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セリーナ・ロックハートの大冒険  作者: 折れた羽根 しおれた花
第一章 夏の終わりに~end of summer〜
16/69

見られて恥ずかしいモノを買う時は、オンラインショッピングです。

 宿屋でお風呂を借り、アリスと一緒に入った。体の洗いっこをしようと言ったら、全力で断られた。解せぬ。

 私とアリスがお風呂を借りている間はジンに警護をお願いした。ジンに頼んだのは何故かというと、彼が人間の女性に興味を抱いていないからだ。アキヒコ少年だったら覗きに来たかもしれないからな。覗かれるのは勘弁してもらいたい。私だって恥じらいというものを持ち合わせているのだ。

 体を洗い終わった後(洗いっこ出来なかったのは、残念だ)二人並んで浴槽につかる。ああ、適温のお風呂は最高です。水風呂ではこうはいかない。つい深呼吸をしてしまう。

 む、何故私をガン見するのだ、アリス。女の子同士であっても恥ずかしいのだよ?

「セリーナさんってスタイルいいですよね。どうすればそんなにスタイルが良くなるんですか?」

 ふふ、まだまだアリスには負けんよ。数年後には追いつかれるかもしれんが。

 考えた事などないが……、

「適度な食事と適度な運動だな、たぶん。後はきっと、ストレスを溜めない事だ。体にも精神にもよくないからな。なので、私は遠慮せずに三番隊のメンバーを殴る事にしている。あいつらは変態だから、多少殴ったくらいでは堪えないんだよねえ。頑丈だし、だいたい次の日には何故か無傷でケロッとしている事が多いから、遠慮なんか必要ないんだ」

 ホント、なんで次の日には治っていたんだろうね?

 アレ? なんか、途中からドン引きしているんですけど……、私は悪くないよねえ。悪いのは変態ぞろいの三番隊のメンバーだよ。三番隊組長に就任した頃はアイツらの態度に顔を真っ赤にして反応していたのが懐かしいな。おっと、思い出にふけるのは良くないな。

「ああ、後はそう、異性に胸を揉んでもらえれば胸は大きくなると言われた事もあるな。だが、アリスの胸を異性に揉ませるなど到底許せるモノではない。そう、その通りだ。では、私がアリスの胸を揉みまくってやろうじゃないか、そして、アリスの胸を私好みの大きさに育て上げてやろうじゃないか。そうだ、そうしよう」

 それがいい、フフフ、私色に染めあげてやろうじゃないか。

 視線をアリスに向けたら、もう浴槽からあがって脱衣所で体を拭いていた。何故か知らないが、大急ぎだった気がする。

 そんなに急ぐ必要ないじゃないのに、なんで急いでいるんだろう? 女の子のお風呂は長くて当然なのに。

 ま、待ってよ、置いていかないでよ。


 お風呂を借りた後は村と古代遺跡の中間地点くらいでキャンプをする事になった。

 巨大な鍋が二つ、火にくべられている。一つは蓋がかけられている。何だろう。もう一つは、大量に水が入れられていた。

「はじめちょろちょろなかぱっぱ……」

 蜥蜴丸が虚ろな目をしながら何事かを唱えていた。いったい、何だろう?

 料理当番はどういう理屈で振り当てられたのか分からないが、蜥蜴丸の担当になった。まあ、私は料理など出来ないからな。私に振り当てられないで幸運だ。

 そして、暫くしてもう一つの鍋の中の水が沸騰しだした。そこに、大量の何かを放り込んでいく。一体何を入れているのだろうか? 近くに捨てられた箱を見てみる。

 長方形の箱には微笑んだ女性の顔がプリントされている。文字は読めない。いったい何だろうか?

「蜥蜴丸、お湯を沸騰させて中に何を入れたのかな?」

「銀髪、貴様はバカだな。お湯を沸騰させてどうするのかね? 沸騰させたのは水よ。沸騰したからお湯になったのよ。クカカカ、小学生からやり直したまえよ」

 バカにされてしまった。もういい、これ以上は聞かない事にしよう。小学生って何だろう?


 暫く待つことにした。クリスをブラッシングしながら待つ。

 やがて、よく分からない料理をアキヒコ少年が持ってきた。

「少年、なんだ、コレは?」

 お米の上には食材が色々入った何かがかけられていた。ふむ、もしかしたらこれが先ほど蜥蜴丸が鍋の中に入れていたものかもしれないな。

「カレーライスですよ、もしくはライスカレーでも可」

「少年、私が知らないと思ってバカにしているな? どちらでもいいとは、どういう事かな?」

 先ほど蜥蜴丸にバカにされた怒りはまだ消えていないのだよ!!

「いや、違いますよ。詳しくは俺も知らないんです。どちらでもいいという話もあります」

 本当かな? 暫くジト目で見てやろう。

「変な目で見ないでくださいよ!! 俺がセリーナさんに嘘をつくわけないでしょう!!」

 なんだか、熱血しているな。熱血少年に見つめられるというのも悪くはない。まあ、そんな事はどうでもいいか。

「ところで少年、このカレーライスだかライスカレーだか知らないが、美味しいのかな? 蜥蜴丸が作ったのだろう? 人体に害があるモノが料理の中に入っていやしないかな?」

「流石にそんな事はしませんよ。ホラ、見てください。アリスが美味しそうに食べているじゃないですか」

 アキヒコ少年の視線を追ってアリスを見てみると、ジンの隣で美味しそうにカレーライスを口に運んでいる。

「しかし、作ったのは蜥蜴丸だろう?」

 何だろうな、蝙蝠の羽根トカ、蜥蜴の尻尾トカ料理に入っていそうで怖いんだよねえ。

「もう、食べないというのなら俺がセリーナさんの分まで食べますからね。セリーナさんは空腹で一晩過ごせばいいんですよ」

 アキヒコ少年がカレーライスを持って何処かへ行こうとするのをひき止める。

「こら待て、私を空腹にして何がしたいんだ? ……ハッ、まさか空腹で涙目の私を見て喜ぶ変態趣味の持ち主か、君は?」

 誰だったかな、三番隊にそんな奴がいた気がするな。アクロイド副組長とは違ったタイプの変態だったな。まあ、三番隊には変態が勢ぞろいしていたからな。実際、変態でなくても私に変態認定されていた可哀想なやつもいたけれど。

「ち、違いますよ、変な事言わないでくださいよ!! いいですよ、カレーライスあげますよ」

 私はアキヒコ少年からカレーライスを受け取り、おそるおそるスプーンで口に運んでいく。そして、口に入れる。美味しいじゃないか!!

「美味しいな、コレは」

「喜んでいただけたようで、幸いです」

 私の隣に腰をおろし、アキヒコ少年も料理を口にしていく。しかし、食べるスピードが遅いな。何故だ?

「少年、何故そんなに食べるスピードが遅いのだ? 冒険者としてはダメじゃないか?」

「セリーナさんの隣で食べているのでドキドキしているんです、だから遅くなったんですよ」

 む、ストレートに言われるとちょっと、照れるな。そう言えばやたらと私の口元を見ていたな、やっぱり変態だな!?

 食べ終わった。む、足りないな。そう言えば、朝食を遅めにとったので、昼食を食べていないんだった。

「少年、おかわりはあるのか?」

「ご飯の方ならおかわりはありますよ。カレーの方はサイズが一つきりしかないので、同じ量を食べるか、誰かと分け合うなりするしかありません」

 む、同じ量をもう一杯食べるのは女の子としてはどうかな? 実際、同じ量をもう一杯は入りそうにない。

 ちょうどアリスもおかわりをしようとしていたので、アリスと分け合って食べる事にした。

「しかし、コレは美味いな。蜥蜴丸、どうやって作ったのだ、コレは?」

 簡単に作る事が出来るのなら私も習ってみようかな? ご飯はティアさんに作り方を習おう。ご飯は団長のところでも何度か食べたからな。

「クカカカ、コレはお湯の中に三分ほど入れておくだけよ。誰でも簡単に作る事が出来るのだよ」

 蜥蜴丸は箱の中から何か袋を取り出し、鍋の中に入れていく。袋ごと。

「これで三分ほど待つのだよ。時間が分からなければお終いではあるがな」

 お湯の中に入れている時間が短すぎても長すぎてもダメらしい。奥が深いのだろうか?

「ボ●カレーは誰が作っても美味いのよ」

 つまり、私が作っても美味い、と?

「これは、何処で買えるんだ?」

 フム、と顎に手を当てながら考え込む蜥蜴丸。何処からが顎なのだろう? 以前も同じ事を考えた気がするな。

「買いたいかね、本当に?」

「うん」

 美味しいからな。

「銀髪、貴様冒険者登録はしているかね?」

「学生時代にしてはいるが」

 ランクは確か、Bランクまでは行った気がするが……、どうだったかな? Cランクどまりだったかもしれんな。ちなみに、冒険者ギルドに入るとランクが与えられる。活躍度合などによってランクが上がったりするのだが、F~A、そして、Aの上にSランクがある。

 私も学生時代は冒険者ギルドにも入っていた。頑張ったから、Bランクまでは上がった気がする。色々、欲しいモノもあったからな。

「では、貴様には特別にこれをくれてやろう」

 渡されたのは平べったい長方形の物体。

「何だ、コレは?」

「タブレットPC」

 よく分からないが、科学的な何かなのだろう。魔法的なモノではあるまい。

「まだ、立ち上げたばかりだが“スペースリザー堂オンラインショッピング”というサイトがある。そこで通販が出来る。貴様は“スペースリザー堂”特性のアイテムボックスを持っていたな。買い物したのはそこに届くような仕組みだ。どうやって、そこに商品が入るのかはワガハイも実はよく分からん。猫娘の協力を得て作り上げたシステムなのでな。魔法的な何かも入っている。ワガハイ、魔法は門外漢なんだよねえ」

 こいつは、本当にナニモノだ? そして、猫娘とは誰だ? 会ってみたいな。ジンには会わせないでおこう。人外娘に会ってジンが暴走してしまうかもしれないからな。何より、可愛い子なら私が独り占めだ。ジンになど、渡してなるものか。

「ちなみに、料金は冒険者ギルドで作ったカードから引き落とされる仕組みだ。ギルドカードに金が入金されていないと引き落としが出来ないので、買い物も出来ない。ギルドカードにいくら入っているかも確認できるようなシステムを組んでおる。クカカカ、ワガハイは優秀であろう?」

「ああ、凄いな。だから、使い方を教えろ」

「ウホッ、おざなり?」

 蜥蜴丸はどうやら、もっと褒めてもらいたかったらしいが、そんな事を私はしないのだ。

 使い方を蜥蜴丸から教わり、自分のギルドカードにいくら入っているか確認する。カードをスキャンすればいいらしい。

 ふむ、Bランクに私はいるらしい。学生時代の私、頑張ったな。

 ギルドカードに残っている金額は……五十七万三千G。たいして残っていないと言うべきか、学生時代に貯めた金がまだこれだけ残っているのはたいしたものだと言うべきか。

 “スペースリザー堂オンラインショッピング”にログインしてみる。ギルドカードをスキャンするだけで、その人間が所有するアイテムボックスに買った商品が届くシステムらしい。

 色々商品が並んでいる。ジャンルとしては傷薬・食料品・調味料・生活雑貨・料理道具・スケベ本などなど。……スケベ本、だと……? ゴクリ。浪漫あふれているじゃないか。よく分かっているじゃないか、蜥蜴丸。タブレットPCを持つ手が震える。しかし、まだだ。まだ、スケベ本には手を出すわけにはいかない。皆の見ている前で買うわけにはいかないのだ。

「えーと、お、ボ●カレーが一つ百Gか。手ごろだな。よし、買ってみよう」

 ボ●カレーを十個買ってみる。千Gがギルドカードから引き落とされ、続いて画面上に“ボ●カレーが十個届きました”のメッセージが出た。アイテムボックスを確かめてみると、中に今までなかったボ●カレーが十個入っていた。おお。

「武器や防具は商品として並んでいないのか?」

「武器・防具は流石に相手に合わせてのモノがあるからねえ。来店してもらわないとダメだねえ。危険なものもあるから、誰彼問わず売るわけにはいかんのよ」

 それもそうだな。

 私は蜥蜴丸に礼を言い、他に買ってもよさそうなモノを買ってみる。調味料とか、日持ちしそうな食料品とかを買い込んだ。二万Gも使ってしまった。


 夕食後、アキヒコ少年から私を含めた古代遺跡調査隊のメンバーに注意事項が伝達された。

 そして、念のため数人交代で寝ずの番を務める事になった。

 私とアリスは運よく外れた。うん、寝ずの番など、乙女の敵だよね。

 






 アリスと私用に割り当てられたテントから抜け出した。さあ、ここからは勝負の時だ。

 周りを見渡し誰にも見られていない事を確認する。

 タブレットPCを起動し、“スペースリザー堂オンラインショッピング”にログインする。

 ああ、買いたいモノがあるのだよ。

 だが、皆に見られている状態ではとても買えない。何せ、私には社会的地位だってあるのだからな。しかし、今はチャンスだ。誰も私を見ていない。そう、戦う時は今。買う時は今。

 さあ、買うぞ。

 私はスケベ本のジャンルをクリックした。ふふふ。いいじゃないか、女の子がスケベ本買ってもさ。

 種類が結構あるな。でも、各属性一冊ずつしかないのか。フフフ、迷うというものよ。

 ・「お姉さんが教えてア・ゲ・ル♡」(属性:年上のお姉さん)……売り切れ

 ・「毎日起こしに来てくれるあの娘とらぶ・えっち」(属性:幼馴染)……十万G

 ・「私、甲冑脱いだら凄いんです」(属性:女騎士)……売り切れ

 ・「恋の魔法をかけてあげる」(属性:女魔道士)……十万G

 ・「デザートよりも、私を食べて♡」(属性:飲食店で働く女の子)……十万G

 ・「メイドにお仕置きするのも貴族の大切なお仕事です」(属性:美少女メイド)……十万G

 ・「魔王に捕らわれた王女の受難」(属性:お姫様)……十万G

 ・「女王様とお呼び!!」(属性:ドMな男向け)……三十万G(ティンダロス帝国帝都騎士団三番隊副組長予約済み・入金待ち)

 ・「獣人娘とニャンニャンするお話」(属性:獣人娘)……入荷未定

 ・「旦那が帰ってくる前に」(属性:人妻)……(レムリア辺境領領主の圧力により)発禁 ※(レムリア辺境領領主の圧力により)の部分は黒く塗り潰されて本来は読めない


 ・「ゆりんゆりん物語」(属性:女の子同士が好きな人向け)……五十万G

 ・「や・ら・な・い・か?」(属性:衆道)……五百万G


 一冊当たりが凄く高い。ボ●カレーが一個百Gなのに、なんだ、この値段設定は? しかも、どれも表紙が表示されない。これは、怖い。本というものは表紙を見るだけで買ってしまう事もある。いわゆる表紙買いだ。なのに、表紙さえ表示されない。しかも、一冊当たり十万G以上というのは、いくらなんでもボッタクリではないのか? 王都の本屋で売っている本は、稀少品でも一万G超えるものはほとんどないぞ。

 それ以前に「お姉さんが教えてア・ゲ・ル♡」と「私、甲冑脱いだら凄いんです」が売り切れになっているのが怖い。誰が買ったのだろう?

 そして、ジンが喜びそうな「獣人娘とニャンニャンするお話」は入荷未定になっている。何処から入荷してくるんだ?

 「旦那が帰ってくる前に」が発禁になっているのは、何故だ? 発禁の文字の前が黒く塗り潰されていて読めないのだが。どこかから圧力でもかかったのか?


 帝都に戻ったらアクロイド副組長を全力で潰そう。そうしよう。個人情報が筒抜けなのが怖いな。しかし、他のは売り切れ表示だけなのに、ここだけキラキラと金色で、しかも点滅しながら表示されているのは何故だろう? 


 「ゆりんゆりん物語」と「や・ら・な・い・か?」とやらが物凄く高いんですけど。何故、この二つだけこんなにずば抜けて高いのだ? 

 「ゆりんゆりん物語」は、なんとか手が出せる値段なのが、怖い。ぶっちゃけて言えば、物凄く欲しい。しかし、簡単に手が出せる値段ではない。今後の事だって考えないといけない。お金は少しは残しておかないと。しかも、表紙を見れないという事ははずれの可能性だってある。五十万Gも出して外れだったら、死にたくなってしまう。クッ、今回は諦めるしかないのか!? ……そうだな、諦めよう。

 「や・ら・な・い・か?」は、とてもじゃないが、手が出せない。何という値段だ。帝都に住む一般市民の平均年収よりも高いかもしれん。ああ、でも、欲しい人には喉から手が出るほど欲しいモノなのかもな。喉から手が出るって、完全に化け物だけどな。……衆道って、なんだろう?


 今回は断念しよう。流石に一冊のスケベ本に十万G以上の金額をかけるわけにはいかない。一万Gだったら出していたかもしれないな。

 ああ、欲求不満だ。

 私はテントに戻って、アリスを抱き枕にして眠ることにした。

「暑いんですけど」

「冷房魔法を使ってあげようじゃないの」

 そう言ったとたん、テント内にいたクリスが私に乗っかってきた。

 スケベ本は手に入らなかった(手を出せなかった)けど、これでいいのかもしれないな、私は。




 サヨナラ、愛しのスケベ本。


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