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野蛮王  作者: 山本やままる
1章 ヤバン王
10/30

ヤバン王 Ⅸ 蒼狼/コバルトウルフ

ゴットン・キリングスは湖面を走っていた

道は既に植物に侵食され高速走行するには平らな面の方が適していたからだ


その速度、通常の人間の約3倍である!


ゴットンの能力は戦闘には向いてない。

これは彼のミスリルメイルの性能である。

『コバルトウルフ』

元はとある部隊の支給品であり速度と継戦能力に秀でているだけの凡庸な一品、

本来、天意であれば至高の逸品に身を包んでいるものである、だが

ゴットンの生き様がそれを許さなかった


霊化銀とは

天意とは、何なのか…はまた別の機会にでも



南北に長い湖、時速100キロオーバーで大きな水しぶきを上げ推進力を得る

スーツケースは背負い、両手は腰の裏の銃に手をかけられるように後ろに流している

走ってはいるが実のところ飛行しているに近い、

慣性制御によって重量を低減して半分ほど浮いているからだ

最短時間で到着するには飛行すればいいだけの話なのだが


現在の竜人の支配する世界では飛行物体はどういうわけかすぐに捕捉され、

撃ち落されてしまう。

単純に竜人が高精度のレーダーの様なものを使用していると思われる

レーザーだろうが電子粒子砲レールガンだろうが彼にとってはどうでも良いのだが


竜人側に捕捉されるのは避けたかったからである


小型の竜人ですら『毒』はゴットンを死に至らしめるからだ


(聖東院にやられたからな…)


一瞬昔を思い出していた


ブボオオンンッッ

巨大な水飛沫が上がる


ゴットンの視界は水中へと転がる、何者かの砲撃のようであった



「っしゃあっっ!すっとらぁああいく!当たったよな当たったよな今の?!」

黒騎士アックス、サイのようなフォーンピンク色のツインテールにサイレントフォーンを束ねた少女のような体型に

不釣り合いな大人でも振るえない大きさの斧を背中に背負っている

が、ぴょんぴょん跳ねている


もう一騎

黒騎士エストック、エルフの耳のようなフォーン、女性なら背が高いスラっとした体格、

くびれた腰には剥き身の突剣エストック

長い緑色のサイレントフォーンをなびくに任せ静かに大きな波紋の中心を眺めている


「…いや、上手く避けられたな、当たったように見えて潜るために足を水面にかけている

 あれではダメージは入らない」

「ちぇー。まあ足は止めたからいいのかな?」

頭の後ろで手を組み余り物を考えてないようなしぐさのアックス


「ヤツを見失ったとすればことだぞ、水中では霊波は感知できん、微生物で減退てしまうからな」

「えッ?どうしよう…」


(なんッだと!!サ、サタンが2体ッ一瞬、岸にいた黒い人影、投擲された石から少なくとも黒級死力到達者(ダイエルガー)!勝てるか?)


答えはすぐに出る

(ノーだ!勝つ手段はある!だがノーだ!結論するなら答えは一つしかない!)



ゴットン・キリングスは2騎の近くの岸へ転がるように登った



「お!話の分かる奴じゃん!やろう(・・・)ぜッ」

アックスは背負った大斧を肩に担いだ

「あ!安心していいよコイツは手を出さないから!」

隣のエストックを顎でしゃくり、じりっと半歩詰める


エストックは肩をすくめ二歩下がる


「蒼狼の天意、ゴットン・キリングスだ」腰を落とし右に半歩

右手は銃のグリップに添えられている


「ハッ天意の意味も解らずに騙るなよ?!装武様以外はただの〝サンライド"さ」


(ソウブ?日本ここ天意てんいをサンライドと呼ぶのは俺とジュウジぐらいのはず

 ほかの奴らは権威も込めて天意てんいと呼ぶ、サタンが「様」をつける存在?

 外観は人工的だが霊的に見ればサタンそのもの、いや話が通じてる時点でこいつらは

 サタンではない!ならば…)


「ジュウジの使いか?さっきのは腕試しのつもりか?

 竜人を手下にしないように警告しに来たがサタンを手なずけているとはな」

両手をあげ敵意が無いことを示す


「あれ?降参?こういう場合って首を落としていいの?ゆみや様に聞く?」

「倒してしまって構わないさ」


「…なっ」


(ソウブと言うのはおそらくジュウジで間違いない。攻撃意図のない霊波拡散「愛してる」はジュウジのそれだった

そして打倒したサタンを従えることが可能なのもジュウジ以外にはいない。だがゆみや(・・・)様と言うのは誰だ?

いや、ジュウジと同じく名前を変えた傍らにいた少女だとすれば…非常にまずい!あの子の前で二度ほどジュウジを殺している)


「…敵ということか」


「そだね~」


ドンッッッッッ!!!!


爆発のような土煙をあげアックスが突進する


ゴットンの手には銃、だが射線上に標的は入ってない!



アックスはあと一歩/引き金は轢かれた!




地に伏したのは黒騎士アックスだった

「…は?」


「天意と聞いて怯まないのは勇敢だが、無知のなせる業か」

ゴットン・キリングスは見下ろして言い放った。


「エストちゃん解説よろしく」

大斧を振るいゴットンを下がらせ、埃を払う


「…… 後ろからだと撃たれたように見えなくもないが…」

エストックはアックの外傷を探すが特に転んだこと以外ダメージはない

着弾の跡もない。靴底に踏みつけたガムのような…潰れた鉛玉が付着していた


「拳銃弾が効かないと踏んで、踏み込んだ足の着地点を狙ったわけか

 せこい技だが…アックス!相性が悪いぞ代わるか?」


――『滑るバナナ(チャップリンダンス)

ゴットンは銃使いにしては珍しい不殺系の技が多い

だがそれはヘッドショットを狙うよりも難しい――



「このまま終われるわけない!だろっ!!」

Bhoooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!

フォーンを大音量の重低音で響かせ仮面の奥にピンク色の瞳が光る


常人であれば失神しかねない殺意が溢れている



「縦ッ!!横ッ!!無尽ッ!!撃ッッ―!!!」


大斧をぶんぶんと振り回す


ぶんぶんと振り回している…子供のぐるぐるパンチを見ているかのようだった


ゴットンはこの稚拙に見える技に躊躇を覚える

先に見せた突進の方がずっと有効打を取りやすい

確かに威力は突進よりも高く防御的な技なのかもしれない

あれに当たれば天意と言えど防御しきれないだろう、離れていなければ。

こちらが近接戦闘しなければ意味のない待ち技なのだろうか?

ゴットンは銃使いである、サタン相手ではただの鉛玉は有効打をとれないが


それでも鎧の隙間に噛みこませることはできる――


ガヂ―――――ンンンンンンン))))




拳銃を向けたことでがら空きになった右腹部から強烈な一撃!!


視界はぐるぐるとまわりメイルの慣性制御をはるかに上回る力で吹き飛ばされる


≪コバルトウルフ/腹部破損 皮下保護被膜/腹部破損 出血/縫合中 打撲/修復中≫


≪予測損害…内蔵破裂による死亡 …LBS≫


メイルのモニターに簡略化された被害状況が出る


(ブルースターが起動してしまった。霊波系攻撃を使うのが他にもいるようだ、これ以上は戦えん…)



ぼちゃん


ゴットンは転がった先へそのままたたらを踏み湖へと落ちた




「あ!にげられた!」

「問題ないでしょう、撃退に成功。任務完了ですよ、オーブ、

 ナイスフォローです。ゆみや様に報告しましょう」

≪必要ありません、見ていました。4人共よくできました!ふふふ。素晴らしい戦果よ

発見したスリングも距離をごまかしたオーブもよかったわ。エストックも牽制で来てたものね

アックスの攻撃は花丸よ!おかげで敵のBOLの情報まで引き出せたもの!ふふふ愉快ねとても愉快だわ!≫

≪あ、ありがとうございますッ!あ、あのアタシ泥付けられちゃって…その…≫

≪そうねぇ…次にもアックスに戦わせてあげるわ今度はあの犬に血と泥に塗れてもらいましょう!あの犬にはあなたの能力が最適解ね≫

≪やったー!≫



(楽園への茨道ロード・ブルースターには〝弾"が無い…ふふふ…ふふっ)

ゆみやは一人ほくそ笑んだ


戦闘回!

ゴットンは蒼狼で早打ちガンマンでたまなしなんだ…


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