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セリーナ・ロックハートの大冒険  作者: 折れた羽根 しおれた花
第二章 寂しさは秋の色~apocalypse autumn~
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ダウンロード開始ッ!!

 巨人族オーガモンスターの棍棒を、無属性魔法を纏わせた日本刀で右から左へ受け流し、鳩尾みぞおちに左手で片手平突き一発。しまった、日本刀を持っていかれた。クソ、無駄に腹筋がありやがるじゃないか。あ、今の私は無手じゃないか。吹き飛ぶ巨人から視線を外し、体を回転させながら、背後からゴブ型モンスターが振り下ろしてきた斧を一センチメートルで見切り、ほんの少し体をずらす。斧を振り下ろしてきた両手にカウンター気味に無属性魔法を纏わせた右拳をぶち込む。ゴブは私の拳の衝撃を受け流す事は出来なかったようだ。左肘を破壊された上、右前腕も破壊され、地面をのたうちまわる。

「やれやれ、キリがないな」

 のたうちまわるゴブを蹴り飛ばし、向かってくるモンスターにぶつける。と、同時に苦無を投げつける。もちろん、ただの苦無ではない。火属性魔法を纏わせている苦無だ。どういう原理かは私もよく分からないが(出来るのだから仕方あるまい)、投げつけた苦無がゴブに突き刺さると同時に大爆発を起こした。彼と一緒に数体のモンスターが消滅していく。

 その時、着信音が鳴り響いた。

 誰かから電話がかかって来たらしい。ポケットの中から、携帯電話をとりだす。誰からだ? アリスのようだ。

「もしも……」

 耳に当てようとした瞬間、飛来する矢が私の左手から携帯電話を落下させた。その後、混戦となり携帯電話は何処かへ消えた。まあ、蜥蜴丸が作った携帯電話だ。多少の衝撃では壊れないだろう。

 しかし、どうでもいいけど、何で「もしもし」って言わないといけないんだろう? アキヒコにやたら「様式美ですから」と力説され、とりあえず言おうとしてしまった。耳に当てる前に。おかげで携帯電話を落としてしまったが。

 やれやれだ。しかし、混戦というのはイイね。狙いを定める必要がない。もちろん、回避や防御はしっかり行わないといけないがね。

「乱れ撃ち」

 苦無を四方八方に投げつけ、爆発させる。ちなみに、苦無を使った攻撃方法はセツナに学んだものだ。時代劇がどうたら、と言っていた気がするが、どうだったかな? 苦無自体は“スペースリザー堂”に売ってあった。あそこは世界観が違うから、この世界では見た事もないような武器が沢山売ってあったのだ。ま、経営者自体が世界観が違うのだから、世界観の違う武器防具がいっぱい売ってあったとしても、何の不思議もないがな。

「素材と魔石、どうするかなあ」

 大量の素材と魔石を前に、ひとり言。しかし、かき集めてもしょうがない。ノーデンス王国王都でも素材と魔石はありふれているだろうからな、今は。レアモンスターも今のところ出ていない。

「しかし、一人は寂しいな……」

 近頃、自分の周りが騒がしかったからだろうか? 一人で任務にあたっていた頃には感じなかった寂しさが私の心に突き刺さる。

「全部ゲーサンが悪いんだ……」

 私の孤独を作った元凶を思い出す。そう、今大量のモンスターを前に一人で大暴れをしないといけない原因を作った蜥蜴を。

 話は少し前に戻る。




「なかなか終わりが見えないな」

 いったいどのくらいの高さまで来ただろうか? 

 各フロアーの高さが三メートルだったり、五メートルだったりと高さがバラバラだった。もう、十フロアーを軽く超えたが、実際には五十メートルも登っていないという事だろう。

「日本であったら違法建築だな」

「一級建築士も真っ青だ。きっと、耐震偽装しまくりだな」

 蜥蜴丸にアキヒコ、君たちはいったい何を言っているんだ?

「気にしたら負けですよ」

 何気に酷い事を言うね、アリスは。

 そして、問題のフロアーにやって来た。

「モンスターの気配はなし、か……」

 途中、何度かモンスターがひしめいているフロアーも通って来たので、モンスターには警戒していたのだが、このフロアーにはモンスターに関しては気配すら感じられない。もちろん、気配だけではなく存在そのものも感じられないが。

「何で、分かるんですか?」

「なんとなくだよ」

 そうとしか、答えようがないんだ。訝しげな眼で見ないでよ、アリス。

 フロアーの中央付近に、何か出ていた。そして、その上には球体が浮かんでいる。それ以外に、何もないフロアーだった。

「アキヒコ、アリス、どう思う?」

「いやいや、罠でしょ、アレ?」

「うかつに触ったらダメですよ、セリーナさん」

「何でアリスは私に対して注意をするの? おかしくない?」

 部屋の向こう側はどう見ても出口です、というぽっかりと穴を開けている場所があった。ただ、見えない壁があり、そこに進む事は出来なかった。

 突起物には何か字のようなモノが彫られていた。全く読めない。

「日本語か、アキヒコ?」

「セリーナさんの中では、読めない字イコール日本語になっていないでしょうね? 言っときますけど、僕は小学校ですら出ていないんですよ? もしこれが日本語だとしても難しい字だったら読めないですよ」

 じゃあ、何でセツナが宮崎出身だって分かったんだよ?

「蜥蜴丸に鍛えられましたからね」

 ふうん、まあいいか。

「とりあえず、読んでみてくれ」

「日本語ではないと思います」

「つまり?」

「僕も読めません」

「期待させるだけさせやがって」

「ヒドッ」

 さて、アキヒコでダメとなると……

「蜥蜴丸、さくっとやってくれ」

「ウホッ、真打登場しちゃうよ。しかし、アレだな。アキヒコの次扱いされているという時点でワガハイの心はハートブレイク」

「さっさとしろよ。遅いようだとお前に心臓破壊ハートブレイクショットかますぞ」

「ウホッ、扱いの差にワガハイの涙腺は崩壊寸前。理性も崩壊寸前。ところで、我輩の心臓が何処にあるのか知っているのかね?」

 ……胸部じゃないのか? 違うところにあったとしても、この茶色の蜥蜴なら納得してしまいそうだな。

「さて、では見てみるとしようかね……っておい、ゲーサン、何を!?」

 私たちがガタガタ喋っていたのが気にくわなかったのか、待ち時間が長い事に怒っているのかは分からなかったが、ゲーサンは右腕を球体に叩きつけていた。

 ゲーサンが右腕を球体に叩きつけたのがきっかけになっのかは定かではないが、その瞬間、まばゆい光が球体から発せられた。

 邪悪なる光ではなかったからか、私は油断していた。目を覆うだけにとどめてしまったのだ。




 そして、気付いた時にはモンスターに取り囲まれていた。

 その後は混戦状態だ。

「まったく、ゲーサンの奴め、今度会ったら説教だ」

 あの蜥蜴に説教など効果があるかどうかは分からないが、な。

 数十、否、百を超えるくらいモンスターを屠っても、減る感じが一切しない。どうやら、このフロアーにはモンスターが何処かから補充されているようだ。

「付き合いきれんな」

 モンスターがどんどん補充されていくというのなら、部屋を壊せばいいのだ。周りからだいぶモンスターが減った頃、ようやく壁際まで来て巨人に突き刺さった日本刀を回収する事が出来た。巨人も素材と魔石に変換されていたが、やはりレアモンスターではなかった。回収する意味もない、か。

 モンスターをもう少し減らしてから、何処か壊せそうな場所を探す、か。携帯電話は見つからない。

「!?」

 破壊出来る場所を探そうと考えたその時、急に体がグラリと傾いた。

 右手と右膝を地につけてしまう。何だ、何が起こった? この程度では体力が尽きるなどという事は無い筈だ。

「流石はセリーナ・ロックハート。いやはや、すぐに倒れてくれると思っていたのだがねえ」

 近付いてくるは、輪郭のおぼろげな白衣の男。輪郭がおぼろげ?

「平衡感覚をおかしくさせるガスを充満させた中でここまで動けるとはねえ……、しかも、魔力をほとんど失っていない。“贄”としては、最高だ」

 私を見下すその眼、気に入らないな。

「さて、私と一緒に来てもらおうかなッ!?」

 私が斬りかかるとは思ってもいなかったのだろう。最後には驚きの声をあげた。

 しかし、日本刀は何も斬っていない。手応えが一切ない。

「幻影……か?」

 白衣の男は斬りかかられるとは思っていなかったのか、本来であれば斬られたであろう場所を手で撫でていた。

「まさか、まだ動けるとはな。まあいい、もう少しいたぶればいいだけの事だ」

 白衣の男が手を振り下ろした。そして、モンスターどもが動き出した。

「貴様がモンスターを……?」

 操っているのか、そう問いただす事は出来なかった。モンスターの波が私へと向かってきたからだ。

 流石に平衡感覚がおかしくなった状態では如何ともし難かった。それからも三十体以上モンスターを倒したのだが、そこまでだった。巨人族オーガモンスターの拳の一撃を鳩尾にくらい、私の意識は闇にのまれたのだった。






「クククク、遂に、遂に手に入れたぞ、“贄”を。セリーナ・ロックハートを!!」

 モンスターが連れて来た銀髪の女が今、私の目の前に横たわっている。

「これで、私は星の海へと帰る事が出来る。後は、この女の膨大な魔力を、人間離れしている魔力を抽出すればいいだけの事だ!!」

 モンスターどもに命じて、銀髪の女を壁の装置につなぐ。両手と両足を十字にはりつけるかのようにして。頭と両手、両足には例え巨人族数体がかりでも破壊する事が出来ない枷をつける。

「さあ、これでいい。では、これから魔力抽出ダウンロードを開始する。ククク、この女の魔力なら、数十分で星の海へ帰還するためのコアを起動させる為の魔力が直ぐに集まるだろうよ!!」

 嬉しいねえ、嬉しくて高笑いが止まらんよ!!

「う……?」

 おや、もう目覚めてしまったのかね? 眠ったままでいれば、地獄を見ずに済んだのかもしれないのにな。まあいい、私を星の海へと帰してくれる女だ。少しくらい、会話を楽しんでもいいな。

「お目覚めかな、お嬢様?」






「お目覚めかな、お嬢様?」

 からかうような声に目が覚めた。とは言ってもまだ、視界がぼやけてはいるが。

「貴様……!?」

 体に力を込めてみたが、ビクともしなかった。

「無駄だよ、いくら君でもそれは壊せない。そのように設計しているからねえ」

 目の前には、いや、いくらか下に白衣の男。どうやら私の頭は二メートルを超える位置にあるようだ。

「さあ、今から君の体内から魔力抽出ダウンロードを始める。いつまで正気を保っていられるのかな?」

 正気を、だと……?

 そのすぐ後、体に異変を感じた。まるで、力が少しずつ抜けていくような……。

「ハハハ、一度それに繋いでしまえば、君でも抜け出すのは無理だよ。もちろん、助けも来ないだろうがね!!」

 狂気。

 一言で表すなら、男の笑みは狂気だった。

 だが、男の言うとおりだった。装置はビクともせず、私から魔力が抜け出ていくだけだった。

「いやはや、後は“コア”への魔力アップロードが終わるまで、君の仲間たちの様子でも見ながら待つとするかね。彼らがどれだけ頑張っても、ここには永遠に辿り着けないがね」

 男の高笑いだけが響き渡っていく。

 私は、夏の終わりに続いて何も出来ないのか……?


 そして、男の前に映像が現れ出した。

「精神的支柱を失った彼らがどう出るかね……? クククク、面白い映像が見れそうだよ!!」

 皆、無事でいてくれ……!!




 しかし、この白衣の男、私が皆の精神的支柱だと本気で思っているのだろうか?

 色々大丈夫か、この男……?

 魔力を抽出したいのなら、アキヒコを狙えば良かったのにな。



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