第16話、少女の願い、時空の歪み
キリンヤガの城を後にした私達はプレスターで緩菜ちゃんと別れ、もうすぐ家に着くという所まで帰ってきました。
「木乃葉にゃ〜、リィルにゃ〜、護衛お疲れ様にゃ♪もう帰っていいにゃ」
「御意」「は〜い♪」
ニーナちゃんが指示を出すと木乃葉ちゃんとリィルちゃんは帰って行きました。
私は少し疑問に思いました。
「あの二人ってどこに住んでるの?」
「ん〜、森のどこかに家があるって聞いたことあるけどよく分からないにゃ」
「意外と近くなのかもね、でも憧れちゃうな〜、部下になる人がいるって、それほど信用されてるってことだもん」
「鈴にゃ〜だって信用されてるにゃ、みぃにゃ〜もにゃ〜も鈴にゃ〜のことを信用してるにゃ♪」
「うん!2人共、ずっと友達だからね!」
そんな話をしながら歩いていると家に着きました。
「帰ってきたにゃ〜♪長かったにゃ〜」
「ほんとだね、早く入って3人でお茶しようよ」
私達は家のドアを開けて中に入りました。すると中には青い髪の少女が2人、ソファーに座っています。キリンヤガの城で突然出てきたニライ様とカナイ様です。
「やぁ、おかえり〜♪」「おつかれ〜♪」
「にゃっ!?ニライ様とカナイ様!?」
「いい家だね、ニーナ、居心地が最高だよ〜」
「景観に配慮した素晴らしい家だよね〜」
「なんでにゃ〜の家でくつろいでるんだにゃ……?」
「君達に用があって来たんだけど〜」
「折角だから上がらせてもらったんだよ〜」
「最高神と言えど自由すぎるにゃ……で、用ってなんにゃ?」
2人は1度テーブルの上に置いてある紅茶を飲んでから口を開きました。多分これ、私達の家の物ですよね……。
「まずは、キリンヤガの件は本当によくやってくれたよ」
「実は感謝してるんだよね〜」
「え?でも本当はダメなことなんでしょ?」
「この世界の秩序的にはね、でもあの王がもう少し酷かったら私達が出る羽目になってたよ」
「私達からはあまり手を出したくなかったから、君達がやってくれて本当に助かったよ」
「そのお礼として、君達の願いを1個だけ叶えてあげるよ〜」
「3人で1つの願いだからじっくり相談して決めてね〜」
私達は顔を見合わせました。
「どうする?1個だけだって」
「鈴にゃ〜が決めていいにゃ、鈴にゃ〜はにゃ〜達のために頑張ってくれたにゃ」
「うん!鈴ちゃんの願いを叶えて貰うのがいいよ!」
私は考えました。私の願い……本当に叶えてくれるのならば、利奈ちゃん、利奈ちゃんにもう一度だけでもいいから会いたい。
「あの、ニライ様、カナイ様、1つだけ私の願いを叶えてくれますか?」
「お?なになに?」「そんなに改まる必要は無いよ〜」
「利奈ちゃんに会わせてくれますか?」
「早乙女 利奈 、君の現実世界での親友だね」
「でも、その子は現実世界で死んでしまった」
「無理なお願いなのは分かってます!少しでいいんです!せめてちゃんとお別れを言いたいんです!お願いします!」
私は頭を下げました。
「猫谷 鈴、君のその願い、時間をくれないかい?」
「やってくれるんですか?」
「本当は現実世界で死んだ人間をここに連れて来れるかどうかがまだわからないんだ」
「でも叶えるって言ったからにはやらない訳には行かないでしょ?」
「時間はかかるだろうけど、必ず叶えてあげるよ、早乙女利奈も不遇な人間だったからね、あの子にもここへ来る権利がある、だからここに連れてくるまで待っててくれる?」
私は頷きました。私は待ちます、利奈ちゃんとまた幸せな生活をできるその日を……。
そして2人は立ち上がりました。
「さて、私達は帰るね」
「君達のこと、ちょっと気に入ったよ」
「あ、そうだ、君達プレスターの街に忘れ物してたよ」
そう言うとカナイ様は何も無いところから紙袋を出しました。ニーナちゃんはそれを見るとすぐに反応しました。
「あ!それ、にゃ〜達の買ったアプリコット!」
「そう言えば忘れてたね」
「それじゃあね〜♪」「素敵な生活を〜♪」
ニライ様とカナイ様はまたその場で消えました。
「帰っちゃった……」
「鈴ちゃんの願い、早く叶うといいね」
「あの神様達ならやってくれるにゃ、信じて待つにゃ、それより、アプリコットでお茶をするにゃ、どんな味か楽しみにゃ〜♪」
私達は台所に向かいました。
利奈ちゃん、私待ってるよ、ここで会ったらまた一緒になれる。そう心で言いながら……。
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全く、面倒なことになったな〜。
私はカナイ、この世界の創立者だ。私は今、屋敷の沢山のファイルで敷き詰められた『生物管理室』で1つのファイルを探している。
この部屋には、この世界、そして現実世界の全ての人間、妖怪、神などのあらゆる者の情報が管理されている。
(え〜っと、早乙女利奈、早乙女利奈っと……あっ!あった!)
私は1つのファイルを手に取った。そのファイルには『早乙女 利奈』と書いてあり、開くとそこには名前や現在の年齢が書かれている。しかし全て赤文字で書いてあるのだ。これはこの人物が現実世界で死んだことを表している。普通に生きている者や、この世界にいる者は黒文字で表される。
現実世界で人が死んだ時、ファイルが赤色に染まる。早乙女利奈のファイルもまさにその赤色だった。
更にページをペラペラとめくる、すると今度は彼女のこれまでにあった出来事が記されている。赤文字で読みにくいが最後にはこう書かれていた。
―2018年 5月4日 車に跳ねられ、地面に後頭部を強く打ち付け死亡―
私は興味本位で彼女の過去について調べようとした。その時に違和感を感じた。この最後の文章は問題は無い、しかし過去に遡って行くと。だんだんと文字がおかしくなっているのだ。
―2017年 12月24日 早乙女¿菜とクリスマスパーティをする―
―2015年 ☆月?✕日 猫谷 ЯとёЩХФЦШТлする―
過去に遡れば遡るほど、おかしくなっていく。
―2ЕЗЁ ¿ЫХ△ЮЦ ♧ЦХЯ◾СОШ◇СФЫМ?ФЩЕ―
ここまで来るともはや読めなくなっていた。
(何これ?こんなの1度もなかったよ、この子に何があったの?)
「カナイ〜」
「うわっ!?」
後ろから急に声をかけられたので私はその場で即座にサッとファイルを閉じ、後ろに隠して振り向いた。
そこには青い髪の少女が立っている。ニライだ。
私達の容姿は非常に似ている。性格もほぼ一致しているから見分けがつかない。つけるとしたら目の色の違いくらいだ。私達はオッドアイだが、右が青で左が赤なのが私、その逆がニライだ。
私の顔を見てニライは少し不思議そうにした。
「どうしたの〜?そんなに驚いて」
「な、なんでもないよ、急に声をかけるからびっくりしちゃった、ニライこそどうしたの?」
「手紙の便せん、足りなくなってきてるからまた補充しといてよ」
「うん、分かった」
私達は現実世界の不遇な生活を送っている者に手紙を送っている。ニライが手紙を書き、私がそれを届ける。
大量に便せんを補充してるのだが、最近の現実世界は不遇な生活を送っている者が増えてきているから足りなくなることが頻繁にある。
ニライはその用事だけ言って去るのかと思いきや……。
「ねぇ、さっきから気になってたんだけどさ、なんで後ろに何か隠してるの?」
「えっ!?こ、これは、その……」
私達は早乙女 利奈の件については、今の現状(最近の現実世界について)の原因を突き止めてからにしようと決めていた。だが私はこっそり早乙女利奈をこの世界に連れてくる計画を考えていたのだ。なぜなら猫谷鈴にとって早乙女利奈はかけがいのない存在、だから早く会わせてあげたいのだ。
「ファイル?しかも赤ファイルじゃん、誰の?見せて」
「だ、だめ!」
「なんで〜?別に隠す必要ないじゃん、ほら見せて」
「あっ!あぁ……」
ニライは手を伸ばし、無理矢理手私の手からファイルを奪い取った。
「あっ!これ、早乙女 利奈のファイルじゃん!もしかしてこっそり方法を探ってたんでしょ?あのねぇ……今は一人の人間より現実世界の現状の方が大事って何回も言ってるじゃん」
「で、でも!」
「早く会わせてあげたい気持ちは私だって同じだよ、でも今現実世界では不遇な生活を送っている人が山ほどいるんだ、その子達も救ってあげないと」
「分かったよ……でも、ちょっとそれ見てよ、おかしなことになってるんだ」
「おかしなこと?」
そう言ってニライはファイルを開く。そしてしばらく目を通した、そして突然震えだした。
「カ、カナイ……これ……」
「おかしいでしょ?こんなこと一度もなかったよね?」
「大変だよ!」
「えっ?」
「こんなのありえない……嘘だ!そんなはずない!」
「どうしたの?何が大変なの?」
「早乙女利奈が、自力でこの世界に来てる……」
「まさか〜、天生石がないとこの世界には来れないはずだよ?」
この世界に来るには天生石が必要だ。いつも手紙と一緒に入れているあれ、あれはこの世界に来るための切符みたいなもの。
この世界では天生石は来た者に能力を与えるか、天生石の力を与える。しかしその力を持っているとしても、自由にこの世界と現実世界行き来することは出来ない。
それに早乙女利奈はもう死んでいる。自分からは入れないはずだ。
「いや、そのまさかだよ、もうこの世界にいる、このファイルが証拠だよ、この子の現実世界での記録が消えかけてる」
「消えることなんてあるの?この世界に来た人間のファイルにはしっかり現実世界の記録は残ってるよ?」
「時空が歪んでるんだ、そうじゃなきゃ文字がこんなにバグらないよ」
「それってこの子が時空を操ってるってこと?」
「うん、でも時空を操るにしても早乙女利奈は何故この世界のことを知ってるんだろう?あと、ただの人間が時空を操る能力を持っているはずない、どうやってここに来たの?」
「というか現実世界の記録を消す必要もあるの?この世界に来るんだったら現実世界の記録が残ってても関係ないじゃん」
「確かに……カナイ、やっぱり予定変更、早乙女利奈を探そう、原因を突き止めなきゃ」
「うん!」
私達は屋敷を飛び出した。
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ここは……どこ?知らない景色……なんで……こんな所に?
……ちゃん、……ちゃんはどこ?探さなきゃ、……ちゃんを、1人にしちゃだめ……。私が……ついてなきゃ……。
どうも!3月になりましたね、卒業シーズンです。卒業生さんの方おめでとうございます!
さて、今回は少し短めです。何かが起こりそうな予感ですね〜。最後の子は一体誰なんでしょう?それはまた後で。ではまた次回!




