ヤバン王 Ⅺ 紫電/カミナリ
「――おっと、そこまでだ。ゆみやに手を出すなら…この、クロガネ ジュウジが相手になってやる!」
ソウブの首への回し蹴りを受けとめた一瞬、脳内では
≪ご主人様!!ご主人様!!復活なされたのですね!!≫
≪あぁゆみや、少しの間、体を使わせてもらうよ。なんだそのご主人様って…≫
≪おっきくなったらメイドにしてくださるっておっしゃいましたヨ?≫
≪そう…だったか?ちゃんと結婚する約束を…後にしよう。ゆみやの脳への負担が大きいから必要な事だけ教える≫
≪は、はい!私の体ご自由にお使いください!!≫
≪ユミヤ・サマ!ゴメイレイ・クダサ≪騎士団総員、待機!最重要命令よ!≫
≪≪≪≪≪ハッ≫≫≫≫≫≫
≪『目』は使ってしまったんだな?見えない。わざわざ不便を強いることないだろう俺の死力で補う!≫
≪そんな!もったいない!でもでもっああぁッッ!ご主人様が私の中に入って!入ってくりゅぅぅ!!≫
ゆみやの瞼がゆっくりと開く
ゆみやの瞳には六芒星のような、否、百合の花びらのような模様が浮かぶ
それを見るよりも早くソウブは逆回転を加え距離を取る
「てんめぇナニモンだ?んッッとに下っ端か…?」
「言ったろ、クロガネジュウジだ。そう警戒しなくていい今のは使わない」
くるりとソウブに背を向けた
≪後で必要になる能力を見せる。覚えてくれ≫
≪はい?≫
死角に入ったソウブはニヤリと見えない拳がゆみやの後頭部に迫る!
ソウブの身長 約2mゆみやの身長160センチ中ほど肩からまっすぐに音もなく。
まるで柳の様に触れる前に白い髪が揺れる。拳は空を切った
2撃3撃4撃ッ隠す気もなくぶんぶんと大振りにボディフックテンプルと打ち分けるも
かすりもしない。
≪『バックスペース《しむらうしろ》』見えない空間を把握する能力だ。目が見えなかったゆみやはすぐできるだろう≫
≪霊波を放出して知覚しているのですね≫
≪今の装武の〝患部〟がわかるか?≫
≪えっと左肺、心臓、脳・・・前頭葉に蜂蜜色が見えます≫
≪何が原因かわかるか?≫
ゆみやは装武と向かい合った
≪それはご主人様が恐竜の死力を取り込むために生の肝臓を食べたからでは…?≫
ソウブは視線を警戒し三歩をひと飛、後退する
全体を見たことで視界にそれが入る
≪!! 頭に炎冠の羽根が!≫≪刺さってんだ≫
≪えっ?!≫≪脳天に、ダイレクトに、貫通してるんだ…≫
≪…あっ~どうやって留めてるのか不思議でした…≫
≪通常、霊波で精神への干渉はできても体を乗っ取るなんてのはそれこそ俺たちの様に〝脳移植〟でもしなきゃあできない≫
≪ではあの羽根を取ってしまえば…?≫
≪それだとまた俺の体が死んでしまうんだ。幼い俺が目を覚ましてくれるといいんだがな≫
(装武様が目覚めたらどうなりますか…?)それは聞けなかった。
ソウブは警戒はしてはいるが間合いを詰めたいのか足で地面を擦っている
≪炎冠の能力はわかるか?≫
≪確か攻撃の瞬間に間合いを詰める能力だったはずです≫
≪半分正解だな。炎冠の能力はもう少し前。ゆみやが霊波を使って浜へ黒騎士団を呼んだ時に発動している、さっきもそうだステラへ命令しようとした時点で感ずかれている≫
≪え?≫
≪炎冠の能力は攻撃時には使えないんだ。広範囲の危険感知と加速回避。これが正体だ。だからさっきから攻撃にも使ってこない、千凡K・Oの初撃を回避できなかったのも一発のダメージが低かったからだ。『バックスペース《しむらうしろ》なら能力まで看破できる。陽炎を見たたらその〝背景〟まで霊波を飛ばすんだ≫
≪すごい!さすがご主人様ッ!≫
突撃したソウブをひらりとかわすゆみや
≪お互いに回避技では芸がないな。負荷の高い能力だが指輪から持ってこれるようにしておく、使いこなせ≫
ガチャりとゆみやの首についたベルト、ダイエルグ抑制ギプスを外した
「『紫電:起動』ッ」
ゆみやの指の間に放電の光が流れる!
≪ご主人様!これは放出系では!いけませんっ!死力の消費量がッ!≫
ソウブはその一瞬の貯めを逃がさずゆみやの首へ手刀を繰り出していたッ
「『感電』ッ」
繰り出された手刀にそっと手を置くとソウブは大きく体が跳ねた
「丈夫だな、立ってられるのか。心臓が止まってもおかしくない電圧だが・・・」ゆみやは言った
「ってぇなッぶん殴るだけじゃ済まさんぞ!」ソウブは煙を吐きながら言った
≪ご主人様あまりお体を傷つけては…≫
≪みての通り大丈夫だ、俺の心臓が止まった時には遠慮なく使ってくれ。本来は心肺停止時の除細動除去に使う技だ。向こうの体の死力が尽きても渇を入れてやれば起きるはずなんだが…ゆみやの中に俺の脳の半分があるから体の死力切れでも霊体は残念する、きっかけがあれば霊体と肉体が乖離せずに済む」
≪そう、なんですね(でもこれは全部が医療に関するもの…お母様の能力・・・?)≫
ソウブは強烈にゆみやを睨んでいる。ダイエルグ抑制ギプスが入れ墨を描いている
「なんででねぇええんだ!!」
「星火穿出そうとしてたのか蜂蜜色じゃ無理だぞ。抑制ギプスも反応してるし」
「は?蜂蜜?」
「死力到達者の能力分けみたいなもんだ。赤、青…黄色もあったか。やり合ったことないから知らんけど多分知覚系なんだろうな。空間を歪めたけりゃ黒でないと無理だ。話すだけ時間の無駄だな」
「舐めるなよ?音より速くても避けてやるぜ!」走り出すソウブッ
「そうかい『強制終了』ッ!」
ゆみやの指先がパンッと弾けた目に焼き付いた稲光を辿るなら
それはソウブの頭を直撃していた!
ドンとソウブは大の字に倒れた
≪これで俺がゆみやの目にしたように死力の欠乏部位は補完できた、後は装武が自然に目覚めるのを待つしかないな≫
≪はい、でもご主人様は小さいころから心の強い方ですからすぐにお目が覚めますよ≫
≪今本人、〝死んだと思ってる〟からなぁ思い出してくれれば…≫
「にしてもいい女になったなぁ」
勝ち誇り、腕を胸の下で組んでいた
≪ご主人様!どうぞ!遠慮なさらずに!≫
≪えっ?いやあ・・・その、なんだ?≫
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「ちょうど待機命令だ」
たてがみの様な髪の大柄の黒騎士は部下と同室の竜人に
わかるように声に出していった
「目標が戦闘始めたから情報収集するつもりで寄ったんだ解説してくれないか?トライドン辺境伯爵」
地上200メートル旧都庁展望台の吹き曝しの窓に腰かけた。
トライドンは焦っていた
唐突に表れた賊の仲間と思しきホモサピエンスとも思えない凶悪な威圧感を持った存在が12、単体ですら勝ち目はない
幸い自身をすぐに殺そうとは思ってないようだが情報を与えて事態が好転するとも思えなかった
「安心していい俺たちの攻撃目標はお前たちじゃない。あっちのモザイク野郎だ」
「モザイク?」
「お前らは見えてるのか?でっかい方に銃を使ったヤツだ」
「? でかい方、を倒しに来たんじゃないのか」
「違うな。俺たちの攻撃目標は正体が不明でね。情報をよこせ、そしたら殺さないでおいてやる」
少し試案をしたが信じがたい話を信じるならその言葉に従う他ない
「ふむ・・・でかい方、もか?」「当然だな」
できれば話したくない。この後どうせそっちも戦うということだろう?
とりあえず後にする
「モザイクに関しては予測になるがかまわないな?」
「・・・いいだろう。で?」
「モザイクと言うのはわからんが銃を使ってるなら西の奴だろう。車や罠を使う、西でホモのナワバリを守ってたやつだ」
「能力は?」
「…むう。能力者なのか?いやこちらへ来るまでに主力と交戦してたはずだ」
「ほう?どんな戦いだった?」
「車で突っ込んできただけだった」
(主力はそのまま温存する形でこちらへは戻らないように命令してある、強力な支配者型がいる以上、数で押すのは愚策だ)
「…?わかるように説明しろ」
「俺たち『人』はホモどもに対する『毒』を体内に持っている。車で突っ込んで体を傷つければ普通『毒』で死ぬ・・・それが西の奴が俺たちに対抗で来てた理由なのかもしれない」
「毒、ねぇ…炎冠ってやつ倒したらこの辺の毒は起動しないってのは知ってるか?」
「?!それは本当か?」
「さあな?俺たちには効かないから試しようが無いからな。ああ、モザイク野郎のところへ行ってテメェの腹でも掻っ捌いてみたらどうだ?色々手間が省けて助かる」
言い方は癪だが毒が使えるかどうかは確認しなくてはならなくなったな
「むう、と言うことは能力で毒が効かないわけではない?そんなはずはないな。ずっとあの西の奴一人に手こずってたんだそれに奴は俺たちの主力に突っ込んできたんだ、毒が効かないと知ってなければできないだろう」
逐一報告を受けていたわけではないので詳しい手口までは知りえなかった
「毒が効かない。それだけか?」
「武器は銃と言ってわかるか?鉄の筒でつぶてを飛ばしてくる」
「アホか。ガンダンを魂に持つ俺らに銃がわからないわけがないだろう」
「何を言ってるのかわからん」
「ちなみに俺はガンダン・オートパグだッ」
黒騎士ランスのテンションは上がっていた
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♪ガンガンダダン・ガンダダン
♪ガンガンダダン・ガンダダン
♪僕らのヒーロー 希望・戦車 ガンダーーーーン!
♪Bang!Bang!悪の超~選民、撃ち抜くガンダーン
♪Bang!Bang!北の帝国打ち破れぼーくらのガンダダーン!
♪ガンガンダダン・ガンダダン
♪ガンガンダダン・ガンダダン
「ジュウジ―いつまで見とんねん~さっき最終回見たやろが~」
おかあちゃんはぼくのあたまの上にあごをのせてボヤいていた
「さっきのは初代でこれは〝マグナム〟なんだよ!」
「せめて走馬灯見るなら家族の思い出にしとけちゅうねん」
TV:「希望戦車ガンダン・マグナム 第一話:裏切りのオートパグ」っててれ~ん♪




