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最後の標的  作者: 有氏ゆず
第二話 繋がり
9/39

2-1




……次の日。


ピンポーン


棗は301号室のインターフォンを押す。


「おーい、転校生クン起きてるか?」




……インターフォンの音で、悠真は跳ね起きる。


「……誰だ?」


悠真がドアを開けると、そこには棗が立っていた。昨日と同じ制服を着て、笑顔を浮かべている。悠真は一瞬、言葉を失った。


「……なんで、ここに」


ぎこちない口調で尋ねながら、悠真は棗を見つめた。朝からこんなに近くに棗がいることが、悠真の胸をざわつかせる。

昨夜、殺そうと何度も考えた相手が、今は笑顔で自分を誘っている。


「ああ、一緒に学校行こうと思って」

「……分かった。少し、待ってろ」


悠真は部屋に戻り、制服に着替えた。鏡を見ると、自分の顔がいつもより疲れているように見える。昨夜の葛藤が、そのまま表情に出ていた。

カバンを持って部屋を出ると、棗がまだドアの前で待っていた。


「……悪い。待たせた」

「いや、大丈夫だ。行こうか」




バス停までの道を棗は悠真の前を歩きながら、ぽつりと呟く。


「転校生クン、あんま眠れなかったって顔してる。まあ転校してきて2日目だもんな。慣れない環境で疲れてるだろ」


悠真は棗の後を黙って歩きながら、その背中を見つめていた。


慣れない環境……棗はそう言ったが、本当の理由は違う。

昨夜、悠真は何度も棗を殺すシミュレーションをしていた。窓から侵入する方法、音を立てずに殺す手順、死体の処理、全てを頭の中で繰り返した。


しかしその度に、棗の笑顔が浮かんで手が止まった。


「……ああ、そうだな」


悠真は短く答え、棗との距離を一定に保ちながら歩いた。朝の空気が冷たく、悠真の頬に触れる。しかし悠真の胸の中は、妙に温かかった。


棗が自分を迎えに来てくれた。その事実が、悠真の中で何かを溶かしていく。




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