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四十四物語  作者: 九JACK
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 夏休み明け。九月近く。

「げっ……宿題まだ終わってねぇ……」

「何ふざけたこと言ってるんですか、隆治くん」

 顔を青くする葉松をからから笑う塞。葉松は当然機嫌を悪くし、塞の椅子を蹴るが、クラスは以前と違い、囃す声もなく、シーンと静まり返る。

 白ける空気に葉松が耐えられず、横暴な態度を控えてしょぼしょぼと終わっていない宿題に取りかかる。

 あの百物語の効果があってか、少しだけクラスの雰囲気が変わった。まあ、変わらず、あからさまな葉松の横暴が横行しているが、それを囃す佐藤たち取り巻きが静かになったせいか、葉松が暴れることは少なくなったように思う。傍観者は傍観者のままだが、それも相まって白けた空気を作り出して、葉松の鼻を挫くような形になった。

 少しは溜飲が下がったが、それは少しである。『夢』の影響があまり深刻ではないらしい佐伯などは変わらず陰湿ないびりを続けているようだ。

 ただ、少し変わったことがある。それは、古宮のクラス移動が決まったことだ。小さな美濃と二人の五年二組を楽しんでいる模様。

 星川へのいじめも、少しだが和らいだ。霜城に加わり、気の強い雫、物静かながらも辛辣なところのある悠が加勢して、葉松がたじたじになっている。

 いじめの気配は薄くなった。






 けれども。

 唯一確認できないことがある。

 傍観者たちの心境に、何か変化があったかどうか、だ。

 障らぬ神に祟りなし、という思考がまだあるのだろうか。傍観者たちがいじめっ子いじめられっ子の間に入る姿は未だにない。

 度会夏彦がもたらした一夜の物語は、そう多くには響かなかったのだろうか……

 それならば、彼の気の済むまで、皆が恐怖を理解するまで続けるというのもある意味正しいことなのかもしれない、と塞は考えていた。






 とても、悲しいことではあるが。



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