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セリーナ・ロックハートの大冒険  作者: 折れた羽根 しおれた花
第二章 寂しさは秋の色~apocalypse autumn~
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肉巻きおにぎり、食べてみたいものです。

「帰る方法が、ある……?」

 あの普段はクールなセツナが驚き、固まっている。しかし、手は未だマーガレットに包まれたままだ。

「ええ、リリス、セツナさんがどうしても日本に帰りたいって言ったら、協力してくれる?」

 問いかけられたのは白いゴシックロリータ服の少女。

「まあ、そうじゃな……。ふむ、魔道士としての資質もある、か。簡単ではないな。それだけの高い魔力を有しているのなら、世界を行き来するのは簡単な事ではない。もちろん、出来はするが。連れて行ってやる事は簡単だが、こちらとあちらを自由に行き来するのは難しいぞ」

 全然問題はないと言わんばかりに答えるリリス。

「つまり……?」

「一度日本に戻ればこちらに再度戻ってくる事は簡単ではない。我輩一人であれば世界を自由に行き来できるが、他人を連れてとなると、簡単にはいかないのでな。他人を連れて異世界旅行となると、よく分からないが我輩も膨大な魔力を消費するのでな。何度も行ったり来たりは出来ないのじゃよ」

 異世界旅行、リリスに頼めば出来るのか? アキヒコの生まれ育った日本、一度行ってみたいな。

「頼めば、日本に連れて行ってもらえる……?」

「我輩としては何一つ問題はない。お主、異世界に召喚された事でいわゆるチート持ちになったであろう? それ故、高い魔力を持ち合わせている。故にお主を連れて自由に世界を行き来は出来ぬよ。往復は可能じゃが、数週間とか数か月単位で時間がかかる。そう思って貰えればいいよ」

「じゃあ、今日お願いしたら……?」

「御前試合とやらに間に合わせて戻ってくる事は不可能じゃろうな。別に悪戯心で言っているわけではないぞ」

「一人なら、日本とこちらを自由に行き来できるのか?」

「まあな」

「なら、一つ頼みたいことがある。私の事を調べては貰えないだろうか? もし、向こうで死亡扱いになっていたら、今更帰っても仕方ないかもしれない。召喚魔法でこちらに来た頃の記憶がはっきりしないんだ。それに、友人が危機だというのに帰るわけにもいかない。頼めないだろうか?」

「了承した」

 リリスが頷いた。

「ありがとう。お願いします」

 セツナはリリスに近付き、彼女の右手を両手で握り、上下に振る。

「お、おお。分かったから手を上下に振らんでくれるかのう?」

 リリスは困惑気味のようだ。

「セツナ、帰るの……?」

 マーガレットの声は悲しみに彩られている。

「まだ、帰らないよ、マーガレット。少なくとも今の君を置いて日本に帰るほどではないよ」

「セツナ……」

「こんな時期にマーガレットを置いて日本に帰ったら、私は物凄く後悔するからな。この世界で初めて出来た友人なんだ。その友人を放って帰るほど、私は冷淡な人間ではないと自負しているよ」

 マーガレットはセツナに抱きついて、泣き出した。

 マーガレットを優しく抱きしめ、髪を撫でるセツナはとても、とても大切にマーガレットを思っている事が分かる。ああ、これだけ大事にしてくれる友人とは、いいな。


「あー、抱き合っているところ悪いが、我輩、今日はそろそろ日本に戻ろうと思う。色々調べなければならなさそうじゃからな。おお、そうじゃ。お主の名字と名前を教えてくれ。日本語のを、な。住んでいた住所も分かればなおよし」

 マーガレットが泣き止むまで待っていたリリスが声をかけた。ついでに紙とペンをセツナに渡してくる。

 すまない、と呟きながら紙とペンを受け取るセツナ。そして、スラスラと紙にペンを走らせる。

 浪蘭雪菜。宮崎県○×市○○町――。

 見た事もない字だった。何が書いてあるのかさっぱり分からない。

「へえ、宮崎の出身ですか。行った事はないけど、確か南国だと聞いています」

「チキン南蛮とレタス巻発祥の地だ。美味いぞ。肉巻きおにぎりもいい」

 食べ物の話題しか出てこないのかい。

「向こうにいたのは十四くらいまでだからな。あんまり覚えていないんだ。郷土愛だって芽生えなかったからな、まだ。色気より食い気の段階だったな、私は」

 そんなモノだろうか。私は確かに郷土愛など持ち合わせていないが。だいたい、ミスカトニック騎士養成校に通う前は、何処にいただろう? 団長の家だったかな?

「ふむ、まあ、調べてはみよう。が、あんまり期待はせんでくれよ? 御前試合とやらが十一月じゃったな? その頃には戻ってこよう。では、また会おう。おお、アキヒコ、こいつを持っておけ。クリスの首輪につけておいてもよいぞ。それがワガハイが来るべき場所の目安になるからな。では、また会おう」

 そう言って、残っていた紅茶を一息に飲み干し、リリスはその場から姿を消した。

 アキヒコの手に渡されたのは小さな宝石。それをクリスの首輪にはめた。どうやってはめた? まあ、気にしたら負けか。

「後はリリスに任せるとしようか、僕らには何も出来ないし」

「そうだね。こちらはこちらの話をしよう」

 アキヒコとアリスはクールだった。慣れているだけかもしれない。あ、リリスに感じた懐かしさ、確かめるの忘れてた。




「それで、御前試合に出場する為に、ノーデンス王国に行けばいいんですよね? ノーデンス王国ってどのあたりにあるんでしたっけ?」

「帝都からであれば馬車だと二週間くらい、かな? もちろん、夜はちゃんと宿をとっての話だ。馬車ではなく馬で移動すればもう少し早いよ」

 セツナの説明はよどみないなあ。よかったよ、私が説明しなくて。

「レムリアからだと、更にかかるな。どうしましょうか、僕らがここを出て暫くしてから帝都で合流?」

 おいおい、それじゃあ、ノーデンス王国に着くのが遅くなるだけじゃないか。

 その時、今まで黙って話を聞いていた蜥蜴丸が口をはさんできた。異世界を簡単に行き来するのは、彼の科学力をもってしても難しいのかもしれないな。

「クカカカ、エロガッパよ。その必要はない。まず貴様は馬をアイテムボックスに入れておけ。馬車の方は準備が出来ておる。後は、転送装置に乗れば帝都までは一瞬よ。わざわざここから馬車で帝都まで向かうは、愚の骨頂。そんな事も考えつかないとはどうした、愛しの姫様に再会出来て、頭の中はエロ一色か?」

「セリーナさんの前でなんてことを言うんだ、お前は? 僕の頭の中がエロ一色なんて事があるわけないだろうが」

「そんな事をワガハイに言ってもいいのかね? 確か、貴様が十月になってから買ったスケベ本は……」

「な、何を言っているのかね、君は? まったく、ぼ、僕がそんなモノ買うわけないだろう!?」

 物凄く焦っているぞ、アキヒコ。ドモっているな。そう言えば、夏の終わりにもスケベ本を買っていたな。

「アキヒコ」

 私は、笑顔で彼の方を見た。自分でも極上の笑みを浮かべたつもりだ。

 おいおい、顔を赤らめてどうする、アキヒコ? アリスも少し顔を赤くしているのは何故だろう?

「な、何です?」

「後で、スケベ本を貸してくれ」

 見たいのだよ、私も!!

「貸すわけないでしょうが!! 何言っているんですか、セリーナさんは」

 何故私が怒られなければならないんだ? 解せぬ。


「話を戻すけど、アキはノーデンス王国に行くの?」

 アリスがアキヒコに尋ねた。ふむ、どうするのだったかな?

「セリーナさんが僕を頼って来てくれたんだ。行かないわけにはいかないでしょ。なんて言っても、僕はセリーナさんの騎士になる男だから」

 アキヒコ、堂々と言ってくれるのは嬉しいのだが、若干自分に酔っていないかな? もしかして、これが厨二病だろうか? 「他人には見えないモノが見える」トカ言いだしたらどうしよう? 彼の場合は実際に他人には見えないモノが見えそうで怖い。

 そして、恐れていた事態がここで発生した。

 アキヒコを見つめていたセツナが、左掌にポン、と右拳を叩きつけたのだ。

「ああ、そうか、何処かで見覚えがあると思っていたら君があの写真の男か。なるほどなるほど、セリーナにも春が来ていたのか。しかし、あのラブレターを果たし状と勘違いして、男を突き一本で沈めていたセリーナがねえ」

「ジンがいつも溜息ついていたなあ。また、アイツラブレターを果たし状と勘違いしていやがる。魔道士やら教師やらに手をまわしている俺の身にもなってくれよって」

「セリーナさんって学生時代も変わっていたんですね。そのまま大人になってください」

 やめて、アリス、そんな可愛いモノを見る目で見ないで!!

「あの写真の男? みんなで写っている写真ですか?」

「ツーショット」

 セツナの口をふさいだのは良かったが、マーガレットの口は塞げなかった。

「セリーナさん、いったいいつアキと二人きりで写真を撮っていたんですか?」

 ひいい、怖い、怖いよアリス。

「あ、あの別れの日。みんなで写真を撮った後」

 ああ、昨日間違えてマーガレットとセツナに写真を見せたのが今日になって大問題になるとは……!!

 その後、私は夏の間に使わせてもらっていた客室に連れていかれて、アリスに説教された。正座で。

「抜け駆け禁止だと言ってあったじゃないですか!!」

「ごめんなさい!!」

 いつになったら、この説教は終わるのだろう? おかしいな、私は今日、説教を受けにレムリア辺境領に来たんだっけ?




「もう、昼食の時間ですよ。まだ説教は終わらないんですか……?」

 呼びに来てくれたレティが今の私には救いの女神に見えた。ああ、足が痺れる……!!

「助けて、レティ!!」

「逃がしませんよ、まだ説教は終わっていないのですから。ああ、半泣きのセリーナさんって、なんかそそるんだよね」

 ひいい、ここにカーペンターの同類がいた?

「ごゆっくり」

 レティはアリスを見て、説得は諦めたようだ。カムバーック、レティ!!

「いいですか、私たちは恋敵ライバルなのですから……」

 アリスの説教は続く。私の足の痺れも続く。

 もう、アリスが何を言っているのか、全然わからない。泣いてもいいですか?




 流石に私が可哀相になったのだろうか? それとも、自分ではアリスを止められないと思ったのだろうか? 数分後にレティはエミリアさんを寄こしてくれた。

「いい加減にやめなさい、アリス」

「ハッ、私は何を……。そうか、セリーナさんがあまりにも可愛くて言葉責めを……?」

「何を言っているの、アリス?」

 私は、途中から何を言われたのか、全然覚えておりませぬ。足が、足が……!!




 足が痺れて動けなかった私はアリスにおんぶされて食堂に向かう羽目になった。

 椅子に座らされても、まだ痺れはとれない。

 この日はダーレス卿の家で昼食をとる事になった。食事をとるよりも、痺れをとりたい。え、意味が違う? 細かい事は気にするな、の精神でお願いします。

「れ、レタス巻ではないですか!!」

 セツナの嬉しそうな顔よ。故郷は遠きにありて思うもの、とは誰が言ったセリフだろうか?

「ごめんなさいね、流石に肉巻きおにぎりは作れなかったわ」

「いいえ、ありがとうございます。ああ、懐かしい故郷の味です。私は料理はからっきしだから、自分では作れなかったもので。昨日から、私にとっては素晴らしい日々です」

 セツナの心底嬉しそうな笑顔を見ながらの食事はとても和気藹々とした、楽しいモノだった。この両足の痺れさえなければ……!!






「あれ、そう言えばまだ、アキヒコ以外からノーデンス王国に行くかどうかの返事をもらっていないんじゃあないかな?」

 その事についてようやく思い浮かんだのは、昼食を終えてティータイムに入った時だった。ようやく痺れがとれて、思考がクリアになったおかげかもしれないな。

「銀髪、貴様は大事なところで何処か抜けているな? 何か狙っているのかね?」

 私が狙っているのはアキヒコだよ。蜥蜴丸の問いかけは何処か違う気がするな。まあ、いいか。


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