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四十四物語  作者: 九JACK
43/47

 前話で本編は完結となります。

 ここから残り五話は本編で出てきた四十四の物語の原案を載せていきます。

 たまに順番や話した人の名前が違っていたりしますが、あくまで原案ですので悪しからず。


 1 真川明日夢


 旅館に泊まりに行ったとき、窓を開けようと思ったら窓のすぐそばが植木で風通しが悪かった。

 仕方なく網戸だけ閉めた。

 そのまま部屋でごろごろして、ふと起き上がり、窓の方を見たら──

 窓に映っていたのは、僕の顔じゃなかった。




 2 吉祥寺玲奈


 ホテルに泊まりに行ったとき、やたら背の高い木がちょうど部屋の前にあって、何もなくてつまらないからなんとなく眺めていたら、その木の上に子どもがいたの。

 夜遅くに木登りなんて危ないと思って窓を開けて注意しようとしたら、子どもは呑気に手を振ってきたわ。

 呆れて溜め息を一つ吐くと、そのタイミングを見計らったかのようにその子どもは、飛び降りたの。

 私はびっくりして部屋を飛び出し、四階のその部屋から大急ぎで外に出て、木の下を見に行ったわ。

 でも、そこには何もなかったの。人の足跡も。




 3 設楽智宏


 夏の暑い、日曜の帰りにさ、干からびたとかげを見つけたの。

 干からびて、ちょんとつついても何の反応もないから、あ、これ確実に死んでるなって思ってなんまいだなんまいだって拝んで帰ったのさ。

 まあ、通学路だったんだけど……次の朝さ、その道通ったんだよ。見るつもりはなかったんだけどさ、やっぱ通り道だから気になって。

 そのままにされてたらやだなぁって思って、見てみたら、

 身体中から真っ赤な血がぶわっと溢れ出した状態で、そのとかげが死んでたんだわ。

 さすがに触る気がしないグロさだったね。




 4 七篠月


 呪術が好きな従姉がいてさ。霊感とかはないんだけど、霊力はあるってことで占いとかまじないとかよく効くらしいから、今度は呪いを試してみようってなったんだって。

 まあ、ポピュラーな藁人形のやつなんだけどさ。

 丑三つ時に近くの林に協力してくれる友達と一緒に行ったんだって。

 藁人形のさ、心臓のあたりに刺したら、その友達、次の日に心筋梗塞で逝っちゃったらしくて。まあ実はあんまり好きじゃないからいいかなぁ、なんてさ。

 今度は面白半分で藁人形の右腕に五寸釘を刺したらさ、その友達から電話が来て、「腕がもげたよぉ」って。

 怖くてそれ以来やめたそうだよ。




 5 林道楓


 友達から聞いたんだけど、チェーンメールって怖いよ。

 ある友達のところに「このメールを29人に拡散してください。一週間後に死にます」ってメールが来たんだって。

 明らかなチェーンメールだからさ、怖いながらもその手には乗らないぞって思って、その子は自分のところで止めたんだって。

 すると一週間後、その子の周りの人たちが次々と心不全で亡くなったって。親戚とか、友達とか。

 不思議なことに、その人たちのところにも同じメールが来て、みんなは怖かったんだろうね、転送しちゃってたみたい。

死んだ人数が、なんという偶然か、29人だったらしいよ。災難だったねぇ。




 6 窪永


 怖いかどうかわかんないんだけどよぉ、黒猫の話って知ってるか? 一度通ると幸運が、二度通ると災難が、だっけか。

 それでさぁ、こないだ交差点で車四台を巻き込む大事故があったじゃねぇか。その中にさぁ、俺ん家に向かってた遠くの親戚がいたんだよ。

 そうそう、死亡者全員って悲惨なやつな。

 その中でな、死ななかったやつがいて、それが黒猫だったんだ。真ん中できょとんとしてて、警察とかはびっくりしたらしいぜ。

 しばらく会ってない人たちだったんだけど、どうやら黒猫に横切られるのは二度目だったって言ってたよ。

 残念だなぁ。




 7 佐々木棗


 夏になると街灯に群がる虫が鬱陶しくなるじゃないか。あれってカゲロウって言って、幼虫のときは蟻食い地獄って呼ばれてるらしいな。

 成虫なっても蟻食うのかは知らんが、こないだ帰り道、夜暗いときにぶわぁって群がってるの目撃してさ。

 そりゃもう尋常じゃないくらいに。よく見ると蟻の列もそこかしこから伸びて……滅茶苦茶鳥肌立ったよ。

 うん、これだけでも怖いっちゃ怖いんだけど、

 その群れ、人間の子ども象るような形してた気がするんだよな。

 おお怖。




 8 古宮紗智


 大病院っていう割に、病室が少ない病院あるじゃん。そうそう、高校生以下お断りっていうお堅い病院ね。

 小児科がないってくらいならまだわかるけど、高校生以下って厳しいよねぇ。でも、それでもあの病院の経営が成り立ってんのは、やっぱり高齢化社会? ってやつが進んでるからじゃないかなぁ?

 しかしなんで高校生以下お断りなんて、こうわかりやすく社会的心象悪くするようなレッテルが貼られてるのかねぇ。あたしも気になったもんだからさ、こないだ伯母さんがあの病院に入院したときにお見舞いついでに聞いて回ったんだよ。ああ、見舞いなら高校生以下でも入れるから大丈夫なんだけど。

 伯母さんが入ってた隣の部屋……最古参って人に話を聞くことができたの。

 ただ、変だったのよねぇ、その病室。伯母さんの部屋番号は「三一六」だったんだけど、最古参って人がいた部屋はプレートの数字が一つ欠けていて、「三一 」ってなってたのよ。逆隣は「三一七」だったから、空白のところには本当は五って入るんでしょうけど。

 そうしたらねぇ、その最古参の患者さんに言われて気づいたんだけど、あの病院、末尾に「五」がつく部屋がないのよ。

 病室に末尾が「四」がつく部屋は「四」は「し」とも読み、「死」を想起させるから縁起が悪いって、取っ払ってるのは有名な話じゃない。実は、同じように「五」のつく部屋も取っ払ってるらしいのよ。

 それがこの怪談と関わりがあってね。

 昔、その病院には産婦人科や小児科もあったんだって。ただね、法で定められてる適正年齢……女子だと十六ね。それ未満の年で子どもを産んで、母体が保たずに入院、そのまま死亡、産まれた子どもも死亡とか、流産とかが続いたらしくてさ。それで産婦人科を閉じたのが一つ。

 それと、どうもそこで死んだ人たちが病院に通う子どもなんかを取り殺す、なんて噂が立って実際、入院した子どもの死亡率も高かったから、子どもを受け入れなくなったってことらしいよ。高校生以下なんて定められたのは……わかんない? その早死にしたお母さんっていうのは年齢が高校生くらいなんだよ? この国の法より下なんだから。自分より年下を子どもと思うのは当然、自分と同年代が普通に生きてたら、妬ましい、恨めしい、とか思うんじゃない? だからでしょ。

 え? 数字の「五」の話は「子ども」を入れないのとかけたか、だって? ちっちっ、それはちょいと違うんだなぁ。

 女の人がたくさん死んだって言ったでしょ? 昔だからさ、みんな「花子」とか「桜子」とか最後に「子」ってつく人ばっかりだったんだって。その人たちが死んだのも、何の偶然か「五」ってつく部屋だったらしいし。それで「──五」号室は存在しなくなったの。

 え? なんで最古参の名前なんか聞くの? さっきから言ってるでしょ、彩子さん、だよ? あたしが話聞いたの。




 9 八月一日蓮


 みんな、風鳴さんって都市伝説知ってる? そうそう、飛び込みの多い駅の話。

 あれね、風鳴さんを呼ぶと、憎い相手を風で突き飛ばして殺してくれる、なんて流れてるらしいけど、それみんなでっち上げなんだって。

 まじだよまじ。

 元々はね、風鳴さんって、あの駅の近くにある風鳴橋を作るときに使われた人柱の霊らしいんだ。

 風鳴さんは無実の罪を証明できなかったがために人柱にされてしまった哀れな人で、磔にされて埋められるまで、助けてくれる誰かを待ってたんだって。

 でも、助けてくれる人はいないまま、人柱として風鳴さんは死んでしまった。

そんな風鳴さんは未だに待っているんだよ。助けてくれる誰かを。

 だから、風鳴さんの噂の本当の結末は、「風鳴さんを呼んだ人が、風鳴さんの力で突き飛ばされてしまう」んだ。

 なんで詳しいかって?

 目の前で、見ちゃったからなぁ。




10 五月七日尚架


 じゃあ風鳴橋の話が出たからあそこにまつわる昔話をしようかな。

 あんまり有名じゃないけど、橋の麓にはひらがなで名前を書いたのと漢字のとがそれぞれの麓にあるんだよね。

 で、ひらがなで書くときは音を濁らせてはいけないって決まりがあるらしくてさぁ。だからあそこは「かざなりばし」だけど「かさなりはし」って書かれてるんだよ。

 でも昔は、さっきの風鳴さんが風鳴さんと呼ばれているように、「かぜなりばし」って呼ばれてたらしいんだよ。だから看板も「かせなりはし」で……

 けど、風鳴さんが関係あるかはわからないけど、あそこで霊障に当てられる人やあそこで不幸に遭う人が多く出たんだよねぇ。足が動かなくなる人、が大量に出たとか。

 まるで枷を嵌められたように。

 つまりは「枷成橋」だったわけだよ。まあ風鳴さんが死に際まで磔で手枷足枷つけられてたって伝承とも、関係があるのかもしれないねぇ。

 見兼ねて今の「かざなりばし」に読みを変えたらしいけど、駅の話を聞くと、それもどうだったんだか。

 風鳴橋の延長線を真っ直ぐ引くとあの駅と繋がる……重なる。

 つまりは、単に「重なり橋」に変容して、犠牲者の出し方が変わったってだけの話なのかもしれないねぇ。




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