第十三話 月神降臨の間
廃墟の二階へと駆け上がるクシムとアルリム。
扉の向こうから、不気味な詠唱が響いていた。
「ナンナよ、闇を統べる銀輪の王よ――」
燭台の蒼白い炎が揺らめき、床には巨大な五芒星が描かれている。その中央には縛られた聖女たち。
聖女アルトリア♀「クシム様……!」
聖女ツァデケット♀「お気をつけて!」
祭壇の前に立っていたのは、黒衣をまとった男――
ナンナル「ついに来たか、異端者め。これより月神ナンナ様は降臨なさる」
クシム「聖女を生贄にする神なんざ、ぶっ飛ばしてやる!」
ナンナルは両手を掲げ、詠唱を加速させる。
天井が震え、窓から月光が一直線に五芒星へと注ぎ込んだ。
アルリム「兄さん、術式が完成しかけてる!」
クシム「なら壊すだけだ!」
クシムは床を蹴り、一気に踏み込む。
ナンナル「遅い!」
月光が刃のように収束し、クシムへ襲いかかる。
アルリム「神剣イムフル――剣圧解放!」
アルリムの一撃が月光を裂く。
その隙にクシムが突進。
クシム「剣圧・全開ッ!」
轟音。
五芒星の一角が砕け、光の流れが乱れる。
ナンナル「ぐっ……儀式が……!」
だが、砕けた陣から黒い霧が立ち昇る。
低い声が響いた。
???「我を呼びしは汝か……」
半透明の巨大な月の幻影が天井に浮かぶ。
アルリム「まずい、完全体じゃないけど……来る!」
ナンナルは狂喜の笑みを浮かべる。
ナンナル「見よ! これが月神の御姿だ!」
クシムは聖女たちを一瞥する。
クシム「アルリム、聖女の縄を!」
アルリム「任せて!」
アルリムが素早く駆け、縄を断ち切る。
その瞬間、月の幻影が衝撃波を放つ。
壁が崩れ、床が裂ける。
聖女ケドゥーシャー♀「きゃあ!」
クシムは咄嗟に前に立ち、衝撃を受け止めた。
クシム「ぐっ……!」
アルリム「兄さん!」
クシムは歯を食いしばる。
クシム「本物の神なら、こんな半端な降臨しねぇはずだ……!」
黒霧の中心に、儀式の核となる月石が浮かんでいるのを見つける。
クシム「アルリム、あの石だ!」
アルリム「了解!」
二人は同時に駆ける。
ナンナル「させるかァ!」
ナンナルが立ちはだかるが、
クシム「邪魔だッ!」
渾身の剣圧がナンナルを吹き飛ばし、祭壇に叩きつける。
アルリムが跳躍。
アルリム「イムフル――月砕き!」
神剣が月石を真っ二つに断ち割った。
眩い閃光。
月の幻影が歪み、悲鳴のような轟きと共に霧散する。
静寂。
崩れかけた廃墟に、月光だけが差し込んでいた。
聖女アルトリア♀「助かりましたわ……」
クシムは肩で息をしながら笑う。
クシム「月神教、これで終わりだな」
しかし、崩れた祭壇の奥に、割れた月石の欠片がなお妖しく光っている。
アルリム「兄さん……まだ、完全には消えてないかもしれない」
クシムは欠片を見つめる。
クシム「なら次は、根っこから断つまでだ」
遠くの空に、雲に隠れた月が再び姿を現した。
果たして月神の影は本当に消えたのか?
そしてナンナルの背後にいる黒幕とは――?
次回、月神教残党へ続く……!!!




