第十五章:アリシアとアスタロテの帰宅途中で
勇者フルボッコ編は終わりささやかな日常が戻ってきます。
アリシアとアスタロテが徐々に惹かれあっていきます!
ぜひ読んでみてください!
一人と一匹の初めてのデートだ。
「それでお主の屋敷はどこじゃ?」
アスタロテは場所を聞かないと、
どこまで飛べばいいかわからず困っている。
「あー……」
「アンガス湖の少し先よ」
気まずそうにアリシアは話す。
「なるほどな」
「まあ良い」
「人を乗せるのは初めてじゃ……」
「不都合はないか?」
アスタロテはアリシアが、
手のひらから落ちないように、
上手く支えてくれている。
「全然大丈夫よ」
「背中でも手のひらでも楽しいくらい」
アリシアは高所恐怖症では、
ないことに感謝している。
「ならよかったぞ」
アスタロテは牙をギラつかせながら笑う。
「ありがとう」
「さっきは勇者を食べないでくれて……」
アリシアは一応お礼を言っておく。
「よくよく考えると……」
「あいつはまずそうじゃったからな」
「腹痛になってしまうからの~」
噛むフリをしながら、
照れくさそうに話す。
「優しいのね」
「あなたは……」
「そうでもないぞ」
「お主のほうがお人好しじゃ」
「そんなことないよ」
「婚約者に捨てられちゃったし……」
婚約破棄の出来事を思い出して、
また落ち込んでしまう。
「ほう?」
「では婚約者を丸焼きにするか?」
アスタロテは意地悪く笑って、
鋭い歯をギラつかせる。
「いやいや!」
「丸焼きはダメよ!」
「そ、そうか……」
「では宇宙に飛ばすのはどうだ?」
「宇宙って何?」
「そうか!」
「知らないのも当然じゃな」
「雲の上のセカイだ」
「へえ~」
「綺麗なの?」
「ああ」
「このセカイを上から見下ろせるぞ」
「王になった気分を味わえる」
「すごい!」
「いつか行けたらいいな~」
「そうだな……」
「あ、屋敷に着いたら……」
「裏山で過ごしたほうがいいのかな?」
「裏山はどれくらいの広さなんだ?」
アスタロテは楽しそうに質問する。
「三百メートル以上はあるわ」
「うむ……」
「少し小さいかの……」
自分の大きさでは潰しかねないと、
考えて落ち込んでしまう。
「ごめんなさい……」
「謝るでない……」
アリシアとアスタロテの相性は、
本当にピッタリだ。
「じゃあ屋敷の中で……」
「一緒に暮らす?」
「それは良い提案じゃな!」
「子育てもしやすいし」
「いいと思うの」
「部屋はいっぱいあるから……」
「アリシアの部屋で良いぞ」
本当に積極的なドラゴンだ。
「わかったわ……」
「私たち付き合うのかな?」
「余もわからぬ……」
なぜかお互いが視線をそらすのであった……
「今までの人生で本格的に誰かと、」
「付き合ったことなかったし……」
アリシアは学園時代を含めて、
モテなかった人生を思い出した。
「あの化け物執事は恋人か?」
アスタロテは当然のように聞く。
「シアン?」
「違うわよ」
即答する。
「そうか……」
「あの女はお主を愛しておるぞ」
「付き合っておるのかと……」
「えーーー!?」
「シアンが私のことを好きなの!?」
アリシアは激しく動揺し叫んでしまう……
「鈍いのう……」
「シアンの気持ちは……」
「家族としてだと思ってたわ」
「誰がどう見ても……」
「あれは頂点捕食者の目だぞ……」
「修羅場というものになりそうだな……」
アスタロテは少しだけ、
面倒くさそうに話す。
「ならないと思うわ」
「私が説得するし……」
「それは心強いの~」
「余の妻は~」
「もう奥さんなの!?」
「展開が早すぎない?」
「お主はモテそうだからな」
「先手を打っておくのだ」
「あ、ありがとう?」
アリシアは情報量の多さに困惑し、
挙動不審になってしまう。
「構わん」
「アンガス湖を通り過ぎたぞ」
「場所を指示してくれ」
屋敷が見えてきた。
「あそこよ!」
「ほう」
「思ったより大きいな!」
「余と戦えそうだ」
「さすがに屋敷が壊れちゃうわ」
「冗談だぞ」
「可愛いの~」
「は、早く」
「卵の様子を見ないと!」
「心配だし!」
アリシアは恥ずかしさを誤魔化すために、
あわてふためくのであった……
「そうだな」
「ありがとう」
「アリシア」
「ううん」
「こちらこそ」
「到着じゃ!」
アスタロテは盛大に屋敷の裏山に着地する。
「快適だったわ」
「また飛んでくれる?」
アスタロテはアリシアを、
地面にそっと優しくおろす。
「もちろんじゃ!」
アスタロテは今日大変な目にあったが……
少しだけ元気になり、アリシアは安堵する。
「やっと帰ってきたわね」
先に帰っていたベアトリスが出迎えてくれた。
「ベア!卵は無事?」
「余の卵は?」
アリシアとアスタロテは、
真っ先に卵の確認をする。
「無事よ」
「ヒーラーさんが守ってくれたわ」
ベアトリスはクララを見つめながら話していく。
「良かったわ!」
「お主らに感謝しなければな……」
「気にしないで」
ベアトリスはあっさりと受け流す。
「クララもありがとう」
アリシアは真っ先に感謝を伝える。
「全然平気」
「むしろあいつらを止められなかった……」
「ごめんなさい……」
クララは申し訳なそうに、
アスタロテを見続けていた。
それに気づいたアスタロテは……
「気にするでない」
「余も責めて悪かった」
「ありがとう」
クララは涙ぐむ。
「泣かないで!」
「今善行をしてるんだから」
アリシアは優しく涙をハンカチで拭いていく。
「うん……」
クララは救われた表情を浮かべる。
「アリシア様」
「帰ってきましたね」
「疲れたでしょうから……」
「夕飯にしませんか?」
シアンも出迎えにやってきた。
「……ありがとう」
「シアン」
アリシアは急にシアンを意識し始めた。
「大丈夫ですか?」
シアンは主の顔が少し赤いことに疑問を感じて、
急接近しおでこの熱を魔力で、
計測したあと何やら考え込んでいる。
「もしかして……」
「具合が?」
「実は勇者に攻撃されていたとか!?」
今にも元勇者のところに、
戻りそうな勢いである。
「平気よ」
「楽しい夕食会にしましょう!」
「そうじゃな!」
アリシアは人間形態に、
戻ったアスタロテの手をつなぎ、
屋敷に向かって歩き出す。
「もちろんです」
シアンとベアトリス、
クララもあとに続いて歩き出した。
「おじいちゃんは?」
ガランドがいないことに気づき、
アリシアはシアンに尋ねるが……
「工房を勝手に作って……」
「引きこもっております」
シアンが現状を報告する。
「放っておきましょう」
ベアトリスは呆れ気味に言う。
「わかったわ」
こうして六人は屋敷に戻ってきた。
まだ家族になれるかはわからないが……
きっと大丈夫だろう。
次回はとんでもない夕食会になりそうですね。
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