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野蛮王  作者: 山本やままる
2章 世界大戦
24/30

世界大戦 Ⅴ 狐/アセロラ

そう、それはスローモーションの様だった


装武は少し浮いて不自然な力に曲がるゆみやを見開いた眼で見た


殺気が無かったが故に反応できなかった




「  ゆり   ッッッ!!!!」




装武は画面の向こうにいる『鹿』を裏拳で掃うように殴り飛ばした!


ファルクスは床を転がる!


ゆみやは艦の疑似重力に引かれ床に倒れるところを装武が抱き留めた!


「…ふうふぅ、やっと呼んでくれました…」


ゆみやの意識を確認すると安堵したと同時に目球を剥いてこう告げた


「じゃす≪≪時間を稼げ、俺が倒す≫≫」


「はいっ」

黒騎士剣(ソード)の背中は答えた


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


《騎士団!作戦続行!!隔壁を5秒だけ開ける!!その場はソードに任せろ!!》


副団長黒騎士杖(ワンド)の霊波がファルクスが転がると同時に全黒騎士へと伝達された


正常な状態に偽装していた艦のコントロールは手の平を返し。

落ちた“天井”はせり上がってきた。隔壁と共に通路が区画ごと落ちていた。


ころがる様にわずかな隙間に向かう黒騎士達。


「逃がすかッッ天意(オレ)を前に臆したな!!」

鹿の天意は二四のフォローティングブレード、超重力力場の拡大、BOLによる

ショックリセットを同時に行った!


「それはどうかなッッ!!」


黒騎士剣(ソード)は美麗な顔に微笑みを灯した


ファルクスはその微笑みに戦慄を覚え盾を構える!!


黒騎士剣(ソード)は翼を四散させると同時にその反動で膝蹴りを見舞った!!


構えたとほぼ同時に盾だけでは防ぎきれない衝撃がファルクスを襲う


(BOLの超重力力場の中でなぜ動ける?)

ファルクスは反応はできても理解が追い付かなかった


そしてそれは続きざまに起こる!


黒騎士達の足止めをするはずだった二四のフォローティングブレードに

黒騎士剣(ソード)の四散した羽根が刺さっていた!


そして

ショックリセットとは別のタイミングで黒騎士達の通り過ぎた隔壁は再び閉じた




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(装武様の兵がファルクスに倒される前にお会いして・・・確かめねば!

 あちらに寝返るにしても全滅してからでは流れは止められない!)


レッドと呼ばれた『狐』、宮廷近衛騎士 朱のアセロラは戦いの岐路に立っていた

その選択如何によってはどちらに正当な皇位継承権が、正義があるかが決まる

姫と道を共にするなら良し、裏切るような男であれば討たねばならない

それは近衛だけの話ではない。


装武が皇位を継ぐのであれば全軍をもって迎えねばならない


ファルクス・D・ライザを止めるにしてもアセロラ自身の命を懸ける覚悟で

いや、同伴する近衛騎士5名が幾人帰れるかわならない


命の危機的状況に置いてそれでも尚、前に進む覚悟。

それこそが死力であり彼女の瞳には爛々と死力の陽炎が灯っている


それは他の5名も変わらない

彼女らは皆、姫を末の妹に持つ姉妹なのだから。

だが皇后の予備部品(クローンボディ)でしかなかった存在であり、本来誕生さえ許されていない

始皇帝に名を戴いた末の妹あっての人格権(・・・)※であった


※クローンは基本的人権すら持っていない。個人としての人格は認められているものの

必要があれば手でろうが足であろうが()であろうが提供しなければならない。


(圧倒的優位に強襲してきたにもかかわらずその行動に殺気が無い。

 無人機すら破壊していない恐らくはあちらも我々との接触を誘っている…!)


その事実が自身に、いや、愛する姫にとって都合のいい未来を見させていた


(ゴットン・キリングスに姫とともに攫われた装武と何故か我々が戦いになったが

 戦い自体を好む傾向がある…平時であればおかしな奴ではあるが

 ――皇帝となるならそれは好ましいことだ――

 今回天孫グラント70騎もの出撃に対して打てる手は旗艦強襲しかなかったろう)


大通路に沿った2車線ほどの通路、

あとわずかで装武達のいる倉庫区画に差し掛かろうとしていた


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


≪こちら黒騎士杖(ワンド)『狐』の座標を送る!!接触して座標入手後、


 ――――最終目標『天原(アマハラ)』へ再強襲をかける!!

 

 『兎』の消滅を狙えるのは『太祖(ブラックハンマー)』封印中の今回のみだ!!奴とは戦うな!!


 繰り返す!奴とは戦うな!!先遣隊(ファーストフォー)黒騎士炎剣(フランベルジュ)!!


 黒騎士砂棒(ブラックジャック)!!黒騎士吹矢(ポインズンブロウ)!!黒騎士火薬(ブラックパウダー)!!


 ぐれぐれも!計画(プラン)どうり作戦遂行されたしッッ!!成功を祈る!!


 それ以外は現場にて戦闘を“維持”ッ!!以上ッッ!!――≫



黒騎士炎剣(フランベルジュ)赤ベースに黒ラインの大柄な騎士、髪も逆立てさらに大きく見える

2本のフォーンは額から天を突くように生えている

よく見れば逆立てた髪の中に他にもフォーンの先端が見えている合計6本!!

炎模様の鎧に波打つ刃の両手剣を手にしている。左腰に剣のⅪ。



黒騎士砂棒(ブラックジャック)全身真っ黒な小柄な騎士。

黒艶な髪を後ろで束ねただけの特徴のないつるっとした表面、フォーンさえない。

仮面、ではなく能や歌舞伎の黒子のような黒い垂で顔を隠している。

さながら漫画にでてくる忍者のよう。左襟に三丸のⅪ。



黒騎士吹矢(ポインズンブロウ)頭部以外は光学迷彩コートで包まれており覗うことはできない

太いドレッドヘアを後ろに流してさながらライオンの様。

短い象牙の様なフォーンが側頭部から一対。

ゴーグルアイにガスマスクのような“頬袋”。左頬に菱のⅪ。



黒騎士火薬(ブラックパウダー)長身でこちらもコートで隠れてはいるが大きな樽が隠しきれていない。

セミロングの金髪をワックスで整えたようにオールバック

後頭部から生えたフォーンは首を回って前へ、さながら猪。

細いサングラスのような面にガンダン特有の縦スリット。樽に杯のⅪ。


――の4騎が狐を追うように背後から倉庫区画へと高速移動していた



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


近衛騎士 朱のアセロラは驚愕した


知覚範囲にはなにもいなかった――ハズだった


後ろを振り向いた時には後ろにいた同僚の近衛騎士は地に伏し後方へ流れてゆく


首の後ろに迫る真っ黒い“何か”はアセロラの頭を鷲づかみにし反対の手を



――大きく振りかぶった!!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ガギャ――――ンッッッ!!!!



巨大な人の形の倍ある隕石がとうふの様に崩れる


当たったはずの人型、幾何学的な翼の生えた鎧天使とでも言い表すしかないそれは


何事もなかったかのようにその空間を索敵巡行する



光沢のある白い流線型の鎧に各所に光る赤とオレンジの明かり

鎧の隙間から見えるのは黒い超電磁筋肉

ツインアイは何も捉えず鼻も口もない仮面はロボット(・・・・)の様。


大きな鶏冠は大英雄の王冠に近い印象を与える

手にはそれぞれ大きな剣のような武器を真っ直ぐ掲げ

反対の手には身の丈もある方形の盾を持っている


――天孫(グラント)


その人型が3騎――

|艦を攻撃してきた黒騎士投石紐スリングの射出ゲートの内側宇宙に入り

目標()を探していた


暗黒に広がる空間において白くそして輝く体は格好の標的だ


まるでここにいるぞとばかりに同じ方向から再度、隕石が降り注いだ


それは超質量を内包する天孫(グラント)に対してほぼ無力であった


天孫(グラント)を人に例えるなら一滴の雨粒(・・)程度


避けることも可能。

しかし旗艦に対しての攻撃が続けば戦力不足ととらえ更に兵力を割くことになる

迎撃に向かった3騎はこの小さな隕石を処理した


だがこれのおかげで天孫(グラント)は敵へ詰め寄ることができなくなっていた


たかだか隕石の速度は超音速程度ではある


これが天孫(グラント)の亜光速移動に対して衝突した場合ダメージが発生する


対象との距離が測れないためだ。

同速で移動していた場合一方的な攻撃を受けることとなる


力場を形成しつつ隕石を逸らしてしまえばいいのだが


敵が質量弾を使用しているため、そこ《・・》をついたカウンターが予想される


超音速程度の遅い球に対して逸らすための力場を形成すると

それに合わせてビームなど軽質量の攻撃を歪曲させて当てることができるためだ



天孫(グラント)自立行動型(スタンドアローン)の戦闘兵器だ

悪意害意敵意に反応し迎撃する――教科書(マニュアル)どうりに――


天孫(グラント)3騎は大盾を構え、射撃方向に向かって加速したッッ!!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――都庁跡地、居城建築現場


「まあ、そう来る」


黒騎士投石紐スリングは別方向から天孫(グラント)が突撃するのを見て呟いた


「兵装限定解除とはいえこの場から離れられないのでは近接戦闘は避けたい、が…」

あと数分で竜人の偵察機が来る。

だが、

それとは関係なく命令が『この場から』となっているからだ


――ヴォン――


「お兄様?」


――ヴォン――


「『ここは俺に任せてお前はいけ』ですか?」


――ヴォン――


「わかりました!ありがとうお兄様!!


 ――モーニングオブドウターの初陣をご覧ください!!」


黒騎士投石紐スリングはくるりとスカートを翻し黒い球体に消えた



――ヴォン――


大英雄の王冠は竜人の飛行物体の来る方向を見つめた

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

暗黒の空間にあって それは最も黒い


娘 の 喪 服モーニングオブドウターと分類される兵器。


目があり顔があり手があり足があり、たとえ人型をしていようと

それはロボット(・・・・)ではない。



ロボット(・・・・)は黒騎士でありその巨大な人型は『服』なのだ


十字架に磔にされたような状態で黒騎士投石紐スリング娘 の 喪 服モーニングオブドウター胸部にいた。


鋭角な輪郭スコップ(・・・・)を思わせる仮面に切れ長の赤い目。

その手袋(グローブ)は細く、長く、まるで黒い蟹の足。

五本ともに肉のない人骨のような細さの指。

わずかに見える平らな面が人工物であることを語っている


僅かに膨らんだ胸、

そこから極端に絞ったウエストが人ならざるものを語っている

内臓が無い。


関節は伸縮する膜で覆われておりおおよそ機械には見えない

継ぎ目が無い。


昆虫の羽根のようなスカートが計12枚、伸びており、

そのシルエットは漆黒のドレスを纏った女性。


ただポーズはそれに似つかわしくなく


――片手で逆立ちをしていた





ヴォンッッッッ!!!!!



いや振り上げた真っ黒な大地(・・)を投げたッッ!!




(スゥーパー)濃縮ウラン(ヒ・ロ・シ・マ)ッッ!!衛ッ星ッ(ボォォール)!!!!!」



広島に落とされた原爆のウランの量は1キログラムに満たない核反応の量で

半径約2kmが吹き飛んだ。



では直系10キロメートルの外殻にいかほどの濃縮ウランが詰まっているのか?


10キロもの隕石、ただの石ころであっても地殻がひっくりかえる(・・・・・・・)レベル


超質量が丸ごとウラン235であるなら…


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――ヴラギールは核ミサイルのボタンを押した!!!!


「今週のハイッライッットォォッッ!!!!ぽちっとな」


蝙蝠型怪獣の噴射口は火を噴くのをやめ、そこから産卵管のような太い何かが


ニ"ュ


と粘膜を引きずりながら前方に向けて伸びた!


「狙いは~~~適当でいいだろ!!ガハハハ!!

 トライドンの縄張りがすっぽり入る威力だって話だからな!!ガハハハ!!

 アホずら下げて見あげてる所に落としてやりたかったが!!

 こっちまで巻き込まれちまうってんじゃああしゃあねぇ!!」




ヴラギールは飛び切り邪悪な笑みを浮かべた





「最新鋭の『かくばくだん』だ。自らの兵器で滅びなホモサピエンス!!」


怪獣の操作管のトリガーを引いた!!!


機体下部の管から座薬の様なものが


ぽんっ


と排出されるとロケットを噴き出し急加速ッッ


超音速で『旧新宿』へ伸びていった!!



「ガハハハハハハハハハハハハハハ――――――ッッッッッ!!!!!」






ぴか




とかなたに見える地平が光った

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


大英雄の王冠クラウンオブヘラクレスは事も無げに



――核爆発を取り込んだ(・・・・・)



重力制御の効いてないただのエネルギーとして力場によって収束し

内部の重力エンジン、【天心(てんじん)】にくべる


例えるなら自動車の過給機(ダーボチャージャー)に近い

()ガスを利用し吸気ファンを回転させ燃焼に必要な空気をより多く供給する



――【天心(てんじん)

基本構造は超圧縮されたブラックホールに歯車をつけたシンプルな構造である

そこにくべる星々の質量たるや地表が吹き飛ぶ程度を足しても誤差にもならない



大英雄の王冠クラウンオブヘラクレスは地下より上空500メートルの力場に着弾(・・・・・)させた


核爆発は起こったものの花火程度の閃光と音のみが外部に漏れ


地上で建築作業をしていた男達は見上げたがその時には何もなかった。


安全に家に食料に女。

褒美をわんさとぶらさげられた男たちは競うように作業に戻った

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――天孫(グラント)は衛星規模のウラン弾の核爆発をも凌いだ


全てを吸収できたわけではない

3騎の盾を組み合わせ3角錐を作り大部分を受け流し爆圧を吸収した


重力エンジンを持つ相手に遠距離兵器はほぼ無効なのだ

ほぼとはそれの出力を上回る超兵器が存在すればの話である

ただの粒子や爆発では歯が立たない存在、それが天心(てんじん)をもつ天孫(グラント)そして天子(ベイビーオブラブ)なのだ!!


そしてそれに娘 の 喪 服モーニングオブドウターを加えねばならない


天孫グラント2騎の胸から娘 の 喪 服モーニングオブドウターの両腕が突き抜けていた



「装武様は仰った『踏ん張りながらは逃げれんもんよ』と超高度な戦闘に置いて

 極意とも言えるそのお言葉!スリングは胸に刻んでおります!」


ぶん


とハートの形をした何かを両方から引き抜いた!


残った一騎は手の塞がっていたタイミングで突撃していた!


スリングの娘 の 喪 服モーニングオブドウターはくるり、スカートをはためかせる様に回転すると


ハートを投石紐で包んで殴りつけた!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


黒騎士砂棒(ブラックジャック)は『狐』朱のアセロラの側頭部を掴み


短い黒い棒で大きく振りかぶり


スイカ割りのように――




――ぐしゃりとなるはずだった




黒騎士砂棒(ブラックジャック)の振り上げた手首は装武(・・)によって掴まれていた!!




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