なんてね
死にたいなって思う度に、
君の言葉を思い出す。
「私は来世どこかの国の美女に生まれ変わるから、君は私のペットね」
あのときは笑った。
なんだそれって、ふざけるなって。
でも、少しだけ救われたのも事実だった。
君は本気で来世を信じていたわけじゃない。
ただ、この世界があまりにも重たいとき、それを軽くするための冗談を言える人だった。
今の世界は軽くならない。
君がいないだけで、こんなにも酸素が薄いなんて知らなかった。
街は相変わらず動いている。
コンビニのドアは自動で開くし、夕方のチャイムは鳴るし、電車は時間通りに来る。
君がいなくても世界は困らない。
それがいちばん残酷だった。
多分、僕はいつでも死ねる。
そう思うことで、なんとか立っている日もある。
逃げ道があると思わないと、息が詰まりそうになるからだ。
生きられなかった君の分まで生きるとか、そんな立派な感情はない。
そんな綺麗な言葉で片付けられるほど、僕は強くない。
君への思いに縋る今より、君と居られるかもしれない来世を選んだ方が賢明なのかもしれない。
そんな考えが、夜になると静かに膨らむ。
もし本当に来世があるとして、
本当に君がどこかの国の美女に生まれ変わっていて、僕がその足元を歩くペットだとしても、
君はきっと言う。
「なに勝手に来てんの」
そして笑う。
あの、少し意地悪で、でも寂しさを隠した笑い方で。
君はたぶん、僕が簡単に終わることを望まない。
来世の約束は、逃げ道じゃなくて、今をもう少しだけやり過ごすための冗談だったんだと思う。
だから僕は、今日だけは死なない。
明日のことはわからないけれど、今日だけは。
君に怒られたくないから。
夜は長い。
思い出は勝手に再生される。
触れられない温度ばかりが鮮明で、声だけが曖昧になっていく。
それでも、
君が言った来世の話は、まだ色を失っていない。
だから僕は、今日をもう少しだけ引き延ばす。
来世でペットになるなら、今世でちゃんと生き延びないと、会いに行けない気がするから。




