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絶望の果ての理想郷  作者: 秌雨
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第11話、裏切り者の心情

(くそ!…何故だ!何故こんなことになってるんだ!)


あたしは誇り高きキリンヤガ王の臣下、フランネル・コトーネ、あたしは今一緒に歩いている侵入者共を捕えるはずだった。しかし今はこの魔法使いに返り討ちにされて遂には王を、そしてこの城を裏切る羽目になってしまった。


あたしは今この魔法使い達とともに城へと向かっている。しかし正面から入るのではなく裏から入るらしい、あたしは水路から城の裏へと続く道を知っているので案内を任された。

歩いている途中、三本の尻尾が生えている奇妙な猫があたしに話しかけてきた。


「フランネルにゃ〜はここの王様が酷いやつだと思わなかったのかにゃ〜?」

「ふん、お前にはわからんだろうな、王の偉大さが」

「偉大な王に見捨てられてもそんなこと言えるのかにゃ?」

「くっ…!確かに王は少し残酷なお人ではあるが…というかそんなことよりおまえのその力の抜ける語尾はなんとかならんのか!聞いててイライラする!」

「そんなこと言われても困るにゃ〜、猫だった頃の癖が抜けてないんだにゃ、それにおまえって言うにゃ〜!にゃ〜には『ニーナ』っていう名前があるにゃ!」

「くっ……こいつめ!」


あたしに捕らわれた時は半べそかいてたくせに自由になった瞬間にこんなに態度が大きくなって、正直腹立たしい。


元はと言えばこの魔法使いさえいなければ全て上手くいったんだ。

こう言うあたしも魔法使いだが、あの場所が変わる魔法…あんな魔法見たことがない。あんなの反則だ。

私はこの反則魔法使い、緩菜を睨んだ。


「フランネル、私に不満があるわけ?」

「ああ、ある、おまえのあの強力な魔法は一体どこで習得したんだ?」

「ガンビアやリストレイントのこと?独学よ、プレスターの図書館で魔法の事を調べて自分で魔法書を作ったの」

「馬鹿な!あのような強力な魔法は儀式をしないと習得できないはずだぞ!」


本来強力な魔法というのは魔法書だけでは唱えることが出来ず、特殊な儀式を行わなければ習得することが出来ない。とてつもない魔力を要するからだ。

あたしの持っている死の魔法『イービルララバイ』も命を失いそうになりながらやっと習得したと言うのに…。

目の前にいる魔法使いは全て自作の魔法だというのだ。ありえない、こいつは一体どれだけの魔力を…。


「あんなの古代文字を解読して自分の好きなように書き換えればいいだけじゃない、魔法書なら儀式なんて必要ないのよ」

「だとしてもそれだけの強力な魔法を操る魔力をなぜ人間であるお前が持ってるんだ!?」

「永久魔力上昇魔法『シャルムミラク・エティネル』魔法使いなんだから知ってるわよね?」

「確か、自分の魔力を無理やり限界まで上げてそれを永久的に持続させる魔法だったか、それを使ったっていうのか?あの魔法書は想像上の魔法なんだぞ、デタラメ言うな」

「それはこの城だけでのお話、実大するんだな〜それが」

「なんだと!?」


緩菜は古びた本をあたしに渡した。

本には薄い文字で『Charm Mirac Etineru』と書いてあった。


「プレスターの路地裏の建物に捨ててあったの、まさかこの本が魔力上昇魔法の最上級のものだったとはね」

「でも、この魔法も本来ならば儀式をしなければ習得できないはずだ、それをどうやって…」

「んー、才能ってやつかな〜?なんてね♪私にもよくわかんないのよ」

「恐ろしいやつだ…」


緩菜はニコッと笑った。腹立たしい、伝説とまで言われた魔法を簡単に習得しといてそれを才能という言葉だけで片付けるなんて…絶対どこかに秘密があるはずだ。

そうこうしているうちに城の裏側へと辿り着いた。


「ここが城の裏だが、ここに城の入口なんてあったか?」


忍者の格好をした猫が指をさした。その先には下水道があった。


「あそこは下水道だぞ?まさかあそこから入るつもりか?」

「正面から入るよりはいい、この下水道はどこに繋がってる?」

「確か、城の地下に繋がってるはずだ、そこにおまえらの言う人間とワーハクタクが捕えられている」


「あら、丁度いいわね、じゃあササッと2人を助けちゃいましょう」


緩菜は先に下水道の中に入って行った。

あたし達も後に続いた。中は暗く異臭がする。

しばらく歩いていると脇道に小さな階段があり古びた鉄格子へと繋がっている。


「ここが城の地下から下水道への出口だ、あまり使われてないから古びてるな………やっぱり鍵は閉まっているか」

「これくらいなら開けられる、そこをどいて…」


忍者の格好をした猫は鉄格子の前に立つと付いている鍵に平たく先のとがったナイフのようなもので刺した。すると鍵が砕け鉄格子の扉が開いた。


「おまえ器用なんだな…」

「鍵開けは忍びの基本、これくらい造作もない」


そして変なステッキを持った猫が急に腰に手をあてて自慢げな顔をした。


「そうだよ〜、木乃葉は凄いんだから、エッヘン♪」

「それ、リィルが言うことじゃない…」

「何よ!目立たないあなたを目立たせてあげてるんじゃない!」

「忍は目立っちゃいけない…」


こいつらはニーナの部下らしい、お互いパートナー的な存在でさらに守るべき主君がいる。

あたしに似ているな、でもあたしはその主君とパートナーを裏切った。王にはもう許して貰えないだろうが、あいつは私を許してくれるだろうか?あたしの目に少しだけ涙が浮かんだ。

すると緩菜があたしの元へ来て、心配そうな顔をした。


「やっぱり不安なのね、別にいいのよ?今から城に戻ったって、その時は敵同士になるだろうけど」

「いや、あたしも同行しよう、ここまできたらもう引き返せない」

「そうよね、じゃあ2人が閉じ込められている部屋に案内してもらえるかしら?」

「わかった…」


あたし達は城の地下へと歩き出した…。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私達は今この暗い部屋から脱出する作戦を考えています。

しばらく経ちましたが何も思い浮かびません。

そろそろ後ろに組まされて鎖に繋がれている手が痺れてきました。ずっと同じ体制なので結構辛いんです…。


「うーん、この鎖がなければどうとでもなるんだけど…」


私と一緒に閉じ込められている人、アリスちゃんはそう言いました。

ちなみにアリスちゃんの姿はシルエットでしかわかりません。向こうからは私の姿を確認済みらしいのですが…。


「うう…手は痺れてきたし、暗くて何も見えないし、鬱になっちゃいそうだよ…」

「そうね、でも脱出方法は1個も思い浮かばない…そういえば鈴ちゃんはなんでこの城に侵入しようと思ったの?」

「え?侵入?」

「侵入しようとして捕まったんじゃないの?」

「私、プレスターで気を失って、気づいたらここに…」

「意味もわからず連れてこられたって感じね、そりゃ友達が遠くに行っちゃうって勘違いするわね、ふふ…」

「もう!恥ずかしいからやめてよ!」


そんな話をしていると部屋の外からコツコツと音が聞こえてきます。人が歩いているようです。しかも複数人。

アリスちゃんは小声で言いました。


「静かに……、見回りの騎士かもしれないわ」

「そんな…私達何されちゃうの?」

「安心して、もし入ってきたら言うことを聞くのよ、そうすれば殺されたりしないだろうから」


そして、歩く音が止み、くぐもった声がドアの向こうから聞こえてきました。


「ここだ、ここに捕らえてある」

「鍵が閉まってるみたいね…木乃葉、開けられる?」


この声、どこかで聞いたことある気が…。

すると、ドアがガチャっという音を立てました。鍵が開く音です。

そして、ドアが開きました。

ランタンの光が差し込んできて、私は思わず目を瞑りました。

目を開けるとそこには、緩菜ちゃん、みぃちゃん、ニーナちゃん、あと知らない4人が立っていました。


「えっ!?ニーナちゃん!?みぃちゃん!?緩菜ちゃんも!」

「鈴にゃ〜!」「鈴ちゃ〜ん!」


ニーナちゃんとみぃちゃんは私の所に来て思いっきり抱きしめてきました。



そして、隣では金髪で水色のロングスカートを履いて白いカチューシャをしている女の子に、金髪で薄紫色のロングスカートを履いて赤いカチューシャをしている女の子が抱きついています。二人とも顔がそっくりです。

抱きつかれている方がアリスちゃんでしょうか?


「お姉ちゃん!」

「あぁ、アリス…無事だったのね、怖くなかった?」

「ううん、このワーハクタクの鈴ちゃんがいたから平気!」

「そう、でももう城を脱出しちゃダメ!もしかしたら殺されちゃってたかもしれないのよ?」

「ごめんなさい…」

「でも本当に無事でよかった」


紫色のロングスカートの人はとても安心してるようです。どうやらアリスちゃんのお姉さんのようです。


そして緩菜ちゃんも私の傍に来ました。


「鈴、怖かったでしょう、もう大丈夫よ」

「うん…ありがとう、みぃちゃんとニーナちゃんもありがとう」


「大丈夫だったにゃ?怪我とかしてないにゃ?」

「うん、大丈夫、でもこの鎖を早く取りたいよ…」

「任せるにゃ!木乃葉にゃ〜頼むにゃ!」


「はっ!ニーナ様」


ニーナちゃんが指示を出すと忍者の格好をして猫耳が生えた女の子が針金のようなもので私を捕らえている鎖の鍵をカチャカチャし始めました。

すると鎖の鍵が開き、私の腕は自由になりました。


「うわ、すごい!どうやって外したの?」

「針金で鍵穴をいじった、鍵開けは忍びの基本」


見た目は私と同じ(理想郷の中の年齢)ぐらいの年齢のようですが、とてもしっかりしてる子です。忍者の格好をした子は次にアリスちゃんの鎖を外し始めました。


「ニーナちゃんこの子は誰?」

「あ、鈴にゃ〜は知らないんだったにゃ、この子は木乃葉、にゃ〜の部下にゃ」

「部下?ニーナちゃん、部下いたの?」

「昔色々あったんだにゃ」


「ちょっと、ちょっと!ニーナ様の部下は木乃葉だけじゃないんだから!」


緩菜ちゃんに隠れて見えませんでしたが、これまた私と同じぐらいの猫耳を生やして、フリフリのついたスカートを履いた短いピンク色の髪の女の子がそう言いながら出てきました。手には先端に猫の肉球が付いたステッキのようなものを持っています。


「あなたは?」

「強くて賢くてかわいい、白猫リィルだよ〜♪」

「えっ…それ自分で言うの……?」

「だってほんとのことだもん」

「すごい自信だね…リィルちゃんは何ができるの?」

「魔法を唱えられるよ!この『マジカルキャットステッキ』で!」

「へぇ〜!じゃあ緩菜ちゃんみたいに場所を交換させたり、テレポート出来たりするの?」

「あ、えっと…それはできない…かな?」

「じゃあ光の雨を降らせるとか!」

「えっと…それもできない…」

「あ、そうなんだ…」

「なんか冷められた!?」


リィルちゃんは突然ショックを受けました。

そして近くにいたみぃちゃんに抱きつきました。


「うわぁぁぁん、実ちゃ〜ん!私の魅力が分かって貰えないよぉ!」

「よしよし、まだ会ったばかりだから分からないだけだよ、そのうちいい所見つけられるからね」


みぃちゃんはリィルちゃんの頭をナデナデしながら慰めています。

リィルちゃん、結構傷つきやすいんですね、なんだか悪いことしちゃったかな?

すると鍵を開け終わった木乃葉ちゃんが私のそばに来ました。


「大丈夫、リィルは立ち直り早いから」

「ほんとに?」

「ん、3分ぐらいしたらだいたい元通りになる」

「そうなんだ…」


木乃葉ちゃんとリィルちゃん、二人とも個性的な人達です。


「とにかくみんな助けに来てくれてありがとう、早く帰ろうよ、こんな暗いところにいたくないよ」

「鈴、帰るのはまだ少しだけ待ってくれるかしら?」


緩菜ちゃんはそういうと紫色のフード付きの服を着て、髪で片目 を隠している人を部屋の中に引き連れました。


「少し面倒なことになってるの、ここにあなた達を捕まえた犯人がいるんだけどね、この子が襲ってきたから返り討ちにしたら『殺さないで〜!』とか『作戦失敗したら王に殺されちゃう〜!』なんて半べそかきながらいうから鈴達を助けたらどうにかしてあげるって話になったの」

「おい!そんな間抜けな言い方してないぞ!」

「でも言ったのは事実じゃない♪」

「あ゛あ゛腹立たしい!この反則魔法使いめ!」


この人結構イラついているようですが、話はだいたい理解できました。

緩菜ちゃんは話を続けます。


「そしてこの城の人は外に出ちゃ行けないルールを王が勝手に決めて、城下町にも騎士がそこらじゅうで監視してて自由が許されない所なの」

「あ、それアリスちゃんに聞いた」

「じゃあ話が早いわ、王がいるとこに行きましょう」

「え?それどういうこと?」

「王を倒すのよ」

「えぇぇーーーー!?」


この人は頭でも打ったんでしょうか?周りのみんなは納得してるみたいですが…。


「そ、そんなの無理だよ!このままみんなで逃げればいいんじゃないの?」

「それも考えたけど、この城と城下町の人達はろくに外も歩けないのよ?この世界にいるのに自由を奪われてるのよ?それって酷じゃないかしら?」

「そうだけど…別に私達がやらなくたって…」

「じゃあ誰がやるの?」

「うっ…それは…」

「鈴、自分が助かればいいと思うのは間違いよ、今度は助ける側に回らなくちゃ、ここには解放されたい人達がいっぱいいるのよ?」

「私達で出来るの?」

「ええ、皆で力を合わせればね」


緩菜ちゃんの目はまるで現実世界で生きていた利奈ちゃんのようでした。

どんなに辛いことがあっても希望をくれる眼差し……。

そうだよね、弱気のままじゃ駄目だよね。


「うん、分かった、私も戦う!」

「鈴ならそう言ってくれると信じてたわ」


「フランネル、ここから王にいる所までの案内をよろしく」

「いいが、そのまま戦うのは危険だ、王にはあたしの他にもう1人臣下がいる、まずはそいつから潰すべきだ、この城の書斎にいる」

「そうね、でもこの大人数で行動すると城の騎士にバレそうね、それじゃあ木乃葉とリィル、別行動出来るかしら?終わったら迎えに行くからこの城の安全な所を探して身を隠していて欲しいの」


「了解した」「は〜い♪」


するとアリスちゃんが出てきてこう言いました。


「あ、ねぇねぇ私もこの2人に着いて行ってもいい?」

「アリス!何を言ってるの!」

「お姉ちゃん、私役に立ちたいの!だからお願い!」

「アリス…えぇいいわ、その代わり私もついて行くわ、いいわよね?緩菜」


「えぇ、リズが付いてるのなら心強いと思うわ」

「それじゃあ私達は行くわ、気をつけて城の者は手強いわ」

「あなた達もね」


一度リズさんとアリスちゃん、リィルちゃん、木乃葉ちゃんと別々に分かれ、残ったみぃちゃんとニーナちゃん、緩菜ちゃん、そして私はフランネルという人に、この城の騎士達に見つからないように普段使わない通路を通って書斎に私達を連れてきました。


「ここだ、あいつは怠け者だからな、そうっと入って不意をつけばすぐに倒せる」


そういうとフランネルという人はそうっとドアを開けて入りました。私達も後に続けてそうっと入りました。

すると、私達全員が入ったと同時にバタンとドアが勝手に閉まりました。


「えっ!?ドアが勝手に!?」

「しかも、開かないにゃ!」「ビクともしないよ!」


ニーナちゃんとみぃちゃん、そして私がドアを開けようとしましたが、ビクともしません。


「あははは♪つっかまーえた!」


突然目の前にフランネルちゃんと同じ服を着た銀髪の女の子が現れました。しかし、フードを常に被ってるフランネルちゃんと違ってフードは被っていません。


「シルク!何故私達がここに来ることが分かった?」

「あれあれぇ〜?フランネルも一緒じゃ〜ん♪まさか裏切りぃ〜?」

「うるさい!今おまえに答える舌など持っていない!」

「言わなくたっていいも〜ん♪もう知ってるから〜♪」

「なんだと!?」

「君達がこの城に侵入してる事なんて僕にはお見通しだよ〜?」

「くっ!怠け者の癖に!」

「ふふふ♪ざんね〜ん♪というわけで、君達には死んでもらいま〜す!」


どうしよう、私達、いきなり大ピンチです……。

お久しぶりです、気づいたら1ヶ月以上経ってました。ごめんなさいm(*_ _)m

さて、今回も少し長めにしました。フランネルちゃん視点のお話が前半にありましたね。こう言う風に色んなキャラの視点でこれからも書いて行きたい思うので、色んな人の心情とか見れて楽しめると思います!(クオリティは相変わらずないですが…)

では、また次回♪

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