽銭とは、感心感心♪」

「っ!?」


私は振り返ると。そこには私よりも大きい、和服を着た白い狐の耳と尻尾が付いていて長い白髪の女の人が自分の服の袖に反対の方の手を入れながら立っていました。


「あなたは?」

「逆にお主は何者じゃと思う?」

「えっと……狐さん?」

「捻りがないのぉ……まぁそんなことはどうでも良いか、妾はこの神社、『稲荷神社』に祀られている妖狐、いわゆる『おきつね様』と言うやつじゃな」

「ってことは神様ですか?」

「まぁ、そんな感じじゃの、そんなことより一体どうしたのじゃ?お主もそこに寝ている猫もずぶ濡れではないか」

「この子は私のお友達で、具合が悪い中出かけてきちゃったみたいで、帰る途中で雨が降って、悪化して倒れちゃって」

「ふむ……ひどい熱じゃの、どれ、看病してやろ、上がるが良い」


狐耳の女の人は、建物の戸を開くと、次に鈴ちゃんを持ち上げ中に入りました。私も「お邪魔します」と一言いって中に入りました。

そして狐耳の女の人は、誰かを呼びかけるように大声で言いました。


「出雲〜、出雲や〜、少し手伝ってくれぬか?」


すると、奥から「は〜い」っと言う声が聞こえて、私と同じぐらいの背で髪の短いこれまた和服を着た狐耳の女の子が出てきました。


「どうかされましたか?おきつね様、その子達は?」

「この子が倒れてしまったそうじゃ、あまりにも可愛そうでの、出雲、看病してくれぬか?」

「はい、おきつね様もこんな雨の中お散歩なんてお身体が冷えてしまいますよ、今拭くものを持ってきますね」

「妾のことはよい、その子の方が優先じゃ」

「わかりました」


出雲と呼ばれる女の子は、おきつね様から鈴ちゃんを受け取ると別の部屋に鈴ちゃんを連れて行きました。

そして、おきつね様は草履を脱ぎ、部屋に上がりました。


「何をぼうっとしておるのじゃ?早う来い」

「あっ、はい!」


私も下駄を脱ぎ、部屋に上がりました。

そしておきつね様は浴衣を差し出してきました。


「ほれ、これに着替えるのじゃ、そんなに濡れた服では風邪をひいてしまうぞよ?」

「ありがとうございます!」


私は浴衣に着替えました。私の浴衣姿を見たおきつね様は嬉しそうにジロジロ見てきます。


「似合っておるぞ、大きさもピッタリのようじゃ♪」

「ありがとうございます、ごめんなさい、あの子のを着ちゃって」

「気にしなくても良いぞ、そうじゃ、お主の名は何と申すのじゃ?」

「私、実っていいます」

「実か、良い名じゃ、実よ、妾の元へ来るのじゃ、体を温めてやろ」

「え?どういうことですか?」

「良いから良いから、早う来い」


私はおきつね様のすぐ側に近づきました。するとおきつね様は私を優しく抱きしめてきました。


「な、なんですか!?急に」

「どうじゃ?暖かいじゃろ?」

「…………暖かい」


おきつね様の腕の中は暖かくて、モフモフしてて、何だか優しい感じがします。おきつね様は私の頭を撫でてきました。


「よしよし、良い子、良い子じゃ、友達のためによく1人で頑張ったの、偉い偉い」

「えへへ♪」


この暖かい感じ、「よしよし」と言いながらなでなでされる感覚。何かに似てる……。

そうだ、お兄ちゃんだ。お兄ちゃんはいつもこんな風に頭をなでなでして褒めてくれた。三味線を教えてくれる時も少し出来るようになるとその度にギュっと抱きしめてこんな風に頭をなでなでしてくれた。お兄ちゃん……今どこにいるのかな?


「お兄ちゃん……」

「うん?お兄ちゃんとな?」

「あ、ごめんなさい!昔いたお兄ちゃんのことを思い出しちゃって」

「そのお兄ちゃんもよくこうしてたのかの?」

「はい、でもお兄ちゃんがどこかに行っちゃって……」

「辛いことを思い出させてしまったかの?すまんのぉ」

「いえ大丈夫です、なんだか安心しました」

「そうかそうか、辛かったらいつでも妾に甘えて良いのじゃぞ?」

「ありがとうございます」


しばらくこうしていると、出雲と呼ばれる子がこの部屋に入って来ました。


「出雲や、あの子の調子はどうじゃ?」

「さっきよりはだいぶ落ち着きました、あとは安静にしていれば熱は下がると思います」

「じゃそうじゃ、よかったのぉ実」


「よかったぁ、ありがとう!出雲さん!」


「いいえ、それよりもあの子が無事で何よりです、でもしばらくは寝かせておいた方がいいですよ」

「そうじゃのぉ、なら実、今日は泊まって行くがよい」


「え?いいんですか?」


「うむ!今日は雨も止みそうもない、お賽銭のお礼じゃ♪」


「本当に、本当にありがとうございます!」


こうして私はおきつね様の神社に泊まることになりました。

そろそろ夕方になってくる頃、出雲さんが夕飯の支度をすると言うので私も手伝うことにしました。泊めてもらってるんだからこれぐらいしないと。


「出雲さん!私も手伝う!」

「さんずけなんてしなくていいよ、なんだか喋りにくい、あなたの名前は?」

「私、実って言うの、よろしくね出雲ちゃん♪」

「実ちゃん、かわいい名前だね♪」


自己紹介を終えたあと、早速夕飯の支度に取り掛かりました。

支度の途中、出雲ちゃんは私に質問をしてきました。


「あの子って実ちゃんの友達?」

「うん!私の命の恩人なの、鈴ちゃんって言うんだけど、鈴ちゃんは捨てられた私を拾ってくれて、とっても優しくしてくれるの」

「へぇ〜、そうなんだ、私もおきつね様に拾われたの、おきつね様は本当にいい妖狐で、いつも褒めてくれるの」

「出雲ちゃんだって優しいよ、見ず知らずの私達を受け入れてくれて」

「そう言ってくれると嬉しいな♪」


夕飯が出来上がり寸前、出雲ちゃんがそわそわとし始めました。


「遅いな〜、どこまで行ってるんだろう?」

「どうしたの?出雲ちゃん」

「じつはね、私の他にもう1人おきつね様に拾われて一緒に暮らしている子がいて、その子が帰ってこないの、いつもならもっと早く帰ってくるのに……」


すると戸口の方から「帰ったぞ〜!」っと男の子の声がしました。


「帰ってきた、全く……心配かけて!」


出雲ちゃんは少しイライラした様子で戸口に向かいました。

私もついて行くと、戸口には和服を着て狼のような耳と尻尾が生えた男の子が立っていました。背中には槍を背負っています。


「お、出雲、腹減った、飯できてるか?」

「むぅ〜!」

「な、何怒ってんだよ……」


出雲ちゃんは両手を腰に当てて前かがみの姿勢になっています。


「仙理君、今何時だと思ってるの?」

「23時だろ?夕方じゃねぇか」


現実世界ではありえない話ですが、この世界は一日が36時間で、お昼は18時なので今は夕方です。

現実世界で言うと午後5時ぐらいでしょうか。


「こんな大雨の中どこ行ってたの!?心配したじゃない!そんなずぶ濡れになって、風邪でも引いたらどうするの!」

「うるせぇなぁ、おまえは俺の母ちゃんか?ちゃんと帰ってきたんだからいいだろ?」

「はぁ……さっさと着替えて、お客さんもいるんだからそのままじゃみっともないわ」


出雲ちゃんは怒ってお勝手に戻って行っちゃいました。

そして男の子はこっちを見て明るく話しかけてきました。


「わりぃな、出雲は前からああやってうるさくってさ、俺は『仙理』狼と人間のハーフだ」

「私は実、今訳あってここに泊めさせてもらってるの、よろしくね」

「おう、よろしくな!」

「服、ずぶ濡れだね、ちょっとまってて」


そして、私はタオルを部屋から持ってきて仙理君に渡しました。


「はいこれ、風邪ひいちゃうよ?」

「ありがとな、ところでおまえさっき訳あってって言ってたけどどうしたんだ?」

「私のお友達が帰る途中熱で倒れちゃって、そしたらおきつね様がここに泊めてくれたの」

「おきつね様は心が広いからな、でもああ見えて怒るとすっげぇ怖いんだぜ?」


そんな話をしていると出雲ちゃんが食器を載せたお盆を持ってお勝手から出てきました。


「もう、いつまでそんなところにいるの?ご飯できたよ?」

「お!飯の時間だ、早く食おうぜ!」

「その前に着替えなさい!」

「へいへい」


夕食の時間、おきつね様と出雲ちゃんと仙理君と私でちゃぶ台を囲んで畳の上に座って食事を始めました。


「実、遠慮は要らぬぞ、沢山食べるのじゃ」

「はい!」


「そうだ、遠慮はいらねぇぜ、さっさと食わねぇと全部俺が食っちまうぞ?」

「あなたは少し遠慮しなさいよ、お客さんの前でみっともない……」


いきなりガツガツとご飯を食べる千理君を見て出雲ちゃんは注意しました。

そして、おきつね様は咳払いをすると2人とも話をやめ、しっかりとした姿勢をとりました。


「紹介が遅れたの、この2人は妾の頼もしい臣下じゃ、出雲、仙理、挨拶は済ませてあるじゃろうが改めて挨拶するのじゃ」


「はい、私は『出雲』おきつね様の臣下よ、さっきは夕飯の手伝いありがとう、困ったことがあったら私に言ってね」

「俺は『仙理』ま、だいたいさっき言ったからいいよな」

「自己紹介ぐらいちゃんとしなさい!」


出雲ちゃんは仙理君の耳を引っ張りました。


「いでででで!!!!わかった、わかったよ!おきつね様の臣下だ、困った時は俺にも頼ってくれ、これでいいだろ?」

「ごめんね実ちゃん、仙理君は常識がなってなくて」


「ううん、元気で私は好きだよ、今度は私の番、私は実、鈴ちゃんを助けてくれてほんとにありがとう!鈴ちゃんが元気になるまで一生懸命お手伝いします、よろしくお願いします」


私は座りながらペコりと頭を下げました。


「ふふ♪ 本当に良い子じゃのぉ、妾は『おきつね』名前がないからこう呼ばれておる、いつでも甘やかしてあげるからの、妾をお母さんだと思って気軽に接するが良いぞ」


「実ちゃん本当に優しくて礼儀正しいのね、仙理君も実ちゃんを見習ったらどうなの?」

「出雲だって、ガミガミ怒ってばっかいないで実みたいに優しい所を見習ったらどうだ?」

「あんたが怒らせることばっかするからでしょ!」


出雲ちゃんは再び仙理君の耳を引っ張りました。


「いでででで!!!!ちくしょう!いつも気に入らないことがあったらそうやって俺の耳引っ張りやがって!いでで!ちぎれる、耳ちぎれるぅぅ

ぅ!!!!」


この人達、本当に賑やかで楽しい人達です。いい人に助けられて良かったと思いました。

でも私はやっぱり鈴ちゃんのことが気になり、食事中に立ち上がって鈴ちゃんが寝ている部屋に行きました。


「お、おい!どこ行くんだよ」

「どうしたんだろう?」


「友達が心配なんじゃろ、どれ、様子を見るとするかのぉ」


私は鈴ちゃんが寝ている近くに座って。鈴ちゃんのおでこにそっと手を添えました。良かった、ほんの少しだけだけど熱は下がってるみたい。


「ううん……みぃちゃん……?」

「あっ!ごめんなさい、起こしちゃった?身体は大丈夫?」

「うん、ちょっとダルいけど……ここは?」

「神社だよ、おきつね様って言うここの神様が助けてくれたの」

「そうなんだ……みぃちゃん、私本当は体の調子が良くなかったの、でも心配かけたくなかったから誤魔化してた、でも悪化して倒れちゃって迷惑かけちゃった、本当にごめんなさい……」

「ううん、いいんだよ、でも元気がない時は無理しちゃだめ、ちゃんと休まなきゃ」

「うん、助けてくれてありがとう、みぃちゃん大好き♪」

「私も大好きだよ、鈴ちゃん♪」


私と鈴ちゃんはキュッと抱きしめ合いました。


一方それを部屋の外から見ていたおきつね様、出雲ちゃん、仙理君は……。


「ええのぉ、愛じゃのぉ」

「嬉しそうですね、おきつね様」

「こういうのを見ると萌えるのじゃ、何よりもあの二人、かわえぇのぉ〜♪」

「はい、羨ましいです〜♪」

「出雲、大好きじゃぞ〜♪」

「私もです、おきつね様ぁ〜♪」


「何やってんだこいつら……」


鈴ちゃんはおきつね様達に気づいたのか私に尋ねてきました。


「あの人がおきつね様?」

「うん!とっても優しいんだよ」


そして、おきつね様達はタイミングよくこの部屋に入ってきました。


「身体の調子はどうかの?」

「はい、なんとか大丈夫みたいです」

「そうか、それなら良かった」

「あの、助けてくれてありがとうございます、迷惑かけちゃってごめんなさい」

「謝らなくてもよい、妾が勝手にやったことじゃからの、それよりもお主の身体の方が心配じゃ、しばらく泊まって行くとよい、ところでお主名前はなんと言うのじゃ?」

「私、猫谷 鈴です」

「鈴か、妾はおきつね、こう言われておる、この2人は妾の臣下じゃ」


「出雲って言うの、看病なら私に任せて」

「俺は仙理、よろしくな!」


「しばらく迷惑かけちゃうかもしれませんが、よろしくお願いします!」


自己紹介が終わり、今度は鈴ちゃんも一緒に夕食を食べました。食欲はあるみたいなので良かったです。

そして寝る時間、私は鈴ちゃんと同じ部屋で寝ることにしました。お家では3人で1つのベッドに入ってたので別々の布団で寝るのは初めてかもしれません。

そろそろウトウトして来た時に鈴ちゃんが私を呼びました。


「みぃちゃん……」

「どうしたの?鈴ちゃん」

「みぃちゃんの布団で寝ていい?何だか落ち着かなくて」

「うん、いいよ」


鈴ちゃんは私の布団に移動しました。


「一人で寝るのは慣れてるはずなのに、何だか寂しいの、みぃちゃんがどこかに行っちゃうような感じがして」

「ふふふ♪鈴ちゃんは甘えん坊さんだね、大丈夫、私はどこにも行かないよ、ずっと鈴ちゃんと一緒にいるからね」

「ありがとう、早くお家に帰らなくちゃ、ニーナちゃんもきっと寂しい想いをしてるから」

「うん、早く熱を下げて帰ろうね」


私達は眠りにつきました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おかしいにゃ〜、一体どこに行ったんだにゃ?」


すっかり暗くなったプレスターの街をにゃ〜(ニーナ)は歩いている。

鈴にゃ〜とみぃにゃ〜に買い物を行かせたのは良いものの、全く帰ってくる気配がない。だから家を木乃葉にゃ〜とリィルにゃ〜に任せてこうして探しに来た。なのに、夕方から探しても2人の姿は全く見当たらない。


「他を探すしかないにゃ〜、でも他に行くところなんて……」


もしかしたら道に迷っているのかもしれない、途中の分岐路を間違えてしまったのかも。にゃ〜は街の出口を目指す。

すると、後ろから声をかけられた。


「おいそこの猫、止まれ!」


それは男の声だった。この声、どっかで聞いたことがある。にゃ〜は振り返るとそこには、前に森で懲らしめた盗賊が立っていた。


「お前はあの時の、なんの用にゃ?」

「今日はお前一人か、この前の屈辱を晴らしに来たぜ」

「悪いけど今はお前に付き合っている暇はないにゃ、それに、何度やったって同じことだにゃ、潔く諦めるにゃ」

「それはどうかな?」


男は指をパチンと鳴らす。すると背後に違う男が3人ほどやって来てにゃ〜の尻尾を一人1本ずつ掴んだ。にゃ〜は抵抗するがさすがに3人の力は強く、尻尾を自由に動かすことができない。


「にゃっ!?離せにゃ!汚い手でにゃ〜の尻尾を触るんじゃないにゃ!」

「残念だが尻尾は封じさせてもらうぜ?」


後ろの3人の男はにゃ〜の尻尾を束ねて縄で縛った。それのせいで尻尾は完全に動かせなくなってしまう。にゃ〜は咄嗟に手を後ろに回し、縄を解こうとした。しかし後ろの男はそれをチャンスと言わんばかりに2人は両腕を掴んで。あとの1人は縄でにゃ〜の手を拘束した。


「にゃ〜っ!?こんなの卑怯だにゃ!」

「卑怯?別に誰も4人で襲いかかっちゃ駄目なんて言ってねぇだろ?」

「くっ!この前にゃ〜にボッコボコにされたくせn……むぅぅぅ!?」

「おっと、おしゃべりはここまでだぜ?」


目の前の盗賊はにゃ〜の口を布で塞ぐ。ついに喋ることすら出来なくなってしまった。


「ふむぅぅ!むぐぅぅ!」

「へへっ、恐ろしい妖怪もこうなっちまえばただのガキだな、この前の礼はアジトでたっぷりさせてもらうぜ、おい、連れてけ」

「んむぅ!?むぅぅぅ!!!!」


にゃ〜は連れて行かれまいともがくがさすがに男4人の力には適わず、身動きが取れないまま男達によって運ばれ、こいつらの言うアジトへと連れていかれた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


稲荷神社の朝、私(猫谷 鈴)は他のみんなよりも早く起きてしまいました。何故か目が覚めてしまったのです。


「んん……」


私は伸びをしました。神社の朝もいつもとは違う感じで新鮮です。

昨日出雲ちゃんとみぃちゃんが看病してくれたおかげで、熱もすっかり引きました。

しばらくその場でぼうっとしていると。横から優しい声が聞こえてきました。


「早起きじゃのぉ鈴よ、感心感心♪」

「あ、おきつね様、おきつね様も早起きなんですね」

「早起きは三文の徳じゃ、そんなことより熱は引いたのかの?」

「はい、身体のダルさも無くなりました」

「うむ、よかったよかった、妾は嬉しいぞ〜♪」


おきつね様は急に私をギュッと抱きしめ、私の頭をなでなでしてきました。


「うわっ!?お、おきつね様!?」

「よしよし、良い子、良い子じゃ♪」

「えっと……なんですか?」

「おっと、すまんのぉ、お主のような可愛ええ子を見るとつい甘やかしたくなるのじゃ」

「いいえ、何か懐かしいような感じがしました、まるで現実世界にいた頃のお母さんみたいな」

「どうしてかのぉ?妾がギュッとしてなでなですると皆何かを思い出すのじゃ」

「きっとおきつね様は面倒見が上手なんだと思います、だから出雲ちゃんも仙理君もおきつね様の事が大好きなんだと思いますよ」

「嬉しいのぉ♪ 鈴よ、もう1回甘やかしてやろ♪」


おきつね様は再び私を抱きしめ、頭を撫でました。現実世界でも小さい頃こんな風にお母さんになでなでされて嬉しかったな。


「気持ちいい……モフモフしてる」

「そうじゃろ、妾の着ている着物は狐の毛皮で出来ておるからの、モフモフでぬくぬくじゃ♪いつでも甘えて良いからの」


そしてしばらくモフモフ天国を味わった後、先に起きていた出雲ちゃんと仙理君と4人でお茶を飲みました。そして、みぃちゃんが起きてきました。


「ふわあぁ……鈴ちゃんおはよう、熱は大丈夫?」

「大丈夫、お陰で元気になったよ、ありがとう」

「よかった〜、じゃあ今日帰れそう?」

「うん!ニーナちゃん、寂しがってるだろうし、早く帰らなきゃ」


「もう帰ってしまうのかの?」

「はい、お友達がもう1人いるんですけど、その子が家でお留守番してるんです」

「そうかそうか、なら早く帰った方が良い、妾達が見送ってやろ♪」

「ありがとうございます」


「おきつね様、誰か来ていますよ!」


出雲ちゃんがそう言いながら神社の出口に指を刺しました。その方向を見ると向こうから誰かが走ってきます。


「やっと見つけた〜!」


向こうから走って来たのはリィルちゃんと木乃葉ちゃんでした。


「リィルちゃん!木乃葉ちゃん!」

「はぁ…はぁ……あんた達こんな所で何してんのよ……」

「心配させてごめんなさい、あれ?ニーナちゃんは?一緒じゃないの?」

「そう!大変なの!ニーナ様が、ニーナ様がいなくなっちゃったの!」

「えっ!?どういうこと!?」


「鈴殿達がなかなか帰ってこないからニーナ様が探しに行ってそのまま朝まで戻ってこなかった、街の人に聞いてもニーナ様を見てないって言ってた、でもワーハクタクと猫又がここにいるって聞いてもしかしてと思った」


「そんな……私のせいだ、私が無理をしたから……ニーナちゃんが……」


震える私をみぃちゃんが背中をさすってくれました。


「落ち着いて鈴ちゃん、まだそんなにきっと遠くには行ってないよ、一緒に探そ?」

「うん」


するとおきつね様が口を開きました。


「どうやら大変なことになっているようじゃのぉ、どれ、妾達も手伝ってやろ」

「ありがとうございます、本当に何から何までごめんなさい」

「謝らなくて良い、妾達は困った者を放っておけないのじゃ、そうじゃろ?出雲、仙理」


「はい!鈴ちゃん、私達に任せて、きっと役に立ってみせるわ」

「何が何だかわかんねぇけど、協力するぜ」


「みんなありがとう、みんなでニーナちゃんを見つけよう!」


私達はニーナちゃんを探しに神社を後にしました。


どうも、rurusuです。

今回は新キャラが3人登場ですね、圧倒的にケモ耳が多くて私の趣味全開になってますね(笑)

これからどんな活躍をするのか、ご期待ください。

では!また次回!


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