第12話、もう1人の臣下
「その前に自己紹介〜♪僕は『シルク・コトーネ』フランネルの双子の妹だよ〜、はい自己紹介終わり、誰から殺そうかな〜?」
キリンヤガの城の書斎、王様の臣下の1人を倒そうとしているのですが、部屋に閉じこめられ大ピンチになってます。
「よし、決めた、裏切り者のフランネル、君から殺してあげる!」
シルクと名乗るフランネルちゃんと同じ格好をした女の子はフランネルちゃんに向かって走り、蹴っ飛ばしました。
普通とは思えないほどに速い蹴りでした。
そして、シルクちゃんは倒れたフランネルちゃんの上に乗っかりました。
「うわっ!?」
「あれ〜?フランネル鈍くな〜い?僕の蹴りも避けれないの〜?僕の事怠け者って言ってたのに〜?」
「くっ!調子に…乗るな!」
「おっと、反撃しようとしても無駄無駄♪」
次にシルクちゃんはフランネルちゃんの首を両手で締め始めました。
「しまっ……うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
「あはははは♪いい声♪ほらもっと聞かせて♪」
「あがっ…うう…あ゛あ゛!」
「あはは♪もうちょっともうちょっと♪」
「フランネル!『リストレイント』!」
緩菜ちゃんはシルクちゃんに向かって水色のリングを飛ばしました。しかしシルクちゃんには軽々と避けられてしまいました。
「おっと、遅い遅い♪」
緩菜ちゃんは倒れているフランネルちゃんの側に駆け寄ります。
「フランネル、しっかり!」
「うう…ケホッ!ケホッ!気をつけろ…あいつは身体能力上昇の魔法を使ってる…」
「邪魔しないでよ〜、せっかくフランネルの苦しむ声が聞けて、もう少しで殺せたのにさ」
「大事な双子の姉なのに…あなたには血も涙もないわけ?」
「この城の王に忠誠を誓った者はいかなる時も王の駒でなければならない、つまりはどんな命令にも背いてはいけないんだよ〜、それが例え大事な双子の姉の抹殺だろうとね〜♪」
「可哀想、くだらない忠誠心は他人も自分も殺すだけなのに…」
「とりあえずどいてくんな〜い?君は後で殺してあげるからさ〜、そんな焦らないでよ〜♪」
「面白いわ、殺せるものなら、殺してみなさい『ラングザム』!」
緩菜ちゃんはそう叫ぶと。緩菜ちゃんを中心に蜘蛛の糸のような魔法陣が形成されました。
「じゃ、お言葉に甘えて君から殺してあげる!」
それと同時にシルクちゃんは緩菜ちゃんに向かって走りました。
しかしさっきほど速くはありません。
「あれれ〜?速く走れない?」
「脚力強化魔法『スプリント』あなたの使ってる魔法よね?残念だけどこの魔法陣の中では通用しないわよ、状態異常魔法陣『ラングザム』は人の足を遅くすることができる、強化魔法は対策済みよ」
「ふふ♪只者じゃないってのは分かったけど、中級魔法ぐらいで僕に勝てるだなんて思わないでよね〜」
シルクちゃんはその場で魔法書を取り出し。魔法を唱えました。
「めんどくさいから2人共一気に爆ぜ散っちゃえ!『ヴォルテクスバースト』!」
「っ!?緩菜、危ない!」
シルクちゃんの本が爆発を起こし、とてつもなく大きな音を立てました。辺りには煙がと立ち上がります。
「緩菜ちゃん!フランネルちゃん!」
応答がありません。煙が消えた後、そこに残っていたのはシルクちゃん1人だけでした。緩菜ちゃんとフランネルちゃんの姿がなくなってしまいました。
「あ〜あ、二人とも骨も残んなくなっちゃったよ〜♪フランネルも馬鹿だね〜、裏切らなければこんなことになんなかったのに……」
「嘘……そんな!」
「残念だったね〜、でも君たちが悪いんだよ〜?僕を襲撃しようだなんてするから」
「なんで!?なんでそんな簡単に人が殺せるの!?」
「だから〜さっき言ったじゃん、王の命令には逆らえないんだって、何を言っても無駄だよ〜?」
許せません。王の命令だからってこんなにも簡単に人を殺すなんて、私は怒りで体が震えました。でも私には戦うことも出来ません。どうしたら……。
「さてと、あとは君達だけだね〜、でも宝石をぶら下げてる君、君だけは生かしてあげる、新しい魔法の材料としてね」
「鈴にゃ〜に手出しはさせないにゃ!」
そう言うとニーナちゃんが三本の尻尾を伸ばし、シルクちゃんを捕まえようとしました。しかし軽々と避けられてしまいます。そして尻尾を2本両手で掴み、あとの1本は床に踏みつけました。
「にゃ〜っ!?」
「あはは♪可愛い尻尾だね〜、3本も生えてるなんて珍しいね、君も実験材料として使ってあげる、その前に遊んであげるね♪」
「くっ!痛いにゃ!離せにゃ〜!」
「はいよ〜♪」
シルクちゃんは言われた通り2本の尻尾は手から離しました。しかし、残りの1本は踏みつけたままです。ニーナちゃんが自由になった2本で反撃を行おうとすると、今度は足をジリジリと動かしました。
「にゃ〜!?!!!?」
「どう?痛くて思うように力が入らないでしょ?」
「くうっ…!痛いにゃ!離してにゃ〜!」
「あはは♪必死だね〜、でもそうやってもがいてるから痛いんだよぉ?大人しくしてれば痛くないのに〜」
「ほんとにゃ……?」
「うんうん♪試してみなよ〜」
シルクちゃんの足から逃れようともがいていたニーナちゃんはそれを聞くと動きをピタリと止めました。
「あはは♪素直だねぇ〜、いい子いい子♪ま、痛くないって言うのは嘘なんだけどね〜♪」
そう言うとシルクちゃんは踏みつけている足をさっきよりも強く擦りつけました。
「にゃぎぃっ!?痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃ!!!!」
「猫は尻尾を踏まれるとすごい痛いって聞いたけど本当だったね〜、痛そ〜♪」
「ニーナちゃん!『硬化の弦』!」
みぃちゃんが三味線をポロンっと鳴らしました。
「あれ?痛くないにゃ、よし今なら!え〜い!!!」
そしてニーナちゃんは踏まれている尻尾を思いっきり上に振り上げ、シルクちゃんを吹っ飛ばしました。
「うわぁっ!?」
「逃がさないにゃ!」
飛ばされて空中でクルンと一回転したシルクちゃんをニーナちゃんの尻尾が捕らえます。尻尾2本をシルクちゃんの腕に1本ずつ、残りの1本は腹部に巻き付けて完全に動けなくしました。
「なっ!?体が…動かせない…!?」
「にゃ〜の尻尾に1度巻き付かれたらもう最後にゃ、逃れることは出来ないにゃ!」
「そ、そんな!嫌だ!離せ!」
シルクちゃんは涙ぐみながら自由になろうと必死でもがいています。しかしニーナちゃんの尻尾はそれを許してくれません。
「くうっ……!絶対負けないと思ったのに!こんなのありえないよ〜!」
「その油断が命取りだと何度も言ったはずだぞ、シルク」
「っ……!?」
突然シルクちゃんの後ろから声がしました。フランネルちゃんです。フランネルちゃんが後ろに立っていました。
「フランネル!?吹き飛ばしたはずなのに!」
「ああ、しかし空間魔法で一時的に別の空間を作ってそこに避難して爆発を回避できた」
「嘘だよ……負けれないのに……負けたら殺されるのに……嫌だ!死にたくない!負けたくないよぉ!」
シルクちゃんはまた暴れようとしますが。ニーナちゃんの尻尾の拘束を解くことはできません。
「大丈夫だ、負けても殺させはしない」
「それってどういうこと?」
「大人しくすればわかる、あたしもおまえを傷つけるつもりはない」
シルクちゃんは大人しくなり、その場に膝まずきました。フランネルちゃんはシルクちゃんのローブの中から魔法書を取り出しました。反撃させないためです。
「よし、猫、もういいぞ、解放してやれ」
「ちょっと待つにゃ!緩菜にゃ〜はどこに行ったんだにゃ?」
「そろそろ緩菜もここに戻すか」
フランネルちゃんはそう言うと手をサッと上げました。すると彼女の近くに魔法陣が生成され、そこから緩菜ちゃんが現れました。それを確認するとニーナちゃんはシルクちゃんに巻き付けていた尻尾を緩め、元の位置に戻しました。そして緩菜ちゃんの元に駆け寄りました。
「緩菜にゃ〜!大丈夫かにゃ?」
「えぇ、問題ないわ、フランネルのおかげでね」
「一体どうやってあの爆発を避けたんだにゃ?」
「闇空間魔法の1つね、フランネルが闇の空間を地面に作って私ごと闇空間に避難したのよ、ニーナも覚えがあるでしょ?」
「あ!にゃ〜が捕まった時!」
ニーナちゃんは理解してるようですが、私には理解できません。もうほんとに何がどうなっているのか……。私、今の状況に着いていけません。
そんな中フランネルちゃんが涙ぐむシルクちゃんの肩に手を置き口を開きました。
「シルク、あの王はこの城を悪い方向に導いているんだ、服従し続ければいずれおまえもどうなるか分からない、あたし達は王を倒しに行く」
「本気で言ってんの!?頭大丈夫?無理だよ!あの王は倒せない、フランネルだってそんなこと知ってるはずだよ?」
「だが、このままあの方を放っておく訳にはいかない、大丈夫だ、緩菜達が着いている、こいつらは頼もしい奴らだ、こいつらなら何とかしてくれるかもしれない」
「普段人を頼りにしないフランネルが、そんなこと言うなんてね、分かったよ、僕も協力するよ、その代わり……」
シルクちゃんはフランネルの耳元で何かを囁き始めました。フランネルちゃんは頷いています。
「ああ、分かった、だが気をつけろよ」
「フランネルの方こそ、この子達の足引っ張らないでよね〜♪」
「ふん、余計なお世話だ、さっさと行け」
シルクちゃんはさっきまでビクともしなかった扉を片手で開けてどこかに行ってしまいました。
多分ドアに魔法がかけてあってそれを解除したのでしょう。
そしてフランネルちゃんは口を開きました。
「さて、どうやって王を倒す?」
「その前にリズ達を迎えに行かなくちゃ、どこに身を隠してるのかしら?」
「この城は広いからな、探しているうちに他の騎士に見つかってしまう、あたしもこの城の構造は理解しているがどこに身を隠しているかはわからん、片っ端から探すしかないか」
「その必要はない」
この部屋の隅で低い声が聞こえてきました。
そして目の前に忍者の格好をした猫耳の子が突然現れました。木乃葉ちゃんです。
「うわっ!?木乃葉!?だから急に出てくるのはやめてって!しかもなんでここに?」
「偶然にも隣の部屋に身を隠してた、リィル達もそこにいる」
「偶然って言うのは嘘ね、どうせ後をつけてきたんでしょ?」
「バレた……その通り、ニーナ様が心配になったからこっそり後をつけて隣の部屋に忍び込んだ」
「余計な心配にゃ、にゃ〜がやられるわけないにゃ」
ニーナちゃんは手に腰を当てて余裕そうな顔をしています。それを見たフランネルちゃんはニーナちゃんに突っかかりました。
「ふん、尻尾を踏まれて半べそかいてたやつが何を言ってるんだか」
「にゃっ!ふ、フランネルにゃ〜こそ、隠れてただけの癖に〜!」
「なんだと!?」
「なんか文句あるにゃ〜!?」
ニーナちゃんとフランネルちゃんは睨み合っています。しかし、みぃちゃんが2人の真ん中に入り、喧嘩を止めようとします。
「喧嘩はやめようよ!それよりも2人とも大丈夫?うわっ!?怪我してるよ!私に見せて」
「こんな怪我などかすり傷だ、どうということはない」
「そうそう、こんなの全然平気にゃ」
「だめ!ちゃんと治さなきゃ!ほら、見せて」
「わ、わかった……」「わかったにゃ……」
そう言うとみぃちゃんは2人に付いた傷を見始めました。フランネルちゃんは肘やお腹、ニーナちゃんは尻尾に傷があります。
みぃちゃんは傷を見終わると三味線を構えこう言いました。
「今治してあげるね、『癒しの弦』」
みぃちゃんはポロンと三味線を弾きました。さっきの叩くような音の硬化の弦とは違い流れるような優しい音色です。
すると、フランネルちゃんの肘と腹部、ニーナちゃんの尻尾の傷がみるみると塞がって行きます。
「傷が、治っていく……?」
「踏まれた跡が消えてくにゃ〜」
そして弾き終わる頃にはもう2人の傷は完全に治っていました。
「はい、治ったよ」
「なんだその楽器、魔法か?」
「この三味線は特別な力があるの、聴いた人を元気にしたり、強くしたりできるんだよ」
「シルクの強化魔法のようだな」
「怪我したら私に言って、また治してあげるから」
みぃちゃんはニコッと笑いながら言いました。
また、私だけ活躍できてない…みんなちゃんと戦ってるのに、能力を駆使してちゃんと役に立っているのに、私だけ何も出来ていません。だって、私は能力すらないんです。ワーハクタクにはなっても元はただの人間、何だか心が暗くなってしまいました。
そんな私に緩菜ちゃんは声をかけました。
「どうしたの?鈴、浮かない顔して、もう王と戦うんだからしっかりしなさい」
「あ、うん……」
「もしかして、役に立てないことを気にしてるの?」
「うん、だって私、迷惑かけてばっかりだし、シルクちゃんとの戦いも私は立ってることしかできなかったし、ねぇ、私やっぱりここに身を隠してていい?だって私みんなの足引っ張っちゃうし……」
「利奈は、そんな弱気な鈴を望んでいるのかしら?」
「…………」
「利奈はあなたのことを、どんなことにも挫けない強い子だって言ってたわ、そんなにくよくよしてちゃだめ、ここまで来たなら頑張らないと、大丈夫、私があなたを守ってあげるから」
「ごめんなさい……私も頑張るから!」
「その意気よ、さっさと王を倒しちゃいましょ」
私は間違っていました。みんな勇気を出しているのに私だけここに残ろうなんてずるいですよね、私も勇気を出さないと!
「では、王の元に案内する、王は手強い、気を引き締めて行くぞ」
フランネルちゃんを先頭に私達は隣の部屋に隠れていたアリスちゃん達と合流し、王様の部屋へと向かうのでした。
皆さんどうも、最近忙しいrurusuです(最近だけでもないか…)投稿も頑張らないと!
今回の視点は鈴ちゃんでしたが、なるべく他キャラを目立たせたいと思いました。キャラの人数がいると表現も難しいですね(これいつも言ってるような……)伝わって頂けたら幸いです。もうすぐ12月ですね!寒くなってきましたが風邪ひかないように頑張りたいと思います!
では、また次回♪




