ヤバン王 ⅩⅥ ヤバン王/ソウブ
廃都東京、
陥没した巨大怪獣との戦い跡、
瓦礫の影が長く伸びていた
ぽぽぽぽぽぽっと黒い球が現れる。
敵の強襲であれば完全に転移が終わる前なら攻撃すべき瞬間だが
装武からすれば自分の私空間から出したに過ぎない
周囲に膝をつく黒騎士達。
「装武様!!!」
大英雄の王冠の手から降りて来たゆみやを装武は抱きとめた
「ご主人様すごいです!こんなおっきな怪獣やっつけてしまうなんて!」
「そうだろう!そうだろう!俺、強いもんよ!」
ご満悦である
ひとしきりゆみやをナデナデするが周りにいる黒騎士の視線が気になった
「中の人助けたって、んで怪獣の素材は後で組み替えるからポッケにいれといて」
「「「「ハッ」」」」
黒騎士達は2騎を残し働きだす
「頭の恐竜は焼いてご飯にしよう!」
「あの、毒は平気なのですか?まだ焼いてませんが」
「あーさっきついでにボス倒したからコントロールも貰っといたもんよ!
ぶははははははーッッ!!!!」
「!!!す凄い!もう倒してしまわれたのですか?!ではあとはもう残党狩りですね!」
(恐竜の大元の生体プラントを潰せたのならもはや敵に物量戦術はとれない!
警戒すべき波状攻撃には黒騎士団を当てるつもりでいたけれど・・・)
「ふんす!これから家を建てるもんよ!!」
「そうです!それが最優先ですよね!!
黒騎士菱!黒騎士書! 」
「「ハッ」」
菱、黒騎士にしては白を基調に赤青黄色、白地に赤青と金髪ロングである
鎧は四角く重装甲で、角は短い切り株のような円筒が四角からところどころ生えている
書、これも珍しい配色、〝肌色〟の部分がある
鎧と言うよりは露出の高い服に握りこぶし大の球を鈴なりにぶら下げている
丸い仮面の単眼に小さな猫耳のような角、髪は黒のショートボブ
「おおぉぉぉわかる!
かるとらはレボルグだ!レボブロックで最初に作ったガンダン!
ん?んんん?ん~ミコンはガンダンのプラモじゃない?」
装武は霊的主従を感じるもののその真名に心当たりがなかった
「はい書は特別製で12月号を媒体としております」
「12月号!!!!失われたはずのおっぱい天国12月号かぁああッッ!!!!
お小遣いで買ったやつだからスンゲー探したのに!どっから出てきたの???」
「ギンの部屋からですね」(しれっと
「ああぁんにゃろー!このまま埋めてやろうか!どこ行った―ギーン!!!!」
堀返した怪獣の残骸が空を舞う
「ご主人様、そんなことよりもご飯に致しませんか?」
「ごはんんんん――――――ッッッ!!!!そおぶ、はらへった!!!!」
「かしこまりました」≪各騎目標を発見次第隔離空間へ幽閉しなさい≫
パンとゆみやが軽く手を叩くと
見上げるほどの黒い球体が発生した!
VOVOVOVOVOVO!!!
白く大きな箱が残骸を蹴散らしながら減速急停止した!
ビルを横倒しにしたようなサイズだ
「なんだーーーーーー??????!!!!!!」
「ご主人様、これからご飯とお家の支度をしますね」
ゆみやはきょろきょろする装武の顎下に収まった!
「素材は用意しました、菱、書展開しなさい」
「「ハッ!!」」
巨大コンテナの側面がゆっくり持ち上がった、巨大ではあるが車両のコンテナと同じだ
「おおー?」
菱は中から太いホースを取り出し肩に取り付けた!
そして菱の手から溢れる何か!
「菱の能力!レボリューションブロック精製!!」
「おッ!レボだレボだ!!いっぱいあるぞ!!」
ガラガラガラガラッッ
装武はブロックの海に飛び込んだッッ
「俺!これ得意なんだぞ!!」
「はい、これでお家作っていただけますか?」
「任せろッッッ!!!!」
装武は竜巻の様にブロックを積み上げ始めたッッッ!!!
「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!」
書はコンテナからぶら下げている球と同じ球をホースで受け取り
手でバラまいていた。ボスンという着地の音からすれば鉄球並みの重さである
「書、いったんそのくらいでいいわ。ご主人様、
書の能力ご覧ください」
装武は既に2mもの高さまで積み上げた
「おう」
「起動」書がそういうと鉄球達はわずかに放電し
正6角形の模様を描きながら薄皮が捲れていく
剥がれた薄皮はさながら人骨の頭部の様でありゆっくり転がりながら背骨と腕が
剥けていった
3分かけて鉄球は人骨の形となった。
異なるのは短冊のような薄皮が巻き付いてることか
「短冊スケルトン、書はマイクロマシンを操り人型の傀儡を作ることができます
あと医療用マイクロマシンなどのコントロールが可能です」
「ガイコツかっけー!強いのこれ?つよいの?!」
「ぁー・・・いえ、最低限の資材でできる作業用のグレードなので弱いです
短冊状の電磁筋肉の伸縮で最大50㎏まで持たせることができます・・・が触ってみてください」
「ん?」装武は骨の腕を指で突っついてみた、アルミ缶の如く凹んだ
「ぉわっ・・・壊れちった?」
「防御力的なものはほぼありません、ので使い捨ての労働力とお考え下さい
資材も鉄が3㎏もあれば足ります、とりあえず瓦礫を片づけさせましょう」
「ちょっと待つんだもんよこいつらにブロックで板を作らせるんだもんよ!
それと・・・ごはんは?」
チーン
シュコっとトレーに乗ったスープとブロック食品が出てきた
「なにぶん出先なもので申し訳ないのですが今夜のところはこれでお許しください
数だけははありますけれど保存と栄養補給目的の味はあまりお薦めできるものではないので申し訳ありません・・・」
ゆみやは装武にそっと質素なトレーを渡した
装武たちの周りには怪獣の腹の中から救助された男たちが集まりだしていた
フラフラの男たちが目に入った装武はにんまりとやらしく笑うと
栄養補給食品『力ロリメイド』に似たブロックをさも旨そうに
「ああぁあああ~~~~んッッ!!!」
と、指まで口に入れてしまう
ごくり、男たちの飲み込む音が聞こえた気がする
ぼりっザクザクもにゅもにゅ
ずずず~~~ッッ
塩味のポテトポタージュで流し込んだ
「くわぁ~~~~~~~ッッおかわり!!!!!」
チーン!
ほぼ間を置かず温かいスープと真空アルミパックに包まれたショートブレッドが
でてくる
もぎゅッズズッおかわり!!
チーン!
もぎゅッズズッおかわり!!
チーン!おかわり!!チーン!おかわり!!
チーン!おかわり!!チーン!おかわり!!チーン!おかわり!!チーン!
ふらふらと近寄ってきた男たちは装武の食事を見せつけられ、
空腹でたまらなくなった
「な、なあ沢山あるなら俺にも・・・くれないか?」
「やだ!!!!!」
にべもない返事で返した!
男たちはしゅーんと肩を落とした
「フハハハハハ!ごはん欲しいか!ごはん欲しいぃか!!
知らん奴にあげるご飯はない!!」
装武はやらしい笑みを浮かべ
「ないが!!どぉ~~~~しても『子分にしてください!』というなら
やらんこともないぞぉ~~~?なにせ〝ヤバン王〟だからな!」
「ヤバン王・・・?」ざわざわ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
旧都庁、大英雄の王冠と怪獣の戦闘による振動で崩壊寸前であった
「トライドン、日も暮れた。闇夜に紛れて逃げるわよ!」
二足歩行するトカゲ、イクアナは背に乗せた人型竜人トライドンに声をかけるも
返事も待たずそのまま走った。
まだ生きている、生きてはいるが角を折った頭部とその角による腹部の刺し傷から
の出血が未だ続いていた。失血による昏倒、なんとか布による圧迫を行ったが
竜人の指は縫合など細かい作業をするのには向いていなかった
「古代竜型なら人間食べて回復するんだろうけど
何か滋養のつくもの食べさせないと…!!」
トカゲはゆっくりと、素早く、慎重に闇に消えていった
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
≪弩:ゆみや様、能力者の恐竜が逃亡を謀っている模様です如何なさいますか?≫
≪捨ておきなさい。それよりも目標は?≫
≪申し訳ありません全域スキャンしましたが発見できません・・・≫
(・・・逃げた・・・? 違う、認識阻害をうまく使って潜伏している・・・この近くに?)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「新宿のボスも倒したし!!でっかい怪獣倒したのも俺だぞ!!!!!
ウォオオオオオオッッ―――――――――――――――ッッ!!!!!!!!」
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
Woooooooooooooooo――――――!!!!!!!!!!!!!!
散っていた黒騎士が各所で超大音量のフォーンを負荷す
余波の霊波だけでも通常の人間では魂まで揺さぶられ車酔いのような低迷感をもたらす
ゴゴゴゴゴゴ
後ろの巨大な大英雄の王冠が動き出したのを見て耳をふさいでいた男たちは
わかったわかった!!!もういいやめてくれ!!!
を身振り手振りで懇願した
「あんたがヤバンの王だってのはわかった!
実際、竜人の潜水艦から助けてもらったしな!
だが、たった一食で子分になれっつっても、二つ返事でハイとは言えんだろ?」
「なんで?桃太郎しらんのかもんよ?」
「いや知ってるけどさ!!あんた強いなら!俺たちの安全保障してくれよ!」
「な~~に寝言ほざいてんだもんよ?俺様の手足になって働くのに安全があるわけ
ねぇもんよ?こーれから〝戦争"おっぱじめんだぞ?ああぁッ?」
装武の言葉で男たちに動揺が走る
「戦・・・戦争・・・奴らとやり合うのか?日本を、ヤバンをもう取り返したんだろ?」
「ん?おお違うぞ」
「まだいるのか竜人」
「違う違う。俺の子分と〝それ以外"の戦争だもんよ。トカゲ共はもう頭潰した」
「「「「「ッッ!!!!!!」」」」」
男たちは一食と子分のトレードではないことに気が付いた
装武にとっての『ご飯』は敵か味方かを区別するほど重要である
「俺様はヤバン王になったけどまだナワバリがこの辺、千葉と東京?だけだもんよ
JAPANは今一度俺様のものにしなくてはなんねーもんよ」
「あんた何者だ…?まさか皆殺しのク 装武か?」
「そう!!俺様がッッ!!ヤバン王・装武だッッッ!!!!!」
カッコよく!!!!
ポーズを!!!!
決めた!!!!
「今度の世界大戦は負けねーもんよッッ!!」
顔を伏せ
「いや負けてないよッッ!!!」
見得を切る
装武は空中に飛び込んだ
「負けてないからな!!!!!!」
瓦礫残る地面にクロールで地面を掘り進めながら落下した
「負けてないからなーッッ!!!!!」
ザバババババババッッ
土砂の山が穴の後ろに積みあがる
「俺、墓穴掘るの得意なんだ!!!」
ひょっこり顔を出した装武は自慢げだった!!
「さすがご主人様、素晴らしい墓穴です」
万人がノリについていけなくともヨイショできる女、ゆみや凄い。
(((((なんなんだ。バカなのか…?いやバカなんだろうなぁ)))))
男たちはこれまでの悲惨なシリアス展開に劇画調の顔であったが
コミカルなモブになり果てていた
「ご主人様の凄さも伝わったようですし、あとはお任せください」
「おっけ~もう暗いしな!寝るもんよ!」
黒騎士剣/ジャスティスは片手剣を掲げ、叫んだ
「装武様の庇護に入るものには食事を与えるッ!1列に並べ!氏名を名乗り骸骨より
食事を受け取れ!明日より仕事を与えるッ!詳細は明日、個人ごとに伝達する!」
「しまったッッッ!!!」
装武は穴からジャンプすると空中で伸身の2回転宙返り6捻りと言う荒業をキメ
配給の列に割り込んだッッ!!
「ゆみやちゃんの分ちゃんと貰ってきてやるもんよ!」
「ご主人様―ありがとうございます~」
だがその列には上半身裸の男ばかりの中にあってボロ布をフードの様に被って
いるにもかかわらず目立たずにいられる男が一人ほくそ笑んでいた!




