ヤバン王 Ⅹ 巨人/へるどらいぶ ㈲
都内はまるで戦後の様だった。ビルは崩れ瓦礫が散乱し、道路は既に車の道として機能していない
人が生活をしてるようには見受けられない。あちこちに乾いた血の跡、だが死体は無く夏の日差しが戦いの後を照らしている。
煙をモクモクとあげゆっくり死んだ街を進む巨大な何かがった
一言では言い難いシルエットを例えるならばそれは所謂〝怪獣〟であり、よく見れば鈍重な金属でできた機械にも見える
手足は筋肉でできてるようで艶めかしく腹には大穴が開きまるで口の様であった
煙は背中に二本、腹の口から四本、煙突が生え悲鳴のような重低音を遠くまでまき散らしていた
ズオォンと地響きをたてながら廃墟にビームを撃ち全てを平らにしていく
七~八階建ての商業ビルよりも背が高く周りの建物を壊し噴煙を高く巻き上げているためよく目立った
シマパンツ・ブルーマーはひときわ高いビルの屋上からそれを観察していた
ぱんッ
と両手のひらを合わせ、人差し指と中指を立て、人差し指と親指で環を作り
「パァァアアンツッアイッッッ」
覗き込んだ。パンツアイは望遠はもちろん相手の敏感な部分を的確に知覚できる性的な技である!
「弱点はむき出しの頭部だ!!」
一瞬にして弱点を看破した!!
そう、頭部はパイロットの竜人がそのまま露出している40mの巨大パワードスーツなのである
だがそのことによりシマパンツ・ブルーマーは一つの回答に到達する!
「地面についてるのがま、前足なのかッッ!!」
シマパンツ・ブルーマーのなかでこの怪獣のどんどん好感度が増していくッッ
巨大な口がパワードスーツ(なまもの)本来の口、逆立ちした状態で足の間の穴からにゅっと出た寄生生物。的な
既にシマパンツ・ブルーマーの頭にはアレを破壊してしまうという結末を自分の中で消していた
「どうやって奪うか…」
そしてあの穴を出たり入ったりして遊ぶことで頭がいっぱいになっていた!
「とりあえずッッパンッツァアアアアア・フィストォォオオオオ!!」
ブルマに拳を突っ込み
地面に置いてあるロケットランチャーを手に取る!
ブルマを通過して肩にかけた!
「FUxx―――――ッッ!!」
ひゅぼ~~~~~ボォ――ムッッ!!
頭部目がけてロケットは当たったかに見えた、が爆炎が晴れた先は、
無傷のままであった――
「チィ自動迎撃かよ。これまでの竜人とはひと味違うってワケね」
すぐさまビルの物陰に身を隠しブルマから連なったパッケージの風船のようなものを取り出してブルマにぶら下げてゆく
そして階段を駆け下りながら器用に作業をこなす
『ッラ―!!どこだぁ!!ぶッッ殺してやる!!出ぇてこいぃいい!!』
当の怪獣は大音量でわめきだした!ビームを撒きらしビルを砕きながら地団駄を踏んでいる
RRRRRRRRR
昔の金属ベルの呼び出し音に怪獣の首が下へ引っ込む/ガチャ
『おう、お『どうなっているッッ東へ出て支持を受け取れと要請したはずだぞっ!!それを貴様ッッ俺のナワバリをめちゃくちゃにするつもりかッ!!』
『知るかっどっから上がろうと俺の勝手だ!それどこじゃねぇんだよ敵だ!どっかに居やがる!!探せ!!』
『敵…だと?……『おいットライドンッ!!』…悪いなこっちにも客が来たみたいだ』
『は…?』続きを促したが既にツーツーという回線が切れた音しかしない
「ホンッッットに使えねぇヤロウだなぁクソがッ」激しい音をたてて受話器を叩きつけた
首を出すとカラフルな丸い球がいくつもフヨフヨと浮かんでいた
『なんだ…?目くらましか?なんでびぃむが反応しねぇんだ?』
(自動迎撃はゆっくり動くものには反応しないのさ、でないと移動するだけで反応しちまうからな
鋼流野救剣『風船の術』よ、何が出るかはお楽しみってね)
『おい、目障りだお前らヤレ!』怪獣は自らの胸を小突いた
ボンッと風船が割れるというより爆発音。そして白い粉が舞う
予想外の音の大きさに目を細めたが先ほどの攻撃に比べれば気にするほどでもない目くらましだ。
『カスがッ!全部潰せぇ!!』
(――手動に切り替えたなッ)
シマパンツ・ブルーマーは巨大な足元から頭部を対物ライフルで狙っていた!
!!
一瞬、怪獣とシマパンツ・ブルーマーとの目が合う!
怪獣は踏みつぶそうと足をあげるが引き金を引く方が早い!
バレットM82の12.7㎜弾は生物に対して使うには強力すぎる威力だ。
通常の竜人であれば大型でも頭蓋骨もろとも頭が吹き飛ぶ
――が下顎に直撃したにもかかわらずその威力に反して口を閉じただけだった!
間髪入れず2射目を撃つも外れ、巨大な脚から逃げるように転がった
どぅ~ん
巨大な足は地面を波立たせる!
『やったか…?』
足元を覗き込む〝頭〟に ぱたぱたと雨の様なものが落ちてくる
『なんだ…目に沁みやがる…でででッッ下のホモ始末しとけッででで痛ぇ!!ゲホッ』
頭は再度引っ込んだ
「かしら、大丈夫っすか?」ボクンッ
(チンポールとパイターの混合液は効くのか、天意も毒には弱いしな…このまま登って中に奇襲かける作戦だったが、う~~む…装甲にかかったのは瞬間蒸発した…200度以上か登るのはヤメだなー。竜人どもは霊化銀精製できねぇのか?この怪獣の装甲も霊化銀じゃねぇし…宇宙超重物質のなんかか?…ていうことは)
熱線が爆音を辺り一面に響かせる!
『糞っ糞がぁ!!』「かしらーそんなにやたらに撃ったら燃料が追い付きませんよ~」
『うっせぇ!いくらでも積んでんだろうがぁ!!』
頭のない怪獣は胸の扉をギギギギギと開けると
反対の手で黒焦げの人型の何かを投げ捨てた
腹の口からうねる触手に縛られた全裸の男がゆっくりと胸の前まで持ち上げられる
男は嫌がるようにうねるが何本もの触手は逃れることを許さなかった
フライパンのような胸部に拘束具で止められじゅっと肉の焼ける匂いが漂う
「あとぅーいッッ!!!あがががががががが!!!」
目玉は上へほぼ白目を剥いて悶絶、痙攣している
「――地獄炉」
シマパンツ・ブルーマーはぽつりと呟いた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「――地獄炉を作れ。」
ソウブはそうゆみやに言った。その言葉にゆみやは一瞬、耳を疑った。
――地獄炉。
それはかつて悪い宇宙人が作り出そうとし、それを主人は『悪』と断じた
自然主義を愛する主人は強者が肉を食すことを悪とは呼ばない
獅子が兎を食すのは自然なことである、恐竜が人間を食べようとそれは変わらない
だが悪い宇宙人が食したものは人間の「憎悪」「苦痛」「憤怒」と言った負の感情である。
それを自ら名乗り『悪の象徴』となることで集約させるそれは火災旋風の如く燃え上がる。
外燃機関であるそれは難しい装置は必要なく要は「悪」と「地獄」のような世界を作り上げればいい
それにブチ切れた主人は悪い宇宙人を皆殺しにした
例えそれで死力が回復するのだとしても、やってはいけないことであることぐらい理解している
恐竜がなぜ地獄炉を知っているのか、ギャグのそれは―迷うこともあったが
目の前にいる主人のは誰なのか――結論はでた
≪――ワンド、
!!
意を決したその時にはソウブの後ろ回し蹴りが首に触れていた!
「――おっと、そこまでだ。ゆみやに手を出すなら…この、クロガネ ジュウジが相手になってやる!」
片手でソウブの足を受けとめたゆみやはそう言った――




