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セリーナ・ロックハートの大冒険  作者: 折れた羽根 しおれた花
第二章 寂しさは秋の色~apocalypse autumn~
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魔道バズーカ、発射!!

 天を穿つ魔塔(カ・ディンギル)――。

 かつて、この星に降り立った違う星の住人がこの星に馴染めず、星の海へ戻る為に作った魔塔である。天に届きそうな魔塔を作り、その頂上部に星の海を渡る船の発着場を作ったとも、巨大な塔自体が宇宙空間に届くように作られた、とも言われているそうだ。

「もっとも、伝承に過ぎない。この王都からそこまで離れていない地方にそれは建造されたと伝えられていた」

 ノーデンス王国国王の説明は淀みなく行われた。

「だが、今まで何人もの冒険者や考古学者と呼ばれた人間たちがこの魔塔を調査したのだがね、誰一人その痕跡すら見つける事は出来なかったとも言われているのだよ」

 痕跡一つ見つける事は出来なかった? あれ程巨大な魔塔が僅か数分やそこらで造られた、なんてことは考えにくいが……?

「かつて、実際に天まで届きそうな程の高さまで造られた、と伝承にはある。だが、“神”の怒りに触れ、あの魔塔は崩れ落ちたとも、一定の高さ以上が消し飛んだとも言われている。ここから見る限り、少なくとも前者はなさそうだがな」

 私たちは今、王城の謁見室近くのバルコニーから魔塔を眺めていた。確かに、ここからでは上の方はよく分からない。少なくとも、“神”の怒りに触れ、崩れ落ちたとは考えにくいな。

「しかし、あの魔塔からモンスターが延々吐き出されれる理由は分からぬな。伝承の類にはあの魔塔が実際、先程話した理由以外の事は伝えられていないのだよ」

 伝承でも理由は不明、か。

「では、どうするかね? 延々吐き出されるモンスターどもを相手にして、この王都を守り続けるかね? それとも、援軍でも呼んで籠城を続けるかね? 相手は知性があるかどうかすら分からぬモンスターどもだが」

 おおう、科学者様は自分が知性に溢れていると考えていらっしゃる。

「ならば聞こう。何かいい解決方法があるかね?」

 国王陛下、何試すような感じで蜥蜴丸に問いかけちゃってるの? 

「簡単な話よ。少数精鋭であの魔塔を攻略すればいいだけの話ではないか。あの魔塔の中の何処かに、モンスターどもを延々吐き出させる装置なりなんなりあるに違いない」

 おいおい、断言しちゃったよ、この茶色の蜥蜴。

「うむ、その事なら私も考えたのだがね、残念ながらこの国にあの魔塔を攻略するだけの実力を持った人間はいないのだよ。そこのセツナくらいだろうが、セツナにはこの王都の防衛にあたってもらいたいと考えている」

「……私が、あの魔塔の攻略が出来るだけの人材だと?」

 訝しげに国王に質問するセツナ。彼女としては国王陛下に認められているという実感を感じたことがなかったのだろうな。

「ああ、この国に在籍する騎士として、君が一番の実力者だ。他の騎士たちからもそう報告を受けているし、私もそう考えている。だが、一人で魔塔攻略に行ってもらうなど、とても考えられん。他に、君と互角と考えてもいい実力者はいない。いたとしても今この王都にはいない。早馬を飛ばして近隣の村や町からも騎士や冒険者を呼んでいるが、王都を取り巻くモンスターの数を見て二の足を踏むことになるだろう。ならば、君に頼るしかないんだ」

 そして、その場で頭を下げる国王。

「頼むセツナ・ロウラン。君がこの国の事を嫌っているかもしれないという事は重々承知しているつもりだ。だが、それでも頼む。この国を、民を守ってはくれないだろうか?」

 頭を下げ続ける国王。頭を下げ続ける国王を見るセツナの胸中は如何なるものだろう?

 やがて、溜息一つ。

「頭を上げてください、国王陛下。分かりました、王都防衛の任務に就かせてもらいます。ですが、二つほど条件があります。一つ、私は独自に動きます。もう一つは、魔塔攻略の件ですが」

 話の途中で頭をあげた国王。その顔には、安堵の表情。

「そうか、受けてくれるか。済まない。助かる。娘は、良き友を持ったな」

 セツナの隣に立つマーガレットを見るその眼は、慈愛に満ちていた気がした。何だろう、私を見る団長の目に近い気がするな。はて、私は団長にどう思われているのだろうか? ジンはあの人が私の事を家族同然に考えていると、夏の終わりに言っていたが。

「魔塔攻略の件に関しては依頼したいメンバーがいる。この場にな」

「陛下もですか。私も魔塔攻略に関してはお願いしたいメンバーがいまして」

 そして、国王とセツナは揃って私たちを見た。なんだか、凄くイイ笑顔で。




「やれやれ、やっぱりこうして騒動に巻き込まれたかよ。銀髪と行動を共にすると、ロクな事がないな」

「おいおい、それを言うなら蜥蜴丸、お前と出会ってから私はトラブルに巻き込まれっぱなしだぞ? 今まで一人で任務を完了させ続けたのだから、間違いない。お前は疫病神なんじゃないだろうな?」

 城門への道を走りながら、お互い軽口を叩く。

「何でそんなに呑気にしていられるんだろう? 僕はまだ筋肉痛が完治していないんですがね、いてっ」

 筋肉痛が完治していないという割には、私達と変わらないスピードで走り続けている君には頭が下がるよ、アキヒコ。

「しかし、夏の終わりには“死者の都”ブリュージュ、そして今度は“天を穿つ魔塔(カ・ディンギル)”ですか。私がアキや蜥蜴丸たちと出会ってからそこまで大事件は起こらなかったんですが。やはり、セリーナさんが疫病神とか、トラブルを引き寄せる体質の持ち主なんじゃないんですか?」

「嘘だと言ってよ、アリス……」

 私が疫病神であるトカ、トラブルを招きよせる体質であるトカ、断じて認めない!!

「本当にのんきですね。いつかその頭の中を解剖して覗いてみたいものです」

 おいおい、マッドサイエンティストみたいな物言いをしないでくれないか、レティ?

 やがて、城門の前に辿り着いた。呼吸を整える。

「しかし、任せていいのか? 私もついていった方が……」

 言いかけたアズにゃんの唇に右手人差し指をあてて、黙らせる。

「アズにゃんの冒険者としての腕は、買っているよ。だからこそ、ここでセツナやマーガレットと共に、この王都を守ってもらいたいんだ」

 おかしい、私はアズにゃんの実力を認めているからこそここに残って防衛にあたって欲しいと言っているだけなのに、何故顔を赤らめるんだ? 怒っているのかな?

「せ、セリーナがそう言うなら……。だけど、約束してくれ、必ず私の居る場所(ここ)に戻ってくると、約束してくれ」

 あれ? 何で私の右手に左手を絡めてくるの? しかも、なんか熱を帯びている気がするんだけど?

「う、うん、必ず戻ってくるよ、王都ここに」

 顔をぱあっと輝かせて、私のおでこに軽くおでこをあてて、離れるアズにゃん。

「泥棒猫めが……」

 何を言っているの、アリス?

「しかし、本当にこのメンバーだけでいいのか? 騎士団の人間にお願いして何人か同行してもらっても……」

 セツナが不安そうな声を出した。確実性を増す為には、確かにもう少し人数がいた方がいいかもしれない。

 実際、“天を穿つ魔塔(カ・ディンギル)”攻略にあたるメンバーは、私、アキヒコ、アリス、蜥蜴丸、ゲーサンの五人だ。ジンには王都防衛にあたってもらう事にした。レティはまだ戦闘出来る程の腕前には達していないとの判断で、王都防衛(と言っても、後方待機や怪我人の治療など)任務に就いてもらう事にした。

 セツナやマーガレットにはもちろん、王都防衛に就いてもらう。二人ともミスカトニック騎士養成校卒業生だからな。

「あ、セツナさん、クリスをお願いします。貴女の傍で待機させてください」

 そう言って、私の頭の上からクリスを持ち上げるアキヒコ。あ、コラ、クリスは連れて行きたいんだぞ、私の癒しなんだぞ?

「あ、ああ、構わないが……。セリーナが凄く残念そうにしているが、いいのか?」

 セツナの腕にすっぽりおさまって、気持ちよさそうなクリス。浮気者め!!

 私の放つ嫉妬心にビクリとしたのか、私を見上げるクリス。しかし、それに敵意がないと判断したのか、すぐにセツナの腕の中で丸くなった。

「もしかしたら、リリスが来てくれるかもしれません。彼女さえ来てくれれば、心配はいりません。その時はクリスを目印に来てくれるって話でしたからね。セツナさんの近くに居れば、この王都に来てくれるでしょう」

 そう言えば、リリスは御前試合が始まっても来なかったな、こちらの世界に。調査にはそんなに時間がかかったのだろうか?

「そうか、じゃあ、預かっておく」

「おい、バカ話をやっている場合じゃなくなったぞ。空を飛べる奴が近付いてきている」

 それまで私たちがバカ話をしているのを黙ってみていたジンが私達に声をかけた。

 見上げれば確かに、空中飛行が可能なモンスターが城壁を越えて王都に突っ込んで来ようとしているのが見えた。

「ゲーサン!!」

「げっげげ」

 ゲーサンが組んだ両手に足をかけ、城壁の上まで飛び上がる。途中で急降下してきたモンスターを一匹(一羽?)、日本刀で斬りおとす。城壁に飛び移ると同時に、アイテムボックスの中から弓をとりだした。ミスリル銀とかいう金属だか鉱石だかで作られた弓らしいが、そんな事はどうでもいい。

 弦を引き、限界まで引かれたそれから手を離す。私の魔力で作られた矢が、空中にいる敵と、地上にいる敵を数体滅ぼした。魔石と素材へと変化する。

「相変わらず凄い事をするな、アイツは」

「だからこそ、魔塔攻略を任せられるんだ」

 褒めるなよ、恥ずかしいな。

 しかし、凄い光景だな。戦争を知らない私は大軍を見た事がない。王都から魔塔までの間をびっしりモンスターが蠢いている。今滅ぼしたのでさえ、一パーセントにも満たないだろう。

 魔力矢で、城壁、いや、城門の近くまで来ていたモンスターを滅ぼしていく。

「城門を開けろ!! 打って出る!! 私たちが出た後はすぐに城門を閉めるんだ、いいな!?」

「了解であります」

 城壁から飛び降りると同時に、城門を管理する兵士に声をかけた。そんなにビビる事ないだろ? 傷付くじゃないか。

 城門が開けられると同時に雪崩れ込もうとしたモンスターたちだったが、知性を感じない彼らでさえ、二の足を踏んだように見えた。

 私、ゲーサン、アキヒコ(筋肉痛)、アリス、セツナ、マーガレット、ジン、アズにゃんが勢ぞろいしているのだ。そう簡単に突破できると思うなよ?

 暫くは城壁近くで小競り合いが続いたが、城門近くのモンスターたちを消滅させたのを確認して、セツナ、マーガレット、ジン、アズにゃんが城壁の中へと戻っていった。

 閉じられる城門。

「やれやれ、これで簡単に王都の中に逃げる事は出来なくなりましたね」

 ぼやくアリスだが、その声に焦燥感は感じられない。

「ま、何とかなるでしょ。さあ、蜥蜴丸、今の乱戦で活躍しなかったお前は、どうする? 活躍すれば英雄ヒーロー間違いなしだぜ?」

 からかうように蜥蜴丸に声をかけるアキヒコ。

「クカカカ、だから貴様はエロガッパなのだよ」

「僕をエロガッパって呼ぶんじゃない!!」

 おいおい、少しは慌てる素振りくらい見せてもいいんじゃないのか、お前たち?

「クカカカ、完成。ワガハイが研究に研究を重ね、失敗に次ぐ失敗を乗り越えた至高の逸品が今、ここに爆現。名付けて“魔道バズーカ”」

 よく分からないが、タブレットPCで検索したバズーカに近い形の兵器らしいものがそこにはあった。

「説明しよう。“魔道バズーカ”とは、魔道士の魔力を元にして、一のエネルギーを百に変化させて弾丸として放つバズーカである。もっとも、どんな弾丸が出るかは、魔力を供給した魔道士によって変化するという素晴らしさ。クカカカ、ワガハイの才能に骨まで震えるがいい」

 そして、その“魔道バズーカ”を魔塔のある方向に向け、肩に掲げて構える蜥蜴丸。

「おい、銀髪。その手のマークが描かれている場所に手を置いてくれ。貴様の魔力、少しくらい頂いても構わないだろう?」

 手のマーク? お、あった。

「軽く乗せればいいのか?」

「ふむ、軽くでいい。押し付けると必要以上の魔力が流れ込み、バズーカだけでなくワガハイもあの世に逝きかねん。軽くだぞ?」

 なんだか思いっきり押しつけたくなるのだが……。まあいい、ここは軽く手を乗せてみよう。

「ほう、何たる上質な魔力よ」

 なんだか満足げな蜥蜴丸さん。

「では、発射!!」

 蜥蜴丸の声が響くと同時にひかれる引き金。

 そして、バズーカの砲口から放たれた、直径数メートルにならんとする蒼白き、雷光を纏った光線。

 その光線は軌道上にいたモンスターを焼き尽くしたが、魔塔の破壊までは出来なかったようだ。

「フム、流石のワガハイも想定外の威力である事よ」

 少し冷や汗混じりの蜥蜴丸。

「だが、道は開けた。馬車で魔塔まで行きましょう」

 アイテムボックスから馬車を引きずりだしてきたアキヒコ。馬、本当に数日間もどうやって暮らしていたんだろう? 凄い清潔なんだけど。まあ、気にしたら負けか。

 筋肉痛が完治していないアキヒコを馬車の中に押し込み、御者席に私、ゲーサン。馬車の上に迎撃役として蜥蜴丸。アキヒコの世話役でアリスを馬車の中に押し込み、私たちは魔塔へと馬車を走らせた。






 城門が閉じられて暫く後、轟音が響き渡った。

 城壁に登り確認すると、蜥蜴丸が変てこな兵器で、モンスターたちを駆逐していた。

「凄いな、あいつら」

「モンスターたちが固まって動こうとしないよ」

 隣に立つジンとマーガレットも驚いているようだ。アズにゃんは開いた口が塞がらないようだった。

「無事帰って来るかな、あいつら」

「さっさと帰って来なかったら、優勝賞金も報奨金もなくなるからな。戻ってくるさ」

 私と国王陛下が魔塔攻略にあたって欲しいと言った時に出した条件が、御前試合優勝賞金といくらかの報奨金だったからな。

 王都が滅びでもしたら、多大な被害が出たら、貰える金はなくなるか、かなり低くなるかだ。だからこそ、すぐに戻ってくるんじゃないかな?

「さあ、私達もボーっとせずに、ここを死守するぞ!!」

 私の声に頷く二人。おい、アズにゃん、早くこっちに戻ってこい!!


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