6話
あいつが近くに住んでる? ――そんなはずはない。あいつの気配は感じられなかった。
だとしたら、誰が住んでいるのか。
「そんな怖い顔しないでよね。悲しくなっちゃうじゃないの……」
「お、お前は……っ!」
ここに居るはずのない存在。いや、居てはいけない存在。
「んにゅにゅ、もしかして春樹クン。私が居たことに感動しちゃったかな?!」
いやーん、嬉しいと黄色い声を上げる残念な美少女――天音 菜々だ。
「なぜ菜々がこんなところに居るんだ?」
「んーっとね、私にも良く分からないんだけど気付いたらここに居て。あ、でもここの人たちに良くしてもらってたよ?」
こちらに来て才能が開花されたのか、前の世界では感じられなかった魔力の反応が菜々から感じる。――あるいは、前の世界ではわざと封印していたのか。
「そうなのか、それはよかったな。だが迷惑だから俺とは関わるな」
どちらにせよ天音が未知数な以上関わるのは危険だ。
「えっ? まさか……春樹クン。私のコト、そういう目でみてくれてたのかなっ!」
それはそれで嬉しいかも、と顔を綻ばせる天音を見て裏があるんじゃないかと俺は思ってしまう。
しかし奈々はこの状況下を楽しんでいるのだろうか? そんな事を考えると乗せられそうなので、その思考を即座に停止させて立ち去った。