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絶望の果ての理想郷  作者: 秌雨
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第10話、キリンヤガの城、そこは自由が許されない所だった

私が目を覚ましたのは、数分前のことでした。

今現状わかっているのは、暗くて少し広い部屋に閉じ込められてると言うことと、手を後ろに組まされて鎖に繋がれてるっていうことです。

少し動く度にチャリチャリと音がします。


(ここ、どこだろう……?)


気絶する前よりは暗くはありませんが、かろうじて周りが見えるぐらいでとても嫌な雰囲気です。



(私、どうなっちゃうのかな?みぃちゃんにもニーナちゃんにも緩菜ちゃんにも、もう会えないのかな……?)


もう会えないと思った瞬間に涙が視界を埋めつくしました。


(神様の嘘つき!もう友達を失うことはないって言ったくせに……!)


私は心の中で叫びました。

こんなことしたって無駄なのはわかっています。でも辛いんです。また大切な人が手の届かない所に行ってしまうのが……。

私は、また泣き始めてしまいました。


すると、部屋の奥からコツコツと歩く音と鎖の音が聞こえてきました。

そして暗くても見える範囲まで近づいてきました。シルエットしかわかりませんが、私と同じ身長だということは分かりました。

そしてそのシルエットはゆっくりと口を開きました。


「あなたも、捕まっちゃったの?」

「えっと……その……」


その声は優しい女の子の声でした。

でも急に声をかけられたので私は動揺しました。


「怖がらなくて大丈夫、私もここに捕まっちゃった人間だから」

「私、状況がわかってなくて…ここがどこなのかも…」

「ここは『キリンヤガの城』の地下の部屋、この城には地下牢がないからここに閉じ込めたのよ」


キリンヤガの城……確か街を襲った兵隊さん達が言ってたところだ。

たぶん、あのあと私は捕まっちゃったんだ。


「そう言えば、あなたはどうして泣いていたの?」

「私、友達と離れ離れになっちゃったの、もしかしたら会えなくなっちゃうって思って…」

「ふふ、ふふふふっ♪あはは♪」


目の前の女の子は笑っています。

私はムッとしました。


「なんで笑ってるの!おかしいことなんて何も言ってないじゃない!」

「ふふふ♪だってあなたプレスター辺りの子でしょ?近くじゃない」

「え?なんでプレスターにいたって事を?」

「少し前に騎士達が『プレスターの子供を捕らえた』って言ってたんだもの、それであなたがここで鎖に繋がれてる所を見たの」

「じゃあ、私、すごく遠い所にいるんじゃないんだね!よかったぁ〜」

「ちなみに、あなたは私の姿はわからないけど、私はあなたの姿を知ってるわよ、騎士達があなたをここに連れてくる時、明かりで見えたのよ、あなたワーハクタクだったのね?1度会ってみたかったんだ〜♪」

「この城にはいないの?」

「私はここの城下町に住んでたけど、いるのは人間だけよ?だからプレスターの街に行こうとしたけど、ここ城下町から出ることを禁止されてるの、でもこっそり抜け出したつもりが見つかっちゃって今こうやって閉じ込められちゃったってわけ」


この子、捕まっちゃったのに凄く明るい、どうしてこんなに元気なんだろう?

それに気になることがもう1つ。


「この世界って自由な暮らしができるんじゃないの?法律もないんでしょ?」

「ないけど、ここの城は特別、支配してる王様が勝手に決めちゃったのよ、しかも強い騎士もいっぱいいるし、この街の人間は逆らえないのよね」

「勝手な王様!それでプレスターの街も占領させようとしてたなんて許せない!」

「シーっ!騎士達に聞かれたらまずいわ…ここの王様を侮辱するととんでもない目に合うって聞いたことがあるの、あまりそういうこと言わない方が身のためよ」

「でも、私は許せないよ!早くここから脱出して一緒にプレスターの街に行こうよ、そうすれば自由になれるよ」

「そんなの無理よ…って思ってたけど、私、あなたが来て考えが変わっちゃった、そうね、早くここを出ましょう!」


しかし為す術もありません。私は能力もないし…鎖で手も使えません。


「でも、この鎖を何とかしないとどうにもならないね…」

「そうね、これさえなければ私の能力で何とかなるんだけど…」

「あなたの能力って?」

「私壁抜けができるの、だからこの鎖さえ外れれば、壁抜けをして騎士達からこっそり鍵を盗んであなたの鎖も解くことができるんだけど…」

「鎖も壁抜けでなんとかならないの?」

「できるならとっくにやってる、私が抜けられるのは私より身長の高い物だけ」

「うう…私は能力がないし、やっぱりダメなのかな…?」

「諦めるのが早いよ、頑張ってここから出る方法を考えましょ?」


私達は一旦落ち着いて考えることにしました。


「ところで、名前聞いてなかったわね、私は『アリス・マリベール』アリスって呼んでちょうだい」

「私猫谷 鈴、よろしく、アリスちゃん」

「よろしくね鈴ちゃん、さて…どうやって脱出しましょうか…?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私、早乙女 緩菜は今、ニーナとその部下、そして実と共にキリンヤガの城に向かっている。

街から少し離れた所まで歩いてきた。キリンヤガへ行くには森を抜ける必要があり、その森の中を歩いている。まだまだ城までは距離がある、しかし和服を着た猫又の実は辛そうだ。


「はぁ…はぁ…ニーナちゃん、もうダメ…一回休もうよ…」

「ダメにゃ!早く助けないと、鈴にゃ〜の身になにかあったら大変にゃ!」

「そうだけど…歩き慣れてないから足が限界だよ…」


実はそう言ってその場に座り込んでしまった。

私は実の頭を撫でながらニーナに言った。


「ちょっとニーナ、休ませてあげなさいよ、いくら急いだ方がいいとはいえ、その前に体力が尽きたら元も子もないわ」

「むむむ…確かにそうだにゃ、よし、ちょっと休憩するにゃ、木乃葉にゃ〜、周りに怪しいやつがいないか調べるにゃ」


「承知しました、ニーナ様」


忍の猫である木乃葉は音もなくその場から消えた。


「ねぇねぇニーナ様〜私は何をすればいいの〜?」

「リィルにゃ〜はみぃにゃ〜をそこの木のそばに連れてってあげるにゃ」

「は〜い♪」


リィルという魔法使いの猫は実を木陰まで連れて行った。


「へぇ〜、仕事はちゃんとできるのね〜、ちょっと見直したわ」

「にゃ〜の自慢の部下だからにゃ〜♪」

「もしかしたらあなたより仕事できるんじゃない?ふふふ♪」

「うるさいにゃ!それより、鈴にゃ〜は無事かにゃ〜?心配だにゃ〜…」

「そうね、酷いことされてなきゃいいけど…あの子、今頃1人で泣いてるわ」

「鈴にゃ〜に手出しするやつはにゃ〜が許さないにゃ!緩菜にゃ〜もそう思うにゃ?」

「えぇ、そうね…」


私は何故か、ふと利奈のことを思い出した。別に忘れていたという訳ではないが鈴のことを考えた時に自然と利奈のことが頭に浮かぶのである。


利奈は私とは違って穏やかで優しい性格だった。

学校の定期テストも高得点で、家でも勉強を怠らない努力家で、私なんかよりもずっと優秀だった。でも親はそんな利奈を一切褒めようともしなかった。というより相手にもされないのである。

私はそれが許せなかった。だから姉である私が利奈のことを沢山褒めていた。その時の利奈はとても喜んでいた。

きっと現実世界の鈴も同じ気持ちだったのかもしれない、親を亡くして、いくら頑張っても褒めてくれる人が家には誰もいない、だから唯一頑張りを認めてくれる利奈という親友はあの子にとって一番大切な存在だったのである。

その大切な存在を失った鈴は、利奈よりも辛い思いをしているに違いない。


だから私は、この世界で鈴を利奈に会わせてあげたい、そして2人で幸せな生活をさせてあげたいのだ。

私は思う、この世界に利奈はいる、絶対に……。


「緩菜にゃ〜?」

「え?あぁごめんなさい、少し考え事してて…」

「そろそろ行くにゃ、みぃにゃ〜も大丈夫みたいにゃ」


「うん!心配かけてごめんなさい、もう大丈夫だよ」


ぼうっとしてる間に体調は治っていたらしい、木乃葉もいつの間にかここに戻ってきていた。


「それじゃあ出発するにゃ〜」


私達はまた歩き始めた。

今は鈴を助けることを考えなきゃね、無事だといいのだけれど…。


特に何事もなく森を抜け、しばらく歩いていると、少し遠くにうっすらと城が見えてきた。


「あれじゃないかしら?」

「そうだにゃ、そろそろ着くにゃ」


「あそこに鈴ちゃんが捕まってるんだね、あれ?あそこから誰か走ってくるよ?」


実は前に向かって指をさした。その方向を見ると、誰かがこっちに来ている。

1人のようだが…。


「城の人かもしれないにゃ、話を聞いてみるにゃ!」


そして、私達が姿が見えるところまで走ってきた。

金髪でショートヘアの少女だ。薄紫のロングスカートを身につけている。頭には赤いカチューシャを付けている。

息を切らしながら私達に話しかけてきた。


「はぁ…はぁ…あなた達、プレスターの人?」

「そうよ、あなたはあの城の?」

「えぇ…突然だけど金髪で水色のロングスカートを履いた子を見たかしら?白いカチューシャもしてるわ」

「見てないわ、その子がどうかしたの?」

「私の妹なのよ、城下町から抜け出してプレスターに向かったんじゃないかって思って」

「多分プレスターに用があったのよ、そのうち帰るんじゃないかしら」

「そうじゃないのよ!あの城下町は外へ出ることを禁じられてるの、もし見つかったら捕まって城で酷い目に会うわ、なのにあの子ったら…!」


「ちょ…ちょっと待ってにゃ!なんで城下町から出ることを禁止してるんだにゃ!?前はそんな決まりなかったにゃ!」

「わかんないのよ、王が決めたことなの、一体何が目的なのかしらね?」

「君も外に出ちゃってるけど大丈夫なのかにゃ?」

「こっそり抜け出して来た、上手く見つからずに来れたわ」


この世界では法律がない、だから力を持つものが支配できる。

やはり自由な世界だとしても誰かには支配される。この世は残酷だと私は思った。


「でも、私達はすれ違わなかったわよ、多分だけどその妹さんはもう既に捕まってるのかもしれないわ」

「そんな…!確かに今日脱出者が出たって騎士達が騒いでたけど、まさかあれがあの子なのかしら……?」

「多分ね、ちょうどいいわ、城まで案内してもらえる?私達もあそこに捕まった人を助けに行くところなの」

「助ける…?何を馬鹿なことを言ってるの!?王に逆らったらどうなるか!」

「関係ないわ、私達の大切な人を勝手に奪ってるんだから奪い返すだけよ、それにあなたも妹を助けたいんでしょ?」

「助けたいけど無理よ…私とあなた達5人だけじゃ叶う相手じゃないわ、城にはすごい数の騎士がいるのよ?」

「そうかしら?やってみなきゃわからないと思うけど?」

「……………。」


少女は少し動揺しているようだ。


「別に案内してくれるだけでもいいのよ?代わりに私達が助けてあげるわ」

「いいえ、私も協力するわ、私は『リズ・マリベール』道案内は私に任せて、あと、こんな見た目でも戦闘はできる方だと思ってるわ」

「私は緩菜って言うの、見ての通り魔法使いよ」


私が自己紹介を終えるとニーナが私の前に突然来て腰に手を当てて口を開いた。


「にゃ〜はニーナって言うにゃ!よろしくにゃ!」

「えぇよろしく、へぇ〜、猫又ってこんな姿だったのねぇあの城には人間しかいないから初めて見たわ」


リズと名乗る少女は不思議そうな目でニーナを見ている。どうやら彼女は猫又を見た事がないらしい。

そしてニーナがリィルと木乃葉に自己紹介をするように言うと、2人は前に出てきた。


「はいは〜い♪ニーナ様の部下で、強くて賢い魔法使いの白猫リィルだよ〜♪リィルちゃんって呼んでね〜♪」

「私はニーナ様の忍びとして仕えている木乃葉と申す、以後お見知りおきを」


「リィルと木乃葉ね、へぇ、二人ともニーナの部下なんだ」

「ニーナ様は私達を拾ってくださった方、とても信頼している」

「あなたしっかりしてるのね、きっとニーナもいい部下だって思ってるわ」

「ありがたいお言葉、感謝する」


「ねぇねぇ、私は〜?」

「え〜っと…そうね、元気でいいと思うわ」

「それだけ〜!?」


リィルはショックを受けている。そして泣きながら何故か実に抱きついた。


「うわぁぁぁん、実ちゃ〜ん!」

「よしよし…大丈夫だよ、リィルちゃんにもいい所いっぱいあるからね」


実はリィルを慰めている。

いつの間に仲良くなってたのね、この2人。


「なんだか、悪いことしちゃったかしら…?」

「大丈夫だにゃ、リィルにゃ〜は立ち直りが早いにゃ」

「そ、そう…ところであの和服の子は部下じゃないの?」

「あの子は友達にゃ、実って言うんだにゃ、とっても優しい子なんだにゃ」

「へぇ、みんなよろしくね」


私達は城へと向かった。

そして、しばらく歩き、城下町の入口までたどり着いた。


「さ、着いたわよここがキリンヤガの城、正しくは城下町と言うべきかしら?」

「おい、お前達!キリンヤガの城に何の用だ?どうやらこの城の者ではないようだが?」


入口の前に立っていたプレスターを襲ってきた時の兵隊と同じ格好をした1人の兵隊が私達に話しかけてきた。

いや、リズが騎士と呼んでいたので、正しくは騎士だろう。

私は受け答えをした。


「えぇ、私はプレスターから来た人間よ、この城で会いたい人がいるの、通して貰えるかしら?」

「だめだ!今は外のものとの交流は王の命令で禁止されている、通す訳にはいかん!」

「じゃあ無理やり通させて貰うわね」

「なんだと!?」


私は魔法書を取り出し騎士に向かって手をサッと前に出した。騎士は身構えている。

しかし、何も起こらない。

これは他の人からすれば失敗に見えるだろう。

しかし私的にはこれでいいのである。なぜなら……


「ふん、何も起こらないでは無いか、見掛け倒しだ……な……」


騎士はその場で崩れるようにして倒れた。

そう、これが私の狙いである。

隣にいたリズは何が起こったか分かっておらず動揺していた。


「えっ?今の何?あなた、何をしたの?」

「『ドルミール』、睡眠魔法よ、何も起こってないように見えて、実はこの騎士には魔法がかかってるのよ」

「ほんとだ、眠ってる…」

「さて、中に入りましょうか?」


私達は町の中へと入った。

町の感じはプレスターとほぼ変わらないが、ここの方が遥かに大きい。

そして、歩いているのは町の住民ではなく、鎧を纏った騎士である。


「なんなのこの町は、城の騎士しかいないじゃない」

「町の見回りをしている騎士よ、脱走者がいないか毎日夜中まで見回りの騎士がそこらじゅうをうろついてるの、この町は王によって支配されてるのよ」

「支配?そもそもここはキリンヤガの城の城下町じゃないの?」

「そうよ、でも前の王は支配なんてしなかった、この世界では初めに町や城を作ったものがそこの王になる、そしてその王は誰かに王を託す権限があるのよ」

「って言うことは、前の王が今の王に権限を託した結果、こんなことになってるってわけね」

「そうよ」

「その王が変わったのはいつの話?」

「12年前のことよ、妹がちょうど産まれた年ね、私もまだ小さかったわ」

「その頃までは平和だったの?」

「えぇ、前は平和でいい町だったわ、昔はね…」


リズは少し悲しそうな声でそう言った。

どうやらここの町の住民達はそこらをうろつく騎士に怯え、外も出れない状況のようだ。


「でもよくあなたとあなたの妹は外に出ようだなんて思ったわね、しかもあなたに関しては見つからずに脱走してたものね」

「私は妹を追いかけようとしただけよ、ちょうどその時他の脱走者の事で騒いでたからなんとか脱出できたけど、まさかその脱走者があの子だったとはね…私が脱走したことはバレてないみたいね」


見回りの騎士達に見つからないよう隠れながら私達は城へと向かった。

そして城の門付近に私達はたどり着いた。

門の前には2人の騎士が立っている。


隣にいるリズは私にこう言った。


「思ったけど、ここからどうやって城に入るつもりなの?あの騎士達は通してくれそうもないわ」

「やっぱりそんな簡単には行かないか〜、普通に入れるかと思ったわ」

「そんな訳ないでしょ…てことはノープランってことね、どうするの?」


そして後ろにいた木乃葉が出てきた。


「緩菜殿、ここは私に任せてもらえないか?」

「なにかいい方法があるの?」

「城の周りを調べてくる、もしかしたらここ以外に入れるところがあるかも」

「私達はどうすればいいの?」

「ここから1度離れて城下町に戻って欲しい、調査が終わったら緩菜殿達の所に戻る」


私は少し悩んだ。確かに他に入れるところがあればそこから入るのが1番いいのだが、知らない町で木乃葉を1人で行動させるのは危険だ。

いくらしっかりしている子とはいい、まだ子供である。

すると、今度はリィルが私に頼んできた。


「ねぇ、木乃葉を信じてあげて、木乃葉はこういうの得意なの、だからお願い!」

「分かったわ、じゃあ私達は1度城下町に戻るわね、木乃葉、くれぐれも無茶はしないでね」


「承知した、では、参る…」


木乃葉はそう言うと音も立てずにその場から消えた。

私達は1度城下町へ戻った。そしてリズは自分の家に来るのが安全と言ったので私達はリズの家に身を潜めることにした。


「それにしても、理想郷でも他の人間に縛られて生きていかなきゃならないなんて、ここの人間は苦労してるのね」

「だから…だから人間は嫌いなんだにゃ!」

「ニーナ?」


ニーナが突然怒りだした。さっきまで冷静だったのに、一体どうしたのかしら?


「人間はいつもそうだにゃ!同じ人間の自由を奪って、自分だけ幸せな生活を送る勝手な生き物にゃ!」


リズはニーナを落ち着かせようと肩に手を乗せてこう言った。


「気持ちはわかるけど、少し落ち着きなさい、今ここであなたが怒っても仕方ないわ」


しかし、ニーナはリズの手を強く振り払った。


「うるさい人間!触るんじゃないにゃ!」


「ニーナ様〜?どうしたの!?落ち着いてよ!」

「そうだよニーナちゃん、少し落ち着こうよ!」


「うるさいって言ってるにゃ!黙るにゃ!」


リィルと実もニーナを宥めようとしたが、全く聞く耳を持たない。

何かがおかしい、ニーナはまるで何かに取り憑かれたかのように怒り狂っている。

しかし、私はニーナの異変に気がついていた。そしてニーナにこう質問してみた。


「あれれ?あなたも元人間じゃないの?」

「あたしは人間じゃないにゃ!あたしは猫又にゃ!」


やっぱり……私は今の一言で急にニーナが怒り出しことの理由がわかった。


「なるほど、そういう事ね… あなた、ニーナじゃないでしょ?」

「お前何言ってるんだにゃ?変な事言うんじゃないにゃ!あたしはニーナだにゃ!」

「ニーナは一人称が『あたし』じゃなくて、『にゃ〜』って言うのよ、くだらない演技はやめてさっさと正体を表したら?」


「……バレてしまったなら仕方ないな」


ニーナの偽物はそう言うと人間の姿に変わった。

その子は暗い紫のフード付きの服を身につけている少女だ。見た目的に魔法使いと言ったところだろう。


「あなた、誰?私達に何をしようとしてたのかしら、ちゃんと説明してくれる?」

「あたしはキリンヤガ王の臣下、『フランネル・コトーネ』お前らの仲間の猫に変装して侵入者のお前達を捕らえに来た!」


フランネルと名乗る少女はそう言うと手をサッと上げる、すると彼女の近くに魔法陣が生成された。

そしてそこから手足を縄で拘束され、口を布で塞がれた状態のニーナが現れた。


「んーっ!んーっ!」

「まず手始めにおまえらが城からここに来る間に一番後ろにいたこいつを捕らえておいた」


「そんなの許さない!ニーナ様を返せ!」


リィルは杖を構える。

その瞬間フランネルが手のひらに紫色の雷のような物を発生させるとそれをニーナに押し付けた。

するとニーナはくぐもった声で悲痛の声をあげた。


「ニーナ様!」

「あたしに手を出したらこいつを殺す、キリンヤガ王はおまえらが抵抗するのなら殺して構わないと言われている」

「卑怯者!」

「どうとでも言え、しかしいくら足掻いても無駄だ、大人しく降参しろ」


確かに、私達を捕らえるにはいい作戦だ。人質さえとってしまえば私達は手が出せない。

発想は悪くないが、それは普通の人間だったらの話である。


「さすがキリンヤガの魔法使いね、まさかニーナが人質にとられてたなんて思わなかったわ」

「当たり前だ、あたしはキリンヤガの城の1番の魔法使いだ、仲間が捕らわれたことすらも分からない間抜けなおまえ達とは違う」

「でも残念ね、あなたは最初に捕らえておく者を間違えた」

「何!?」


私は人差し指をスっと上げる。

そしてフランネルと私の位置を入れ替えた。

場所交換魔法「ガンビア」である。

フランネルは突然場所を入れ替えられたので。何が起こったのか分からず動揺していた。


「な、なんだ!?場所が変わったぞ!?」

「あなたにはちょっと大人しくしてもらうわね」


次に私は水色のリングを4つ飛ばしフランネルの両手両足に1つずつ付けた。

拘束魔法「リストレイント」である。


「うわっ!?動けん!なんだこれは!?」

「魔法使いのあなたなら分かるでしょ?拘束魔法よ拘束魔法」

「ふん、拘束した所で無駄だ、全員ここで死ね!『イービルララバイ』!」


フランネルはかろうじて動かせる指を駆使して魔法を唱えた。しかし、魔法は発動せずただ魔法を唱えるための声だけが部屋を響かせただけであった。


「何故だ!何故発動しない!?」

「ざ〜んねん、魔力も封じたわ、あなたは何も出来ないわよ」

「くそ!お前ら、キリンヤガに歯向かって無事でいられると思うなよ!」

「遺言はそれでいいかしら?」

「何!?なんのつもりだ!?」

「悪い魔法使いは退治しないとね、物語とかで読まなかったかしら?」

「……っ!お願いだ、殺さないでくれ!」


私が魔法を唱えようと手を上げると、フランネルは涙ぐみながら私に命乞いをしてきた。


「あれあれ?さっきまでニーナを殺そうとしてたのにいざ自分が殺されそうになったらそれ?ちょっと虫が良すぎやしないかしら?」

「あたしが悪かった!お前らの言うことを聞くから許してくれ!」


私は手を下げた。

こいつは城の情報を知っている。それを聞き出せば鈴が捕らわれているかどうかが分かる、そして捕えた理由も。

私はリィルと実に縛られているニーナを助けるよう指示し、私とリズでこいつの話を聞くことにした。


「それじゃあ私達の質問に答えて。まず、城に人間とワーハクタクが捕えられてるって聞いたけどそれは本当?」

「あぁ本当だ、人間の方は脱走者ということで騎士達が捕えた。そしてワーハクタクの方は私が闇魔法でプレスターから城に連れてきた」


「ねぇ、その人間って私と同じ格好してなかった?」

「あぁ、お前にそっくりな人間だった」

「やっぱり…あの騒ぎは私の妹だったのね」


予想した通りだった。ここに鈴とリズの妹は捕らわれている。

それだけ分かれば良かったのだが、少し気になったことがあったので質問した。


「なぜプレスターから連れてきたのかしら?」

「キリンヤガ王の命令だ、ワーハクタクをプレスターに行って捕らえて来いと言われたのだ、しかし何故だかは分からない」

「プレスターを占領しようともしたわよね?」

「何の話だ?あたしは知らないぞ」

「しらばっくれても無駄、あなたのとこの騎士が街を攻めてきたのよ、あなたの指示でしょ?」

「本当に知らない!ワーハクタクを捕らえに行ったのはあたしだけだ、騎士なんて連れて行ってないぞ!それに占領しようとなんてあたしは微塵も思っていない!」


どうやら嘘ではないらしい、ということはこいつは鈴を捕まえるために動いていて、あの騎士達は別の命令を受けていたということになる。

ワーハクタクの捕獲と街の占領、分かった、キリンヤガ王の狙いは間違いなくプレスターだ。

しかしプレスターを占領する目的がわからない、一体キリンヤガ王はなにを考えているのだろうか?


「緩菜殿、偵察が終わった…」


そんなことを考えていると目の前に突然木乃葉が現れた。音もなく目の前に現れたので私は驚いた。


「うわっ!?木乃葉!?急に出てこないでよ、びっくりするじゃない…」

「忍が音もなく現れるのは当たり前のこと、それぐらい慣れて欲しい」

「そりゃそうだけど…まぁいいわ、で?別の入り口は見つかったのかしら?」

「城の裏に小さい入り口があった、そこから入れる」


未だ動けないでいるフランネルがとても焦っている様子で私に問いかけてきた。


「お、おまえら、城の中に侵入して何をするつもりだ?」

「何って、捕らわれた子達を助けに行くに決まってるじゃない」

「そ、そんな!やめてくれ!もしあいつらを取り逃したらあたしが王に殺されてしまう!」

「知らないわよそんなの、捕まえたのはあんたなんだし、自分の責任ぐらい自分で取りなさい」


「緩菜殿、こいつは誰だ?味方にこんな奴いただろうか?」

「フランネルとかいうキリンヤガ王の手下なんだって、私達を捕らえようとして逆に私に捕えられた間抜けよ」


木乃葉はフランネルを見つめている。


「緩菜殿、こいつの説得も私に任せて貰えないだろうか?」

「え?えぇ、いいわよ」


木乃葉はフランネルに質問をし始めた。


「お前、私達と一緒に来ないか?」

「何!?あたしにキリンヤガを裏切れというのか!」

「キリンヤガの騎士の話では王がフランネルがあまりにも遅いから失敗してたら問答無用で殺すって言ってたらしい、多分お前のことだろう、だから裏切っても裏切らなくても殺されるだけだ」

「そんな…あたし、どうしたら…!」

「一緒に来い、王を倒すぞ」


木乃葉の口から出たのは私の予想を遥かに超えたものだった。


「え〜っと、木乃葉?王を倒すとは言ってないんだけど〜…」

「緩菜殿、本当に申し訳ない、でも私はあの王が許せない、自分の部下を平気で殺せるようなやつが、だから頼む!協力してくれ!」


木乃葉は頭を下げた。

私は少し悩んだが、ニーナがこっちに来てこう言った。


「にゃ〜は木乃葉にゃ〜に賛成にゃ、みんなで力を合わせれば、王なんて怖くないにゃ!みぃにゃ〜とリィルにゃ〜もそう思うにゃ?」

「うん!私も頑張る!だから緩菜さん、一緒に行こう!」


「かわいくて賢い私がいれば敵無しだよ〜♪」


実とリィルも賛成のようだ。これは断れないわね、面白くなってきた。


「分かったわ、リズ、手間をかけさせてごめんなさいね、でも王を倒せば町のみんなも自由になれる」

「ほんとにあなた達は無茶するのね、いいわよ、協力するわ、フランネル、あとはあなただけよ」


「分かった、あたしも協力する…」


フランネルも賛同したところで、私はフランネルの拘束を解いた。


「それじゃあ行きましょうか?鈴達とこの町の人間達を救いに」


そして私達はリズの家を出た……。

お久しぶりです!

今回は10話ということですごく長くなってます!誤字チェックとかあんまりしてないんで読みずらいところもあると思いますがお楽しみいただけたら幸いです。

少し投稿ペースも上げていかなければいけませんね、頑張ります(ง •̀_•́)ง

では、また次回!

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