世界大戦 Ⅳ 拘束具/ダイエルグ抑制ギプス
「お母様!!お姉さまたちは何処へ行ったのですか!!」
兎の耳のような角、いや角に見える光学式霊子加速路が目立つスーツを着た少女が
広大な部屋へ入るなり声を荒げた
「おなごがかように声を荒げるでない、姫よ。太祖様が見てらっしゃるぞ」
その背には戦槌を振り上げた牛角の男を閉じ込めた結晶が壁の様に広がっている
子猿の面は両袖のない簀巻きのような状態で器用に腰を下ろす
「何を悠長な!近衛が私の側を離れると言うことは帝国の存亡にかかわる事態で
はないのですか!!」
メタリックな生地に淡い草色に光る霊化銀装甲
光学迷彩のつるっとした戦闘用とは違い
マットな表面に刺繍のような模様にレースまであしらってある
この処理をするだけで通常の5倍の霊化銀を必要とし価格はさらに跳ね上がる
無駄に高いわけでなくレーザー拡散処理膜として、
立体処理することで通常の防御力をも高めている
「問題ないファルクス・D・ライザが動いた。王冠の回収させに第1師団と第2
師団の半数を付けたのだ、あれを皇帝とするために」
「ライザを皇帝に?!!ラ、ライザを皇帝に???」
「何を面白い顔をしておる」
いや、マスクで見えはしない
「わ、私はライザに嫁ぐのですか…?私には婚約者が…↴↴」
「装武は死んだ、悪意を道ずれにしてな。お告げで神器を揃えろ
とのことだ、逆に神器は揃えることができる、と言うことだ、≪≪わかるな?≫≫」
ザ
「・・・・・・はい。装武は死にました。ライザへ嫁ぎます」
「よろしい。そなたは何も考えずとも良い。
腹を貸して皇帝の血を次代に繋げるだけで良い
恐怖も嫌悪も感じないまま世継ぎが産まれるまで穏やかに生きるのだ」
子猿の面は虚ろな意識の少女に子守歌の様に聞かせた
霊波を込めた精神干渉『夢』
この技は害意のある霊波系攻撃とは逆に外的ストレスに霧靄をかけ精神を保護し
安寧をえる、一種の催眠状態となるが普段どうりの活動は可能となる
子猿の面の簀巻きにしかみえない装束。これは強力なダイエルグ抑制ギプスである
それでもなお、霊化銀装甲を身に纏った相手に干渉した、通常ではありえない
「おなごが努力したとてそれは子には受け継がれんのじゃ
おのこは子種に経験した環境のスイッチを入れ新しくするが
卵子は生まれた時より変えようがない故な
如何に良い男を夫とするかがおなごにできる精一杯の努力、それを――」
子猿の面は振り向き牛角の男を見上げため息をついた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
≪ダイヤのエースよりトランプヘッド『狐』発見!
天面の艦橋より中央通路前線のソードのエースに向かってる模様!小隊規模!≫
索敵をしていた黒騎士弩は装武に聞こえないようにデジタル回線で
黒騎士団団長大剣へと伝達した
≪・・・・・・ユミヤ様≫√≪狩りなさい≫
そしてクレイモアとゆみやも霊波をデジタル化して伝達した
≪トランプヘッドヨリ各騎、作戦『狐狩り』!!繰リ返ス作戦『狐狩り!!≫
≪こちらハートのエース、オペレーションを引き継ぐ。
演習は終わりだ!!装武様に気づかれぬように狐を消滅させ、
座標を吸い出し敵本拠地まで再強襲をかける!!最終目標『兎』!!!
近くに最強の天意もいるが交戦するなよ!!
目的を遂げたら即、離脱だ!!≫
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
≪こちら剣のエース『鹿』と遭遇『狐』は前線を迂回した≫
『鹿』は大通路にエレベーターの扉から悠然と歩いて出た
その手には鍔に特徴のある片手半の洋剣、反対には磨かれた銀の|凧盾〈カイトシールド〉
鎧の上から纏っているマントには勲章記章が誇示するかのように飾られている
羽根飾りもマントの襟周りを飾っており、
いわゆる戦闘用と言うよりは儀式や式典にでも出るかのようなあつらえである
外観からもわかる多重装甲には霊化銀が大量に使われており防御力はゴットン
キリングスのコバルトウルフの優に5倍!霊波伝導による精神防御、実に10倍!
その価格はなんと100倍以上である!!
肩幅より大きな牡鹿の角、淡く光る金の長髪、
鎧も陽炎も黒に近い茶色、栗皮色に薄く光っている。
ジュラン
勲章が鎧に当たる、ファルクス・D・ライザは前へ出た
剣呑な空気が辺りを支配する
≪こちら剣のエース、『鹿』を抑える!
ここは私に任せてお前らは作戦を遂行しろッッ!!!≫
黒騎士剣も前へと出る
「百聞は一見に如かずとは言ったものだ、悪意の残骸か」
ファルクス・D・ライザは一瞥して見抜いた
ソードを除く黒騎士団はファルクス・D・ライザに背を向けそれぞれ近くの横道へ
と走り出した
が
「させん!!」
剣を持ったまま拳を脇に引き付け、/ソードは斬りかかる/
膝立ちになるような姿勢で床に拳を打ち付けたッッ!!
ぐわんぐわんぐんわんんんん
ひっくり返したような揺れが辺りを襲う!!
逃走したかに見える黒騎士団は転ばないまでも壁を走る!
ソードはファルクスに横薙ぎの一撃を盾で反らされた!!
ビィーーーーーッッッッ!!!!
けたたましい警報と共に500メートル先の隔壁が斬首台の如く落ちた
ドンドンドン
巨大な区画ごとに隔てられた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なんだ地震かもんよ」
「鹿が対ショックリセットをかけたのだと思います」
「???」
「機械式の演算機は電子式と違い衝撃に弱いのです。形状で記憶していますので、
衝撃を受けると自動復旧する仕組みが全ての機械式演算機に使われております
それを逆手にこの艦のコントロールを取り返したのだと思います」
「なんでそんな弱いの使ってるもんよ?」
「乗ってしまうと感じないのですけどBOLの超電磁筋肉は太陽風を遥かに超える
磁気嵐を起こしてしまうため電子式の演算機が狂ってしまうのです。それと
遠距離におけるハッキング対策ですね、中に入ってしまえば脆いのですけど」
ゆみやは装武の腕に抱かれながら解説に励んでいる
だが頭の中は装武の満腹感の霊波を感じて戦況も兎も二の次だった
「はい、あーん」
「んが~~~~~~~~~~~~~~」
ゆみやは自分の腕よりも太いハムを装武の大きく開いた口に差し込んだ
ずっぼッッ!!
ガブンッッッ!!
ハムは両断され装武のお口を旨味が支配していく!!
「美味しいですか?」
「うまうましょっぱみうまうま」
装武とゆみやは細長い涙滴状の球状部分の一角にある巨大な食糧庫にいた
道中様々な倉庫はあったのだが・・・
「こっちもそろそろ動くか~~~~~~~どっこいせ」
ハムとゆみやを抱えた装武の後ろには何もなかった
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
黒騎士剣は跳ね上がった剣を振りあがりに上段から叩きつけるようにッッ
振り下ろすッッ!!!
ファルクス・Ⅾ・ライザは盾で受け流そうと盾に角度をつけるッ
黒騎士剣はそれを見越して斬撃の軌道を打ち下ろしから胴薙ぎへ変える
が、盾がそのまま襲ってくる!!!
磨かれた盾のエッジは刃の輝き、凧の形の下部先端は立体的ではあるが武器のそれだ
大きさと外見は凧盾〈カイトシールド〉だがその実インドのジャマダハルに似た武器だ
軌道変更のために足を地につけていた黒騎士剣はカウンターをそのまま受けてしまった!!
「ぐっ」
通常の人間なら体を突き抜けてしまうような突きだが
黒騎士剣は追撃を諦め足を離したため転がるに留まった
「やるな…」
「全員でかかってきたらどうだ?こちらも逃がす気はない」
膝をついた黒騎士剣に見下ろす天意はそう投げかけた
ファルクス・Ⅾ・ライザの羽根飾りがふわりふわりとマントを離れてゆく
「フォローティングブレードッッ!!」
黒騎士剣は仲間への警鐘のために大声で叫んだッ
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装武は前線と反対方向へ歩きながら戦闘の様子を見ていた
「あーあのうっとおしいヤツだ狐のは3枚だったっけ?」
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合計24枚が黒騎士達に襲い掛かる
銃弾、レーザーのような直線武器は力場で簡単に反らすことができるが
このフォローティングブレード、もしくはフロートダガーと呼ばれる武器は
力場制御を受けてるため単純なベクトル付与では凌げない代物だ
そしてそれ自身に対しても銃弾もレーザーも弾かれてしまう
そのため、
黒騎士達は武器を構えその24枚のブレードと近接戦闘となった
無人機を難無く屠る黒騎士達がただの刃にあしらわれる
いや
やや劣勢である
近接武器を名に持つ剣、棍の隊が抑えるが後衛武器の名を持つ杯、宝は
躱しきれないモノもいる
斬撃を受けても装甲に傷もついてはいないが対応は防戦一方だ
フローティングブレードとは言うが
柔らかく先ほどまで羽根飾りにしか見えなかったほどだ。軽い
これが通常のミスリルメイルなら今頃半数になっていただろう
「さすがに硬いか」
ファルクス・D・ライザは淡々と語りつつも
黒騎士剣が仲間の様子を伺った隙を逃さず打ち込んだ!!
ガィィィィィンン!!!!)))))) )
黒騎士剣は両手で受けるも片手で振り下ろされた剣戟に膝をつく!
「ふん、天意の剣を受けるとは愚かな」
ファルクス・D・ライザは鼻で嗤うもその刃は尋常ではない力が込められている
「天意は天子ベイビーオブラブの力を揮うことのできる者の事だッ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ギンは焦っていた
黒騎士と無人機の戦闘を見たとき気が付いてしまったのだ
あの無人機は艦内の守備用ではないことを
装武の向かった艦の後部ががら空きで格納庫のある艦首から来ているのが謎だった
竜人との戦闘のエキスパートだったギンだからわかる
あの無人機の装備は“対人類用”であることが
刃の大きさ射程の短さ、些細なことで気が付かないかもしれない
そしてこいつらは竜人の存在を知らない可能性にたどり着く
装武と戦う前提なら無人機はとても有効だ
魂砕きである必殺技『葬送』が効かない
無人機投入は奴らの基本戦術ではあるのだが
対戦車用のブラスターこれが決め手だった
熱線砲は低コストなレーザーと違い燃費が悪く射程が短い
地球の兵器で例えるなら狙撃銃と大砲と言ったところだどちらでもよいのだが
悪い宇宙人にはどちらも効かない。無人機は様子見となる
(悪い宇宙人がいないと知っての威力偵察!!
安全なら再制圧するための対人類用の無人機!!)
(おいおいおい。まずいんじゃあねーの?)
ギンは前に鹿野郎が御父様と一対一で戦っているところを思い出していた
(装武が引き分けたのはその後だ。
鹿野郎が万全の状態であれば結果は変わっていたはずだ)
(俺様ならなんとかできる…!)
「おージャスがピンチだ!俺様が助けてやるもんよ?」
映像を管理しているオーブが
「あちらに映像を飛ばします」と気を利かせた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ガギィィィィィィンジジジジジッッッ
黒騎士剣は『鹿』の剣をなんとかいなす
鹿の力場に黒騎士剣の力場は完全に負け剣を合わせたタイミングでしか
回避することができないありさまだった
例えるなら底なし沼に肩まで浸かったまま黒騎士剣は戦っているような状態だ
高速戦闘などクソ喰らえとでも言わんばかりに天意はゆっくりと嬲る
そう天意との戦闘は超重力下における鈍足パワー合戦を制したものが勝利する!
ぱ
と黒騎士剣と鹿の間に装武の顔を映した窓が開く
「じゃーす大丈夫かー?さーすがに天意相手は厳しいもんよそろそろ代わるか?」
装武は自分の番が待ちきれない様子である
「いえ、ま、まだ」
「やはり貴様か装武」
ファルクス・D・ライザは割って入りつつ画面ごと上段から振り下ろす!
黒騎士剣は力場に押さえつけられたまま、剣で受け流すしかなかった
ギンッ!!!
鍔迫り合いになるかと言うところで黒騎士剣の剣は断裂した!!
ファルクス・D・ライザの剣は鍔が“十手”の様に返っており受けと剣破壊を可能
にしていた
!!!!
装武の表情が険しさを帯びた
「申し訳ありません装武様ッッ!!装武様の剣を!!」
黒騎士剣は敵を前に両の膝をついた!
「ヤロウッ」
画面はくるりとファルクス・D・ライザへ向き装武は拳を振り上げた
「ご主人様、大丈夫です黒騎士剣には奥の手があります」
/「俺様に任せろ」
ゆみやとギンが両側から装武を抑えた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「やめたまえ、ライザ。誰に剣を向けているかわかっているのかね?」
二人の間の画面中央に陣取ったギンは偉そうに語り始めた
「乗り込んできた賊を討つのに誰も彼もあるものかよ」
ファルクス・D・ライザは思考した剣は降ろさぬが止めていた
BOLの力を引き出すための代価は“財”超巨大隕石に始まりショックリセットに
黒騎士との戦闘。膨大な預金額が時間とともにゴリゴリ減っている
「こちらにおわすお方をどなたと心得る!天下のヤバン王陛下なるぞ!!」
「“野蛮王”だとぉ?」
日本語でファルクス・D・ライザは返す
帝国では最高位者【天】の滞在する言語趣向に合わせて趣を変える。
1945年以降は日本語履修の上、艦名その他もそれに合わせて変更されている
これは【格】を高めるために必須な事である
「ほへがやばんほうほうぶらもんよ」
装武はハムを口に突っ込みつつ踏ん反り返って名乗った
「おい、そのハムは王族用の至高の逸品だ野蛮人が触れていい物ではない」
バリボリボリヴォリッッッ
「ごっくん!俺、王様だから問題ないもんよ」
「聞けライザ、このお方、装武様が地球の創造主太祖様のご子息/
「養子だ」/ぐっ…後継者であらせられる/「天意は継いでない」/ぐっ」
後ろの装武本人からチョップも喰らう
「クソ親父の意なんぞ借るな」
「ちっしゃーねーな。こちらのゆみや様は皇位継承権第一位正真正銘の
お姫様だ、そいつの兵装に剣を向けてることの意味わかるかい?」
「なに?!」
アホずらとゲス顔の男はさておき、ゆみや様とやらは確かに美しい
牛男の娘かと言われてもわからんが美しい
(まさか誓約に逆らってまで殺さずにいた…?)
「真偽は後で確かめるとして。“貰って”やる!!」
ファルクス・D・ライザは腕を画面に向けて突き出した!!
「うっ」
ゆみやの体が不自然に曲がる
――≪ダイエルグ抑制ギプス解除申請≫≪申請受諾、ヤレ≫
『あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああッッッッッッッ』
黒騎士剣の羽根が総毛立った
ジオッ
紫電が足元から全身に走る
ぱしゅっ
―――黒騎士剣『ジャスティス』の仮面が跳ねあがり素顔が現れる
「―――可憐だ」
ファルクス・D・ライザはそう漏らした
おなごが努力したとてそれは子には受け継がれんのじゃ
と作中での発言。作者なりの解釈です
進化において環境に適応する事で生き残る。この環境が適応されるのはどこか?
と考えたとき。適応した個体が数を増やしていったと言うのではそもそも突然変異に頼っています
ので間違っていると思い。身近な例を上げます
戦後の日本人の平均身長は伸びています食事の欧米化によるものとよく言われます
食事〈環境〉によって身体が変化します。
背が高い人から子供へその身長は受け継がれるか?YES〈配偶者の因子もあるため必ずではない〉
良い環境に置かれる前と後で遺伝子は変わるか?NO〈他にスイッチがあるのではないか?成長段階を細胞が記憶しているわけだからないとおかしい〉
どの段階で反映されるか?男性の精子が作られる際に更新される。有性生殖のいい点ではある
と仮定したとき女性側の環境による変化は起きないという結論に至りました(女性読者の方いたらごめんなさい)
蛇足ではあるが
男性の精子によって男性か女性かが決まる。女性の体温にもよって変わるとも考えられる
粘性の問題だ。卵子と出会うまでは精子は粘膜を移動する
暖かい環境で繁殖に適していれば女性が多く発生し
厳しい環境であれば数が減っても問題ない男性が多くなる
例、4人いたとして男2女2を通常としたとき、男1女3の方が人口は増加する
逆に男3女1では減少する〈動物であれば女を娶れなかった雄は雌を求め活動範囲を広げ冒険へと出る)
精子の男女比が変わらないとすれば行為の状況が繁殖に適してるかどうかが関わってくるのではないかと
作者は思いまs
結論 娘が欲しかったら嫁さん可愛がってあげるんやで




