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悠真は棗の言葉を聞いて、少しだけ目を伏せた。
悠真は棗がぬいぐるみを抱きしめて笑う姿を見つめながら、胸の中で温かい感覚を抱き続けていた。棗の笑顔が、悠真にとってこの上なく眩しかった。
しかし同時に、悠真の心の中では激しい葛藤が渦巻いていた。
(……俺は、水鏡を裏切っている)
棗は自分を親友だと思ってくれているのに、自分は棗を殺そうとしている。その矛盾が、悠真の心を蝕む。
「……水鏡、俺は……」
悠真は小さく呟き、言葉を止める。
悠真は棗に何かを伝えたかった。しかし、何を伝えればいいのかわからない。
悠真は棗の横顔を見つめながら、少しだけ視線を揺らした。悠真の心の中では、温かい感覚と罪悪感が激しく渦巻いている。
(……ごめん。俺は、お前の親友なんかじゃない。俺は、お前を殺すために送り込まれた殺し屋だ……)
その事実を、伝えたいと思った。しかし、出来るわけがない。そんなことをすれば悠真は組織から処分されるだろう。
そして真実を伝えれば、棗はもう悠真に笑顔を向けてくれることもなくなるだろう。その恐怖が、悠真の心を支配する。
「……俺は、お前と親友でいられて……本当に嬉しい」
結局、そう言うのが精一杯だった。
「私もだよ。そろそろ帰ろうか、悠真クン」
棗はいつものように、ケラケラと笑った。
そして、夢見アパートへと到着する。
「じゃ、また月曜日な」
「ああ、また……月曜日に」
悠真は棗が手を振って自分の部屋に戻る姿を見つめながら、少しだけその場に立ち尽くしていた。
「……水鏡」
悠真は自分の部屋に戻り、ドアを閉めた。そして、ポケットから手に馴染んだナイフを取り出した。
「お前は俺にとって、何なんだ……」
そのモヤモヤとした感情のまま、思わずナイフを壁に突き立てる。
「棗、なつめ……俺は……」
悠真は胸を押さえ、座り込む。
期限まで後、20日。
第六話へ続く……




