表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セリーナ・ロックハートの大冒険  作者: 折れた羽根 しおれた花
第二章 寂しさは秋の色~apocalypse autumn~
43/69

御前試合予選です。

「昨日の事は、出来れば記憶から消去してくれ」

「無理に決まってんだろ。アキヒコ少年に見られなかっただけマシだと思え」

 予選組み合わせの為に出場申し込みをした場所までジンと一緒に歩いている。昨日の事が脳裏から消えない。なのでアキヒコと一緒に歩くのははっきり言って恥ずかしい。

 かと言って女性陣で歩くのも嫌だ。昨日の事があってから、何故かセツナとアリスの二人がおかしい。私を見る目が変わっていると言ってもいい。

 あの後、ジンの説教(二時間近くかかった)から解放された後のアリスとセツナのやりとりを思い出すだけで背筋が凍る思いがする。




「セツナさん、何故私たちにマーガレットさんを追い出してセリーナさんと二人で残ったのですか?」

「セリーナのコスプレ姿が思った以上に可愛かったので、性的に頂きたくなりました」

 何故か敬語で対応しだすセツナ。

「ダメです。セリーナさんを性的に頂くのは私です。やはりあの時、セツナさんにマーガレットさんをジンさんの部屋に連れて行ってもらうべきでした。セツナさんが妹のように思っているセリーナさんに手を出すとは思っていなかったので。戻って来た時にはベッドの方から変な音が聞こえてきたので、部屋に強引に押し入ろうとしたところをレティにひきとめられたので引き下がりましたが。ふふ、未遂ですか。私にもまだチャンスがあります」

「セリーナを簡単には渡さないよ。なんてったって付き合いの長さも濃さも私の方が上なんだからね」

「む……、確かに付き合いの長さだけは負けを認めざるを得ません。でも、濃さなら私の方が上ですよ。なんて言ったって、私を抱き枕にして眠る事があったくらいですから」

 いや、確かにアリスを抱き枕にした事は何度かあるけれど。

「ふふふ、アリスは抱き枕にされただけだろう? 学生時代、何度もセリーナを抱き枕にした私に勝てると思っているのかな?」

 まあ、私を抱き枕にした事がある人間はセツナだけではないけれど。異性を抱き枕にした事もないし、異性に抱き枕にされた事もないよ。

「ふふ、なら、私もセリーナを性的に頂いてもいいのかな? だって、私もセリーナを抱き枕にした事は何度もあるからね」

「マーガレットさんは黙っていてください」

「マーガレットはジンに抱き枕にしてもらえよ。セリーナを今後抱き枕にする事は許さん。アレは私専用の抱き枕にしてやろう」

「はい、すみません。もう、口をはさみません」

 セツナとマーガレットの二人の剣幕に気圧されたのか、謝りながら黙り込むマーガレット。

「やれやれですね。バカばっかりです」

 レティの溜息が部屋中に染み渡った。

 そして、私は二人が言い争っている間、足の痺れでベッドの上でのたうちまわっていた。毛布をかぶるのはもちろん忘れなかった。クリス、私を心配そうな目で見てくれるお前だけが私の癒しだよ。あ、こら、私のふくらはぎに乗るんじゃない。こういう時だけ体重を感じさせるな!!




「しかし、ジンはマーガレットのあの姿を見て、何とも思わなかったのか?」

 路上を歩く間、とりあえず気になった事を聞いてみた。同性の私ですら怪しい感覚に襲われたのだ。セツナがマーガレットの姿ではなく私の方に惹きつけられた理由は分からないが。

「そう、だな、正直に言うぞ。あいつらに言うんじゃないぞ?」

「それは、言いふらして欲しいという前振りか?」

「お前、学生時代からそんなキャラだったか? 何か、俺の記憶の中のお前よりかなり弾けている気がするが」

 私としては学生時代とそれ程変わっていないつもりだが……、変わっているとしたら三番隊の変態メンバーに囲まれながら仕事をしているからだろう。あいつらと渡り合うには普通の性格ではダメだからだ。変わらざるを得ないだろう。

「まあ、いいか。お前に念押ししても無駄な気がする」

 それは、話を尾ひれをつけて広めろ、という事だろうか? ま、私はそんな事はしないがね。

「いやな、アイツがローブを脱ぎ捨てた瞬間、俺の意識は一瞬飛んだよ。もう、あいつに視線をクギヅケにされちまった。もう少しで性的に襲いかかるところだった」

 おいおい。

「じゃあ、なんでそこで襲いかからなかったんだ? 確か、マーガレットの事悪く言った事なんか一度もなかった気がするんだが」

 まあ、それ以前にジンが他の女の事も悪く言った事など記憶にないのだが。

「そりゃ、俺はアイツの事は好ましく思っているからな。人間として、同級生としては大好きだよ。だがなあ、ここで簡単に手を出すのは、俺もプライドが許さねえ。そう簡単に人間の女に手を出すわけにはいかない。まだ、人外娘を見つけるという、俺のロマンを諦めるわけにはいかないんだよ」

「捨てちまえよ、そんな糞みたいなプライド。ロマンで飯を食えたら誰一人として苦労はしないさ」

 苦笑しながら私を見つめるジン。

「お前も毒舌になって来たなあ。ま、確かにお前の言う通りではあるんだけどな。あの程度であいつの告白を受け入れるくらいなら、学生時代に受け入れているよ」

 それもそうか。

「お前もどうだ、あのカッコでアキヒコ少年に迫ってみたら。あの年でスケベ本に簡単に手を出すくらいだ。お前があのカッコで目の前に現れたら簡単に理性を失くすだろうよ」

 なんだか、容易に想像出来るなあ。余程大事な事でもない限り、あのカッコはしないでおこう。もちろん、女性陣の前でも。レティだけは大丈夫……かなあ?




 ジンとそれ以外にも色々話をしながら、予選組み合わせの時間まで待った。

 流石に昨日の事があった為、セツナとアリスと同じ空間に長い時間一緒に居たくはなかった。だからこそ、早く宿屋を出たのだ。宿屋を出たところでジンとばったり会ったので一緒にここまで来たのだが……。

「早く来過ぎた、か」

「そうだな」

 午前十時。予選組み合わせまであと一時間ある。

「どうでもいいが、お前って本当に気付かないの? 今日もお前の頭の上、クリスがいるんだけど」

 今日の私の格好は騎士団で使っている訓練着だ。黒の上下。もちろん、肌の露出などある筈もない。そして、その上に魔道士がよく好んで着るごく一般的なローブを羽織っている。流石に騎士服では目立つからな。国外という事もあり、銀髪は変えないままでいるのだが。

「もう、頭の上にクリスがいつの間にかいる事は諦めた」

 頭の上や肩の上にクリスがいる時はほぼ体重を感じさせない為、気付かない事が多い。もちろん、消えている(もしくは感じさせない)のは体重だけの為、他の人間からはバレバレなのだが。

 暫くしたら、メンバー達が集まって来た。

「酷いじゃないか、セリーナ。デート気分を楽しもうと思ったのに」

「セリーナさん。今度は私と一緒に王都をデートしましょう。もちろん、セリーナさんの衣装はアレです」

 セツナとアリスは本当に恐ろしい事を言うな。

「セリーナさんと予選であたらなければいいんですが。僕のカッコいいところをセリーナさんに見せつける為にも」

「クカカカ、エロガッパよ、ワガハイが貴様とあたったら木っ端微塵にしてやろう。楽しみにしておれ」

「木っ端微塵?」

「げげ、げっげ、げげ。げげ、げっげげげ、げげっげ、げげ」

「レムリア無双に次ぎ、ノーデンス無双の称号を手に入れるのはこの俺よ。貴様如き、一刀のもとに斬り伏せてくれよう。これから俺の成り上がり伝説に乞うご期待!! 括目せよ、ノーデンス無双に!! そう申しております、ゲーサンが」

「訳が長すぎるよ、蜥蜴丸……」

 同意せざるを得ないな。




 予選組み合わせが終わった。予選はAからPブロックまでの十六ブロック。ブロックごとにバトルロイヤルで一人の勝者を決める方式。

 Aにアキヒコ、Bに蜥蜴丸、Cにゲーサン。Gにジン。Iに私。Nにアリス。仲間の組み分けはこうなった。いい具合にばらけたな。何故か、私の頭の上のクリスから魔力の流れが感じられたが、気にしない事にしよう。

 予選は明日行われるとの事。今日は一日、しっかりと疲れをとろう。出来るかな?






 翌日になった。

 言われた時間に間に合わせて会場に着いた。

「セリーナさん、僕の活躍見てくれました?」

「いや、今来たばっかりだ。だいたい、見る必要もない。アキヒコの事だ。予選くらい勝ち抜いただろう?」

 私は君の事を信頼しているぞ、アキヒコ。

「僕の勇姿は……」

 何を項垂れているんだ、アキヒコは?

 ちなみに、蜥蜴丸は反則負けしたらしい。スペース光線銃とやらで、冒険者の頭髪を悉く無きモノにしたらしい。無きモノ……というのは、頭髪ゼロという意味だ。

 ゲーサンとジンは危なげなく勝ち上がったらしい。

 なら、次は私の番だな。




 予選会の会場は、本戦の会場と同一の場所で行われるとの事。

 演武台のような場所がある。縦横二十数メートルはあろうかといわんばかりの正方形の会場だ。地上一メートルくらいの高さにある。おそらくは、騎士団の訓練などにも使われるのだろう。

 観客も入っている。これは、流石に下手なところは見せられないな。

「クリスは預かりますよ、セリーナさん」

 どうやら、今日も私の頭の上にいたらしい。アキヒコにクリスを手渡してから会場に向かった。


 試合場ではルール説明が行われていた。

 武器に関しては、殺傷力を抑えた魔法をかけるとの事。回復魔法が使える魔道士も近くに控えている。ある程度の怪我までなら何とか出来るそうだ。

 殺してはダメ。相手を殺した段階で本選出場は不可能となる。殺傷能力の高い魔法も禁止。

 会場の事はリングと呼ぶらしい。リングアウトは、十秒まで。

 降参、意識喪失もしくはレフェリーが試合続行不可能と認めた場合は、試合終了。

 このうちのほとんどは本戦でも適用されるとの事。


 色々と説明を受けている間、私はリングの端っこギリギリまで後退していた。バトルロイヤル方式なら、リングの真ん中にいるのは危険だ。

 念の為、準備は怠っていない。

 一瞬で決めてやろう。予選で疲れるなんて御免だね。

「試合開始!!」

 レフェリーの号令に従い、総勢約三十人が動き出した。こんなに人数がいたのか。

「まずは、あの銀髪を倒す!!」

「全員でな!!」

 おや、いつの間に結託したんだ、こいつら?

「銀髪でセリーナ・ロックハートなんて、一対一で倒せる相手じゃねえ!!」

「全員でなら、あるいは!!」

 何人か見覚えあるな。帝都の冒険者ギルドで顔を合わせた事のある冒険者もいるな。ま、ばれていても問題はないがね。

 私の前に殺到した予選出場者たちは、ある一定のラインを超えたところで、動かなくなった。いや、何かにつっかえているのだ。

「何の準備もしていなかったと思うのか?」

 リングの約四分の三くらいのラインに魔法糸を張っておいたのだ。網の目の如くに。

 もちろん、説明中にな。

 網の目に引っかかりながらも、私の前まで殺到した男たち。先頭の男にデコピン一発。

 網にからめ捕られていた男たちは、まるで引き絞られた弓から矢が放たれるが如く、リング外まで吹き飛ばされた。何人かは下敷きになり、意識を失ったようだ。

「流石はセリーナ・ロックハート。一騎打ちを所望。我バァッ!!」

 魔法糸の網にかからなかったモノが何人かいたようだ。その内の一人が一騎打ちを申し込んできたが、口上を最後まで言わせると思うのかい? 私は君の名前など興味ないのだよ。

 五人ほど魔法糸にかからず生き延びていたが、せいぜいCランクどまりの冒険者しかいなかったようだ。あっさりと全員を沈めた私がIブロックの勝者となった。




 Nブロックの勝者はアリスになった。蜥蜴丸を除いた仲間たちが全員本選出場となったのを確認し、アリスも含めて全員で宿に戻る事にした。

 マーガレットとセツナは今日はお留守番だ。ノーデンス王国の騎士や王族たちが観戦していないとも言えなかったからな。


 さあ、明日から御前試合本戦だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ