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セリーナ・ロックハートの大冒険  作者: 折れた羽根 しおれた花
第二章 寂しさは秋の色~apocalypse autumn~
38/69

他人のコイバナは楽しいものです。

 昼食後、なんとか全員(アキヒコ、アリス、レティ、蜥蜴丸、ゲーサン)の了承はとれた。これで、ベストメンバーでノーデンス王国の御前試合に向かう事が出来そうだ。アキヒコとゲーサンのどちらかがいれば、御前試合優勝をかっさらってくれるだろう。もちろん、私も出場するつもりではいるが。

「御前試合かあ、楽しみですね」

 アキヒコは楽しみにしているようだ。

「そんなに楽しみか、アキヒコ? 君がこういうイベントを好きだとは思わなかったな」

「セリーナさんにいいところを見せるチャンスですからね。最大限に活かしますよ」

 そ、そうか、いいところを見せてくれるのか。期待しておこう。

「出場予定はとりあえず、私とアキヒコ、ゲーサンでいいのかな?」

「げっげげ?」

「ゲーサン、君に拒否権はない。例え嫌だと言っても出場は決まっている」

「げげっげ!!」

 何を言っているのだろう? 首を横に振っているから、きっと、出場しないなんて言わないよ、そう言っているのだろう。勝手に解釈する事にした。

「私も出場しますよ。セリーナさんばっかりイイカッコさせてなるモノですか」

 なんでアリスは私に対して喧嘩腰なのだろう? 先ほど正座させたくらいでは満足していないのだろうか?

「青春ねえ」

「マーガレット、何故君が一番呑気にしているのだ?」

「セツナ、呑気にもなるわよ。だって、セリーナがいる。そして、セリーナが認めている人たちが一緒に来てくれる。心配する意味なんてあるかしら? 少なくとも、御前試合に対して不安はないわよ」


 さて、こちらの問題は大丈夫のようだな。

「皆はこれからどうするのだ? 今日は帝都の団長宅に泊まるかい? 部屋は少しはあるし、蜥蜴丸とゲーサンは野宿でいいだろ? 庭は広いしな」

「銀髪、貴様転送装置もアイテムボックスもワガハイが供給元だという事を忘れてはいないかね? ワガハイの扱いが雑だと思うのだよ。もう少し、丁寧に扱いたまえよ」

「私はいったん帝都に戻って冒険者ギルドに顔を出そうと思っている」

「ウホッ、無視かい、シカトかい?」

 蜥蜴丸は相変わらず五月蝿いな。

「冒険者ギルドに? 何か用があるのでしょうか?」

 アリスは先ほどから私やアキヒコを睨みつけている。そのせいか、質問役がレティになった。アキヒコはアリスから顔をそらして、どこか遠くを見つめていた。

「ああ、ジンが何処にいるか情報を聞き出したくてね」

「ジンさんを、ですか?」

「ジンを、だよ」

 私たちがジンを探している、という事を聞いて皆一様に首を傾げる。

「何故あの変態片眼鏡(モノクル)を探しているのか、聞いてもいいかね?」

 蜥蜴丸、君は何ていう事を言うんだ? 確かに、その一言がジンを端的に言い表しているのだけれども。

「聞きたければ、マーガレットに聞いてくれ」

 メンドクサイので、マーガレットに丸投げだ。

「ほう、青リボン、何故か聞いてもいいかね?」

「あ、青リボン……?」

 私は銀髪でマーガレットは青リボンか、セツナを呼ぶときは蜥蜴丸は何と呼ぶのだろう? 黒髪かな?

「青リボン、か。セリーナは銀髪なのだから、私は金髪でいいんじゃない?」

「バカだな、貴様は。王宮暮らしが長すぎて、頭の中はお花畑か? 金髪などありふれているではないか。なので、一点突破で青リボンよ。身体的特徴を言ってやらないだけマシではないか」

 そういうものなのだろうか?

「ふうん、まあ、変な事を言われているのではないから、いいわ。まあ、その、ジンはね、私の初恋の人なんだ」

「「エエェーーーーッ!?」」

 アリスとレティの叫びが響き渡った。レティ、君もそんな大声あげられたのだね。まあ、私も初めて聞いた時は驚いたモノだよ。


 いやはや、女性というのはコイバナが好きなんだねえ。

 いつの間にかアキヒコと蜥蜴丸、ゲーサンを追い出し(彼らには旅の準備を厳命してある)、コイバナに突入していた。質問を受けるのはもちろん、マーガレットだ。セツナは優雅に紅茶を飲んでいる。我関せず、と言った具合に。

「じ、ジンさんの何処がいいんですか?」

「優しいところ」

 あいつは確かに優しいよ、うん。女性には特に。男にはたいして優しくないなあ。

「私はいわば妾腹の子でね。周りに私に優しくしてくれる人なんてほとんどいなかった。だからかな、ジンの優しさは、本当に心地いい物だったんだ。身分の差とか全然気にしなくて一同級生として付き合ってくれたし。私の生い立ちとか知っても変わらず付き合ってくれたし」

「ジンさんは、誰にでも優しいと思いますが。私にすらも優しかったですし」

 アリスは分かるけど、レティ、君もそんな興味津々とはねえ。

「そこが欠点なんだよねえ。彼は誰にでも優しい。それこそ分け隔てはないよ。特に女性に対してはね。例えば、誰かが生命の危機に陥っていれば身を挺して守ってくれるくらいにはね。まあ、でも、セリーナに対しては特別優しかった気もするけどね」

「ああ、分かります。半分妹みたいに思っている感じでしたもんね」

 そうだったかな?

「でも、優しく接してくれただけで好きになったんですか?」

「一緒に冒険者パーティーを組んだ時に私も生命の危機を助けられたんだ、ジンにね。それまでも優しくて強い、いい人だとは思っていたんだけど、その時に完璧に恋におちたんだ」

 うーん、何度か聞いたんだけど、変わらないねえ。ミスカトニック騎士養成校を卒業してから二年近く経つけど、未だジンが好きなんだね、マーガレットは。

「その、二人はお付き合いはしなかったのでしょうか?」

 レティ、食いつき過ぎ。

「実は、告白はしたんだ。卒業前に」

「な、何だと……?」

 初耳だ。初耳だぞ、それは!!

「何だ、セリーナは知らなかったのか?」

 不思議そうに言うなよ、セツナ。ああ、知らなかったよ、私は!!

「セリーナは他人の恋になんて興味なかったもんねえ、あの頃は。今はどうか知らないけど」

「私の事はどうでもいい、それで、ジンに告白して結果はどうだったんだ?」

 凄く気になるじゃないか!!

「ふられたよ、もちろん」

「もちろんって……」

「だって、ジンだよ? そう簡単に宗旨替えする人間に見える?」

「見えない」

 彼の人外娘好きは二つ名になるほどだ。二つ名というよりは、単なる悪口かもしれないが。

「まあ、でも、私はまだ好きなままなんだ、ジンの事。だから、この気持ちに決着ケリをつけないと、前には進めない。どちらにしろ、私は王族を抜けるんだ。平民となって、好きなように生きるんだ」

 考えているんだなあ、色々と。

「出来れば、もう一度ジンと会いたいなあ。またフラれる事になるとは思うけど」

 苦笑するマーガレット。確かに、ジンとマーガレットの間で恋が成就するとは思えないなあ。

「さて、じゃあ、次は……」

 私は嫌な予感を感じて、逃げ出した。

 しかし、まわりこまれてしまった。

「次は、セリーナのコイバナといこうじゃないか。興味あるんだよ、私も」

 目の前に立つは、セツナ。逃げ出せない、か?

「私のコイバナより、セツナのコイバナを聞きたいなあ。セツナは好きな人いたの?」

 なんとか逃げ出さねば!!

「私が好きなのはマーガレットとセリーナだよ。もう、ラブラブ。そう、セリーナの事が好きだから、興味あるんだ、セリーナのコイバナ」

 ひい、自分のコイバナを避けるためにこやつ、私を生贄にしおった。それとも、純粋に女の子好きなのか?

「私は今、クリスに夢中だよ」

 頭の上に眠っているクリスを指さしてみる。ふふふ、私も他人のコイバナは好きだけど、自分のコイバナを喋るほどは好きじゃないのだよ。

「そんないいわけで私が誤魔化されるとでも思うのかい?」

 本気なのに!! クリスは凄く可愛いのに!!

 その時、部屋にノックの音が響いた。三回だ。

「どうぞ!!」

 ここは、外部の人間を招き入れて、私のコイバナをうやむやにするしかあるまい。

「もう、準備は終わりましたけど……。どうします、夕食までこちらにいます?」

 アキヒコが顔を出してきた。この隙に逃げ出さなければなるまい。

「私は先に帝都に戻っておくとしよう。冒険者ギルドに顔を出してジンの情報を聞いてみる。では!!」

「待ちなさい!!」

 コラ、肩をがっしりとつかむんじゃない。は、離せセツナ!!

「私も一緒に行くわ。マーガレットはどうする?」

「私も一緒に行く。一緒にパーティーを組んでいた人間が全員一緒に行った方が情報を聞き出せやすいかもしれないし」

 逃げ出せないのか、もしかして?

 アリスとレティは準備を今からするそうなので、団長宅で合流するのは夕食時になった。

 そして、私はセツナとマーガレットに引きずられる形で転送装置のある部屋に向かうのだった。助けて、アキヒコ!!

 アキヒコは視線で助けを懇願する私に向かって無情にも手を振るだけだった。

 薄情者!!




 帝都の冒険者ギルドに顔を出したのはそれから暫く経ってからだった。

 二人の追及をのらりくらりとかわしながら、帝都を歩いていたのである。

「まあ、夜に聞き出せばいいのだ。何、時間はたっぷりある」

「ふふふ、今夜は寝かさないよ?」

 セツナとマーガレットの恐ろしい言葉が聞こえる。だが、私は今夜も熟睡する事に決めた。


「あら、久しぶりね、三人とも。今日はジン君は一緒じゃないの?」

 私がセツナやマーガレットと行動を共にしている時は、ジンも合わせて四人セットだと思われているのだろうか? 冒険者ギルドの受付のお姉さんはごく自然に声をかけてきた。

 なんだかんだ言って五年近くの付き合いになるが、このお姉さんはよく分からない。初めて会った時から見た目が全然変わらない。ハタチを過ぎているようには見えない。今ではセツナやマーガレットの方が年上に見える。きっと、彼女の年齢を尋ねたモノはこの帝都では生きていけないのだろう。しかし、このお姉さんも私の頭の方をチラチラと見るな。何故だろう? 

「いえ、そのジンの事について聞きたいことがあって来ました。ジンはここ暫く帝都の冒険者ギルドを利用してはいないでしょうか?」

 まあ、今はお姉さんの年齢はどうでもいいので、ジンの事を聞いてみる。今時、個人情報がどうのこうの言う奴らが多いからなあ。情報を聞き出す事は難しいかもしれないな。

「まあ、君たちになら教えてもいいかな? ジン君なら数日前にノーデンス王国王都への商隊の護衛依頼を受けているわね」

 私たちは顔を見合わせた。何という幸運であろう。もしかしたらノーデンス王国でジンをつかまえる事が出来るかもしれない。

 お姉さんに礼を言い、私たちは冒険者ギルドを後にしたのだった。


「しかし、幸運だな。ジンとはノーデンス王国で会えるかもしれない」

「お祭り好きの側面もあるからな。頼んだらジンも御前試合に出場してくれるかもしれないぞ? マーガレットの為に優勝してくれるかもな」

 私たちがからかい半分で声をかけるも、心ここにあらずのようだった。

「うん、そうだね……、自分の気持ちに決着ケリをつけないとね。自分の気持ちに決着ケリをつけないと、前に進めないよ」

 マーガレットは決意を新たにしているようだった。

 ふふふ、これで今夜は安心して眠れるぞ!!







「これで、今夜は何の気兼ねもなくセリーナのコイバナに花を咲かせられるね!!」

「ああ、アリスとレティも誘って楽しもう!!」

 あれぇーー!?


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