ヤバン王 Ⅻ 命狂死酔/シマパンツ・ブルーマー
ピガッ
≪こちらフロッグ・ツー、マグナム・ワン子供たちの様子はどうだ?オバ≫
≪こちらマグナム・ワン、みんな良い子についてきてるぜカルガモの気分だ!グアグア!オバ≫
≪HAHAHAHAHA!昼に食っちまおうぜ!こちらフロッグ・スリー!HA‐HAHAHA!≫
≪ソテーにしてサンドイッチだな!付け合わせのピクルスも忘れるなよ!オバ!≫
≪こちらフロッグ・ツー、試作機性能試験だからって気を抜いてるとケツ掘るぞ!オバ―!》
≪こちらフロッグ・ワン、仲のヨロシイことで、うらやましいわー。内戦終わって浮かれてるのもわかるけど新兵器開発してるってことは帝国との関係は悪化してるのかしら?オーバー≫
4機のフロッグと4機の試作機は並走して荒野の演習予定地へ向かっていた
可動戦車、通称〝ガンダン〟は超電磁雲の中でも活動が可能な
ひとり乗りの人型二足歩行車両である!
が、今は膝をついた状態で4輪走行をしている。
そのまま仰向けに倒れて手を腿上に乗せて旧来の戦車のような形にもなれるが
ガンダン本来の性能が出せないために警戒時は膝立ち走行が常となる。
≪こちらフロッグ・ツー、キナ臭い話は聞くがな。〝元〟大統領の裏には帝国がいたとかなんとか?オバ≫
≪やっぱり中尉も聞いた?〝影武者〟が帝国に逃げこんだ話。オーバー≫
≪HAHAHA悲観的なこと言っても何にもなんねーぜ?俺たちの任務はカルガモの味見さ!こいつが美味ければ帝国が来ようが連邦が来ようが死人が出ずに済むんだ。無人機さまさまだぜ!オーバー!≫
≪せっかく正規の軍人になれたってのにあっという間に無職だな!!HAHAHA!≫
≪こちらフロッグ・ツー退職したらフロッグでデリバリーピザを始めようと思うアルバイトしたい奴はいるか?オーバー?≫
≪フロッグ・ツーは退職後も働くのかよ!ヒュー!まっじめー!おらぁしばらく寝てたいね!≫
≪昼間からか?夜もね
ピガッ
≪ハーイ!カルガモのピザ屋さん。注文、いいかしら?≫
≪≪≪!!≫≫≫
≪2時の方角ッ不明機ッ!数、1ッ?!各機散開ッ!模擬弾と実弾間違るなよ?!
お客さんに腹いっぱい喰らわせてやれ!!マグナム・ワン!子供たちをシールド展開させて突撃させろ!≫
≪≪≪ヤー!!≫≫≫
≪フロッグ・ワンからツーへあの足回り帝国の機体だな、囮かもしれん周囲警戒しておけ、オーバー≫
上半身は見たことがない形だが足や装備は帝国の汎用型ガンダン
〝ピースメーカー〟だ。古くに採用された型で主砲装填数は6!
そして走行速度は現行のガンダンにおいて一番遅い部類である
ガンダンの勝敗は何をおいても陣形でほぼ決まると言っていい
各機、膝立ちの状態から戦闘モード、2足立ちになって
荒野に棒立ちしている未確認機を囲ってゆく。
周りはだだっ広い荒野だ敵機が隠れている様子もない
試作機オートパグの無人子機3機がシールド、S・C・O・Pを構えた
人間が盾を構えるのとはだいぶ異なり、尖っている盾の先端を敵に対して突き出す
通称『スコップ』と呼ばれるそれは防具であり武器でもある、見た目もそのまま塹壕を掘るのにも使われる
スコップはガンダンの標準装備でありこれを保持するアーム、上下左右に回避運動をするためのクッション、足。
それを備えるために戦車は人型のガンダンとなり
戦車砲をはじくガンダンの普及によって、のろまな戦車は動く砲台ぐらいの価値になり下がった
そのスコップによる突撃、スーパーカーボンでできたシールドはガンダン本体よりも固く
肉厚の刃による車両突撃は速度と質量の両方をもって対象をひしゃげてしまう
はずだった
3方向からの同時攻撃をした無人機は直前で動きを止めていた
一瞬、それに目を取られたとき後ろで爆発が起こった
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ド―――――ン
ドカンドカンとやたらめったにビームを放ち爆炎をあげる怪獣は
目標の男を見つけられないでいた
「なんだあのバカみたいな攻撃はやっぱりモザイク野郎を見つけられないのか?」
都庁展望台から見える曲がった東京タワー付近は既に〝平ら〟になりつつあった
「モザイク野郎もでかいヤツに手が出ないのか?3小隊も本当に必要なのか?」
攻めあぐねている戦況を傍観しつつランスはこぼす
「人間の兵器では『巨人』には傷一つ付けられんよ。ホモ共の抵抗なんぞ、今までそれこそモノともしなかったのだ」
「ふ~ん?」
≪でかい方の観測データはとれたか?≫
≪ヤ、劣化宇宙超重物質製の人工生命体内燃機関の地獄炉を搭載してる模様、〝中〟射程の対物粒子砲2門。装甲の純度の低さから相当のエネルギーを強度維持に使ってると予測できます、出力次第ではありますが慣性制御を備えてるのであれば遠距離主体の兵器では破壊は難しいですね≫
部下から報告を受けてもこれに勝てないのではモザイク野郎もさしたる脅威には思えなかった
「あれは対人戦闘は無能なわけか?」
対空兵器であればあの様もうなずけた
「いや?そんなはずはない上陸形態はホモの兵器はもちろん地上を掃討するためのもの…のはずだ…そもそも巨人を上陸させるなんて状況が無かったからな」
(上陸ってことは普段は海中に潜んでいるのか。それなら霊波にも影響されず航空機、船舶への攻撃手段があると…あんなナリではあるが上陸型潜水艦なのか。それよりも優先させるべきはモザイク野郎の対処だ、仮に黒級死力到達者だったとして指揮官型と仮定する、銃火器をつかっている点、霊波電波ともに知覚できない点、分子機械型死力兵装が効かない点を加味した上限の推論だが
1、遠距離による攻撃、リスクは少ないが捕捉ができないためでかいヤツのレーザー同様の結果しか得られないだろう
2、集団による包囲殲滅、目標が捕捉できない以上、近接するのは止むを得ないが、指揮官型の射程に全員飛び込むのは愚策でしかない
であれば 3、最低限の足止めをもって目標の殲滅にあたる、か、子機型を当てるよりは親機の方が確実か)
≪槍→杖:ワンド、アンノウンへの攻撃準備ができた。待機命令はまだそのままか?できれば敵が交戦中にしかけたい≫
≪杖→槍:こちらワンド了解、コントロール盗られても問題ないバックアップする…許可も出た、戦果を期待する。装武様のために≫
≪槍→杖:了解、装武様のために!≫
(ゆみや様もワンドもそのつもりだったのか…当然と言えば当然か?剣、棍のツートップ、宝、杯のサポートの1小隊が基本運用だが3小隊もの戦力評価がわからないな…)
ランスは部下の小隊11騎へ後方支援の包囲の指示を出し
自身は超音速突撃のために残った
「まあ参考になった、これから突撃をかけるがデカい方が巻き込まれても文句言うなよ」
黒騎士ランスは何となく言ったのだがヤバン攻略方面師団をまとめるトライドンは
「あ、あぁ」
と間抜けに答えるしかできなかった。
能力を使われてるわけでもないのに畏怖したのだ。
巨大兵器を前にいや、それがまるで道端の石ころの様な扱いに。
先に窓から飛んで行った奴らを見たからか地上200メートルからランスが飛び降りてもトライドンは驚きもしなかった
≪小隊各員配置についたか?≫/≪≪≪ヤ≫≫≫
(モザイクがかかってようと囲んでだいたいの座標出してしまえば当てられる!)
黒騎士ランスは黒く長い槍を中ごろから右脇に締め
クラウチングスタートかのように地面を踏みしめ
肉体をばねの様に引き絞り
たてがみに隠れた後ろに伸びたサーベルタイガーの牙のような角が唸りをあげる!
黒騎士は体中の『炉』から膨大な質量エネルギーを解放し推力に変換して行く
鉛弾よりも劣化ウラン弾の貫通力が高いように
力場を圧縮していく
そしてそれは―――― はじけたッッ!!
アスファルトが陥没する!
力場によって槍を地面が避けてゆく、壁が、電柱が、ビルが弾けるッ!!
音速の壁を越え、ただ真っすぐに目標へと加速するッ!
巨人の破壊光線より建物に隠れていたモザイク野郎に迫る!
そして目標振り向くよりも早く背中、中央、
狙いは違わず穂先は貫いたッ!!
シマパンツブルーマーはその慣性エネルギーによって爆散した!!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
銀髪で線の細い少年は一回り小さい黒髪のギザギザ頭の男の子に言った
「ジュウジまだてれび見てんのか、それろく画だろ?あそぼうぜ!」
「ギン、がんだん、ぴんちだよ、なかまてきに盗られちゃったんだ!」
見たことあるけど見なきゃぴんちのままだもんよ!
「じゃーん!!俺様オートパグ作ったもんね!超選民帝国に寝返った悪のガンダンだぜ!すこっぷあたーっく!」
「あ――ッ!!!いいなっおれ正義の連合がんだんだんもんよ!おおおおお!!」
「「おもちゃ戦争だ!!!うおおおおおぉぉぉぉ!!!!」」
ばばばばっちゅいーんちゅぃーんぼぼ---ん
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シマパンツブルーマーの頭と下半身はくるくると宙を舞う
対象を破壊した黒騎士はそのまま慣性にアスファルトを滑る
(拍子抜けだな…まあいい)
でかいヤツを次の目標に定め交戦許可を求める
≪槍→杖:目標殲滅≪杖→槍:対象まだ生きてるぞッ油断するなッッ≫
「なっ?」
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大きくなったギンとジュウジは向かい合って拳を交えていた
「おいジュウジなんだこのクソザコパンチは舐めてンのか?死力が使えないと思って優しくパンチくれてんじゃねーぞ?ぁあ?」
「おれ、ギンのこと嫌いじゃねぇぞ」
「もちろん俺も愛してるぜジュウジぃ!だからよ、一生忘れないように、禁断の
【黒死病】をよおおおぉぉ!!!」
ぞくぞくぞくとジュウジの体の中を何かが動いた。
「もう回ったのかそいつは死力尽きるまで体を喰らいつくしゾンビと化す!そして俺様の操り人形となるのだ!!ぶわーーはっはっはっはっは!!!毎晩いや朝昼晩、おやつにお休みタイムまでかいわがってやるから感謝しろよぉぉぉ!!!」
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下半身右足で器用に頭を腰骨の上に乗せていた
「あっ」
飛び散った内容物にはモザイクがかかっているがブルマーにパンツをのせた
奇妙な生き物?は視認できた
「なんなんだおまえ…」
「俺だよ!俺ぇ!!!」(←初対面)
「ぇえ?…いや、知らないから、殲滅対象だ!おとなしく死ね!」
ランスは槍の穂先で大腿を2本とも断ち切り、残る頭部を串刺しにした
「いでぇ!!!ででででッッ!!!テメェこらッ!!何しやがるッッ!!!」
どう考えても普通ではない、ぶちまけられたモザイクのかかったそれは蠢いて集まろうとしていた
――「死力兵装!!」
とっさにカウンターでコントロールを取るためにシマパンツブルーマーの思考を垣間見る
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「俺の大事なものをやるよジュウジ」
ギンは優しく微笑みながらそっとジュウジに浣腸を握らせ
「幸せにして(イかせて)あげるよ」
そっと小さい頃のジュウジを抱きしめていた
このあとギンはおかあちゃんとゆみやにめちゃめちゃおこられていた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ぐっ(まさか装武様の)なぜ貴様が見えないっ何者だッ!!」
「見えねぇ?天意が禁止した物が見えるのは天意が許可したものだけだ!素人がッ!!パパに禁止された死力兵装【黒死病】でジュウジと繋がっている!妹のパペット如きが何様のつもりかっ!!」
「申し訳ありま…せん…」
ランスは何か理不尽なものを感じつつもなぜか逆らえなかった
「――俺はギン!!ジュウジの恋人だ!!」ドンッッ!!!
串刺し生首のまま威張っていた。
「確認を取る、少し待て、待ってください」
槍を抜き、左手でどうやって持ったものか思案する
「もっといてやるよ」「あ、ああ」
≪ゆみや様、正体不明であった殲滅対象が装武様の親しい人物…「恋人のギン」と名乗られてますが如何しますか≫
≪燃やしなさい≫
≪は≫
あと間抜けなことに気づいた時には『でかいヤツ』の下の口から出た触手に分散した部位ごと口の中へしまわれるところであった
≪ゆみや様、恐竜の大型兵器に回収されてしまいましたが、内燃型の地獄炉ですので焼却されるかとこのままでもよろしいで≪待避!それは再生するのにご主人様の死力を消費します!あなたたちが中継ぎになってしまう一旦待避!≫
≪≪≪は!!≫≫≫
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でかいヤツ、の下の口の中
触手によって組み立てられ拘束されたシマパンツブルーマーは
熱湯の唾液に浸けられつつあった
「あぢっあぢぢぢぢぢ」
通常の人間であれば絶対に押してはいけない風呂の温度である
(やべぇやべぇやべぇ!火傷と再生が拮抗してやがる!!ジュウジの死力が!!)
((((たすけて!!ジュウジ!!))))
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ビカ――――ン!!!!!
「俺の名は装武だもんよ!!ヤバン王装武だッッ!!」
ゆみやの電撃で気絶していた装武は起き上がり宣言した!




