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最後の標的  作者: 有氏ゆず
第一話 出逢い
7/39

1-6




放課後。


悠真は自分の席で教科書をカバンにしまいながら、横目で棗を観察していた。

彼はまたクラスメイトに囲まれている。笑い声が教室に響く中、悠真は無表情のままその光景を見つめていた。


昼休みの会話が、妙に頭に残っている。棗の笑顔、声、そして「面白い」という言葉。悠真の胸の中で、温かい感覚がまだ消えていなかった。


悠真は立ち上がり、教室を出ようとする。しかし足が、勝手に棗の方へ向いていた。無意識に、棗の近くに行こうとしている。




「…水鏡」


悠真は棗の背中に声をかけた。周囲のクラスメイトたちが一斉に悠真を見る。視線を集めることは任務において不利だと理解しながらも、止められなかった。


「家はどっち方面なんだ」

「ああ、私は夢見アパートに住んでるから……こっちかな」

「そうか。お前も夢見アパートか」

「えっ?もしかして転校生クンも?」

「ああ。帰り、一緒でいいか?道がまだよく分からない」


……嘘だった。転校前に周辺の地図は全て頭に入れている。組織に用意された仮の住居。底が棗の住まいだということを知った上で、意図的に配置されたものだった。


「成程な。実は夢見アパートまではバスで直通で行けたりするんだ。おいで、一緒に乗ろうか」




ちょうどいいタイミングでバス停にバスがやってくる。棗は悠真に手招きしてバスに乗りこみ、悠真もそれに続く。

窓際の席に座った棗の隣に、悠真は自然と腰を下ろした。


「あっ、窓際が良かった?代わろうか?」

「いや、問題ない」


バスが動き出すと、窓の外の景色が流れていく。悠真は無言でそれを眺めながら、横目で棗を観察していた。


「……アパートにはどのくらい住んでる?」


悠真は棗に視線を向けながら質問した。情報収集のための質問だ……そう自分に言い聞かせながら。しかし本当は、ただ棗の声が聞きたかっただけなのかもしれない。


バスの揺れに合わせて、悠真の肩が棗の肩に触れそうになる。悠真は慌てて身体を離した。


「うーん、生まれた時からかなあ。母さんと二人暮らしだったんだけどさ。最近帰ってこなくて。全く、何処で何してるんだか」




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