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世界樹放浪記  作者: 夜ノ空
プロローグ
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プロローグ

プロローグを大幅に変えました。

少しはマシになっていると思います。

初めての皆さん、宜しくお願いします。

では、どうぞ

 ある年のある日、日本のある地域のあるコンビニの近くで、日常に少し非日常が入り込んだ。

 交差点で横断歩道の信号が青になり、いつも通り普段通りに通学通勤していた子供や大人が走ったり歩いたりして渡っていた。

 何気ない日常であり、俺も毎日通る横断歩道を踏みしめていたのだ。

 そこに突如交差点から現れた一台のトラックが、トラックの前にいた車に衝突しながら物凄いスピードでこちらに向かって暴走し始めた。

 当然、渡っていた人も違和感を覚え始め、違和感の強い方へと視線を向けた時には目の前に迫っていた訳で。

 幸い俺は渡り始めてからそんなに時間は経っていなかったので、急いで後ろに下がり暴走を躱すことが出来たが、真ん中を渡っている最中だった人はそうもいかない。

 ここは都会ではなくどちらかと言うと田舎の方に近いので、横断歩道を渡る人はそんなに多くはない。

 だから運悪く取り残されたのは小学生だと思われる女の子が一人。

 もう助からないだろうと諦観の視線で見つめられていたその女の子は走馬灯でも見ているのだろうか。

 目に涙を溜めながら迫り来るトラックを茫然と見ていた。


「危ないっ!」

 自らの事も顧みず、女の子を助けようと鞄を放り出して、火事場の馬鹿力と言うやつだろうか、陸上選手もかくやというほどのスピードで一人の男子高校生が駆けつける。


「ぶへっ」

 一方、俺はその高校生が放り出した鞄が顔面に直撃し、思わずたたらを踏む。

 ぶつかった鼻から血が多少出た。

 こんな感じで俺がみっともなく軽い痛みに呻いている間に、その高校生はちょうど女の子をトラックに引かれないように押し飛ばしていた。


「……えっ?」

 女の子がこの状況に頭が追いついていないのだろう。

 助けてられた事も分からないうちに、女の子の瞳にその男子高校生の顔が焼き付く。

 その高校生の最期の顔は助けることが出来た安堵と少しの死に対する不安が両立している笑顔を浮かべた。

 ――――瞬間。

 トラックが男子高校生を跳ね飛ばしてその勢いでコンビニに突っ込み、コンビニ近くにいた人々さえ巻き込んでようやく速度が消滅する。


「――――っ、きゃああああ!!」

 辺りに一瞬の静寂があった後、現場にいた女性の悲鳴を皮切りに、その場にいる人々の感情が一気に膨れ上がり爆発した。


「おい、誰かひかれたぞ!」

「救急車を呼べっ!」

「警察は?」

「おい、高校生がひかれたってよ」

「女の子をかばってひかれたらしいぞ」

「うわっ、グロっ」

「ブログに上げとこうっと」

 そしてどんどん人だかりが増えていく。

 今の状況を知らせようとする人、何をすることが必要か瞬時に判断し伝えようとする人、事故現場の悲惨さに目を閉じて早く歩き去ろうとする人、二度と見ることが出来ないかもしれない事故に鉢合わせをして友達に自慢しようとネットに上げる人。

 様々な意思や思惑が交差する中、俺は現場から離れようと脚を懸命に動かす。

 何故、あそこで俺は飛び出さなかった!?

 何故、あそこで俺はあの高校生を止めなかった!?

 何故、女の子に注意するように言わなかった!?

 全ては結果論から事故を回避するための方法であり、事故が起こるなんて分からない状況からは実行出来るなんて極少数だと断言できる。

 しかし、俺の近くにいた男子高校生はそれが出来て俺にはできない?

 やはり日頃の行いだろうか。

 日頃から人を助けていたら、あんな反射的に飛び出していけるのだろうか。


「クソッ。気分が悪い」

 ――やめやめ。

 俺はこんなキャラじゃない。

 さっきの事故で俺の友達が巻き込まれなくてよかった。

 女の子も助かってよかった。

 ラノベにもあるように、あの男子高校生は異世界に転生していることだろう。

 よし、オールオッケー。

 そろそろ学校が始まる時間か。

 無遅刻無欠席を誇るこの俺が遅刻するわけにも行かないので、時間があれば通常通り、無ければ近道で学校に向かうことにする。

 時間を確認するために自身の腕時計を見たところ、九時十分。

 授業開始は九時からである。


「ああーっ! なんで今日はこんなに運が悪いかな!」

 事故と遅刻決定のせいで精神的ダメージが蓄積されたので今日は学校を休むことにする。

 通学路なので、再び事故現場に戻ることになるが致し方なし。

 今日は親が仕事で夜まで帰ってこないらしいから学校に行っていなくてもバレないだろう。

 そうして俺は家に帰ることにした。





 ※※※





 家に帰ったら親がいた。

 今日は休みと聞いていんたんだけれども。


「あら、お帰りなさい。学校はもう終わりなの?」

 母さんが怪訝な顔をしながらも挨拶をする。


「創立記念日だから休みだった」

 あまり事故と欠席の事は言いたくないので、上手いことごまかす。


「嘘ね」

 ……どうやらすぐに見破られてしまっていたようだ。

 しょうがないので、事情を説明する。


「なるほどそれならしょうがない、って言うわけないじゃない。あなた怪我してないでしょ。あなたが精神的に疲れるわけないし。せっかくお金払っているんだから学校行きなさい‼」

 母さんの中の俺は精神的にタフだと認識されていたのか。

 間違ってはいないかもしれないけれど、今は大部ナイーブだ。

 まあ、これ以上小言で怒られ続けるのも嫌なので学校に行きますか。

 どうせ事故云々は信じていなさそうだったし、懸命に説明したって無駄だろう。

 というわけで、学校に行く道の途中に起こった事故現場をまたまた通るハメになってしまった。


「……行ってきます」

「行ってらっしゃい」

 ドアを開けて、空を見上げると雲のない晴天。

 学校の国語の文章の小説なら心理描写で雨になっているはずなんだけどなあ。

 事実は小説より奇なりと言うけれど、とてもそんなふうには感じられない。

 はあ、今日も一日頑張りますか。



 ※※※



『合格。これより転生開始』

 事故現場を少し過ぎた後、近くにふたが外れたマンホールがあったので塞ぐためにマンホールを探して嵌めようとしたところ、マンホールの中から音声が聞こえてきた。

 中にラジカセがあるのかもしれないと思って中を除く。


『終了』

「へっ?」

 再び音声が聞こえたと認識した瞬間、身体が引っ張られるようにして俺は落ちていった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 情けなくも大声で悲鳴を上げながら。



読んでくださりありがとうございます。

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