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セリーナ・ロックハートの大冒険  作者: 折れた羽根 しおれた花
第二章 寂しさは秋の色~apocalypse autumn~
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ダウンロード完了ッ!!

「さて、どうしようかな……?」

 そう言えば、アキとの電話の途中だったな。あ、きれてる。かけ直してみよう。

 数回のコール音の後につながった。

「アキ、大丈夫?」

『アリス、良かった、無事?』

「無事。敵は倒したよ」

『分かった。アリスがいる場所も分かったからそこでじっとしていて。すぐに向かうから。あ、壁際にはいないでね。くだらない壁なんてぶち壊して向うから』

「了解」

 通話をきる。アキなら実際、壁などぶち壊して私のところに来てくれるだろう。どうやって私の居場所が分かったのかは不思議だけど。

 セリーナさんに変身していたモンスターがいた場所を見おろしてみる。そこには、今まで見た事もない虹色の魔石が落ちていた。あのモンスターが魔石を落とすなら、何にでも染まれる白かと思ったけど、虹色ねえ。素材もよく分からないのが落ちていた。これは、回収しておこう。後で蜥蜴丸に渡せばいい。彼ならこれが何か分かるかもしれないし、分からなくても売ればいいのだ。きっと、レアモンスターだったのだろう。

 それから五分ほどしたら、壁がぶち壊され、その破壊された場所からアキが姿を現した。

「よかった、無事だった?」

「うん」

 流石にこの程度で「怖かった」と言いながら抱きつくのは無理だ。セリーナさんならするだろうか……? いや、あの女性ひとなら「遅い、もっと早く迎えに来ないか!!」って怒りそうだな。拳骨一つくらいはアキに落とすだろう。でも、傍から見ればきっと頬が緩んでいるんだろうな。

「セリーナさん、見かけなかった?」

「偽物なら見たけどね」

 ついでに言えば、倒しちゃったけど。姿かたちは再現出来ても、強さまでは模倣コピー出来なかったんだろうね。そうでなければあんなに簡単に私に倒されるわけがないもんね。

「アリスも見かけない、か……。こっちに向かっている間も見かけなかったな。電話にも出てくれないし……。セリーナさんなら少しくらいほったらかしにしてもモンスターに負けるなんて事はないだろうと思って、先にアリスに電話をかけた事に怒っているのかな?」

 そんな事はないと思うけど、でも、私の方に先に電話したって事が後でわかったら、きっと怒るだろうな、セリーナさんは。「君は私の騎士になるんじゃなかったのか!?」トカ「やっぱり幼馴染の方が大事なのか、私はキープか!?」トカ、わけの分からない事を言いそうだ。

「表面上は怒るかもしれないね」

 さっぱりしてそうで、何か心にため込みそうな感じもするけどね、セリーナさんは。

「ああ、早く合流して、誤解を解かないと……」

 誤解って言い方、酷いなあ。

「まあいいか、合流して怒られるかどうかはその場次第だ。謝りゃいいんだ。最悪土下座だ」

 セリーナさんがアキに土下座なんて強要するかなあ。ま、私だったらセリーナさんに土下座を強要するけどね。あの女性ひと、何処かノリのいいところがあるから、あっさり土下座決めるんだよね。騎士としてのプライドなど、その時発動される事はないんだ。

「アリスはセリーナさん以外も見なかったんだよね?」

「うん。きっと、一人ずつ何処かに飛ばされたんだと思うんだけど……」

 アキだってそう考えている筈だ。

「仕方ないや。皆が何処にいるか、気配探知してみる。ゴメン、アリス、暫く周囲の警戒をお願い」

 そう言って、アキは目を閉じた。集中しているようで、微動だにしない。

 やる事がないので、アキに言われた通り周囲の警戒を行う。数十秒が過ぎたあたりだろうか、もしかしたら、十二、三秒くらいだったかもしれない。

「見つけた、でも、蜥蜴丸か……。放置しようか?」

「見つけておいて放置した、となると後でガミガミ言われるよ、アキが。それでもいいと言うなら放置してもいいけど」

 蜥蜴丸は本当に怒った時は私やレティには怒らない。クリスにもだ。きっと、セリーナさんに対しても同じだろう。何故なら、彼は女尊男卑を地で行く男だからだ。女尊男卑の考え方を間違えている気がしないでもないけど。

「うへ、勘弁。仕方ない、蜥蜴丸との合流を先にしようかな。でも、セリーナさんは見つからなかったな。もっと、気配探知の範囲を広げるべきだったのかもしれないな」

 セリーナさんは見つからない、か。再度電話をかけてみたけど、出ない。

 仕方ないので、蜥蜴丸に電話をかけてみる。

『電話をかけてくるのが遅いぞ、小娘が』

 何故開口一番私を怒鳴りつけてくるのだろう?

「セリーナさん、見なかった?」

『いや、見ておらぬな。アリスよ、今貴様一人か?』

「アキと合流したところ。で、アキが気配探知で蜥蜴丸を見つけたのが、ついさっき」

『ほう、ではさっさとワガハイに合流したまえ。銀髪の探索はその後で十分だろう。何、銀髪は大丈夫。死にそうになったらきっと、未知なるパワーに目覚めるだろうよ』

 何その、ヒーロー然とした能力は? 確かにヒロインと言うよりは、ヒーローっぽいけどね、セリーナさんは。

「わかった、そこでじっとしていて。アキと一緒にそこまで行くよ」

『あまり待たせるなよ。何故ならワガハイは頭脳労働者。モンスター退治が本職ではないのだからねえ』

 冒険者の癖に。

 私が蜥蜴丸と電話をしている時、アキはセリーナさんに何度も電話をかけていた。

「アリスからの電話に出たくなかった、というワケではなかったみたいだ。つながらないや」

 いくらセリーナさんでも、こんな時に私からの電話に出たくないからと言って、出ない筈がないじゃない。いくらアキでも失礼だよ。

「まあいい、蜥蜴丸と合流して、これからの計画を立てよう。三人寄れば姦しいとか言うからな」

 色々と物凄く間違えている、そう思ったのは私だけだろうか?


 走り続ける事十分以上、ようやく蜥蜴丸と合流する事が出来た。

「遅いよ、貴様ら。ワガハイの大活躍をネチネチと聞かせてやろうか?」

「いや、そんな事はどうでもいい。セリーナさんを見つけるのが先だ。見当がつかないか?」

 アキは蜥蜴丸の大活躍など聞きたくもないらしい。セリーナさんの居場所が何処かをまず聞き出そうとしていた。

 まあ、私も蜥蜴丸の大活躍には何の興味もない。なので、アキに乗っかる事にした。

「そうね、まず合流が先。蜥蜴丸の大活躍なら、魔塔攻略が終わったらアキかセリーナさんがきっと正座をして聞いてくれるよ」

 アキが物凄い表情で私を睨みつけてくる。やめてよね、先に布石を置いておかないと、私まで付き合わされるじゃない。

「ふむ、ならばいいか。銀髪がいる場所は見当がついているが、簡単には辿り着ける場所ではなさそうだ。先にこの塔をどうにかするのが先かもしれないな」

「見当がついているのか!?」

 アキでなくとも、驚くポイントだね。

「うむ、我々の行動を監視しているモノがいる。銀髪と連絡がとれないと言うのなら、銀髪はそこに囚われているかもしれん。もっとも、命まではとられてはいないだろうがな」

「監視しているモノがいる……だと?」

 その時だった。私達の前の空間に変な枠が映しだされた。

『ご名答!! いやはや、やはり君が一番注意すべき存在のようだね、蜥蜴君!!』

 目が狂気ばしっている感じがする白衣の男。身長は見た感じ、セリーナさんより少し高いくらいだろうか?

『そう、君たちが探している姫君は、ここだよ!!』

 彼が指し示す先、壁に十字にはりつけられるようにしているセリーナさんがいた。

『クククク、この“天を穿つ魔塔(カ・ディンギル)”がどんなモノか、君たちは知っているかね?』

「ほう、教えて欲しいモノだね」

 蜥蜴丸は冷静だった。私は、アキを抑えているので精いっぱいだ。

 セリーナさんは、反応がない……? 意識がないのだろうか?

『この魔塔はね、私が星の海へ帰る為に造り上げたモノなのだよ。いわば、この塔自体が星の海へ帰る為の船なのだ。最初は塔自体を星の海へ辿り着かせたかったのだがね、無理だったのだよ。だからこそ、塔自体を船にする事にしたのだ』

「設計に問題があるのではないかね?」

『まあねえ。設計自体に問題があったよ。この塔を星の海へ浮かべる為には、莫大な魔力が必要だった』

「そんな事を聞きたいのではないのだがねえ」

 きっと、蜥蜴丸はこんな形状では星の海を飛べないのではないか、そう言いたかったのだろう。でも、白衣の男には通じなかったようだ。

『必要なのは、膨大な魔力。数多のモンスターを倒し、魔力を抽出したとしても、一割にも満たなかったよ。そして、私は待つ事にしたのだ。膨大な魔力を持ったモノが現れるのをな』

 待った? どのくらいだろう? 伝承にあるように数百年、数千年……? その間、地中にでも隠れていたのだろうか? まあ、どうでもいい事だけど。

『そして、見つけたよ。この銀髪の女だ。かの“ノスフェラトゥ”を倒す程の実力者だ。実際、魔力量も素晴らしい。あと数分で魔力抽出ダウンロードが終わる。そして、私は星の海へと帰るのだよ!!』

 狂気の笑みが続く。

「すぐそこに行ってやる!!」

『おっと、いいのかな? 正規の手段でなくこの船を止めるとなると、半径百キロメートルが消え去る事になるよ?』

 脅しか。それとも本当の事か。

魔力抽出ダウンロードが終わる前に正規の手段でここまで辿り着ければ止められるかもねえ。もっとも、あと数分で終わるがねえ。お前たちのお姫様も魔力抽出ダウンロードが始まってちょっと前まではお話出来ていたのにねえ。騎士たちの救出が遅いモノだから、意識を失ってしまったよ』

魔力抽出ダウンロードが終われば、銀髪はどうなるのかね?」

『物言わぬぬけがらになるだろうよ。そして、生涯をこの壁につながれたままで過ごすのだよ。もっとも、死ぬに死ねないかもしれんがなあ!! ハーッハッハ!!』

 アキの拳から血が滴り落ちる。セリーナさん……!!

『皆、この塔から脱出してくれ……、私が、私で、なくなって、しまうま、えに……』

 そんな時、聞こえてきたセリーナさんの弱弱しい声。

『頼むよ……』

『ほう、まだ意識を取り戻す事が出来たのかね? まあいい、姫君に免じて脱出口がある場所を教えてやろう。そこに脱出ポッドがある。それに乗って逃げたまえよ。尻尾を巻いてなあ!!』

 そして、表示される地図マップ。結構距離がある。

『あと、五分も経たずに魔力抽出ダウンロードが終わる。そして、星の海へと向かって動き出す。そこで、君たちとはオサラバだ。ここまで来てもいいが、無理してここまで来ると、この女もろともこの魔塔は半径百キロメートルを巻き込んで消滅するよ!!』

 そして、白衣の男とセリーナさんを映しだしていた枠が消えた。

 表示されている地点まで、走っても五分前後はかかる。

「行くぞ、アキヒコ!!」

「ああ、半径百キロメートルなど、どうでもいい。セリーナさんを……ッ!?」

 セリーナさんを助けに行こう、そう言いたかったのかもしれないけど、蜥蜴丸がアキをぶん殴っていた。

「そんな事をしても、銀髪が喜ぶと思うかね? ワガハイらに生きて欲しい、そう言っていたではないか。猫娘の手を借りよう。あいつならきっとどうにかしてくれる」

 蜥蜴丸の口調にも、悔しそうな声音が混じっている気がした。

「畜生……、畜生ッ!!」

 悔しげに、床を拳で叩きつけるアキ。

 何とかアキを立たせて、地図で表示されている部分まで走りだした。




 何か、忘れている気がするけど……、何だろう?






「クククク、見たかね。君の救出を諦めて帰っていくよ。笑いが止まらないね!!」

 白衣の男は笑いが止まらないようだ。

 アキヒコ、アリス、蜥蜴丸……、アレ、何か足りない気がするけど……?

 まあいい、早くこの魔塔から脱出してくれ。君たちが、皆が私を助けられなかったなど、気に病む必要はないんだ。

 そう、私が“私”でいられなくなる前に、この魔塔から脱出して欲しい。

 薄れゆく意識の中、皆が脱出ポッドに向けて走り出していくのを見た。

 ああ、大丈夫だ。これで、大丈夫。私が“私”でなくなっても、きっと大丈夫。

「“私”を忘れないでくれ、皆……。それで、きっと“私”は救われる……」

 最後の言葉は、白衣の男にも聞こえなかったに違いない。

 “私”の意識は、闇に塗り潰されていく。そして、“あのひと”が目覚めるだろう。

 “私”は、どうなる……?




魔力抽出ダウンロード完了ッ!! 遂に、私が星の海へと帰る時がやって来たッ!!」

 闇の中、白衣の男の声だけが響き渡った。










 魔力抽出ダウンロードが完了するほんの少し前だった。

 ゲーサンは、ただひたすらに歩いていた。

 自分が何処に向かっているのかすら分からなかった。仲間の誰とも合流出来なかった。

 そんな彼の前に、よく分からない機械群が現れた。もっとも、機械型のモンスターではない。単なる機械だ。

「???」

 科学者ではない彼にとって、これらの機械がいったい、何を意味するのかは分からなかった。しかし、なんとなくよくないモノだと感じ取っていた。

 そして、その時声が響き渡った。

魔力抽出ダウンロード完了ッ!! 遂に、私が星の海へと帰る時がやって来たッ!!』

 さて、どうしようか?

 ゲーサンから緊迫感とか、緊張感とかそういった感情は感じ取る事が出来なかった。






 塔が、“天を穿つ魔塔(カ・ディンギル)”が、遂に動き出す……!!


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