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セリーナ・ロックハートの大冒険  作者: 折れた羽根 しおれた花
第二章 寂しさは秋の色~apocalypse autumn~
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名前を呼んでくれ。友だちになりたいんだ。

 時間をかける事無く、小人狩りは終わった。念のため一匹だけ残しておこう。

「貴様、離せ……、我らは誇り高き一族。例え一人になろうとも、我らは復讐は永遠に諦めない。そう、例え九十九度敗れたとしても……」

「五月蝿い、黙れ」

 軽く一睨み……、おい、私の拳の中で漏らすんじゃない!! おっと、尿を蒸発させると同時に小人も蒸発させてしまうところだったな。危ない危ない。

 さて、後は星に帰るだけだ。どうやって帰ろうかな? 出来れば安全な方法をとりたいものだ。セリーナの為にもな。

「おい小人、貴様安全に星に帰る方法を知っているか?」

「クククク、脱出ポッドはあるが、残り一つよ。しかも、“ダモクレスの剣”の所にあるわ。果たして、無事に辿り着けるかな……?」

 その時、いくつか映し出されていた映像の一つで大爆発が起こったのが見えた。

「残り一つ、消し飛んだな」

 からかうような小人の声。そう、最後の一つが残っていた“ダモクレスの剣”が搭載されていた場所が大爆発を再度起こしたのだ。そして、今度の大爆発は、“天を穿つ魔塔(カ・ディンギル)”全体を巻き込む大爆発となった。

「仕方ないな、危険かもしれないが、自力で戻るしかないな」

「バカめが、自力で宇宙空間から戻れるものかよ!! 貴様は我らと共にここで死ぬのよ!!」

 五月蝿い小人だな。そう言えば、こいつら、なんて言う名前なんだ?

「お前ら、名前は何だ……? まあいいや、グレムリンでいいだろ?」

「貴様、我ら一族を愚弄するか!! 我らは誇り高きアリオッチ、復讐に生きるモノなり!!」

「なんだか偉そうだから却下だ。お前今日からグレムリンな。まあ、明日には生きていないと思うけどな」

 手の中でぎゃあぎゃあ喚くグレムリンを放置し、セリーナの記憶を呼び起こす。

 彼女の記憶の中に、この魔塔から脱出出来る手がかりがないかどうかを探さなければならないからな。

 そして、記憶の中に一人の少女の姿を見つけた。懐かしき姿だ。こいつの力を借りるとしよう。まずは、連絡をしないとな。

 この魔塔の何処かに転がっている筈の携帯電話とやらを呼び出した。すぐに私の左手の中に感触。

「バカな……この魔塔の何処からか物体を取り寄せただと……?」

「この程度で驚くなよ。ある程度魔術を極めたら出来る事だろ?」

 実際使えるモノがどれだけいるか知らないがな。

 セリーナの記憶を読み、使用方法を簡単に学ぶ。携帯電話など、今まで使った事どころか、見た事もないぞ。科学とやらは、凄い進歩を見せたのだな。

「ふむ……ま、よく分からんがかけてみよう。話はそれからだ」

 誰にかけようか? アリスと呼ばれていた少女でいいだろう。

 さあて、どんな反応を示してくれるかな?






 急に呼び出し音が鳴り響いた。私の携帯電話だ。

 画面に出てきたのは、「銀髪」の文字。どうでもいいけど、いつの間にこんな登録したんだろうね、蜥蜴丸は。

「セリーナさんから電話……?」

 私の声に、先程から皆にからかわれて打ちひしがれていたアキが私の方に振り向いた。それはもう、恐ろしいスピードで。ちょっと怖いよ、アキ。

「もしもし……?」

 いったい、誰がセリーナさんの携帯電話で私にかけてきたのだろう? 疑問に思いながらも、電話に出ないわけにはいかないだろう。

「君がアリス、だな? 済まないが、話は後だ。君の近くにいる、ええと……そう、後ろから女の子に抱きかかえられている女の子に代わって欲しい」

「セリーナさん……?」

 声はそう、セリーナさんと同じだ。ただ、セリーナさんから感じられる暖かさのようなモノが少し、感じられない。セリーナさんの声の暖かさが春の陽だまりだとするならば、この女性の声は、秋の木漏れ日のような感じがする。決して、冷たくはないのだけれど。

「説明は後だ。早くそこに居る子に代わってくれないか。こちらにはそこまで時間がない」

「わ、分かりました……」

 いったい何だと言うのだろう? でも、声は本当に慌てているように感じた。リリスに電話を渡す。

「代わったぞ、何じゃ?」

 それから、セリーナさん(仮)の話は全くと言っていい程聞こえなかった。リリスの声だけが響いている。

「ふむ、なるほど、そこからこの星に帰って来たい、と」

 そこって何処かな? やっぱり宇宙空間? 一度でいいから遙か天空高くから、それこそ宇宙空間からこの星を眺めてみたいね。綺麗な星なんだろうか?

「なるほど、我輩の助力を得たい、と」

 リリスの助力が必要なのかな、この星に戻ってくるのに? ただ、戻ってくるとして、戻ってくるのは、誰なんだろう? セリーナさん? それとも、セリーナさん(仮)?

「いいじゃろう。我輩助力は惜しまん。で、どうすればいい?」

 リリスが動く? 

「ふむ、わかった。暫し待て」

 通話をきったわけじゃなさそうだけど、どうするのだろう?

「セツナよ、いつまで我輩を抱っこしているつもりじゃ? 悪いが、離してくれないかのう?」

「む、そうか。また後でな」

 名残惜しそうにリリスから離れるセツナさん。凄いね、今の会話中ずっと離れていなかったんだ。

「お主、まだ我輩を抱きしめるつもりか……? やれやれ、どいつもこいつも……」

 苦笑交じりのリリス。きっと、抱きしめられているのに慣れているんだろうな。まあ、私もよく抱きしめているから、何とも言えないけれど。

「おい、アキヒコよ、結界を張れ。残りのメンバーはアキヒコの張った結界の後ろにおれよ。念の為にな」

「結界?」

「いいから張れ、結構頑丈な奴をな」

「分かった」

 アキの合図に従い、リリスとゲーサンを除いたメンバー全員がアキの後ろに集まる。ゲーサンは何処かからとりだしたデッキチェアーに寝そべり、アロハシャツを着て、かき氷を食べていた。

「あいつ、ぶれないな」

 ジンさんの一言がゲーサンを言い表している気がするけど、あれってぶれないって言っていいのかな?

「ふむ、どうやら準備が出来たようじゃな。では、魔方陣、展開」

 わざわざ口に出して教えてくれるリリス。そして、彼女を中心として半径十メートルほどの魔方陣が出来た。砂漠の砂の上でも映える、綺麗な桜色した魔方陣。

 リリスが魔方陣を残したまま、自分が作った魔方陣の外に抜け出した。

「これで良いかな? ふむ、では、こちらは待つとしよう」

 通話をきり、リリスが携帯電話を私の方に投げてきた。携帯電話を受け取り、セリーナさんにかけてみたが、もうつながらなかった。

 その後、数分と経たずに、宇宙空間で大爆発が起こった。それは、ここから見ていても分かるくらいだった。変に魔法やら科学やらが融合していそうな塔だったからだろうか?

 そして、私たちは見たのだった。その大爆発が起こるほんの少し前、流星がおちたのを。






 星の上に魔方陣が出来たのを見て、通話をきった。

 あいつ、嬉しい事をしてくれるじゃないか。流石は私の家族だな。ま、元家族と言った方がいいか。

 星の上、おそらくは地上に出来たであろう魔方陣は、そのままの大きさを保ち、数十段に積み上げられ、星の重力圏外にまで達しているだろう。そして、その中に飛び込めさえすれば、おそらくは酸素もあるだろう。

 携帯電話を投げ捨てる。あそこを目指して、飛べばいいだけの事だ。

 自分自身とグレムリンを中心にして、数メートル圏内を魔法で結界を張る。この酸素やら何やらも一緒にあの魔方陣まで突っ込めばいいだけだ。ま、試した事はないから、実際生きていられるかは分からないがな。

 魔剣で魔塔を内部からくり抜き、外壁を蹴り飛ばす。

「貴様、宇宙空間で生きていけるわけがないだろうが……!!」

「黙れ、私は星の海で生きるつもりなどないのだ。やはり、重力のある世界の方が楽しいからな」

 さあ、魔方陣へ飛び込むぞ。無事に星に辿り着けるといいがな。

 





 私たちが見つめる中、流星は一直線に私たちの元へと向かって落ちてくる。まるで、何かにぶつかるかのように、少しずつ、少しずつスピードを落としながら。

「ほう、魔方陣を段階的に設置しておき、そこを潜り抜ける度にスピードが落ちるように設定しているのかよ。やはり、魔法においては貴様はワガハイなど辿り着けぬ境地におるよ、猫娘よ」

 説明してくれるのはありがたいけど、猫娘扱いはないんじゃないの、蜥蜴丸?

「貴様に褒められても嬉しくないのだがな……」

 苦笑しているリリス。褒められても嬉しそうな感じがしていないのは、この程度では褒められるほどではない、そう考えているからだろう。

 そして、遂に流星が砂漠に描かれていた魔方陣に激突した。

 砂塵の彼方から現れたのは、やはりセリーナさんだった。そう、姿はセリーナさん。でも……ナニカが違う。誰だ、この人は?

「久しぶりじゃな、姉上」

「ああ、いつぶりだろうな?」

「さあ、な」

 リリスと普通に会話をしていた。どういう事? そして、リリスの姉上? 

「セリーナさんであって、セリーナさんじゃない……? ど、どういう事?」

 アキですら困惑しているようだ。リリスの姉だという事は抜け落ちているみたいだ。

「ほれ、こいつはプレゼントだ。こいつがあの魔塔を操っていた本人だ」

 そう言って、セリーナさん(仮)は、赤い小人をリリスに投げつけた。

「なんじゃ、こいつは?」

「グレムリンだ」

「貴様、何を言う……!! 我らは誇り高き復讐に生きる一族、アリオッチ。例え最後の一人であろうと、我は貴様への復讐を絶対に行ってみせる……!!」

 何かを喚いていた。

「五月蝿い、黙れ」

 そして、蒼白き炎に焼かれて、その生を終えた。きっと、何処かの一族の最後の一人だったんだろうね。合掌。




「セリーナさん? セリーナさんだよね?」

 アキが半泣きに近い状態でセリーナさん(仮)に近付こうとするが、その顔を片手でおさえ、近付けさせないようにするセリーナさん(仮)。

「セリーナは今、私と交代して眠っているところだ。魔力を限界まで吸われてしまったのでな、壊れる寸前だった。そこで、ぎりぎりで私が交代したのだ。魂がバラバラになったような状態なのでな、また彼女が表に出て来ても、以前のセリーナとは少し変わっている可能性がある。それだけ覚えておいてくれ」

 よかった、セリーナさんは無事なんだ。少し変わっていたとしても、私たちは友だちなのだから、変わらぬ付き合いをすればいいだけなんだ。

「そういう君は誰だ?」

 凄くストレートに質問をぶち込むね、セツナさん。

「そうだな、自己紹介をしておこうか。私は……」

「あ、名前を名乗るのはやめておいた方がよいぞ。我輩らの名前、人間の発声器官では発音できないからのう」

 リリスが口をはさむ。そう言えば、昔そんな事を言われた気がするなあ。

「む、そうなのか。お前は今、何と名乗っているのだ?」

「リリスじゃ。我が友がつけてくれた名前よ。あいつはあいつでシェリーと名乗っておるぞ。もちろん、名付け親は我が友よ」

 そうか、と呟きながら顎に手を当てて考え込むセリーナさん(仮)。シェリーって誰かな?セリーナさん(仮)は暫し悩んでいたようだが、手を叩いた。

「そうだな、じゃあ、お前たちが名前を考えてくれ。しっくりくる名前を私の名前としよう」

 名前……かあ。ペットにするわけじゃないんだから、変な名前を付けるわけにはいかないよね。

「じゃあ、“かずさ”で」

「“かずさ”……? 理由を聞かせてもらおうか」

「君とは、セリーナをめぐって不倶戴天の敵となるか、生涯の心友ともとなるか、そんな気がするからだ」

 何かよく分からない理由をぶち込んでくるね、セツナさんは。

「よく分からない事を言うな……。だが、却下だ。悪くなさそうな名前だが、何となく文明圏が違う気がする。そうだな、リリスやシェリーと似たような感じの名前で頼む」

 却下されたセツナさんは不満げだった。何がいけないんだ……、そうさっきから呟いている。何だろう、それほどこだわりがあったのだろうか?

 その後は、全員で意見が出された。

「ううん、何となく違うんだよなあ。アリスだったな、君の意見はないか?」

 結局意見を言っていなかった私にも意見を求められた。自己紹介は私達の方は済ませていたので、セリーナさん(仮)は、私達の事を呼び捨てするようになった。

「そうですね……」

 話の途中で出てきたのは、リリスとシェリー、そしてセリーナさん(仮)は、家族のような存在だと言う。シェリーとセリーナさん(仮)が血の繋がった姉妹で、リリスは二人とその家族に家族同然の扱いを受けていたのだトカ。まあもっとも、セリーナさん(仮)は今、セリーナさんの体を間借りしているような状態だトカ。

 ならば、二人と共通する名前にしてみよう。

「シェリル、でどうですか?」

「ふうむ……、いいな、それでいい」

 どうやら私の意見が採用されたようだ。

「では、これからは私の名前はシェリルだ。よろしくな」

 これにて一件落着、かな?

「では、この名前に慣れる為にも、皆に頼みがある。さあ、私の名前を呼んでくれ」

「え?」

「せっかくこうして知り合えたんだ。私は皆と友達になりたいんだ、だから、名前を呼んでくれ」

 とりあえず、私たちは彼女の事を名前で呼ぶ事にした。

 これからよろしく、でいいのかな、シェリル?




「おかしいな。あんなフレンドリーな奴じゃったかな? セリーナに影響されているのかもしれんな」

 なんとなく聞きたくなかったセリフがリリスの口から発せられた。そのセリフはシェリルの耳には届いていなかったようだった。



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